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今回は雀と咲妃の視点から、離れます。すみません。
「今日も家いんの?」
悠仁が土曜日の昼、部活から帰って来る。
「悪い?」
「やっぱ、咲妃先輩に彼氏できてから家にいること多くなったな、と思って」
「そんなことないでしょ? ただ、咲妃の遊びに来る頻度が減ったくらいで、私が家にいるのは変わんないわよ」
「あーーーでも、一緒に出掛けること減ってるから、やっぱ家にいるのは増えてんじゃない? ほら、姉ちゃん1人だとあんま出かけないじゃん? やっぱ寂しいんだろ?」
「そんなことないわよ!」
ちょっとイラッとして、リビングから出る。
その後で、軽くため息を吐く。
咲妃って結構べったりだからたまにウザいな、とは思ってたし。彼氏ができたのだって喜ばしいことじゃない?
ただ、頼りないとか、顔が情けないとか、体がペラっとしてるとか、ウザいとか、草食系に見えてヘンタイとか………………心配にはなるけど。
でもまあ、咲妃も我儘だし、甘ったれてるけど、鳥飼君は面倒見だけはよさそうだから、丁度いいのかもしれない。
そもそも今までがべったりしすぎてたのよ。適度な距離は必要だと思ってたし。お互いによかったのよ。
だから、絶対! 間違いなく! 本当に! 寂しいとかじゃないのよ‼︎
………………ただ、ちょっとつまんないなーー、と思うことがあるだけで。
それも慣れてきたし、大したことないんだから。
今だって、部活のときにはよく喋るし、登下校もお昼もほとんど一緒だし、何かあれば相談されたりもするし………………結構、一緒にいること多いわよね。
本当に寂しいとかじゃないんだから。たまに休みの日に暇だなー、と思っても遊ぶ相手がいない、ってことがちょっと増えたくらいよ。
一一明日、午前中なら大丈夫だよ☆彡
chitoseさんのお店行く?
ほら、ラインだって来るし。
一一大丈夫。何時くらいに帰ればいいの?
夏休みの間にもう一回行ってみるつもりだったけど、課外やら何やらで、行けなかったのよね。
一一鳥飼くんとお昼食べた後勉強しよう、ってなってるの。
紅実ちゃんもいっしょに勉強する?
…………………あ、そう。
咲妃も誘ってくれるけど、何となく気使っちゃうのよね。
まあ、でも、鳥飼君来るから行かない、って言うのも咲妃が気にするから、半分くらい付き合うことにする。
一一じゃ、お昼は一緒に食べてもいい?
一一いいよ(^▽^)/ 鳥飼くんにも言っとくね☆彡
無邪気だこと。
けど、午前中だけか一一。昼からどうしようかな? せっかくあそこまで行くならちょっとブラブラして帰ろうかな。
「紅実ちゃん、お願いっ!」
真剣な表情で咲妃にお願いされる。
「嫌よ。何で私があんたの彼氏のためにそんなことしなきゃなんないのよ?」
「だって、あたしじゃ逆効果だもんっ。紅実ちゃんなら勝ってるからっ」
いやいや、そんなこと言われても。
そもそも、あんたの彼氏がギャルに絡まれてて、言い返せずにおろおろしてるのを、何で私が助けに行かなきゃなんないんだか。
「お願いっ‼︎」
ぎゅっと目つぶって、顔の前で両手を合わせてお願いされる。
確かに、咲妃が出て行ったとしても150にも満たない身長と童顔では妹と思われればいい方で、相手によっては彼氏がロリコンと思われさらに絡まれるネタを提供しちゃうことになるものね。
私は仕方なくため息をついて、覚悟を決める。
「今度奢ってね?」
「うん。ありがとっ!」
ほっとした、嬉しそうな笑顔を向けられる。こういうふうに頼られるのに悪い気はしない。
「お待たせ、私のツレに何か用?」
そんなに、ブサイクな人たちではないけれど、咲妃が私の方が勝ってるって言うから、そのつもりで対応する。
そういう雰囲気さえ出せれば、こういう相手は大したことない。
咲妃の彼氏の鳥飼君は、何がなんだかよくわかってない様子だ。当然だ。咲妃はいないし、その友達がこういうふうに登場するとは思ってなかっただろうから。
それにしても、情けない顔。もともと、眉も目も垂れてるからそう見えるのに。咲妃の彼氏なんだったらもっとしっかりしてほしい。
「何、あんた? チュンチュンのカノジョなワケ?」
チュンチュンとか……………笑える。けど、ここは我慢よ。
「だったら、何?」
「オトコのシュミ悪いんじゃない?」
「あなた達にわからないだけでしょ?」
相手が怯んで、もうあと何回かのやり取りで去って行くかな? と予想していたところで、私の後ろから男の子が現れて鳥飼君の胸倉をつかむ。
「てめぇっ‼︎ 咲妃さんと付き合ってたんじゃねぇのかよ⁉︎ 二股とかしていいと思ってんのかよ⁉︎ オモテ出ろよ‼︎」
は? いや、誰、この子?
「燕くんっ! 違うからっ‼︎ あたしが頼んだのっ‼︎」
咲妃が出てくる。燕? え?
みんながその場で、それぞれ頭に「?」を飛ばしている。
店内がざわついてきて、人が集まって来てしまったので、鳥飼君に絡んでいたギャルは散り、私達もその場から離れることにした。
咲妃が事情を話し、鳥飼君達もとりあえず納得する。
つまり、この燕って子は鳥飼君の弟で、咲妃が鳥飼君の彼女って知ってたから、私も彼女ってきいて出てきたワケね。
まさか、弟まで出てくるとは思わないか。
聴いてはいたけど、本当に似てないね。この兄弟。弟がモテる、というのはわかるし、二股かける奴は許せないという誠実さ? みたいなのも好感が持てる。
………………対処の仕方はどうかと思うけど。
「私、帰るね」
「あ、うん。ほんとにごめんねっ。ありがとっ」
「僕も、ごめん。ありがとう」
「別にいいわよ。じゃね」
「うんっ。ばいばいっ。またねっ」
私が、咲妃にご飯までと言ったんだから、これでいい。
「おれも帰るわ。咲妃さん、にーちゃんよろしくです」
「あ、うん」
「気を付けろよ?」
言って、弟は2人に手を振る。そして、私の後について来て2人から見えない場所まで来たところで、何故か私の手首をつかんでくる。
勝手に触らないでほしい。
振り払おうとするけど、結構しっかりとつかまれていて、振り払えない。
あからさまに不機嫌な口調できく。
「何?」
「あの、名前、教えてもらえませんか? あと、ラインも」
「は?」
いや、何、この子? それに、この顔………………。
鳥飼君の弟なのはわかってるけど、わけわかんない。
「覚えてないですか? 1年前、サッカーの大会の時、おれにカツサンドくれたの」
サッカーの大会? カツサンド?
確かに、弟もサッカーをやっていて、いくつかの大会を観に行ったことはあるけど、こんな子記憶がない。
だいたい、そんなに興味ないから覚えてないし。
「今度会ったら、教えてくれるって」
私、そんな約束した?
「悪いけど、まったく覚えてないんだけど?」
「だったら、それ、カンケーなくていいんで、教えてもらえませんか?」
こいつ、結構グイグイくるな。鳥飼君とこういうとこも似てないのね。
「名前ぐらい、鳥飼君に聴いたら?」
「本人から、聴きたい、です」
うっ。こういうの、何かちょっと……くるな。よく見たら………いや、よく見なくてもそこそこ………いや、まあまあ? と言うか、結構好きな顔だったりする。
それに、高身長でサッカー部だったってこともあるんだろうけど、しっかり鍛えられてそうなのに、太くはなくて………………もーーー! 何? 咲妃ってば、サッカーやってるからかっこよく見えるんじゃない? みたいなこと言ってたけど、これだけ揃ってたらサッカーやってなくてもモテるでしょ! 咲妃の言う格好いいは信用できないけど、普通も信用できない‼︎
いや、でも、雰囲気に流されちゃダメだ。
「私はあんたの名前、咲妃から聴いただけだけど?」
一瞬怯んだ隙に、腕を振り払い、逃げる。
そして、追いかけられる。
いや、ムリでしょ。私もそんなに遅くはないと思うけど、サッカー部の脚力振り払えるほどの自信はない。
トイレ、トイレならさすがに追いかけてこないわよね?
今いる場所から一番近い女子トイレを目指して逃げる。
けど、無理だった。そんなにハンデがあったわけでもないし、こんな人混みでそんなに速くは走れない。
手をつかまれて、引き寄せられる。
「おれ、鳥飼燕って言います。名前だけでいいんで。とりあえず。ラインは次の時で」
そんな見られたら、困る。
「…………………坂上」
「下は?」
まだ、目を逸らしてはくれない。何なのよ? 私のが堪えらんないじゃない!
真っ直ぐな視線に負けて、目を逸らす。負けた気がした。
「紅実」
「紅実さん?」
「もういいでしょ⁉︎ 離してよ?」
「紅実さん!」
「何よ?」
もう、いい加減にして欲しい。視線を戻して顔を見上げると、子どもが欲しかった玩具を買ってもらった時みたいに嬉しそうな顔をして笑ってた。
………………………なんなのよっ! 何コイツ! 何コイツ! バカじゃないの?
名前教えたくらいでそんな顔すんじゃないわよ!
「紅実さん、この後予定あるんすか?」
「な、何でそんなこと聴くのよ?」
「もし、ヒマならもうちょっと構ってもらえないかなーー? とか」
「あ、あるわけないでしょ?」
「そっか。じゃ、次はライン教えてくださいね?」
「次なんか、あるわけないでしょ?」
「ありますよ。だって、今日会えた」
言って、また嬉しそうに、でもちょっと切ない感じで笑う。
このまま置いて帰っていいのかな? って思わせるくらいには。
それでも、それを振り切って駅へ向かう。
……………………私まだ、しばらくは恋愛とかいいんだけどな。
ここでメインを切り替えるのはどうかと思ったのですが、1人称の限界というか………私自身の創作能力の未熟さの所為とは思っていますが…………。そのうちもう少しくらいは上達していきたいと思いますので、広い心で読んでいただければ、と思います。すみません。




