episode3
入学式からおよそ一ヶ月、新入生達は高校生活に慣れてきた頃だった。明楽は学業でもスポーツでも成績優秀であった。尚且つ、紳士の様な立ち振る舞いで、重い荷物を持っている生徒対しては荷物を半分持ってあげたり、道に迷っている生徒や保護者を見てはその行先まで道案内してあげたり...様々な親切行為もあったお陰で、彼女は今では"学校の王子様"と呼ばれ親しまれるのであった。
「すっかり"王子様"が板についてきましたね、明楽。」
「よしてよ、薫子...私が呼ばせてるワケでは無いのだから...。」
そんな会話をしながら二人は廊下を歩いていた。
そうしている中でも「明楽くーん!」と呼ばれたりすると彼女は癖になってしまったのか、無意識に笑顔を作り手を振るのであった。
「人気者は大変ですね?」
薫子はクスッと笑いながら明楽に声をかけた。
明楽は肩おすくめ、薫子に「もう癖に...」と呟くのであった。
二人が歩みを進め階段を降り始め踊り場へと差し掛かったその時であった。踊り場ででふざけ合っている男子生徒が明楽にぶつかったのだ。その拍子で彼女は足を踏み外し、階下へと落ちていく。
「明楽!!」
薫子が悲鳴の様な声を上げた。明楽はまるでスローモーションの様な体感だった。ダメかもしれない...そう他人事の様に思った次の瞬間、彼女は温かい腕に受け止められた。
「...え...?」
「君!大丈夫?!足捻ったりしてない?!」
そう声をかけたのは雅臣であった。明楽はまるで時が止まったかの様に呆然としながら彼を見やる。
「だ、大丈夫...です...?」
「良かった...」
雅臣は優しい笑みで明楽を見つめるのであった。
するとようやく事態を把握したのか、彼に抱かれているような体勢に優しい笑顔...彼女は"ボッ"と音が出る様に顔を真っ赤にし、慌てて身体を離すのだった。
「す、スミマセン!!大丈夫です?」
急に慌て始めた明楽に雅臣は「?」と思ったが、「無事なら良かった。」と言いその場を後にした。
「明楽!大丈夫ですか?!」
薫子は急いで彼女の元へと駆け寄る。
しかし、明楽は雅臣の去っていった方へと熱みの引かない顔を向けていた。
「...カッコイイ...」
「えっ?」
薫子は明楽から漏れた呟きに目を丸くしながら驚いた。
「明楽...もしかして...」
「薫子...どうしよう...どうしたらいい?!」
そう、明楽は完全に雅臣に恋をしてしまった様であった。薫子はそんな彼女を見つめながら「なんてベタな展開...」と感想を持ったのであった。




