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スズサキ*  作者: さより
意識
63/63

*63

 最近、席替えがあって離れてから、今までみたいに学校では話せなくなったものの、出入口に近くなったせいで近くを通るたびに咲妃ちゃんが話しかけてくれる。

「あたし英語の小テスト取りに行ってくるねっ」

「あ、うん。いってらっしゃい」

「また後でねっ」

 言って、咲妃ちゃんが小さく手を振って教室を出て行く。

 お互いに目立ちたい訳じゃないから、控え目に、だけど。

「仲いいのな?」

 その様子を見ていた手嶋君が悪戯っぽい感じで言う。

「そ、そんなことないよ。近く通ったから声掛けてくれたくらいで、別に……」

 だから、学校でそんなことを言われて、他の人にバレるのは困る。

「で? 海原どこ行ったの?」

「この前の英語の小テスト取りに行くって。職員室じゃないかな?」

「ふーん?」

「何か、用だった?」

「鳥飼に今日の英文訳、写させてもらおうと思って」

「まだ時間あるよ?」

「まー、そう言うと思ったけど。5行目のとこって、どう訳した?」

「そこは…………」

 手嶋君に訊かれたところを教えていると、坂上さんが教室に入ってくる。

「坂上さん」

「何?」

「昨日、うちの弟と会ってたって訊いて………わざわざ時間作ってくれてありがとう」

「別に。暇だったし、大丈夫よ」

 あれ? 何か…………。

 いつも通りな感じはするけど、やっぱり、何かあった……………? アイツもちょっと浮かれてる感じだったし…………。

 何となく、照れくさそうというか、ぎこちないというか………。

「どしたの?」

 手嶋君が僕の後ろから、坂上さんに話しかける。

「咲妃に、資料集借りようと思って」

「何? また忘れたの?」

「まさか。田中さんよ。今日日本史あるのうちと1組だけなのに1組に知り合いいないって言うから」

「そうなんだ? オレの持ってっていいよ。そこのロッカーに入ってるから」

「咲妃、どっか行ってんの?」

「咲妃ちゃんならこの前の英語の小テスト取りに行くって。多分、職員室」

 僕が答えると、坂上さんが、ちょっと意外な顔をする。

「あ……何? どうかした?」

「別に。じゃ、手嶋君の借りるね」

 言って、坂上さんは手嶋君のロッカーから資料集を取って教室に戻って行った。

 何だったんだろう?

 さっき、ちょっと変だったよな?

 手嶋君が手を止めてにやにやしながら僕を見る。

「何?」

「鳥飼って、海原のこと名前で呼ぶようになったのな?」

「………………は? え? な、何で?」

 学校では普通に呼んでるのに。何でバレた?

「も、もしかして坂上さんが言ってた?」

 咲妃ちゃんが坂上さんに話して、それで?

 でも、何で急に?

 焦って訊くと手嶋君がきょとっとした顔をする。

「何言ってんの? 今自分で言ったじゃん?」

「え? 言ってないよ」

 学校では呼ばないようにしてるし、言ってるはずがない。

「いいって、誤魔化さなくても。仲よさそうでいいじゃん?」

 僕、言ってた?

「べ、別に、普通………だし………」

 普通ではないけど。咲妃ちゃんは特別だから。でも、学校でバレたりなんかしたら、咲妃ちゃんが何言われるか…………。

 でも、本当は他の人にも僕と咲妃ちゃんが特別なんだと思われたいとか………調子に乗ってるよな。

「ここさ…………」

「何⁉︎」

 はっとして、勢いよく返事をしてしまう。

「あ、いや………これ、何? か?」

「や。わかるでしょ?」

「まー、前後の文あるから何となくわかるけど……………鳥飼って、字汚いよね?」

「そ、そんなことなくない?」

「テストの時とか、間違って×されたりしなかった?」

「そこまではないよ。テストの時はきれいに書くようにしてるし、先生にも注意されたこととかないよ? 特に2年になってからは気を付けてるし」

 前は確かに自分でわかればいいとか思ってたけど。

 それでも、慌てて書いた時なんか今でも汚くなったりすることはあるけど。

「2年から、って。海原と一緒のクラスになったから? なんてね。意識しだしたのもっと後だったっ…………け………?」

 思わず、赤面してしまって顔を隠す。

 ………………多分、そうだ。

「なんだ。やっぱそんな時から意識してたんじゃん?」

「いや、違………違わないけど………今思えば………というか………」

「大好きじゃん?」

 意味あり気な満面の笑みで言われて、余計に顔が熱くなる。

「そもそもさー、もう隠す必要なくない? そんなんじゃ、もう気付かれるのも時間の問題だって」

「いや、でも………席近くなったことあるからちょっと話すようになっただけで…………特別仲いいとか…………女子の中では比較的よく話すくらいで…………」

「そういう設定にしたんだ?」

「だから、設定とかそういうことじゃなくて………………」

 あくまでも学校では友達………と言うか、クラスメイトだし。

「ま、がんばってよ。面白いから」

 まったく聴いてないし。


     *♡*♡*♡*


「私、燕と付き合うことになったから」

 朝待ち合わせ場所に行くと、挨拶よりも先に言われた。

「え? あ? え? つ、つばっ……燕くんとっ?」

 付き合うっ?

 いきなりのことでうまく言葉が出ないっ。

 だって、そんな感じじゃなかったよねっ? 確かに燕くんからは紅実ちゃんのことすきすきオーラ出てたし、紅実ちゃんもちょっと気にしてるよねっ? とは思ってたけど…………早くないっ⁉︎

 何がどうなって、そこまで進んじゃったのっ⁉︎

 もしうまくいくとしてももうちょっと時間かかりそうだなーって思ってたのに。

「あ……えと……ま、まあ、そういうことだから………その………それだけ…………」

 てれてるっ。紅実ちゃんが見たことないくらいてれてるっ!

「そ……………それだけ…………じゃ、ないよねっ? おやすみの間になんでっ? 紅実ちゃんやっぱりすきだったのっ? いつからっ? そもそも1年前って、なんだったのか思い出したのっ? それにそれに………」

「と、とりあえず、ここじゃなんだし………今度、あんたの家ででも…………」

「今日っ? 今日ねっ? 部屋ちらかってるけどっ。ねっ、ねっ?」

「あ、う、うん…………」

 思わず、ものすごい勢いで誘っちゃって、強引すぎたかな? でもっ、いいよねっ?

 はやくいろいろききたいもんっ。

 昼休みもきいちゃっていいかなっ?

 でも、まわりに人いたら気になっちゃうもんねっ? やっぱり放課後までのお楽しみかなーっっっ?


 家に帰って、ばたばたと慌ててクッションとお茶とちょっとしたおかしを準備して、部屋で紅実ちゃんの話を聞く。

「いいよっ」

 準備万端っ!

 紅実ちゃんはめずらしく緊張した感じで話してくれた。

「……………咲妃は、気付いてたかもしれないけど、中学の時大神君と付き合ってたの言えてなくて………隠してたとかじゃないんだけど………は、恥ずかしかったというか………そうやって言わないでいるうちに、ちょっとうまくいかなくなっちゃって、そのまま………」

「やっぱり、大神くんと付き合ってたんだっ?」

「うん。ごめん」

「ううんっ。あたしも悩んでるみたいだなって、思ったことはあるんだけど、きかないほうがいいのか、きいたほうがいいのかわかんなくって、きけなくって…………紅実ちゃんみたいに察して相談にのってあげるのとか、うまくできなくってごめんねっ?」

「そ、そんなこと………でも、今度は言っとこうと思って」

「うんっ。うれしいっ!」

 あたしに話したくなかったとか、そういうふうに思われてるわけじゃなかったのに、ほっとして、自分が頼りになんないから相談してくれないんだっ、て落ち込んだときのことを思い出した。

 よかった。

 それから、1年前のこととかいろいろ話してたらあっという間だった。

「断るのが面倒臭くなっちゃっただけよ………顔は好きだけどね。顔だけ」

 もうっ! それだけじゃないってわかってるんだからねっ?

 すっごいてれてるしっ!

 やーーーーんっ、かわいっ!

 でも、あんまりそんなこと言ったら話してくれなくなっちゃいそうだもんね。おさえとかなきゃっ。

 でも、そっかー。紅実ちゃんって、すきな人のことこんなふうに話すんだっ? 

 燕くんもがんばったんだなーっっ。

 今度会ったら燕くんにもきいてみたいなーっ。

 いっしょにおうち遊びに行ってお茶したりごはん食べたりとか…………。

「あ、でも、鳥飼君には内緒だからね?」

「え?」

「やっぱり、ちょっと気まずいと言うか………なんか…………」

「えーーーーっ? なんでなんでなんでっ? いっしょに遊んだりしないのっ? お茶とかごはんとかっ」

「いや、それは鳥飼君も嫌でしょ?」

「なんでっ? だって知らない人じゃないしっ」

「あんただってお姉ちゃんの彼氏と………………いっしょにごはん食べてんだっけ?」

「うんっ。だって、お姉ちゃんの彼氏だもんっ」

 そういうの、ふつうじゃないのっ?

「でも、鳥飼君は燕とあんまり仲良さそうでもないし、嫌なんじゃない?」

「そ、そうなのっ⁉︎」

「そうでしょ。燕の方はあんまり気にしてないみたいだけど。とりあえず、今度会ったときにでも聴いてみたら?」

「うん。紅実ちゃんと燕くんもいっしょに遊ぶのいや? ってきいてみるねっ」

「だから、私のことは言わないでって言ってるでしょ!」

「えー、でもっ、じゃ、なんてきくのっ?」

「燕の彼女………と、遊ぶのとか………」

 てれてるっ! 燕くんの彼女って、自分で言っててれてるっ‼︎

 やーーーーんっ、紅実ちゃんかわいーーーっ!

「それにっ! あんただって、鳥飼くんと2人きりの時間減っちゃっていいの⁉︎」

「う………それは、やだけど…………でもっ、いつもじゃないし…………2人でいてもなんにもないし……………」

「何にもないことないでしょ? 学校でも名前で呼ばれるようになったってことは、隠すのもやめたわけでしょ?」

「……………………え?」

「咲妃ちゃんって呼ばれてるんでしょ?」

 名前で呼ばれるようになった話はしたけど、どんなふうに呼ばれてるかまでは言ってなかったはずなのにっ!

「そ、そそそそうだけどっ! 学校では海原さんのまんまだよっ?」

「嘘でしょ? 今日、教室行ってあんたのこと聴いたら咲妃ちゃんなら……って、教えてくれたけど?」

「えーー………?」

 鳥飼くん、学校では付き合ってるのどころか、仲いいとも思われたくないみたいだったのに。なんでだろ?

「実際、どうなのよ? キスくらいしたの?」

「し、しししてないよっ! ………まだ、手もそんなに…………」

「は? 花火大会の時繋いだんじゃないの?」

「で、でででもっ、1分もないくらいで………その後は………ちょっと…………」

 手の甲こすこすされたことがあるくらいで……………。

「ちょっと?」

「ニアミスみたいのとか…………ちょっと歩くときよりすぎてぶつかるとか……………」

 前見ないと危ないよ、とか言われるしっ。

 確かにそうなんだけどっ!

 あとは……………お見舞い行ったときにいっしょにベッドで寝ちゃって、ハグされたみたいな感じになっちゃったことがあるだけで…………そういう感じじゃなかったんだよ一一一一っ!

「はぁーーーー? 何よ、それ? 学校で毎日顔合わせて、ほぼ毎週休みのどっちかは2人で会ってるのに、何にもないの?」

「う、うん…………」

「何やってんの?」

「う」

 ほんとに……………。

「手繋いでデートできるようになりたいんでしょ?」

「そ、そうだけどっ!」

「もう、勝手に繋いじゃえば?」

「それはねっ、毎回試してるんだけどそんなにうまくはいかないんだよーーーっっっ!」


     *♠︎*♠︎*♠︎*


「おはよ」

 咲妃ちゃんが挨拶してくれて、普通に返す。

「おはよう」

 そして、僕の横で上履きに履き替えたあと、下に敷いてあるすのこに引っかかって転びそうになった。慌てて手を出したけど、実際には転ばなくって、よかったとは思うものの、出してしまった手が恥ずかしかった。

「咲妃、何やってんの? 大丈夫?」

「あ、うんっ。だいじょうぶっ。ちょっと引っかかっちゃったっ」

 へへっと、照れて笑う。可愛い。

「でも、咲妃ちゃんに怪我なくてよかっ……た………」

 そこで気付いて、慌てて口を抑える。

 今、僕咲妃ちゃんって…………。

 自分でも咲妃ちゃんのことを名前で呼んでることに気付いて驚いた。学校なのに。

 もし、誰かに聞かれてたらどうするんだよ?

 仲いいとか思われたら。気を付けないと。

 学校では海原さん。海原さん。海原さん………。

 坂上さんと咲妃ちゃんの後ろを歩きながら、自分に言い聞かせる。

「おっはー」

 手嶋君が先に来ていて、挨拶を返す。

「おはよう」

 そして、こっそり訊いてくる。

「朝、仲よく登校するようにしたの?」

「違うから。下で一緒になっただけだし、海原さんは坂上さんと一緒だっただけだから」

「あ、そ?」

 ほら、大丈夫。普通に海原さんって言えてる。

 それなのに、また何度か学校でも名前で呼びそうになって戸惑う。

 つい呼んでしまうのは、坂上さんがいる時が多い…………………そうか。坂上さんは咲妃ちゃんのことを名前で呼ぶからつられるんだ。多分、そうだ。

 だから坂上さんがいる時に注意しとけば大丈夫だよな?

 咲妃ちゃんって呼ばないようにしないと……………。

「あれ? 海原さんまだ戻ってない?」

 昼休み、早めに教室に戻って来た七尾さんが、咲妃ちゃんが見当たらないのに気付いて訊いてくる。

 咲妃ちゃんと付き合ってるのがバレてから、たまに話し掛けてくれるようになった。

 本当に、たまにだけど。前みたいな僕に対する嫌悪感は感じなくなった気がする。

「あ、さ…………」

 咲妃ちゃんと言いそうになって、慌てて口籠る。

「さ?」

「あ、いや、み、見てない。まだ、じゃない、かな?」

「そっかー。次の英訳見せてもらおうと思ったのになー…………」

 言いながら、自分の席に向かう。

 七尾さんは海原さんって言ってたのに……………自分が信じられない。

 だめだ。気にすれば気にするほど呼びそうになる気がする。だからって、気にしなくても呼びそうにはなるけど。

 もしかして僕達のこと知らない人の前で呼んだりなんかしたら………。

 そこまで考えて怖くなる。

 念の為、何か言い訳でも考えてた方がいいかもしれない。咄嗟だと、うまい言い訳なんて思い付かない気がするし。

 誰かと、同じ名前だからとか……………。

「海原いないのかよ?」

 その後で後ろから舌打ちが聴こえる。

 咲妃ちゃんに対して? 誰だよ?

 まだ昼休みだし、予鈴もまだなんだからよくないか?

 少しいらっとするものの、平静を装う。

「咲妃ちゃんなら戻ってないと思うよ。予鈴もまだだし…………」

 あ、今僕…………。

「………………………鳥飼って海原のこと名前で呼んでんの?」

 笹丘君だった。

 何か、ヤバくないか?

 もしかしたら独り言だったのかも知れないのに、僕が答えたせいで…………。

 いや、でも過去は変えられないけど、付き合ってるとかまでは…………焦るな。

 咲妃ちゃんとは席が近くなったことがあるから他の女子よりはよく話すようになっただけだ。特別仲がいい訳じゃないから。

「あ、う、うん。たまに………?」

「鳥飼って………女子のこと名前で呼ぶとかそういうタイプじゃないと思ってたけど?」

 やっぱり、そう思うよな?

 でも、付き合ってなくても名前で呼ばれてる女子もいるし、気にしない振りしたらいいんだ。

「だ、だから、たまに……だよ。従姉妹と同じ名前だし………」

 見ると、とてもじゃないけど信じてもらえてる顔じゃない気がする。

 当然だよな? 従姉妹なんて…………同じ名前の従姉妹がいたとしても、普通は呼ばないよな。むしろ呼んでない、って、とぼけたほうがよかったんじゃないか?

「普通、従姉妹と同じだからって、呼ぶか?」

 そんなのわかってるよ。やっぱり、もうちょっとマシな言い訳…………。

 そこで、予鈴が鳴って咲妃ちゃんが戻って来たのを見つけて、笹丘君は咲妃ちゃんのところに行った。

 …………僕、間違った?

今までは書き溜めていたものがあったので、毎週更新できていましたが、とうとう追いつかれてしまったので、もしかすると更新頻度が落ちるかもですm(_ _)m

呆れずに読んでいた抱けると嬉しいです(;´Д`A

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