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スズサキ*  作者: さより
意識
49/63

*49

 坂上さんの家からの帰りに、りんごと話してて思った。

 今まで僕みたいなのに好きとか言われても嬉しくないよな? とか、触られても気持ち悪いだけ、とか思ってて、なるべく抑えてきたけど、海原さんはあんなに僕が嬉しくなるようなことを言ってくれたり、してくれたりするのに、全然返せてない。

 海原さんからは、僕がまだ付き合ってていいんだと、言ってくれてるような気になる。

 それでも、海原さんとは釣り合ってなくて、周りの視線とか気になって不安にはなるけど。

 もしかしたら、少しくらいなら僕がしたくなることとか、思わず言ってしまいそうになることとか、そのまま出してしまっても大丈夫なのかな? そういうことで、少しくらいは嬉しいとか思ってくれるのかな? とか…………………自信がないから、なかなかできないけど。

 本当は手を繋ぐのだって、さらっと、自然に、とか思うけど、以前実際に繋いだら手汗が止まらなくて気持ち悪がられた。

「こっちなら、そんなに気持ち悪くないと思うから」

 嫌われるのは嫌だから、このくらいならいいかな? と思ったけど……………………微妙だよな?

 柄にもないことをしたのもあって、物凄く恥ずかしくなる。

 しかも、海原さんの反応がこの前手を繋いだときよりも困惑している感じがする。これなら手汗が気持ち悪いとか思われたほうがマシだったかも、と後悔した。

 そんなこともあって、近くに子供の気配を感じて、すぐに離す。

「咲妃ちゃんに触りたくない訳じゃないから」

 ちょっとくらいは自分の気持ちを伝えるとか…………名前を呼んでみるとか………。

 あんまりあからさまにやって、引かれるのは嫌だから、さりげなく。いつの間にか下の名前で呼ばれるようになってた、ってなるくらいで…………………多分、気付いてないよな?

「ご、ごめんねっ? あたしっ、わがままばっかりでっ。鳥飼くんもっ、わがまま言ってもいいからねっ?」

「僕は、いいよ」

 本当は、あんまりそういうことは言ってほしくない。せっかく我慢しているのに、いいのかな? とか思ってしまう。

 頭なでたいとか、ほっぺたさわりたいとか…………。

 いくらなんでも、それは嫌だよな? 手汗とかで海原さんを汚してしまうとか思うと、尚更できない。

 でも、言わなかったら、海原さんはちょっとしゅん、となった。自分がわがままばっかりで申し訳ないから、僕にも言って欲しいと思ってるんだろうな。

 何か、軽いお願い、とか? 触らせて欲しいとかは、ダメだ。絶対!

 何か言って欲しいこと? 教えて欲しいこととか………………?

 あ…………以前から訊きたくて………むしろ、付き合い始めた頃には絶対訊いておくべきだったのに、まだ僕から訊いてもいいのかとか、すぐに別れるかもしれないからとか迷っていて、タイミングを失ってしまっていたあのこととか……………?

「訊いてもいいかな……………?」

「なにっ?」

 海原さんがちょっと、嬉しそうな顔になる。可愛い。

「…………今更、なんだけど」

 本当に、今更だよな? 本来なら僕のこと話した時に海原さんのも訊いておくのがベストだったと思うのに。

 海原さんのことを知るのは嬉しいけど、怖くもある。

 もし別れた後、知ったことが多くなるとそれに関連することが多くなって、思い出してしまう気がするから。

 もうすでにオオルリとエナガからは海原さんを思い出さないことはないし。スコーンとかナッツバーなんかも……………。

 それでも、知りたいという欲求に勝てなくなる。

「い、いいよっ? なにっ?」

 海原さんが身構える。

「その………海原さんの誕生日って、いつかな? とか…………」

 拍子抜けしたように、きょとっした顔をする。

「あたしの、誕生日っ? そういえばそういう話してなかったねっ? あたしは鳥飼くんの知ってたから気にしてなかったけどっ」

「う、うん。ごめん。もっと早くから知りたかったんだけど……………」

 もう過ぎてたら、謝って、遅くなったけどって、プレゼントとか準備しよう…………本当に、今更だけど。

「あたしね、3月20日っ」

「え?」

「3月20日っ」

「3月20日?」

「うんっ。もしかしてだれかといっしょだったっ?」

「あ、いや……………まだ、過ぎてなくてよかったなって…………」

 海原さんは知らないよな? まだ、知らない人も多いみたいだし…………………ただの偶然だし、そういうことだってあるよな? 他にも同じ誕生日の人とか、いくらでもいるだろうし…………。

「確かにっ! その日は学校ある日だから会えるねっ? お昼くらい一緒に食べたいけどできるかなっ? 部活なかったらちょっと帰りに寄り道とか………いっそ休んじゃうとか………?」

「そんなことしなくていいよ。その時は僕待ってるし」

 嬉しそうだ。可愛い。でも、僕だって嬉しい。

「忘れない?」

 急に不安そうな顔になって、僕の顔を覗いてくる。

「忘れる訳ないよ」

 忘れられる訳がない。海原さんのことだし。それに、3月20日って世界すずめの日だ。

 別に僕の日って訳じゃないし、特別な何かを感じたりとかした訳じゃ……………………あるけど…………。

「よかったっ」

 安心したようにへへっと笑う。

 絶対、一生忘れられない日になるんだ。もし、僕が海原さんと二度と会うことがない日が訪れていたとしても。


     *♡*♡*♡*


「大丈夫?」

「……………あ、うん。大丈夫だよ。ちょっと眠いけど」

「眠い?」

 授業中も何となく反応が鈍いような感じだったけど…………鳥飼くんが、眠いっ? すっごいめずらしくないっ⁈

「あ、でも後で顔洗ってくるし、もう掃除とホームルームだけだし」

 顔洗うのっ? どこでっ? 見に行きたいっ!

 横からタオルとか渡したいっ! それで顔とか髪とか濡れたままこっち向いてほしいっ! やだっ! ぜったいかっこいいっ! っていうか、水も滴るいい男、みたいなっ? ちょっと色っぽかったりもしたりして一一一一っ‼︎⁉︎

 とか、思ってたけど、鳥飼くん今日お休みだったっ。

 昨日ぼーっとしてる感じだったのも体調悪かったんだねっ。ごめんねっ? 彼女なのに気付いてあげられてなくってっ。

 大丈夫なのかなっ?

 先生は風邪って言ってたけど、もしかしてインフルエンザとかっ?

 しばらく休んじゃうのかなっ?

 もしインフルエンザとかだったら、お見舞いとかも行かないほうがいいよねっ? ラインもしないほうがいいのかなっ? 明日、デートの約束してたのにっ!

「心配なら、ラインしてみたらいいのに」

 七尾さんがにやにやしながら話しかけてくる。

「で、でもっ、寝てるかもしれないしっ………」

「でも、寂しがってるかもよ? ほら、体調悪いとそういう気分になんない?」

「そ、それは、そうかもだけど………」

 でもっ、ラインのせいで休めなくなっちゃったら、体調戻るの遅くなってずっと会えなくなっちゃう。それに、鳥飼くんが辛いのは、やだなって思う。

 ホームルームの終わりくらいになって、鳥飼くんからラインがくる。

一一ごめん。まだ熱下がらなくて。明日行けないかも。

 か、かもって。熱下がっても、今の段階で熱あるんだったらお家でゆっくりしてたほうがいいよねっ? あたしとのこと気にしてくれてるっ?

 あたしは会いたくって仕方ないけど、鳥飼くんも辛いんだから気にしないでゆっくり休んでっ!

一一大丈夫だよ。

  また今度遊びに行こうねっ♡

 で、エナちゃんのスタンプっ!

 これにしよっ。

 ゆっくり休んでね。のスタンプをを送信っ。

 少しして、スタンプ…………?

 鳥飼くん、普段スタンプとか使わないのにっ。

 しかも、もともと入ってる女の子がハート持ってるスタンプ。意外すぎるっ。

 どうしたんだろ? 熱でちょっといつもと違う感じなのかな?

一一ごめん。間違えた。

  ありがとう。

一一うん。

 またね、のスタンプを送る。

「どうしたの? 鳥飼君から?」

 帰りのホームルームが終わっても、紅実ちゃんのところに行かずに、ラインしてるあたしをめずらしそうにまた七尾さんが話しかけてくる。

「うん。普段スタンプとか使わないのに、送ってきたからびっくりしちゃった」

「どんなの?」

 ちらっと、スタンプだけ見せて答える。

「こんなの。間違えちゃったんだって。やっぱり体調悪くていつもよりぼーっとしちゃってるのかなっ?」

 てれ笑いしてると、七尾さんがにやってしながら言う。

「会いたいって、入れると候補に上がってくるよね? そのスタンプ」

「え?」

 あ、会いたい? え? 鳥飼くん、あたしに会いたいって思ってくれてたってことっ? それならあたし、行ってもいいっ?

「やっぱり、お見舞い行ってくればいいのに。どうせ、明日会う約束してたんだったら暇なんでしょ?」

「そ、それはっ、そうだけどっ! でもっ、行ったら休めなくなっちゃうかな一一? とか…………」

 だって、ぜったい気使わせちゃうよねっ?

 いっつもやさしいしっ。あたしはにぶいから、すっごい後でしか気づかなかったり、ずっと気づかなかったりするし…………。

「短時間で切り上げたらいいんじゃない? 気になるんでしょ?」

「う一一一一っ」

 でも、帰りたくなくなっちゃいそうだし、それで無理させちゃって、月曜日もお休みとかなったらいやだしっ!

 迷ってるところに七尾さんが小声で囁いてくる。

「鳥飼君って、寝る時はパジャマ派? Tシャツ短パン派? それとも着ない派?」

「着ない派っ⁈」

 思わずおっきい声を出してしまって、慌てて口を押さえる。

「そ、そんなっ…………?」

 やだやだっ! だめだってばっ! そんなこと想像したりとかしたらっ!

「まー、風邪って言ったら着てないってことはないと思うけど、そういう普段見れないとこも、見れるんじゃない?」

 そ、そそそんな不純な動機で行けないよーーーっ!

「…………………もしかして、着てないの想像した?」

「ちがうもんちがうもんっ! そんなこと考えてないもんっ!」

 ほんとは、ちょっと想像しちゃったけどっ! でも、ほんとにちょっとだからねっ? 鳥飼くんっ、ごめんねっ?

「顔、赤くなってない?」

「ちがうもんちがうもんっ!」

 鳥飼くん体調悪いんだからっ! そんなの、不純すぎっ!

「海原さん、やらしっ」

「だからちがうってばぁ一一一一っ!」

 もうっ! 七尾さんってばおもしろがってるしっ! ばかばかばかばかばかぁ一一一一一っ!

 しかも、七尾さんと話長くなっちゃったせいで紅実ちゃんにおいてかれちゃったしっ!

 1人で被服室に向かう途中で落ち着く。

 でも、鳥飼くんにきいたら断られそうなんだよね。移るからとか、遠いからとか………。

 でも、七尾さんが言ってたみたいに、会いたいって送ろうとしてくれてたんだったら、鳥飼くんもちょっとは会いたいって思ってくれてるってことなのかなっ?

 …………………都合よく考えすぎだよねっ?

 風邪とか体調の悪い時って、薬飲んでなくてもめっちゃ寝ちゃいません?

 職場とかでは気を張ってるからか、そこまでないのですが、家に帰ってだるいからと横になっていると、眠いわけじゃなかったはずなのに、気がつくと寝ていたりとか。

 もしかして意識を失うっていうのはこういう………?

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