episode13
明楽は若干放課後が憂鬱になってしまったが、気づけばその放課後となってしまった。
明楽は薫子から「気をつけて。」と言われ彼女を見送った。明楽は一息つくと、勇真の元へ向かった。
「お待たせ、小鳥遊君。じゃあ行こうか。」
「明楽!」
「...なんだい?」
明楽が勇真に声をかけると、彼は明楽を力強く呼んだ。
「その...なんだ...」
「?」
「オレの事は"勇真"って呼んでくれ!」
「な、何で...?」
「何でって...」
明楽は思わず疑問をぶつけてしまった。
「オ、オレはお前に名前で呼んでもらいたい!...ダメか?」
勇真はそう言うと、まるで子犬の様な眼差しを彼女に向けてきた。
「だ...ダメじゃないけど...」
「じゃあ!呼んでくれ!」
「ハァ...行くよ、"勇真"。」
「!おう!」
明楽が名前を呼ぶと、今度は大型犬の様に尻尾を振りながら勇真は彼女の後を追った。
明楽の杞憂をよそに、勇真は校舎案内の間、興味津々に「ココは?」「アソコは?」と彼女が説明をする前に疑問をぶつけてきた。そのお陰か、スムーズに校舎案内を終える事が出来た。そうして、教室へと戻ろうとした時、「明楽?」と後ろから呼び止められた。
「?あ、雅臣先輩。」
「お疲れ様、明楽。こんな時間に学校にいるなんて珍しいね。」
「あぁ、それは...」
「雅臣!」
「あれ?勇真?」
ここでも明楽の言葉を遮って勇真が声を上げるのであった。
「明楽はオレに校舎案内してんだよ。邪魔すんな!」
「邪魔って...勇真、明楽と同じクラスになったの?」
「あぁ!そうだ!」
勇真は雅臣の問いかけに力強く応える。しかし、雅臣はそんな勇真を気に止める事なく明楽に話しかける。
「ごめんね。勇真が迷惑かけてるみたいで。」
「いえ!先生に頼まれただけなので。」
明楽が少し頬を紅潮させているのに気がついた勇真は、面白くないと言わんばかりに二人の名を呼んだ。
「明楽!雅臣!」
「「?」」
そうすると勇真は明楽の腕を思いっきり引っ張り、自分の方に彼女を引き寄せ、雅臣に見せつける様に抱き締めた。
「?!」
「ゆ、勇真?!明楽に何を...」
「うるせぇ!明楽はオレのモンだ!」
そう言うと、勇真は強引に明楽に...口づけた。
周りには三人以外の生徒もいたので、皆がその光景に驚かされ、時間が止まったかの様に静寂に包まれた。
「ん?!んぅ!」
「ハッ!どうだ雅臣!コレで明楽はオレのモンだ!」
「...それは宣戦布告と捉えても?」
「モチロンだ!...お前にはゼッテェ負けねぇよ?」
「そう...明楽。」
「ハ、ハイッ!」
雅臣は明楽の名を呼ぶと、彼女の手を取り跪いた。
「君を誰かの物にする事はオレが許さない。安心して、オレが守るから。」
そう言うと明楽の手に口づけを落とした。
その光景はまるでおとぎ話のお姫様と王子様の様であった。




