episode10
翌朝、家の前で待ち伏せをしていた薫子と共に学校へと向かう。その間、明楽は薫子の質問攻めにあうのであった。...まぁ、教室では王子様の恋話は出来ないであろうとの薫子なりの配慮なのであろう。
「で?昨日はどうでしたか?上手くいったんですか?」
「あぁ、きちんとお礼にクッキーを渡す事が出来たよ。バイトの面接もバッチリ。来週から入ることになった。」
「それはそれは。良かったですね。...でも、どうして昨夜のうちに報告してくれなかったんですか?私待ってたんですよ?」
薫子は少しぶすっとしながらそう告げる。
「ごめんて。報告はしようと思ったんだけど、雅臣先輩とのLINEで...」
「"雅臣先輩"ですって?今まで"小鳥遊先輩"と呼んでいたではありませんか!」
「それは...」
薫子の質問に明楽はモジモジと乙女モード全開で応える。
「昨日の帰り道、家まで送ってもらったんだけどその時に...」
「家まで送ってもらった?!」
「...薫子。話しが進まないよ。」
「これは失礼しました。それで?」
薫子は少し興奮気味になりながら続きを催促する。
「うん。その時に雅臣先輩の方から名前で呼んでほしいって...それに...その、私の事も"明楽"と呼んで良いか聞かれて...」
「...許可したんですか?」
「うん...。」
薫子は顔を両手で覆いながら天を仰ぎ「ファー!」と言葉にならない声を上げた。
「それはもう脈アリだとしか思えないんですけど...。」
「その判断は早いんじゃないかな?!まだ名前で呼び合うようになっただけで...あ、でも」
「でも?なんですか?」
「その...昨日ちょっとした手違いで通話したんだ。その時に、言いかけではあったけど、クッキーに対して"今までで貰ったお菓子の中で一番嬉しかった"って...」
そう明楽が言うと薫子は道の真ん中で立ち止まって下を向いた。明楽が不審に思い「薫子?」と呼ぶと、薫子は下げていた顔をバッと上げ、明楽に強い眼差しを向けた。
「明楽。天からのお告げです。」
「...急に何を言い出すんだい?」
「いいから聞きなさい。」
「...ハイ。」
「明楽。貴方小鳥遊先輩に告白しなさい。」
「ハイ?!告白?!それは早急すぎやしないかい?!」
明楽が声を荒らげながら言うと、薫子は「いいえ。」とだけ返してきた。
「だって、これからやっと同じバイト先で働けるようになったんだよ?!...失敗したら気まずいじゃないか...」
「...たしかに、普通でしたら気まずくなります。しかし!今までのやり取りを聞いているとカップルの会話にしか聞こえません!!」
「か、カップル?!」
明楽は顔を真っ赤にしながら薫子を見つめる。薫子は「失礼しました。少し興奮してしまったようです。」と言い言葉を続ける。
「明楽は少し自信を持ちなさい。...周りが"王子様"と呼ぶからと言って、貴方だって"お姫様"になる権利はあるんですから。」
「!!」
明楽は薫子の言葉に少し泣きそうになる。そんな明楽の頭を薫子は優しく撫でた。
「小学生の頃泣きながら言っていたではありませんか。"本当は可愛いお姫様になりたい"と。その夢が叶うのではないかと私は思いますよ?」
「薫子...なんでそんな昔の話を覚えているんだい?」
明楽が薫子へそう問いかけると、彼女は「フフッ」と不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「だって私は貴方のナイトですから!」




