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何なのよ? ラインって、あれっきり?
もしかして、最初はしょっちゅう送っちゃうかもみたいなこと言ってたくせに。
しかも、私が帰り着いたかは確認しといて、自分はどうなのよ?
自転車で2時間とか言ったら、アイツの方が心配じゃない? 事故ってないかとか、遅くなって怒られなかったかとか。
「おはよっ。紅実ちゃんどうしたのっ? なんかあったっ?」
朝の待ち合わせ場所に来た咲妃が、私の顔色を伺うように聴いてくる。
「何もないわよ!」
思わず、口調が厳しくなってしまって、はっとする。
「あ、ごめ………」
「昨日燕くん、ちゃんと帰れたのかなっ?」
気を使っているのか、天然なのか、咲妃は気にしてない感じで私が話題にしにくいことをさらっと出してくる。
別に話題にしたかったわけじゃないけど、そこはやっぱり気になる。
「帰れたんじゃない?」
興味なさそうに答えた。
咲妃のことだから、あんまり興味津々に答えると、好きなの? とか、気になってる? とか思われて面倒臭くなりそうだから。
「鳥飼くんにきいてみるっ?」
「いいわよ」
訊きたきゃ自分で訊けばいいんだし。ライン交換した訳だし………そもそも、何で私アイツにライン教えちゃったんだろ?
バカじゃない?
ムカつく!
昇降口で鳥飼君の姿を見つけて、我慢できなくなってカバンで殴る。
「痛っ………」
鳥飼君が腕を押さえながら情けない顔を向ける。
「紅実ちゃんっ⁈」
まださらに私が鳥飼君を殴ると思ったのか咲妃が止めに入る。
「あんたの弟、何? ストーカー? 昨日また来たんだけど? しかも自転車で」
「え? じ、自転車………?」
「そうよ! 片道2時間もかけて、わざわざ!」
「た、確かに、帰りは遅かったけど………行ってないって………2時間………」
怪しいところはあったから確認はしたけど、行ってないって言われてた訳ね?
バカじゃないの? そんな見え透いた嘘つくのも、それを信じる方も。
「ご、ごめん。注意しとくから」
「注意したからって、聞くの?」
鳥飼君は答えられない。
そりゃそうだ。それで聞くなら、こんなに何度も来たりはしない。
そして、かなり迷った後で恐る恐る言う。
「ら、ラインくらいは教えても………?」
「は?」
「い、いや……あ、あんまり相手にされないと返ってムキになるから、適度に相手してくれた方が………とか? ラインなら、嫌になったらブロックしてくれて構わないし………その時は僕が言ったからってことにしてもらったら、坂上さんのせいにはならないし………」
「……………い、や、よ!」
言って、自分の靴箱に向かう。
……………まさか、もうラインは教えてるとか言える訳ないでしょ!
仕方ないでしょ? 顔は好き。それは、もう認めるわよ。事実だし。でも、それだけでライン教えたりするようなオンナとか思われても嫌じゃない?
……………まあ、無事に帰れてるみたいではあるけど………大して怒られてるふうでもなかったけど………。
思わず、ちょっとほっとしてしまう。
何ほっとしてんだろ?
来れたんだから帰れるわよ。子どもじゃないんだし…………まだ義務教育中だし、子どもか………でかいけど。2つ下ってことは悠仁より1つ上で…………悠仁はアイツのこと知ってるって言ってたけど………………………………。
アイツも悠仁とか、大神君のこととか知ってんのかな?
*♣︎*♣︎*♣︎*
「今日も行くん? 紅実さんとこ」
朝登校すると、カッツンがにやにやしながらきいてくる。
「行かねーよ」
本当は行きてーけどな。やっぱ、直接話してーし。
できれば、もっとスキンシップとかも。それはラインじゃどーにもなんねーもんな。
「どーしたんだよ? きっぱり断られて、納得できたとか?」
「違ぇーよ。毎日来られるのはメーワクって言われたから今日は行かねーってだけだよ。明日は行くし。チャリで行けるのも分かったからな」
「本当に毎日がメーワクなだけだって?」
「他に何かあるか?」
「………………つっくんのポジティブなとこって、やっぱすげーわ」
「なんだよ? 今言った中のどこにネガティブに考えられる要素があるんだよ?」
「思いもつかないところがすげーんだって」
カッツンがバカにしたように言う。
ちょっとカチンときて、言い返す。
「おれだって、いろいろ悩んでることだってあるんだからな?」
「たとえば?」
「…………にーちゃんが、おれの代わりに殴られてたとか」
「もしかして田元先輩?」
「は?」
「違った?」
「いや、誰かまでは知んねーけど………知ってたん?」
「1年の時、一緒にいるとこ見かけて違和感しかなかったから、なんとなくそーかな? と」
「それ、何でそん時教えてくんなかったんだよ?」
もし知ってたら、何でおれに直接来ないんだよ? くらいの文句は言ってやったのに!
「そん時はそんなに深く考えてなかったし、今、つっくんからきいて思い出したくらいで………」
確かに田元さんってキレやすかったし、本人ツッコミとか言いながら、マジで痛かったし、無視されたり………おれ嫌われてんだろーな、とは思ってたけど。
そもそもにーちゃんが西脇さん以外の人と一緒にいるのが想像できねー。
「けど、つっくんのにーちゃんってどーなの? 意外と強くて返り討ちにしてたり?」
「それはねーって」
「そう?」
うん。それはねーな。
にーちゃんって、自分からは絶対手出さねー…………あ、足は出るか。
ガキの頃は何回かあったよな。にーちゃんの本汚した時と、録画消した時。大体、手より足が出んだよな。普段温厚なだけに、キレると激しい。
そう思うと、咲妃さんのことでからかって喧嘩になったときはにーちゃんからで、久々すぎて正直ビビったけど、本気じゃなかったんだろーな。だいぶ怒ってたけど。
おれに、ってよりは自分にムカついてたんかな?
自分が好かれてなくても仕方ねーな、とか思ってたんだろーな。
「西脇先輩とも仲いいし、いつも落ち着いてるし、底が知れねーって言うか………ちょっとかっこいいよな?」
「は?」
何⁈ カッツンって、にーちゃんのことそんなふうに思ってたんか?
確かに、家に遊びに来てリビングににーちゃんいるとわざわざあいさつしたりしてた。そんなに気使わなくてもにーちゃんは気にしねーのに、とか思ってたけど………。
「いや、なんか大人な感じするじゃん?」
はぁ〜〜〜? そんなことねーからな?
「にーちゃんは大人じゃなくてジジくせーんだって! 小言は多いし、何でも無理とか言うし、そのくせカノジョの下着の色とかチェックして、毎日シコってんだぜ?」
「…………………そうなん?」
「…………………知んねーけど」
さすがに現場押さえたことはねはーもんな。けど、にーちゃんみたいなのに限って、アタマでは何考えてんのかわかんねーんだって。
「まー、もしそーでもオカズがカノジョってあたりが鳥飼先輩っぽい気もするわ」
言って、はははっと笑った後続けた。
「つっくんは、弟だからそう思うのかもな?」
………………カッツンの言いたいこともまあ、わかるけど。真面目すぎるだけで………今も何だかんだ言いながらも勉強見てくれてっし。しかも、この前の小テスト80点超えてたとか………悔しいから言ってねーけど。
「紅実さんもさ、大人っぽい……っつーか、実際年上な訳だし、女子の方が精神的にも大人って言うしさ。大学生とか社会人の彼氏とかいてもおかしくなくね?」
「…………あ?」
「だって、美人なんだろ? そんで、性格もいいとかならすでに彼氏とかいんじゃね?」
カレシ? いや、そりゃ、告られててもおかしくねーけど、付き合うのはおれじゃねーの?
「いるわけなくね? おれにライン教えてくれたし、1年前のとか次会ったら付き合うくらいの感じ…………」
「忘れられてたんだろ?」
「そ、それは……………」
いや、でも、ちょっと照れてるとか、そーいうんじゃねーの? ツンデレっぽいし。
「それに、つっくんだって好きじゃなくてもラインくらい教えたことあるだろ? 女子に」
そこで、予鈴が鳴って教室に入る。
………………確かに。
「咲妃ちゃんと一緒にいるところはよく見るけど?」
その答えにイラッとくる。
ちょっと確認だけしておこうかと思って、勉強を教えてもらってる間にきいてみただけだけどな!
さすがに昨日ので気付いてんだろーが! ギャグのつもりか⁈ そんなんだと咲妃さんにも愛想つかされっからな⁈ バーカバーカ‼︎
とは、思うものの、ここでにーちゃんの機嫌を損ねると、しばらくは何も教えてもらえなくなる気がして、必死に我慢する。
「あー、だろーな? 仲よさそうだもんな?」
部活も一緒だし、帰りも一緒だしな。昼とかも一緒に弁当食ってそーじゃん? そんなん簡単に想像できんだよ!
「あとは、俺とも話してくれるくらいだから、みんなにもそういう感じじゃないか?」
ふーーん? みんなに、ね…………。
「それに、夏前くらいに聞いた時は誰とも付き合う気ないとか言ってたけどな」
「そんなんきいたのかよ?」
にーちゃんが? 意外すぎる。
「静だよ。口説くつもりだったみたいだけどな」
「西脇さん? 知ってんのかよ?」
「偶然だけどな」
っつーか、西脇さんって結構モテるよな? いっつも違う女子といっしょにいるし、ケンカ強ぇーし………そんな相手にそう答えるってことは………やっぱ、おれとの再会待ってくれてたってことじゃね?
*♢*♢*♢*
「紅実ちゃんっ! 食堂前の自販機にねっ、塩キャラメルラテが入ってたっ!」
昼休みになると、休み時間に七尾さんと買いに行ったと言うペットボトルのラベルを見せながら咲妃が説明してくれる。
咲妃って、キャラメル味好きなのよね。
「で? どうなの?」
「それがねっ、塩の部分はよくわかんないのっ。普通にキャラメルな感じ」
「あーー、よくある感じよね? 商品名に塩って入ってる意味がわかんないヤツ」
「うんっ。そうっ! 紅実ちゃんも飲んでみるっ?」
言って、飲みかけのペットボトルを差し出してくれる。
「私はいいわ」
「でもねっ、おいしいよっ? 塩はわかんないけどっ」
言って、にこにことおいしそうに塩キャラメルラテを横に置いて、お弁当を鞄から出した。
咲妃って、ちょっと子供っぽいとこあるけど、無邪気で可愛いのよね。つい、からかいたくなるし、ほっとけない感じ。
服だってフリルとかリボンとか似合うと思うのに、子供っぽく見られるのが嫌みたいで着てくれない。
咲妃もそういうのは好きなんだろうに。そういう作品の方が作ってても楽しいんだろうな、っていうのがわかるくらいできあがりに差があるの、わかってるのかな? あ、でも、この前のメンズアイテムとか言ってたのはよかったな…………鳥飼君のお陰なのかな?
もしかして、鳥飼君もそういうのが好きなんじゃない? とか言ったらフリルもリボンも着てくれるかな?
ムキになって嫌がりそうな気もするけど。
そういうとこも、可愛いんだろうな。
「なんか変だったっ?」
「え?」
ちょっと口を尖らせながら、聴いてくる。
「だって、笑ってるしっ」
「そう?」
「………子どもっぽかったっ?」
「可愛いな、と思っただけよ」
「え?」
言って、ちょっと顔を赤くする。
「子供みたいで」
付け足すと、思った通りにちょっとムキになって怒る。
「もーーっ! どこがよっ⁈」
「そうやって、すぐムキになるとことか」
「う…………」
あ、やっぱりショック受けてる。
こういうふうにくるくる表情が変わるとこも、素直だなーとか思う。
私も、咲妃みたいに可愛くわがまま言えたり、甘えたりできたら違ったのかな?
……………久しぶりに思い出して、悩んじゃってるのがなーー。
一一素っ気ねんだよな。
一一つまんね。
そんなの、私が一番知ってんのよ! ムカつく!
もう未練なんかないつもりなのに、そればっかりが心に引っ掛かかってる。
「なやみごとっ?」
「まぁ、そうね」
顔に出てしまってたみたいで、咲妃が心配そうに覗き込んでくる。
「相談のるよっ? 燕くんのことならそれとなく鳥飼くんにきいてみたりもできるしっ」
「そういうんじゃないから」
咲妃には、大神君とのことは言ってないから、ちょっと相談しにくいのよね。
言いたくないわけじゃなかったんだけど、何となく恥ずかしかったし、まだ自分でも付き合ってる実感みたいなのもなかったし………それだけだったんだけど…………あの時、相談できてたらちょっとは違ったのかな?
「あっ!」
いきなり出した咲妃の大きめの声にびっくりする。
「何よ?」
「下のほう、塩っぽいっ!」
お弁当を食べ終わって、残りの塩キャラメルラテを飲みながら説明してくれる。
「あんた、飲む前によく振らなかったんでしょ?」
「ほんとだっ! 飲む前によく振ってくださいって書いてあるっ!」
「バカじゃない?」
「ばかじゃないもんっ! ちょっと見てなかっただけだもんっ! 次はちゃんと振って飲んでみるっ!」
それでもおいしそうに、残りの塩味濃いめのキャラメルラテを飲んでいる。
こういうのも、可愛い子の特権よね。
「そうだ。今度の日曜日、ハルオカのマルシェあるんだけど久々に行ってみない?」
定期的に開催されるから前はよく行ってたけど、いつも同じお店が出店してるし、最近はマンネリになって行ってなかった。
でも、久々にチラシを見てみたらよく知らないお店とかもあったのよね。咲妃も好きそうなやつ。
「その日は鳥飼くんと約束あってっ……ごめんねっ?」
咲妃に申し訳なさそうに、断られる。
「そっか。じゃ、仕方ないね」
こういう時に、鳥飼君と付き合う前なら一緒に行けたのに、とか思ってしまう。
そうじゃなくても咲妃にも用事とかあるだろうし、私の誘うのが遅いのもいけないんだし、仕方ないんだけど。
「あ、でも鳥飼くんにきいてみるっ。土曜日あいてたら………」
「そこまでしなくていいわよ。マルシェは来月もあると思うし。来月一緒に行こう?」
「うんっ。来月ねっ」
安心したように、咲妃はにこっと笑ってくれる。
咲妃って、私といて楽しいのかな?
不安に思っているのを見透かすように咲妃が言う。ただの天然なんだとは思うけど!
「ぜったいねっ? マルシェは紅実ちゃんと行くのがいちばん楽しいもんねっ」
その言葉が嬉しくて、思わず顔が熱くなる。
私ってば、バカじゃない?
一一明日、また行きますね(^з^)-☆
ほんと、バカじゃない?
一一来なくていいわよ! 勉強しなさい、勉強‼︎
一一遠慮しないで下さい。体力には自信あるんで\\\\٩( 'ω' )و ////
何で、私の周りバカばっかりなのよ! 私が引き寄せてんの? 類友ってこと⁉︎
……………………来なくていい、じゃなくて、来ないでって、送ればよかった。
でも、もう、送り直しても遅いわよね?
実は咲妃が鳥飼君のことを気にし始めたのは1年生の梅雨時期、という設定です。
ちょっとしたきっかけがあったのですが、それもそのうち公開できたらな、と思っています。




