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スズサキ*  作者: さより
意識
61/63

*61

 15分前だったら、余裕じゃね? と思ったのにもう来てた。

「もしかしておれと会うのすっげー楽しみでした?」

「違うわよ! そんな訳ないでしょ?」

 けど、シンプルだけど可愛いワンピースとかおろした髪とか、おれのためのおしゃれって思ってもいいよな? うん。

「今日の服可愛いっすね。似合ってる」

「いいわよ。お世辞なんか」

 ふんっと、そっぽを向くのは照れ顔見られたくねんだよな。そんくれーわかるけど、そーいう態度すら可愛いってのはわかってねんだろーな。

「荷物おっきいけど、持ちましょうか?」

「大丈夫よ」

 今日の格好には不似合いにも見えるデカ目のバックには何入ってんだろーな。紅実さんなら言ったら何でも出て来そうだけど。着替えとか靴とかまで入ってたりして。なんてな。

 けど、走るの早かったし、結構アクティブだったりすんのかな? 本当に着替え入ってんならラウンドツーみたいなとこでもよかったか? 今回は金ねーからそんなとこには行けねーけど………次だな次。

 それに、今日のワンピースのがいかにもデート♡って感じだもんな? あんだけ渋ってたのにこんな格好とか………ヤバくね?

 おれもしっかりしねーとな。

「んじゃ、はい」

「何?」

 紅実さんの前に手を出すけど、その手を見ておれの顔を見る。

「なに? って、手ですよ」

「そんなの分かってるわよ! 手相でも見ろっての?」

「いや、手相って……………」

 おれの顔を見て気付いただろうに、誤魔化すようにおれから離れようとする。

 もしかしてギャグだったのか? 照れ隠し的な? おれ、笑った方がよかったのか?

 マジな顔してたけど………にーちゃんが男子とは普通に喋ってるとか言ってたけど、こーいうのは慣れてなかったりすんのか?

 いや、でもデートなんだし。小走りで追いかけて、言う。

「手くらい繋ぎましょーよ」

 一応断ってから、紅実さんの手を取る。

「勝手にさわんないでよ!」

 口ではイラっとしてそうに言うのに、本気で振り払おうとしてないのはわかる。

「普通、デートって言ったら繋ぐもんでしょ?」

「知らないわよ」

「んじゃ、腕組みます?」

 言って、ちょっと腕を紅実さんの方に寄せてみる。

「組む訳ないでしょ⁈」

 ほら、またすぐムキになるし。

 普通にしてたらめちゃくちゃ落ち着いてて、美人で大人な感じするのに、喋るとおもれーの。怒ったり照れたり………でも、あんま笑ってはくれねーんだよな。

 この前笑ったのも、何でだったか覚えてねーし。またそのうち笑ってくれたりすんのかな?

「じゃ、今日は手繋ぎデートってことで」

「………………勝手にしたら?」

 とりあえず、OKってことだな。

 けど、本当に腕組まれたら多分当たるよな? 結構あるし…………制服ん時より胸元開いてるし、見えたりして…………。

「どうかした?」

「や、何でもないっす!」

 さすがに、そんなことしてんのバレたら引かれるだろ?

「とりあえず歩きましょっか?」

 歩き始めると紅実さんの方から話しかけてくれる。

「どこ行くのよ? もしかしてノープラン?」

「それもいいですけどね。最初ですからね。ちゃんと考えてますよ。でも、紅実さんの行きたい所とかあったら………」

「あんたと一緒に行きたいとこなんかないわよ」

「あーー、そんなこと言っていいんですか? もし楽しかったらチューとかしてもらいますよ?」

「何でそんなことしなきゃなんないのよ! 帰るわよ‼︎」

「冗談ですって」

 もしかしたら、くらいは思ってっけど。

 帰られたら元も子もねーもんな。

「とりあえず、こっちっすね。おれこの辺詳しくないんで。ちょっとナビ使いますね」

 言って、ボディバックからスマホを取り出すのをじっと見られる。

「なんすか?」

「何でいちいち断るの?」

「おれが紅実さんの前で、他の奴とラインしてるとか思ったら、気になりません?」

「気にならないわよ」

 また、ふいっとそっぽを向く。

 ちょっとは気にして欲しーんだけどな。おれとしては。

「あ、こっちっすね」

 紅実さんにとっちゃこれから行こうと思ってる場所も、もしかしたらよく遊んだ所とか、よく行く場所だったりするかも知んねーけど…………おれと一緒なのは初めてだしな、つまんねーとかはなんねーよな。


     ♢*♢*♢


 可愛いとか思われたいわけじゃなくて、ただ、一応デートのつもりみたいだし? それっぽい格好して来た方がいいのかな? と思っただけで…………アンタが黙ってれば格好よかったりするから、変な格好なんてできないんじゃない。

 横歩いてたら他人の目とか、私が! 気になるのよ‼︎ それだけなのに、何でそんなにニヤニヤしてんのよ? それに私のこと気遣うみたいな言い方して、何なのよ⁉︎

 不覚にもちょっと嬉しいとか思っちゃったじゃない!

 …………………そういうの、少しくらい言葉にできたら、ちょっとは可愛いとか思われたのかな?

 ちらっと、斜め上を向くとスマホの地図と実際の道を確認しているヤツの顔が目に入る。

 顔はほんっとにいいのよね。身長も高いし。遺伝なんだろうな。鳥飼君も鳥飼君のお父さんも高かったものね。

 それに、サッカーやってるからなのか、適度に筋肉とかついてて、頼り甲斐もありそうに見えるのが不思議よね。

 話してるとただのバカなのに。 

「こっち行くと公園あるらしいんすよね。ちょっと大きめの」

 いきなり振り向かれてどきっとする。

 何となく恥ずかしくて目を逸らす。

「知ってるわよ。青葉公園でしょ?」

 咲妃とはしょっちゅう一緒に行ってたもの。今日だって鳥飼君との約束がなかったら…………………?

「あ、やっぱそーなんすね? 紅実さんの行動範囲かな? とは思ってましたけど。今日、青葉おひさまマルシェって言うのやってるらしいっすよ? 知ってました?」

「…………知ってる」

「もしかして、あんまり興味なかったっすか?」

 つまんなそうに返事したのに、ニヤニヤしながら聞き返して来る。

 もしかして咲妃から聴いた鳥飼君が教えてたり?

「そんなこと、ないこともないけど………もしかして、鳥飼君に何か聴いた?」

「何をですか?」

 とぼけるのが上手いのか、それとも本当に知らないのか、よくわからない。

「別に…………」

 思ったよりもうるさい感じはしなくて、ただ、たまに握った手をぎゅっぎゅっとされて、顔を上げるとへらっと笑う顔が目に入る。

 バカじゃない? こんなの、本当にデートみたいじゃない!

 しかも私の手握ったまま鼻掻いてんじゃないわよ⁉︎ 何か、ちょっとドキッとしちゃうじゃない⁉︎ 年下のクセに!

「あ、看板出てますね?」

 会場に着くと、並びは前に来た時と変わらないけど、今まで出店していなかったお店や、今までも出てたけど、雰囲気の変わったお店なんかも出ていてちょっとテンションが上がる。

「あ、あそこ! カツサンドの店ありますよ!」 

「……………それ、カツサンドのお店じゃないわよ。コーヒーだからね。メインは」

 with coffeeって、こんなとこにお店出したりするようになったんだ? ここでお昼ご飯食べようとか言われるのかな?

「げ、でもこういう所でも結構するんすね?」

「普通じゃない? お店で食べたらこんなもんでしょ?」

 800円って、そんなに高くないわよね? 結構ボリューミーだし。スーパーとかで買うのとは違うんだし。

「だって、こういう場合、皿に乗ってるわけでもないし、安くなったりしないんすかね?」

「モノが同じだったら、同じでしょ? テイクアウトってだけで容器代取るとこもあるんだからむしろ良心的なんじゃない?」

「そ、そっか…………」

 納得したみたいだけど、目に見えてがっかりしている。

 食べたいんだろうな。でも、無駄な交通費なんか遣っちゃってるから………。

「……………カツサンドなら何でもいいの?」

「そうっすね。でも、あそこのはちょっと違うんすよ」

「そうなの?」

 まあ、私もここのは好きだけど。キャベツも結構入ってるのにちゃんとカツの存在感もあるし、サクサク感とかソースの味とか………。

「前ににーちゃんが買って来たの食ったことあんですけど、ちょっと特別なんです」

「特別?」

 何でもいいわけじゃないんだ?

 そりゃそうか。キャベツ入ってたり入ってなかったり、ソース違ったりとかそれぞれだもんね。

「前に紅実さんに貰ったカツサンドに、一番似てる感じがするんすよ」

「は?」

「ほら、話したでしょ? 初めて会った時、カツサンドくれたこと。もしかして、それも忘れちゃいました? 結構最近の話なんだけどなー」

「バカにしないでよ! そのくらい覚えてるわよ‼︎」

 私が怒ると、コイツはははっと笑ったあと、申し訳なさそうな顔をする。

 何よ? そんな顔して。

「本当は、あんまり紅実さんに会えなかったんで、このまま会えなかったり? と思って不安になった時期があったんすよね。けど、そん時ににーちゃんがそこのカツサンド買って来てくれてて………ヒントっつーか………やっぱ、諦めなくてよかったっす」

 言って、今までのへらっとした笑顔とは違う、ものすごく嬉しそうな顔をする。

 ……………そんなふうに言われたら逆に言いづらいじゃない。実はカツサンド作って来てるとか。

 どうしよう? ちょっとくらい思い出さないと悪いかな? とか思って作ってみたけど…………全然思い出さないし………そもそも悠仁も好きだからよく作るし、日常的な感じなのよね。そんな特別な感じもしないし………。

「そのうちホンモノ食いたいっす! 作ってくれます?」

「何で、私がそんなことしなきゃいけないのよ⁉︎」

「そのうちですよ。そのうち」

 言って、へらっと笑う。

 多分、言うなら今だったのよね。今日作って来てるけど? とか……………。

 コイツは、作って来てるとか言っても引いたりはしないんだろうけど………いや、わかんなくない? だって、結構図々しいし、こういう時でも食べたかったら前の日とかに「作って来てくれます?」とか言いそうじゃない?

 ………やだな。昔のこと思い出しちゃったじゃない。

 中1の時に、同じクラスの子何人かで集まった時のこと。

 外だったからつまめるくらいのサンドイッチとか持って行って、ドン引きされたの。女子には男子に媚びてるとか、男子にはお節介とか言われるし………喜んで食べてくれたの、咲妃だけだったし。

 喜ばれようと思ったわけじゃないのよ? 買い食いもいいけど、それだけじゃお腹いっぱいになんないかな? と思っただけで………でも、咲妃が喜んで食べてくれたの嬉しかったし、やっぱり期待しちゃってたんだよね。

 こういう押し付けがましいとこが、自分でも嫌になる。

「でも、まだ昼には早いっすよね? 先に他のとこ回ってからどっかで食います?」

 まだ、10時台だもんね。お昼にしても、もう少し後よね?

「そうね」


♣︎*


 初デートとしてはなかなかじゃね?

 今まで以上にしゃべんねーけど、すっげー見てたり、キョロキョロしてたりとか、子どもみてー。

 ハグして、ぎゅーー! っとかしたくなる。

 たまに、ちょっと思い出したかのように、おれのことを気にしてくれんのも、嬉しかったりする。

「こんなの、アンタ楽しいの?」

「まー、はっきり言ってほとんど興味ないっすけど、紅実さん見てんのが楽しいんで」

「何でよ?」

「さっきまでと違って、ちょっとテンション上がってるでしょ? 可愛い」

「バカじゃないの⁉︎」

 言って、また視線が近くの店の雑貨や布の店に戻る。そして、ちょっと離れて行ってしまう。

 けど、店の中のもん見るのに手離されたし、こうなるとちょっとデートっぽさがねーよな?

 いつもと違う感じの紅実さん見れんのは嬉しいけど……………。

 後ろの女子がおれの脇から店の中を覗こうとしている。

 あ、おれ邪魔じゃね?

「すみません」

 言って、譲る。

「あ、ありがとうございます」

 って、こんなことしてたら、余計デートっぽくねーじゃん?

 やっぱ、2人になれるとこじゃねーとゆっくりできねーのか?

 しかも、腹減ってきた。チャリってそれほど疲れねー感じすんのに、腹は減るんだよな…………何もしてなくても減るけど。

 紅実さんがあの店から離れたら、メシにするか? あんま金ねーから大したもんは食えねーけど…………こんなことなら今月発売のゲーム、中古で出るまで我慢すればよかった。

 それに、電車代も残しとかねーとだよな? やっぱ、チャリより電車のが早ぇーんだし。

 あ、紅実さん出て来た? キョロキョロしてる。おれ探してくれてんのか?

 近付くと、ちょっとほっとしたような顔をする。あ、やべ。すげーハグとかしてー。けど、やっぱいきなりとか、場所とか………。

「探しました?」

「そりゃ、まあ………帰ってくれててもよかったけど、ラインくらいはしといてよね?」

 もしかして、帰られたと思って心配してた?

「やっぱり、あんまり楽しくないわよね?」

「確かに、手くらいは繋いどきたいっすかね? これが長年連れ添った後とかなら、アリなのかも知んないですけど」

「何言ってんのよ⁉︎ そんなことあるわけないでしょ⁈」

 言って、そっぽ向くけど、その後でおれの反応を気にするようにちょっと振り返る。

 多分、天然なんだよな? わざとじゃなくて。

 可愛くね? いや、可愛い。

「そろそろ、お昼にする?」

 紅実さんの方から昼の提案をされる。

「いいすっね。おれも今そう思ってたとこでした。気が合いますね」

「時間的にそうなだけでしょ? 変な言い方やめてよ」

「いいじゃないですか。デートなんだし」

「さっきのカツサンド食べたいんでしょ?」

「そーなんすけどね………」

 やっぱ、来月の小遣いもらってからにしとけばよかったかな? けど、今! このタイミングしかねーと思ったんだよな。今回のがあっての、次っつーか…………。

「あのくらいじゃ、お腹いっぱいにならない?」

「そ! そーっすね!」

 確かに! あれだったら3個くらい買わねーと腹一杯にはなんねーな。

「もうちょっと、他のも見てみる?」

「そーっすね」

 に、しても500円で腹一杯ってのはやっぱねーよな?

 しかも、こーいう時おれちょっと多めに出すべきだよな? デートだし………。

 カレーが一番安かったな。500円で一人前。

「気になるのあった?」

「あーー、カレーがいいっすね。紅実さんは?」

「私もカレーにしよっかな」

 その反応に、ちょっと変な感じがする。

「おれに合わせなくってもいいんですよ? こんなとこだし、お互いに好きなの買って来て、どっかで一緒に食べられれば」

 少し考えた後で、奥を指さして言う。

「あーー、じゃ向こうでおにぎりサンド買って来る」

 言って、ふいっとおにぎり屋のキッチンカーの方へ行ってしまう。

 とりあえず、紅実さんの姿を見守りながらカレーの列に並んでいると、緑星高校のサッカー部のジャージを着た数人を見かける。

 一昨日は予言の日? だったようですね。

 今日こうやって更新できることにほっとしています。

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