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スズサキ*  作者: さより
意識
41/63

*41

「え? お母さん、ダメって?」

「あ、うん。仕事で都合がつかないみたいで………」

 鳥飼くんが申し訳なさそうに言う。

「で、でも、ちょっとくらい………」

「母さんは、いいよ。父さんは会いたいって言ってるから、会ってもらってもいい? お土産はこの前もらってるから、今度はいらないって。何も持って来ないで、って言ってた」

「う、うん………」

 どうしようっ? やっぱり、勝手に上がり込んだりして、息子に手を出すタチの悪いメス猫とか思われちゃったんだ。

「あ、あたしのこと、なにか言ってた?」

「別に、何も…………あ、でも、大丈夫。うちの母親、ちょっと変わってるだけだから」

 変わってる、って言っても………夏休みだし、合わせられるのに。

 やっぱり、あたし歓迎されてないどころか、会いたくないって思われてるっ?


「それは………やっぱり、お母さんが厳しいんじゃない?」

 紅実ちゃんに相談しても、あたしが心配していることを肯定されるだけで否定してくれない。

「あと、子離れできてないとか………」

「やっぱり、そう思うっ?」

「でも、お父さんは会ってくれるって言ってるんでしょ?」

「う、うん」

「じゃ、いいんじゃない? また家に遊びに行った時にでも挨拶すれば」

「だ、大丈夫かなぁ?」

「そんな心配なら、今日から三者面談だし、鳥飼くんの順番の時見に行ったら? お母さん来るんじゃない?」

 それは、考えてなかった!

「鳥飼君って、いつ?」

「今日の5番目っ」

「だったら、部活の時ちょっと抜けてったらいいんじゃない? もし会えて、その時挨拶できそうだったらしたらいいし」

「…………で、でも、来るかなぁ?」

「さすがに息子の進路の事だから来るでしょ? 来ないって?」

「きいてはないけど…………」


 教室の廊下にイスが並べられていて、誰かのお母さんらしき人が座っている。

「あれ、鳥飼くんちのお母さんなんじゃない?」

 紅実ちゃんが言う。

「どうだろ?」

 ショートヘアを茶色に染めている女の人がいる。誰かのお母さんなんだろうとは思うけど、どうなんだろう?

 少しすると、部活の途中で抜けてきたと思われる高橋くんが来て、ちょっと話している。

「高橋くんのお母さんみたいだね?」

 紅実ちゃんがちょっと残念そうに言う。あたしは、ほっとしてしまってる……………。

「なんで、紅実ちゃんも来るの?」

「咲妃の事が心配だからに決まってるじゃない? それに、鳥飼君のお母さんとか気になるしね。もしかしたら、いきなり修羅場って事もあり得るし」

「やだっ。やめてよ」

「大丈夫だって、その時は先生呼んできてあげるから」

 紅実ちゃん、ぜったいおもしろがってる。

「それにしては、あんた落ち着いてるじゃない?」

「だって去年の夏の三者面談、鳥飼くんのうちってお父さんだったんだもん」

「何で、そんなこと知ってるの?」

「もうっ! あたし、たぶんそのとき紅実ちゃんにも話したと思うよっ?」

 やっぱり、いつも話半分くらいにしかきいてないんだ?

「ごめんごめん。でも、確認したの?」

「確認はしてないけど、たぶん…………」

「何でそれでお父さん、ってわかるの?」

「だってそっくりだったし……………」

「いくら似てても、そんなに確信持てるほど?」

「あれ? もしかして、去年の子じゃない?」

 後ろから話し掛けられて振り向くと、鳥飼くんのお父さんだった。たぶん、だけど。

 あいかわらず、にこにこだっ。

「あ、はっ、はいっ。こんにちはっ」

 っていうか、覚えたんだっ? 去年会ったのっ。

 紅実ちゃんの方をちらっと見ると、驚きすぎて声出ないって感じ。

 後ろから、ちょっとつつくと慌てて挨拶をする。

 紅実ちゃんが挨拶忘れるとか、よっぽどだ。

 でも、あたしも去年そんな感じだったもんねっ。わかるけど。

「覚えてる? おじさんのこと」

 視線を合わせるために、ちょっとかがんで自分を指差す。

 え、笑顔がっ…………。

「あ、は、はいっ」

 あたしが鳥飼くんと付き合ってるってこと、今言ったほうがいいのかなっ?

「今年は1組なんだね?」

 え? なんであたしが1組って………あ、そっか。胸ポケットのクラス章?

「あ、は、はいっ」

「うちの息子も1組なんだけど分かる? 鳥飼雀って言うんだけど」

「は、はいっ」

 やっぱりっ! もちろん、知ってますっ! あなたの息子さん知ってますよっ? だって、お付き合いさせていただいてますからっ!

「えと……い、いつもお世話になってますっ! あたしっ…………」

「父さん?」

 鳥飼くんのお父さんが、後ろを振り向くと鳥飼くんだった。

「あ………」

 びっくりしてるっ。だよねっ? 挨拶って、まだ先の予定だったもんねっ?

 どうしようっ?

 鳥飼くんも迷ってる感じ…………? でもっ、今言ったほうかがいいよねっ?

 でもっ、なんてっ?

 いろいろ言うこと、考えてたはずなのに、何にも出てこない。たぶんっ、鳥飼くんも迷ってるっ。

「そっか。また、遊びにおいでね?」

 え? あ、また? あれっ?

「は、はいっ! あ……そのっ、先日はっ………」

「うん。また、遊びに来た時にゆっくり話そうね?」

 くすっと笑いながら、またあたしの頭をくしゃってして、鳥飼くんと教室のほうに歩いて行く。

 鳥飼くんが一度振り返ったから、ちょっとだけ手を上げると、それにちょっとだけ頷いてくれた。

 お父さんって、全部わかってる感じだよねっ?


「やっぱり、去年会ったの鳥飼くんのお父さんだったんだ」

 部室に戻ってきて、ぼそっと言うと、今まで茫然として、ひと言もしゃべってなかった紅実ちゃんが興奮気味に口を開く。

「そりゃ、そうでしょうよ⁈ 違う人の親だったとしてもあんだけ似てたらどっかで繋がってるとしか思えないわよ。叔父さんとか従兄弟とか………でも、三者面談に来るくらいだし………」

 確かに、そっくりだけど。

「たぶん、鳥飼くんも大人になったら、あんな感じなんだよ」

「そりゃ外見はそうかも知れないけど、あんなにこにこしてて、スマートな気の付くおじさんいる? 去年ちょっと会っただけのあんたのこと覚えてたりとか、何も言わなくてもわかってくれてて、ああいう対応できるとか、ありえなくない? そもそも、普通のおじさんは女子高生にあんな声の掛け方できないわよ」

「やっぱり、年齢を重ねた上での経験値とかなのかなぁ?」

「だから話聴いてた? 普通のおじさんじゃないって。お父さんの100分の1でも鳥飼君にあったら、あんたが好きになるのも納得だけどね?」

「で、でもっ、鳥飼くんもそういうとこあるよ?」

「まあ、咲妃と一緒のとこ見てると、そう思う時はあるけどね。でも、普段纏ってるオーラが暗すぎ」

「え? え? そんなことないよっ? 鳥飼くんといるといっつもほぁ〜ってなるしっ、やさしいよっ?」

 紅実ちゃんは大きなため息をついて、話し始める。

「それは、あんたのこと好きだからでしょ?」

「え? あ? え?」

 た、確かに鳥飼くんのほうから言ってくれたけど、そ、そんな、わかるっ?

「何赤くなってんのよ? 告られたんでしょ?」

「そ、そうだけどっ! なんかっ、こう……進展とかないし……………そういうことしたい訳じゃないのかな……とか?」

「でも、デートしたんでしょ? 手ぐらい繋いだんじゃないの?」

「な、ないよっ!」

「ないのっ?」

「だ、だって…………」

「手ぐらい、付き合い出したその日に繋いで帰ってもよくない? 付き合う前から繋いだりする子もいるんだし」

「で、できるわけないじゃんっ?」

「何でよ? 家行った時も、何も?」

「う、うん。普通に、勉強して、ちょっとお茶したりとか………」

「そういう雰囲気になったりとかは?」

「ち、ちょっと………弟くんが帰って来ちゃったから………何にもなかったけど………」

「だったら、次は行けるんじゃない? キスくらい」

 き、きすっ? キスって、あのっ? よくマンガとかだとそこからはじまっちゃったりなんかするけど、マンガだからねっ?

 普通はもっと、時間かかるよねっ?

「そ、そういうのは、もっと先の話じゃないっ? た、たぶんお付き合い1年記念日とか……彼氏の誕生日とか………卒業式の日に、とか?」

「………………………そっか」

 あ、なんかあきれられてる?

 普通はもう、キスくらいするのっ? まだ早くないっ?

「あ、でも、鳥飼君の家って、お父さんが主夫なんじゃない?」

 話題変えられちゃったよ…………。

「主夫? でも、お父さんもお仕事してるって言ってたよ?」

「仕事してなかったら専業だけど、兼業ね? たとえば、お父さんの方が時間に都合がつきやすくて、お母さんは仕事が不規則だったり拘束時間が長かったりとかで大変だから、お父さんの方がメインで家とか学校関係のことやってるとか。お父さんは家で仕事してるとかの可能性もあるしね。咲妃のとこだって、鳥飼君が挨拶に来るとき、お父さんはいないんでしょ?」

「あ、そっか。そうだね」

 確かにっ。うちはお母さんが家の事ほとんどしてるし、学校の事とかも………鳥飼くんの家は逆って考えたら…………。

「咲妃のお父さんは、娘の彼氏が気に入らなくて会わない訳じゃないんでしょ?」

「お母さんの話だと、ちょっと勇気がないみたい、って、言ってた」

「そっかーー。まあ、でも、あんなお父さんだし、お母さんが嫌がってたらあそこまで言えないんじゃない?」

「んーー」

 でも気になるよーーーっ!


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 何を言ったらいいのかとか、手土産は何がいいのかとか考えていて、服のことは頭の片隅にも入ってなかった。

 それに気付いたのが前日の夜で、クローゼットの中の服の中から、これと言うのが決められず、制服を着て行こうとしたら、母さんに止められた。

「学校帰りでもないのに制服着て行くなんてバカじゃない?」

「学生でちゃんとした服って言ったら制服だし………おかしくはないと思うけど?」

「そもそも、その考えがどうなのよ? 普通の服でいいのよ。ラフ過ぎないで清潔感のある格好なら大丈夫なんだから」

「でも、いつも着てるようなのしかないし……………」

 あんまりラフ過ぎるのがよくないのは僕でも分かる。だから、制服にしたのに。

「何言ってるのよ? 母さんが買って来たのがそれなりにあるでしょうが? つい最近だって、ベージュのパンツとか………」

「嫌だよ。あれ丈足りなかったし」

「あれはアンクルパンツって言って、そういうデザインなの!」

「短いのは履かないって!」

「だから、アンクル丈にしたんでしょうが? 普段着としてならハーフ丈くらいの方が涼しげだし、爽やかさとかあっていいのに」

「あんなのでよかったら、いつものスーパーで買ってるよ。24時間営業なんだし」

「ぜんっぜんっ、違うからねっ!」

「そんなに言うなら、燕に履かせなよ」

「あんたに季節感を持たせたいのよ! だいたい夏でも冬でも長袖シャツにジーンズとか………彼女できたんならちょっとくらいオシャレしてみたら?」

 ………確かに、海原さんはいつも違う格好なのに、いつも可愛いくて、今日はどんな格好して来るのかとか、楽しみだったりもする、けど………。

「そういうのは、求められてないと思う」

 それほど興味ないと思うし。

 靴を履こうとして、後ろ襟を掴まれる。

「だから、着替えて行きなさいって言ってるでしょ?」

 言って、自分の部屋に連れて行かれて、クローゼットの中を開けられる。

「何でこれだけしかないの?」

「着ないのに、持ってても仕方ないから、燕とか父さんに………」

「はあっ⁉︎」

 何で今日に限って僕が出かける前に起きて来てるんだろう? せっかく母さんの起きる前に出て行こうと思ってたのに。

 そして母さんが燕の部屋に行って、服の散乱具合に怒りの声を上げる。

 仕方なく、父さんのクローゼットからこの前僕が貰って、父さんにあげたアンクルパンツ? と、少しタイト目のシャツを出して来る。

「だいたい、その鬱陶しい髪もどうにかした方が良かったんじゃない?」

「…………それは、ちょっと思ってる」

 父さんには悪いけど、情けない顔に見られたくなくて、顔を隠すように前髪を伸ばして、それが当たり前になっていた。

 多分、清潔感を際立たせてくれるような爽やかさは欠片もない。

「だったら、せめて割って行きなさい」

「割って?」

 結局、母さんに今時のセンターパート? はこうだとか言われながら、いいようにされる。

 普段ならきかないけど、もしかして海原さんのお母さんもそう思うかもしれないと思ったら、逆らえなかった。


「な、なんかっ、今日の鳥飼くんっ、きらきらしてるねっ?」

 海原さんが駅まで来てくれていて、興奮気味に言う。

「き、きらきら?」

 海原さんの瞳の方がきらきらしてる気がする。

「うんっ。あ、いつもきらきらしてないとかじゃなくってっ……かっこいいなってっ………あ、いつものもかっこいいけど、違ったかんじっ!」

「かっこよくはないよ」

「ううんっ! モデルみたいっ!」

「恥ずかしいからやめてくれる?」

 自分の容姿について、お世辞でもそんなふうに言われたことはなくて、戸惑う。

 海原さんじゃなかったら、嫌味にしかとれない。

「写真撮っていいっ?」

 いそいそとバッグからスマホを取り出そうとする。

「い、嫌だ」

「ロック画面とかにはしなくてもっ?」

「絶対やめて⁉︎ 無理だから」

 僕がつい、強めに言ってしまうと、海原さんは叱られた子供のようにしゅんとして、スマホをバッグに戻す。

 ………………言い方、きつかったよな?

 大丈夫かな?

 見ると、海原さんは恐る恐る僕の顔色を伺って、控えめに訊いてくる。

「顔写らなくてもだめ?」

 …………けっこう諦め悪いのかな?

 今度は少し控えめに断る。

「ごめん」

 でも、悪くはないってことだよな?

 海原さんの家のマンションが見えてきて、緊張感がより高まってくる。

「緊張してるっ?」

「そりゃ、まあ…………」

 海原さんがエントランスのオートロックを解除して、開けてくれる。

 この前、送った時はマンションの前までだった。

 緊張しすぎて、手汗が…………。

「僕が、海原さんのこと家に呼んだの知ってるんだよね? 他に誰もいないのに………」

 余計に気が重い。やましいことはしてないけど、本当にそう思ってくれるかどうかは分からない。

「ぜんっぜんっ! 気にしなくて大丈夫だよっ? 鳥飼くんは親切で呼んでくれただけだしっ! あたしも、行ってみたかったしっ」

「嫌じゃなかった?」

「うんっ。ゆっくり2人で話したいなっ、て、思ってたし……て、テストのねっ、勉強教えて欲したかったしっ。たぶん自分だけじゃわかんなくなってあそこまでできてなかったと思うっ」

「うん……………」

 嫌じゃなかった、って思っていいんだよな? 

 海原さんが鍵を開けてドアを開ける。

「ただいま一っ」

 家の奥に向かって言った後、奥からお姉さんらしき人が出てくる。

「いらっしゃい」

「あ、はい…お、お邪魔します!」 

「咲妃に聴いてたけど、本当に高いのね? 何センチ?」

「し、4月に186でした」

「そう。お家の人、みんな高いの?」

「そうですね」

「バレーとかバスケとか誘われるでしょ?」

「はい。まあ………でも、運動は苦手なので……」

「モデルみたいとか言われない?」

「は? あ、い、いえっ! そこはまったく‼︎」

「はい、スリッパ…………」

 じ、冗談だったんだよな? 真面目に答えて………面白味のない奴とか思われた? お姉さんって、ずっと無表情で………怒ってるみたいだし………可愛い妹の彼氏が僕みたいなのとか………………あ一一一一。

 出されたスリッパを履こうとして、戸惑う。その様子を見て海原さんがおろおろとしはじめる。

「ご、ごめんねっ⁉︎ 入らないよねっ? 気付かなかったっ」

 ど、どうしよう? 別に僕はどうでもいいけど、靴下履いてるとはいえ、そのままあがるのって失礼なんじゃ…………?

「ふっ……………」

「え?」

 お姉さんがスリッパを出したまま肩を震わせている。

「ごめっ………ふふっ、ふ………あはははははっ」

「もうっ! お姉ちゃん失礼っ!」

「ごめんってばっ。ふっ……だいたいあんたが……ふふっ………気にしといてあげないから……ふっ………」

「だ、だってっ…………っ…!」

「ご、ごめん。僕が無駄にでかいから………」

「違うってばっ!」

 結局、靴下のまま上がらせてもらうことになる。ものすごく申し訳ない気持ちだった。

 お姉さんって、海原さんとあんまり似てないなと思ったけど、笑い方はそっくりだ。ちょっとほっとする。

 お姉さんが先に奥に行くけど、まだ肩が震えている。

「スリッパ、入んなかった……ふっ……ふふっ…」

 先にお母さんのいるらしいリビングに入って行って、説明してくれてる声が聞こえる。

 まだ、笑ってる。意外と、よく笑う人だったりするのかな?

 すると、奥からお母さんが慌てたように出て来る。

「ごめんなさいね。本当に大きいのね?」

「い、いえ。すみません」

 海原さんと、似てる。目の辺りとか、輪郭とか…………。

 3人が一緒にいる所を見ると、毎日楽しそうだな、と思った。

「身長何センチあるの?」

「4月に186センチでした」

「お家の人、みんな高いの?」

「そうですね」

「バレーとかバスケとか、やってるの?」

「いえ、運動は苦手なので」

「モデルみたいね? モテるでしょ?」

「いえっ! そこは、まったく………」

「もうっ! それお姉ちゃんもきいてたっ‼︎ 鳥飼くん困るってっ!」

 海原さんがお母さんの質問を止めてくれようとする。

「あら、ごめんなさい」

 お母さんは笑いながら、謝ってくれる。

「だ、大丈夫です。よく訊かれるので。モデルみたい、とは言われませんけど…………」

「そうなの? 本当にごめんなさいね。そういえばお名前なんて言うの?」

「す、すみません。鳥飼、雀です」

 本来、自分から言うべきだったよな? もっとしっかりしないといけないのに………。

「あら、可愛いお名前ね?」

「父親が、野鳥が好きで付けたそうです」

 海原さんが心配そうに僕を見てくる。

 でも、この辺はちょっと予習したし。大丈夫。

「そう。お父さんも、ずっと近くにいて欲しいのかしらね? 可愛くて仕方なかったんでしょうね」

 あ………………。

 海原さんの、お母さんって感じだ。

 そう思って、胸が熱くなった。

「そこまで考えてたのかは分からないですけど、今度訊いてみます」

「お母さんっ! こんなところじゃなくって」

「あら、そうね。ごめんなさい」

 言って、リビングに通してくれる。

「ごめんね? お姉ちゃんもお母さんも………」

 心配そうな顔で、海原さんがまた僕を見てくる。

「ううん。楽しそうだね?」

「う、うんっ」

 身長って、背の高い人にとってはよく訊かれる質問だとは思うのですが、訊かれることにうんざりしていて嫌なのでは? と思って、過去に出会った背の高い人には直接訊けませんでした。

 実際、うんざりしてたりしますか? それとも何とも思ってなかったりしますか?

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