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スズサキ*  作者: さより
意識
58/63

*58

一一帰り着きました?

 信号で止まったタイミングで紅実さんにラインを送ってみる。

 また焦らされっかな?

一一とっくに。

 わわ。返信来た! やべぇ! 無視されっかもっとか思ってたけど…………素っ気ねーくらいの返事なのに、すげー嬉しいとか…………。

 さらに、続きが送られてくるかと思って、信号が青になってもちょっと待ってたけど、気配すらなかった。家に帰って確認してもやっぱりきてねー。

 ま、でも、最初はこんなもんだよな。

 あんま深追いして、本当に嫌われてもたまんねーしな。

 迷惑とは言われたし…………けど、仕方ねーよな? このまんまじゃ、納得できねーし。

 とりあえず、明日は来ないでって言われたから明後日行こう。

 んで、土曜か日曜………できれば両方………毎日は………って、言われたもんな。がまんがまん。

 あと、おれも勉強しねーとだしな………あ、もしかして、そのために毎日は迷惑とか⁈ おれが勉強できなくて青葉受からなくなったら寂しいから…………わざと?

 あり得るよな? 結局ラインも教えてくれたし…………ツンデレ?

 焦らしプレイ、とかじゃなくて素直になれねーだけとか? それって、めちゃくちゃかわいくね?

 紅実さんって、実際年上だし落ち着いてるし、きりっとしててかっけーとか美人とか思ってたけど、それだけじゃねーとか………。

 さっき会ったばっかなのに、また会いたくなる。

 けど、毎日は迷惑って言ってくれた紅実さんの気持ちも考えねーとな。

 ガレージに自転車を停めたその奥に、にーちゃんの自転車が停めてある。

 …………………にーちゃんの自転車のが、早えーんじゃね?

 それに気付いて、自転車のチェーンロックのカギを確認する。

 今、6825だな?

 少しでも触るとおれが勝手に乗ったと文句を言われる。大抵そーなんだけど。

 あれって、多分最後に触った時のカギの番号が違うからとかで、バレてんじゃねーかと思うんだよな。

 前に勝手に借りた時の番号に合わせてみるけど、やっぱり開かねー。

 相変わらず用心深いというか………ちょこちょこ番号変えんだよな。

 おれに触られたくねーからってのもあるんだろーけど。

 しばらくカギの番号をガチャガチャやっているとロックがはずれる。

 0320ね。

 何の数字だよ? 4桁の忘れないでいられる数字とか、そうなくね?

 この前までは0075だったし、その前は0066とか。2桁の番号が多かった気がするのにな。

 あとはU字ロックのカギ………多分、にーちゃんの机の引き出しだと思うけど。

 部活がなくなってから帰りはおれのが早ぇーし、確認だけしとくか?

 まだリビングににーちゃんいたから、今なら大丈夫、と…………。

「何の用だよ?」

 にーちゃんの部屋のドアを開けようとしたところで本人に声をかけられる。

「げ」

「何が、げ、だ」

 やべ。今、自転車使おうとしてんのバレたら、鍵の場所も番号も変えられっかも。せっかく確認できたってのに。

「いや、あ………学校でやってた問題でわかんねーとこあったからさ………」

「どこだよ?」

 言って、部屋に入れてくれる。

 こういうとこは協力的というか……ほんと、面倒見いいんだよな。

「今日、遅かったな?」

「帰った後ちょっと遊びに行ってたしな」

「また坂上さんのこと待ち伏せしてたりしてたんじゃないだろうな?」

 バレてる?

「何でだよ?」

「俺がライン知らなかったから、直接訊きに行ったんじゃないのか?」

「いや。行ってねーし。そもそも2回あんなとこまで電車で行ったらこづかいたんねーって」

「他にも手段はあるだろ?」

「何だよ、手段って?」

 とぼけてみるけど、これぜってーバレてんな。鳥見に行くのに自転車でうろうろしてるにーちゃんからしたら、片道2時間くらいは当たり前だもんな。

 おれの質問には答えない。もしかして、おれが気づいてないかも知んないのに、あえて答えなんか教えねーか。

「前にも言ったけど、あんまりしつこくして、迷惑かけんなよ?」

「わーってるって」

 もう、迷惑とは言われたけど。毎日、ってのがダメなだけだからな。毎日じゃなければいいはず。あと、勉強さえできてれば。

「それで? どこだ?」

「あ?」

「わかんなかったんだろ? どの問題だよ?」

「あーー、どこがわかんなかったのか忘れた」

「は? そんな訳ないだろ? ちょっと持って来てみろよ」

 それから、しばらくにーちゃんにつきっきりで勉強させられるハメになる。

「本気でうち目指してんのか?」

「そりゃ、まーー………」

「坂上さんか?」

「ま、まあ。きっかけではある……………カッツンはいける頭があっても行かねーって言ってるけど…………」

 もし、これから必死に勉強して、入れる実力がついたとしてもカッツンと離れるのはまだ想像できねーんだよな………。

 どっちともって………やっぱ、無理なんかな………。

「そんなに坂上さんに執着する理由って何なんだ?」

 それは言える訳なくね?

 おれが答えないでいると、軽くため息を吐いて勝手に話し始める。

「お前が家に女子連れて来なくなったのとか、先輩にいやがらせされなくなったのとかと関係あるのか?」

 女子連れて来てるのは家だし、隠してた訳じゃねーけど…………。

「いやがらせって………カッツンにきいたのかよ?」

「いや」

「じゃ、何で?」

「いろいろきかれることはあったからな」

 それで、今さら気付く。

 にーちゃんが中学ん時、たまにアザとか作って帰って来てたのは知ってた。気まずそうに隠すから、いじめられてんの知られたくねーのかと思ってたけど………おれのことでとばっちり受けてたってことかよ?

 だから、おれが2年なってから先輩からの当たりが余計に強くなったってことか?

「な………何なんだよ⁉︎」

「何がだよ?」

 おれ、にーちゃんにかばわれてたってことかよ? しかも、気付いてもなかった。

 ムカついて、握った手が震える。

 今、おれが何で言わなかったんだと、責めてもにーちゃんは何でもなかったように流すんだ。

 くそっ! 何なんだよ? おれ、めちゃくちゃ情けねーじゃん⁉︎

 気付いてもなかったとか…………にーちゃんに、迷惑かけっぱなしじゃん。

 そして、それに気付いたのも紅実さんに会ったからだ。

「そーだよっ! 大会ん時、おれの弁当食えなくされてて……そん時にカツサンドもらって………………」 

 いたたまれなくなって、にーちゃんの部屋を出て、自分の部屋で枕を殴りつける。

「おれ、めちゃくちゃかっこ悪ぃ一一……」

 くやしくて、泣けてきた。

 最近、蒸し暑くなってきましたね。

 そろそろ夜もエアコンが必要な時期ですかね。

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