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スズサキ*  作者: さより
意識
57/63

*57

 昨日、弟に鳥飼燕を知っているかときいたら、当たり前のように「知ってるに決まってんじゃん? すっげえ、かっこいいし、気さくだし、ぜってー同じ高校行って一緒にプレイする!」とか言い出した。どうやら、弟にとっても憧れの人らしい。

 バカだけどね。

「やっぱり、モテるの?」

「当たり前じゃん? 応援とかほとんど女子の声しか聞こえないし」

「ふーーーん?」

 やっぱそうなのね? ま、あれだけのルックス持ってたら仕方なかったりもするのかもね。ムカつく。

「姉ちゃんも興味あんの?」

「別に。ちょっとクラスの子が話してたから、知ってるかな? って思っただけ」

「あ、でも結構姉ちゃんのタイプかもよ? 顔とか…………」

「興味ないって言ってるでしょ? ばーか」

 まだ話題が続くと待ち伏せされてたこととか言ってしまいそうで、自分の部屋に戻る。

 やっぱりモテるんだ。そんな奴が何で私?

 あんな子、会ってたら忘れないと思うんだけどな。

 ……………まあ、でも、明日は来ないでしょ。鳥飼君が私のライン知らないって知ったら望みなしって思って、諦めるだろうし。周りにはもっと可愛い子もたくさんいるでしょうしね。

 …………………って、思ってたのに、何でいるの?

「紅実さんも咲妃さんもこんにちは」

 勢いよく漕いできた自転車から下りて、私を見る。

 相変わらず、へらへらした顔で笑ってるけど、すごい汗でカッターシャツが体に張り付いている。

 思わず立ち止まってしまったものの、相手にしたら調子に乗るかもしれないと思って、無視してまた歩き始めると、当たり前の様にこいつも勝手に横を歩きはじめた。

「にーちゃん、紅実さんのライン知らなかったんで、やっぱり直接教えてもらおうと思って」

 言って、へらっと笑う。

 知ってるわよ。むしろ、教えた覚えもないのに、鳥飼君が私のライン知ってたらびっくりよ。

 でも、普通はそれで気付かない? からかわれたのかな? 迷惑がられてるのかな? とか。

 ひとこと何か言ってやろうと思ったけど、相手にするとつけ上がりそうで、必死にこらえる。

 相手にしない相手にしない…………。

「今日、自転車なんだねっ?」

 私が相手にしないもんだから、咲妃が気を使って話しかける。

「そうなんすよ。今月はもう電車代ないんで」

 まあ、そうよね。中学生だし、お小遣いなんてそこまでたくさんはもらえないわよね。

 それでも、会えるかどうかわかんないのに一昨日と昨日と2日も待ってて……………。

 そう思うとちょっと可哀想な気もしてきて、少しくらいなら相手してもいいかな? とか………………。

「けっこう遠いよねっ?」

「2時間くらいですかね」

 相変わらずへらっと笑いながら答えてるけど、私は思わず足を止めて振り返ってしまう。

「は?」

 咲妃もちょっと驚いた顔をしていて、立ち止まっていた。当然だ。

 合わせて立ち止まったバカがきいてくる。

「どうしました?」

 何でそんな嬉しそうな顔してんのよ?

「どうしました? じゃないわよ! そんな距離、何で自転車で来てんのよ?」

「走るより早いし、楽だから?」

「そういうことをききたいんじゃないわよっ! 何が目的でわざわざ来てんのかってことっ!」

「そんなの、紅実さんにライン教えてもらうために決まってるじゃないですか?」

 まるで当たり前のように、私の方がおかしいの? とでも思ってしまいそうなくらいの口振りだ。

「バカなの? っていうか、バカでしょ?」

 普通、そんなことのために2時間もかけてわざわざ来る?

 こんな奴見たことない!

「まーー、頭はあんまよくないですけど、体力には自信あるんで」

「いやいやいや、あんた受験生でしょ? 勉強とかしてんの?」

「最近は結構してますよ? 春から一緒に登下校したり、昼飯食ったりしましょーね?」

「は?」

「おれ、青葉受けるんで」

「えーーっ⁈」

 咲妃が私よりも先に大きな声を出す。

「それっ、鳥飼くんも知ってるっ? 鳥飼くん、なにも言ってなかったっ?」

 確かに。鳥飼君は弟と一緒の学校なんて絶対に嫌がりそうだ。

「ムリだろ? って」

 ちょっと鳥飼君の真似をして見せてるようだけど、笑えない。

「どのくらいムリってっ?」

 咲妃の慌てぶりと、こいつの言動からうちに受かりそうなほどの知能は感じない。自慢じゃないけど、それなりの学力は必要だ。

 私だってそれなりに勉強してきたから受かったんだと思っている。

「どのくらい?」

「……………偏差値とか、判定とかあるでしょ?」

「偏差値とか気にしたことないし、希望に青葉入れたこともないんですよね。でも、ぜったいムリ! ってことはないでしょ?」

「いや、あるでしょ?」

「ないですよ」

 言って、ちょっとやさしい顔で笑う。その顔が大人びた感じすらしていて、不覚にもどきっとしてしまう。

 な、なんだろ? こんな顔して言われたら、本当に無理なことなんかない、って気がしてくる。

「そ、それに、サッカーしてるんでしょ? サッカー強いとことか行かないの?」

「あ、おれのこと知ってくれてんですね?」

 そこでまた嬉しそうな顔をする。

「たまたまよ、たまたま! 別にわざわざ覚えてるとかじゃなくて………」

「わざわざじゃなくても覚えてくれてんですね? うれしいです!」

 何よ、それ? 私があんたの事意識してないのに覚えちゃうくらい興味あるとか、好きとか、ないからね⁈

「だ、だから、そういうのじゃなくて………」

「そーいうの、興味ないんすよね。楽しくやれないと意味ないし、自分が入って強くなったとか言われた方が嬉しくないですか?」

 そういう考えも、確かに………厳しすぎて、嫌になっちゃったら仕方ない…………。

「と、とにかく! 私のせいで、落ちたとか言われても困るからもう来ないで勉強してくんない?」

「あ、じゃ、紅実さんが来てくれます?」

「嫌に決まってんでしょ?」

「じゃ、ライン教えてくださいよ。わかんないとことか教えてほしいなー」

「お兄ちゃんに聴きなさいよ。私より頭いいんだから」

「おれ、紅実さんから教えてもらったほうが頭に入る気するんですけど」

 なんなの? この押しの強さというか、ちょっとは引くとか考えないの?

「あ、あたし、ここだから、紅実ちゃんばいばいっ。燕くんも帰りとか気をつけてねっ」

 咲妃の発言で、ここまで帰って来てしまったことを後悔する。

 このままだったら、うち、着いちゃうじゃない? 家知られたら、絶対来る。もう、そんな気しかしない。あきらめるでしょ? とか安易な考えが通用しないっていうのもわかったし。

 咲妃と別れて、少しして仕方なく切り出す。

「私、あんたのこと迷惑としか思えないんだけど。1年前のこととかも全然覚えてないし、悪いけど」

 こいつは、驚いた顔をして、俯く。

 ちょっと、きつく言いすぎたかな?

「覚えてないのはいいですよ。でも、迷惑とか…………」

 ち、ちょっと可哀想だったかな? せっかく私のこと好き…………とは、言われてないけど……………。

「ご、ごめん」

 いたたまれなくなって、走り出そうとするとまた手をつかまれる。

「まだ! ライン教えてもらってないです‼︎」

「は?」

「今度会ったら教えてくれるって言ったでしょ? 本当は昨日だったけど」

 あ、私、迷惑って、言ったわよね?

 戸惑っていると、自分のスマホを出しながら、きいてくる。

「スマホ持ってます?」

「あ、うん」

「じゃ、紅実さんがコード出してください。おれ、読み込むんで」

 言って、へらっと笑う。

 思わず、鞄から出してしまったスマホを見てはっとする。

「私、教えるって言ってないけど?」

「言いましたよ。今度ね? って」

「だからそれ、覚えてないから」

「……………紅実さんって、そういうのが好きなんですか?」

「何よ? そういうの、って?」

 真面目な顔で聴いてきた質問の意図が分からず、聞き返す。

「焦らしプレイ、みたいな」

 ばっ………。

「そんなわけないでしょ⁉︎ バカじゃないのっ?」

 真面目な顔してるから、何考えてるのかと思ったら………こいつ、真剣に悩むとか、考えるとか、したことあんの?

「まーー、紅実さんならそれでもいいですけど。また、明日来るし」

「何言ってんのよ! もうおこづかいないんでしょ? また自転車で来るつもり?」

「そりゃ、まー……さすがに走ってだと紅実さん帰っちゃうでしょ?」

「そうじゃなくて! また2時間もかけてくるのか? ってこと!」

 コイツと話してると血管切れそう!

「明日はもうちょっと早く来れると思いますよ。今日は初めてだったからちょっと道まちがったし…………」

「明日来ても、教えないわよ⁈」

「じゃ、その次も来ます」

「それでも教えないから!」

「……………やっぱ、好きなんですね? 焦らしプレイ」

「そんなわけないでしょ? ばっ………!」

「冗談ですよ」

 また、へらっと笑って私のスマホを持った手を握る。

 そして、今までみたいなへらっとした顔じゃなく、真剣な顔を真っ直ぐに向けて、言う。

「おれ、自分で納得できるまでは来るんで」

 ちょっとだけ間を置いて、またへらっと笑う。

「んじゃ。多分、おれ帰るまで紅実さんも帰んないと思うから先帰りますけど、気を付けてくださいね? 絶対ですよ?」

 言って、自転車に跨がる。

 軽快に漕ぎ始めようとしたその背中を見て、思わず出しっぱなしになっていたカッターシャツの裾を掴む。

「っ………な……何すか?」

 多分、思ってもなかった反応で、驚いたのか今までみたいなへらっとした笑顔はない。

「ほ、ほら…………」

「え?」

 びっくりしてるわよね?

 私だって、何でこんなことしたのかわかんない。

「あ、あんたが読み込むって言ったんでしょ?」

 自分のラインのQRコードの画面を出して見せる。恥ずかしくて、目は合わせられない。

 どんな顔してるんだろ?

「あ……は、はい!」

 慌てて、自分のスマホをポケットから取り出して読み込ませようとする。

「ま、毎日来られたら迷惑だから、仕方なくよ? だから、明日は来ないでよ? あと、あんまりしつこかったり、面倒臭くなったらすぐブロックするからね?」

「気を付けます! けど、紅実さんのペースわかんないんで、それまでは大目に見てもらえると嬉しいです!」

「そんなの知らないわよ! 登録終わったんならさっさと帰りなさいよね? 心配するでしょ?」

「はい! ありがとうございます‼︎」

 言って、スマホをズボンのポケットにしまうと、手を振って帰って行く。

 何度か振り返りながら。

 仕方ない、わよね。毎日来られるのが迷惑なのは本当だし。これで来なくなるなら簡単なことじゃない。ラインだって、面倒になったらブロックしちゃえばいいんだし。むしろ、なんで最初からこうしなかったんだろ?

 そうよ。だって、わざわざ自転車で来るとか思う訳ないじゃない? それに、本当に明日も来そうだったし…………受験生にそんな時間使わせるわけにいかないし、落ちて私のせいにされても困るし…………。

 それだけなんだからね!

 Switch2が発売されたそうですが、Switch2のソフトがずらっと並ぶ中、本体が手に入らないという………。

 私はあまりゲームをしないのですが、ソフトが売り切れないよう先に買っておく人向けなんですかね。

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