episode16
明楽が佐々木からLINEをもらっていた頃、雅臣の方にも「明楽ちゃん、今日からお願いしたからよろしく!」というメッセージが送られてきていた。それを見た雅臣はすぐさま明楽にLINEを送った。
「明楽、今大丈夫?」
「雅臣先輩?大丈夫ですよ。」
返信がすぐ来たのに安堵し、雅臣は続けてメッセージを送った。
「バイト、今日からになったらしいけど大丈夫だった?」
「はい。ちょうど予定が入っていなかったので。」
「じゃあ、一緒に行こうか。放課後、校門で待ってるよ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
事務的な連絡であったが、雅臣は明楽と会話ができたのに喜び、放課後が楽しみになるのであった。
それは明楽も一緒で雅臣とのLINEのやり取りを終えると、周りに花が咲くかのようにホワホワとしていた。そんな様子を見ていたクラスメイト達は"王子から花が咲いてる"と同じ感想を持った。皆が明楽に何があったのか疑問を持っていると、勇真が「明楽!」と声を上げながら近づいてきた。
「ゆ、勇真?一体何かな?」
「放課後、デートしねぇか?この辺見て周りてぇ!」
「...申し訳ないんだけど、放課後はバイトが入ってるから無理なんだ。」
「バイト?!明楽、バイトしてんのか?!」
「してるっていうか...今日からね。」
「じゃあ、放課後は明楽と遊べねぇのか?!」
「...申し訳ないけどそういう事だから...」
明楽はそう言うと、勇真から視線を他のクラスメイトへと移し、楽しげに会話を始める。勇真はそれが面白くなかったようで、明楽と、彼女と話していた女子生徒のあいだに割って入っていった。
「ゆ、勇真...?」
「明楽。本っ当にバイトか?」
「そうだよ?嘘を言って何になるんだい?」
「...そうか...。」
勇真はそう言うと大人しくなり、自分の席に戻って行った。そんな勇真に、明楽はもちろん、クラスメイト達も驚いた。しかし、騒がれるよりは...と放置を決め込んだ。
時間が経ち、放課後になったので明楽は帰り仕度をし、雅臣の待つ校門に行こうと教室を出ようとした。しかし、その時後ろから「明楽」と呼び止められた。相手はもちろん勇真だ。明楽は急いでいたので、若干イラつきを覚え、勇真に文句を言おうとする。すると、彼は明楽の腕を思いっきり引っ張り、...静かに深いくちづけをした。
「んぅ?!...んっ...ヤッハァ...!」
明楽は力の入らない腕で勇真を突き飛ばすと、その場にへたり込んだ。そんな明楽に、勇真は近づくと彼女の顔を持ち上げ自分の方へと向け、真剣な眼差しを送った。
「明楽。オレは本気だ。お前を雅臣にも誰にも渡さない。...覚悟しておくんだな。」
そう言うと勇真は静まり返った教室から出て行った。
クラスメイト達は一斉に"ハッ"と我に返ると、急いで明楽の元へ駆け寄った。
「明楽君!ゴメン!私達がついていながら...」
「い、いや、大丈夫だよ...。皆は悪くないから気にしないで。ね?」
そう言うと明楽も雅臣の待つ校門に向かうのだった。
...なんだか雅臣に合わせる顔がない。明楽はそう言う思いで雅臣の元へと行くのであった。




