episode4
昼休み時間の教室。明楽は窓際の席で頬杖をつきながら窓の外、グラウンドへ熱視線を送っていた。視線の先にはクラスメイトとサッカーをしている雅臣の姿があった。敵チームのディフェンスを華麗にかわし、彼は見事にゴールを決める。そして味方チームの仲間とハイタッチをかわしていた。そんな様子を見て憂いた雰囲気纏っている明楽に対し、クラスの女子生徒達が「物思いにふけている姿も素敵...」とか、「何だか今日の明楽君、いつもと違う?」と、コソコソと話をしていた。
「明楽。そんなに熱心にみつめていると皆に気づかれてしまいますよ?」
「...薫子。」
唯一明楽の初めて芽生えた恋心を知る薫子が声をかける。するとグラウンドを見つめていた視線を薫子へと移した。
「だってこんな思い初めてで...どうしたらいいのか分からないし、気づくと先輩の姿を目で追っちゃうんだ...。」
明楽は珍しくどこか情けない様な表情で薫子へ語りかけた。
あの階段の一件から明楽と雅臣は見かけたらあいさつを交わすくらいの仲へとなったのであった。
「今度、家庭科の授業で調理実習があるだろう?クッキー作りの。私も中学の時よく貰ってたからマネしてみたいんだけど...」
「あら。いいんじゃないですか?」
「でも先輩も人気者だし、たくさん貰ったりするんじゃないかな?」
「そこは気にしなくても大丈夫だと思いますけど。」
そう実は薫子、あいさつをし合う二人を見て、雅臣が明楽に対して何らかの感情を持っているのではないかと勘づいていた。
「ねぇねぇ。なんの話ししてるの?」
二人の話を聞き耳を立てていたのか、一人の女子生徒が声をかけてきた。彼女は明楽に対してガチ恋勢である。
「今度の調理実習の話しをしていたんだ。」
「あぁ!クッキー作りよね!私ガンバって作るから明楽君に食べて貰いたいなぁ。」
彼女が甘ったるい声で明楽にそう言うと、明楽は王子様モードをオンにしながら笑顔で「ありがとう」と告げた。すると、クラス中の女子生徒達から「私も!」と声が上がるのであった。
「皆ありがとう。大切にいただくよ。」
「おい、花ヶ崎ぃ。独り占めすんじゃねぇよ...」
「悪いね。お姫様達のお願いは叶えてあげたいんだ。」
とある男子生徒がクレームを入れてきたが明楽は笑顔で受け流した。それを聞いて男子生徒達からは「王子の独壇場か...」と落胆の声が漏れたのであった。
そうこうしている内に昼休み終了のチャイムが鳴り、クラスメイト達は自分の席へと戻るのであった。
「では明楽。先程の話しの続きは放課後、私の家でしましょう。」
「!...ありがとう薫子。」
薫子も明楽にそう言うと自分の席へと戻って行った。
すると途端に明楽は王子様モードをオフにし、恋する乙女へと姿を変えるのであった。もう頭の中は雅臣の事と、調理実習の事でいっぱいで、午後の授業は教師の声も右から左へであった。
「これで今日の授業は終わります。」
教師がそう告げると日直の生徒が、「起立。礼。」と言いチャイムの響く教室から出ていく教師を見送るのであった。こうして本日の授業は終了となった。
明楽が帰り仕度をしていると、薫子が彼女の元にやって来て「帰りますよ。」と声をかけてきた。
「あぁ、薫子。待たせてごめんね。さぁ、帰ろうか。」
二人が教室から出ようとすると教室のあちらこちらから「明楽君、西園寺さん、また明日!」と声が上がるのであった。




