*46
「ごめんな? ちゃんと言おと思ってたんだけど、言い出せなくて………俺、夏休み前からユズと付き合ってて………」
「あ、うん。何となく気付いてたし……よかったね」
名前で呼んでたとのとか、一緒に帰ってるのとか知ってたし、もし付き合ってなくても時間の問題だとは思ってた。それでも、ほっとした気分だった。
「……………鳥飼って、本当いい奴だよな? 鳥飼もユズのこと、好きなのにさ?」
「……………………は?」
どういう意味………………?
「本当は結構前から見てたの知ってたんだよな。最初、何見てんのかな? とか思ってて………ユズのこと見てたんだろ?」
「み、見てないけど?」
「いいって。嘘つかなくて」
いや、本当なんだけど………………。
「前に、違うって言ったと思うけど………?」
「うん。俺に気遣って、だろ?」
……………………物凄い誤解をされてる気がする。
「気遣ったりしてないって。本当に…………」
「それから、俺も気になって見るようになってさ………俺のが後から好きになったのに…………」
どうしたらいいんだろう? 本当に違うのに信用されてない。
こんな風だと、僕が他に好きな子いるから、とか言っても信用されないよな? また、気遣って言ってくれてるとか……………例えば付き合ってるって事なら……………?
思わず、海原さんの顔を見るとちょっと困った顔でこっちを向いていた。
…………………だからって、何か通じるとかそんな事はないんだけども。
「そ、そろそろみんなのとこ行くっ?」
海原さんが困った顔で笑いながら言う。
海原さんも七尾さんから何か言われてたのかな? 僕と一緒にいたから。
「うん。僕、手嶋君に電話してみるけど、木村君達はどうする?」
「あ、じゃ、ちょっと一緒に行こうかな?」
ちょっと元気のない感じで答える。
「そうだね」
七尾さんも同意して、手嶋君に連絡を入れ待ち合わせ場所を決める。
「そういえば、鳥飼君って好きな子とかいるの?」
七尾さんが、にこにこしながら訊いてくる。
……………何でこんな事訊いてくるんだろう? 海原さんの事とか言える訳ないのに。
「いないよ」
「そっかー。じゃ、どんな子がタイプ?」
「ど、どんな?」
海原さんもこっちの話は聞こえてるみたいで、心配そうな顔をしている。
夏休み入る前くらいから、七尾さんってよく話しかけてくるよな? 海原さんから何か聴いてたりするのかな?
「ユズ、鳥飼困ってるって」
木村君が助け舟を出してくれるけど………これ、僕が七尾さんの事好きだと思ってて気遣ってくれてるんだよな? 多分だけど。
「えーー? じゃ、海原さんは?」
七尾さんからのこういう質問にも普通に答えれば、何とも思ってないってわかるよな?
「か、可愛い………と、思うけど?」
普通だよな? このくらい。一般的な意見、だよな?
でも、だめだ。顔が熱い。バレてないか?
「海原さん、鳥飼君が可愛いって」
「あ、う、うんっ。あ、ありがとうっ! うれしい………な………? と、鳥飼くんも………か、かっこいい、よね?」
海原さんも顔があかい。緊張してるのわかるし、僕に対しても気遣ってくれてるとことか…………………可愛い。
いや、そうじゃなくて、どうするんだよ?
木村君は僕が七尾さんの事好きだと思ってるし、七尾さんも多分海原さんが僕の事好きとか勘違い………ではないと思うけど、そう思われてるよな?
海原さんに迷惑かけたくないのに…………。
「あ、鳥飼先輩!」
「福田君……………」
燕の友達にしては勉強もできて、真面目で常識のあるいい子だとは思うけど…………できれば声を掛けて欲しくなかった。
「こんばんは。つっくん見かけなかったですか? 一緒に来てたんですけど、消えちゃって」
何でこう、次から次へと…………嫌、知ってたけど! 家から結構近いし、大きめの花火大会だし…………大抵次の日はみんな花火大会に行った話なんかしてるし………誰と会ったとかも………でも、これだけ人いる中で何で僕? しかも、気付いても知らない振りしてくれていいのに、わざわざ声掛けてくれるとか…………友達の兄とか、どうでもよくないか?
福田君の他にも数人の男子と女子が一緒にいる。多分、同じ部活かクラスの子達なんだろうけど………後ろで僕が燕の兄だということでボソボソと何か言われているのがわかる。
「さっき、あっちの方で見たよ。もういないと思うけど」
「誰かと一緒でした?」
「いや? 1人だったけど?」
「あ、そうなんですね」
「他にも一緒の人いたの?」
「いえ。何でもないです」
福田君は顔の前で手を振り、笑って誤魔化す。
「あ、彼女さんですか?」
「え?」
僕の隣にいた海原さんを見ながら訊く。
「鳥飼先輩の。つっくんから聴いてて………」
木村君も七尾さんもいるのに。
「違うから!」
慌てて、福田君の言葉を遮る。けど………。
「でも、ちっこくてちょっとロリっぽいって言ってたからそうかと思ったんですけど、違いました?」
何考えてんだよ、アイツは⁈ 他所で勝手に人の事べらべら喋ってんじゃねえよ!
しかも、海原さんはそういうこと言われるの気にしてるのに!
「え? 何? 鳥飼って、そうなの? え? 七尾の事は?」
「鳥飼くんって、七尾さんのことすきなのっ?」
海原さんが心配そうな顔で見上げてくる。
「だから違うって! そんな海原さんに申し訳ない………事、は、しない、から…………」
思わず、肯定したみたいになった状態に気付いて、口を抑える。
だって、仕方なくないか? 誤解されて、海原さんに嫌われたりとかしたら………それでなくても、僕みたいなのと付き合ってくれてるのに……………。
「なーーんだ。もう付き合ってたんだ? もしかして、学校でも仲良くしだしたのって、付き合い始めたから? いつから付き合ってたの? 鳥飼君から言ったの?」
七尾さんからの質問には熱くなった顔を隠して、黙ることしかできなかった。
完全にばれたよな?
大きなため息が出た。
*♡*♡*♡*
「もしかして1年の時から見てたと思ったけど、ユズといる海原見てたって事?」
「う……まあ、そう……なのかも…………」
はずかしそうにもごもごと答える鳥飼くんの前で、この前言ってくれたことって本当だったんだ? と実感して、余計うれしかった。
顔熱くなっちゃうっ。
だって、ぜったい気付いてももらえてないと思ってたしっ! そんな前からとか………あたし、変なとこ見られてないかなっ?
「そんな前から好きだったんだ?」
「………で、でも、自覚したのは結構最近というか…………」
七尾さんがにやにやしながら、今度はあたしに言ってくる。
「早く言ってくれたらよかったのに」
小声で、鳥飼くんたちには聞こえないように七尾さんに答える。
「だ、だって、七尾さん鳥飼くんのこといろいろ言ってたし………」
「確かに今でもキモいとか思う時はあるけど、前ほどじゃないし」
七尾さんも、あたしに合わせて小声で答えてくれる。
「多分ね、髪じゃない? もっと短くすればいいのに。鬱陶しくない?」
お父さんは短かったけど………鳥飼くんも短くしたらあんな感じなのかな?
あ、でもっ!
「この前ねっ、家に来てくれたときはおでこ出してたよっ」
「どうだった?」
「か、かっこよかったっ!」
「へえ? かっこよかったんだ?」
「うんっ! なんかねっ、きらきらしてたっ!」
「えーー? 想像できない。写真とか撮ってないの?」
「あ、うん………いやって言われて…………」
「もしかして一緒に写真撮ったりしないの? プリとかも?」
「そういう場所には行かないし、写真とかすきじゃないみたい………」
ほんとは、写真欲しいけどっ!
「そっかぁ。でも、海原さんのは欲しいかもよ?」
「え? え? え?」
あたしが、よくわからずにわたわたしてると、花火会場付近でみんなと合流する。
「七尾浴衣じゃん? 似合ってる。木村と来てたんだ?」
「うん。せっかくだから花火あがるまでちょっと時間あるし、写真撮ろーー」
「いいじゃん。撮ろー撮ろー!」
そんな感じで、みんなで写真を撮ることになる。
「僕撮るよ」
言って、鳥飼くんが離れて行こうとする。
やっぱりぃ〜〜っ!
だよねっ? 鳥飼くんってそういうこと率先してやってくれようとするもんねっ?
写真写りたくないのもあるのかもだけどっ!
あたしが、ちょっと残念そうにしてると、七尾さんが満面の笑みで提案する。
「ありがとう。鳥飼君ならセルフで大丈夫そうだもんね? 手長いし」
「え?」
「あ、なるほどね。それならみんな入るしいいじゃん」
手嶋くんが賛成する。
「いや、僕そういうつもりじゃ………」
鳥飼くんは戸惑ってるけど、これだと断れないで一緒に撮る流れだっ!
七尾さん、すごいっ!
「ほら、海原さん鳥飼君の近くに行っちゃいなよ」
「う、うんっ。ありがとっ」
七尾さんに押されつつ、鳥飼くんの近くに行って、わちゃわちゃとしながらそれとなく近くにおさまる。
撮ったあと、エアドリで写真を送ってもらって、自分のスマホで確認すると、鳥飼くんの横にあたしがいる。
たぶん昼間走ったりしてるし、汗で顔とかぐちゃぐちゃなのが残念だけど、いいっ! 鳥飼くんが写ってる写真ってだけで、うれしすぎなのに、あたしもいっしょっ! みんないっしょっ!
うわーー、宝物だぁ。
「にやにやしすぎじゃない?」
紅実ちゃんこそにやにやしてるっ!
「い、いいじゃんっ。初めていっしょに撮った写真なんだしっ」
「そっか。よかったね? 2人の時も何かあったんじゃない?」
「う、うんっ。また、今度話きいてくれるっ?」
「いいよ。明日?」
「うんっ。でねっ? 相談したいこともあるのっ」
「何よ?」
「明日ねっ、明日っ」
*♠︎*♠︎*♠︎*
家に帰って、寝る準備をすませてベッドに入ったあと、スマホを確認する。
海原さんが、僕の隣に写ってる…………。
ちょっと恥ずかしそうな顔をして、顔の近くでピースサインをしている。可愛い。
普段、正面からちゃんと顔見る事とかなかなかないもんな。普通にしてたら頭くらいしか見れないし。
海原さんって顔小っさい…………というか、いろいろ小さいのか。
手も…………。
繋いだことを思い出して、顔が熱くなる。
手、繋いだんだよな?
繋いだ方の手を見て、感触を思い出す。
小っさくて、柔らかかった。それに、熱いくらいの体温……………。
多分、かき氷屋のおじさんがあんなこと言わなかったら繋いでなかったよな? 多分、もう繋ぐことないだろうけど。
いや、でも、付き合ってたらまた繋ぐこともあるのかな? 気持ち悪いとは思われたくないけど…………。
普段からも掻きやすいけど………スマホが操作しにくい時とかあるし……けど、海原さんと手繋ぐとか考えただけでも…………。
実際に手が少し汗ばんでくる。
……………こんなだから、落とし物拾ってあげようとするだけで触らないで、とか言われるのかもしれないな。
ベッドから出て、手を洗いに行こうとすると、帰って来たばかりの燕と出くわす。
「今帰って来たのか?」
「まあね」
「遅かったな?」
「カッツン達とはぐれて探してたんだよ」
「1人でか?」
「そう」
しれっと答えて部屋に一度戻って荷物を下ろしてから、すぐに風呂に行く。
何か隠してるのばればれなんだよな。
あいつが逸れるとかいうのが、そもそもめずらしい。いい加減だけど、視野は広いから逸れたように見えても大抵は目の端に写ってる。
だから、都合の悪いことがあって離れても、食べ物の話なんかをしているとすぐに戻って来て自分の食べたい物はすかさず食べに来る。
そんな奴が単純に逸れたとか、信じられるはずがない。
何となく機嫌も悪いし、何かあった?
月曜日の課外授業の後、海原さんが駅に用事があるから一緒に帰りたいという事になって、学校近くの公園で待ち合わせる。
「お礼」
「燕に?」
海原さんから小さな包みを渡される。
「うんっ。鳥飼くんとはぐれてたとき、いっしょに待っててくれたから」
「いいよ。そのくらいで」
海原さんは優しいけど、そこまでしてもらう必要はない。
それに多分これも海原さんの手作りで、あいつが食べるのもムカつく。
「うんっ。でも、あたしもさみしくなかったしっ」
「あ、うん…………」
僕が離れたから……仕方ないけど………それで、燕と仲良くなられても嫌だ。
手繋いどけば、あんな事はなかったのかもしれないけど………。
「あとね、こっちは鳥飼くんにっ」
言って、僕にも小さな包みを渡される。
「僕?」
「いっぱい迷惑かけちゃったしっ、あたしのことでやな思いもさせちゃったし、言っちゃったから………」
「嫌な思い?」
「パパとか………ぬめってしてるとか………ごめんね?」
申し訳なさそうに、僕の顔を見てくる。
「いや、いいよ。海原さんの方が、嫌だったんじゃない? 僕といたから………」
「ちがうのっ! 紅実ちゃんといっしょでも友だちには見られないしっ、いっしょに歩いてたら、たぶんけっこうあると思う」
そういうの、嫌とか言われるのかな?
「いやじゃないっ?」
「え?」
僕に、訊かれてる?
一瞬遅れた後、慌てて否定する。
「嫌じゃないよ?」
僕の方が申し訳ない。
「よかったっ。あたしはいいんだけどっ、鳥飼くんのほうが目立っちゃうでしょっ? いやだったんじゃないかな? って」
僕の事、気にしてくれて?
「だ、大丈夫だよ。海原さんの方が、嫌だったんじゃないかと思って………いろいろ言われてたし………」
「ううんっ………」
なんか、ちょっと元気ないかな?
まだ、僕が気にしてると思ってるから? 気にはなるけど、海原さんが変わらず接してくれれば僕はそれだけで大丈夫なのに。
「でも、ありがとう。嬉しい」
言うと、安心したようにへへっと笑ってくれる。
「よかったっ」
……………可愛すぎないか?
僕の一言で? いや、それはないとしても!
それからは元気になったみたいで、楽しそうに話してくれる。
「燕くん、お友だちとは会えたのかなっ?」
「あ、多分……帰りはずいぶん遅かったみたいだけど」
「けっこう必死な感じだったから、また携帯の充電切れてるのかと思ってきいたら、連絡先知らないんですよね、って」
「え?」
…………………必死な感じ? 連絡先知らない? 福田君とはラインもしてたよな?
「燕くんって、友だちの連絡先とか知らないのっ?」
「あ、どうだろう? 知らない人もいるのかもね」
「そっか。そういうこともあるよね? あたしもまだ徳永さんのラインとか知らないもんねっ」
「うん…………」
海原さんの前だったから、軽く流したものの、連絡先も知らない知り合いを必死で?
あいつはあいつの付き合いとかもあるんだろうけど、違和感が拭えない。
どういう相手なんだ?
「あの時一緒にいた子の中に彼女とかいたのかなっ?」
「え? 彼女?」
「うんっ。モテるって言ってたし、いるのかな? って」
「どうだろう? 最近は家に女子連れてくる事とかないから………」
そういえば以前は、しょっちゅう家に連れて来てたよな?
いつからだっけ? そういうことがなくなったの。
「そうなんだっ? でも、弟の彼女とか気にならないっ? あたし、お姉ちゃんに彼氏できたってきいたとき、いろいろきいちゃったけどな。お姉ちゃんもね、めんどくさそうだったけどいろいろ話してくれてね、のろけたかったんだよねっ? たぶんだけど。だからねっ………」
今まで連れて来たのって、あいつは彼女とか言ってたけど、どう見ても友達の延長って感じだったし………福田君達と遊んだり、部活やってる方が楽しいとかそういう感じだったしな。
それで別れたとか言ってた事もあった気がする。
やっと友達とそういう関係の違いを理解したとかか? 母さんが文句言ってたのもあるんだろうけど。
……………まあ、僕には関係ないけど。
今の高校生とかって、写真はどうやって共有するんでしょう?
作中ではエアドロップかな? と思って書きましたが。
ラインを知っていればグループ作ってアルバム共有とかも普通なんでしょうけど、知らない場合とかどうするんでしょう?
それをきっかけにききます?
知ってる人からのライン経由とかですかね?




