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スズサキ*  作者: さより
意識
36/63

*36

「バッカじゃないの⁈」

 狩り人競走のあと、自分のクラスのテントに戻ろうとしたところで、徳永さんに思いっきり怒鳴られる。

「な、何で…………」

「人がせっかくうまい具合にお題置いてやったの、無駄にして一一!」

 置いてやったの………って? 徳永さんが?

 徳永さんも体育委員? しかも種目担当………?

「た、頼んでないし」

「あれやったのサチだったんだ? おかげでオレ告られ………」

 横にいた手嶋君が場を和ませようとしてくれるけど全く効果がなく、さらに怒鳴られる。

「海原サンと仲深めるチャンスだったの、わかってる⁈」

「何? ばれてんの? 海原と付き合ってんの」

 あ……………。

「手嶋君、それ……………」

「はぁ〜〜っ‼︎‼︎⁉︎」

 もう遅いとは思ったものの、やっぱり誤魔化すことはできなかった。


「ハイ。体育館の入口のとこで女子が足拭いてくれてるから持ってって」

 徳永さんにちょっと冷たく実行委員席の椅子を渡される。

「あ、うん」

 何か、まだ機嫌悪いよな? そっとしといた方がいい、かな?

 椅子を受け取って、さっさと行こうとすると、さらに話し掛けて来る。

「海原サンも手伝ってくれてるから、ちゃんと渡してネ? そんで、ちゃんとフォローしてあげなよネ?」

「フォローって?」

「本命差し置いて、ヒロキと手繋ぎゴールとか、ありえないからネ? 絶対海原サンショック受けてるよ? 自分は2番目だったのかな? って」

「そんな訳ないでしょ? さっきも説明したけど、バレたくないの分かってくれてるし、そう思ってるよ」

 相手が僕なんだし。

「頭でわかってても感情とかあるでしょ?」

 そういうもんなのか?

 でも、フォローって………何やったらいいんだろう?

 体育館に行くと、海原さんはすぐに目に入って来て、近くには七尾さんもいた。

 こんな状況で話せないよな?

 それでも迷っていると七尾さんが海原さんに椅子を持って行くように言っていた。

 それを引き取って、いっしょに持って行く。

 フォローって、こういうことでいいよな?

「鳥飼くんっ!」

「あれ? どうしたの?」

「七尾さんがもういいよって、言ってくれて…………あたしも手伝う」

「いいよ。僕だってこのくらい運べるし………フォローになんないから」

「フォローって?」

「多分、穴埋め的な?」

「なに、それっ?」

 やっぱり、気にしてないよな?

 徳永さんがあんまり怒るから気になったけど。

 あ、でも最近徳永さんとも昼一緒に食べてるんだっけ?

「ごめん。徳永さんに、僕達のことばれちゃったんだ」

「徳永さんにっ? なんでっ?」

 そこで海原さんに経緯を簡単に話した。

「実はあたしもね、徳永さんに鳥飼くんのことすきなのばれてて………それでかも。ごめんねっ?」

「ううん。でも、他の人には言わないでくれるって言ってたし、大丈夫だとは思うから」

「うんっ」

 言って、へへっと笑った。

 こうやって笑ってくれるとほっとする。

 でも、僕も本当は堂々としていられたら、と思う。

「………もし、今日、手嶋君じゃなくて、海原さんに一緒に………って言ってたら、どうしてた?」

「え?」

 海原さんはあきらかに戸惑っていて、変な事を訊いてしまったな、と後悔した。

「あたしっ、わかってるよっ? 手嶋くんは友達として……ってことで、ぜんぜんっ気にしてないから……みんなにばれちゃうのはずかしいもんねっ? あたしもちょっとほっとしてるとこあるしっ。うんっ、全然大丈夫っ」

 言って、そのあとは顔をあげてもらえなかった。

「あ、あたしっ、いても意味ないから先に教室戻ってるねっ?」

 言って、七尾さんを見つけて一緒に教室に戻って行った。

 はずかしい…………か。


     ✳︎♡✳︎♡✳︎♡✳︎


 運動会の日から、なんとなく鳥飼くんがそっけない。

 ついこの前までどきどきして困るくらい気を使ってくれたりとかしてたのに、また前みたいに昇降口でもひとことふたことくらいしか返してくれない。

 もしかして、徳永さんにばれちゃったの気にして、とか?

 ………大丈夫だよね? そんなに気にしてなさそうだったし…………話しかけないでって言われてたけど、鳥飼くんのほうからはしゃべってきてたんだし。

 後ろには鳥飼くんの気配あるっ!

 教室で話しかけるのって、まだけっこう緊張するけど…………。

 思い切って、でも、何でもないふうをよそおって話しかける。

「鳥飼くんって、テスト勉強とかしてる?」

「え?」

 びっくりした感じで、問題集から顔を上げる。

 あ、じゃましちゃったかな? 何か問題解いてのかも………。

 そのあとふいっと顔を逸らして、ぼそっと答えてくれる。

「まだ、特にはしてないかな」

「そっか」

 ………このあと、なんて言ったらいいんだろ? タイミング悪かったよねっ?

「ご、ごめんねっ、じゃましちゃったねっ?」

 あわてて前に向き直る。

 タイミング、むずかしいっ!


 今日から部活ないし、いっしょにテスト勉強しないっ? て、誘ってみるのとかもありだよねっ?

 帰りの昇降口で鳥飼くんと話せるようにタイミングを見はからう………あたし、何やってんだろ? 彼女なんだしっ、ラインも知ってるんだから堂々とさそってもいいはずなのに………。

 ラインだと、何となくあたしの言いたいこと伝わってない感じするんだもんっ。

 今ならそんなに人いないよねっ?

「鳥飼くんっ、テスト勉強って、どのくらいからするのっ? それまで帰り、いっしょに勉強しないっ?」

 し、しゃべりすぎかなっ? 鳥飼くん、ちょっと引いてる?

 びっくりした顔であたしを見たあと、またふいっと顔をそらして靴にはきかえる。

「坂上さんは?」

「紅実ちゃんっ?」

「いつもいっしょに帰ってるみたいなのに、いいの?」

 なんにも言わなかったら待っててくれてるけどっ、さっき鳥飼くんといっしょに帰ることになってもいい? ってきいたらいいって言ってたけど………。

「うんっ。紅実ちゃんも、いっしょに」

「………僕いない方がよくない?」

「な、なんでっ? 大丈夫だよ。だって、この前もいっしょに帰ってるしっ」

 だって紅実ちゃんだもんっ!

「この前は、手嶋君がいたでしょ?」

 そ、そっか。男子1人だけって、気にするかなっ? 気にするか。

「そっか。じゃ、また今度………ね?」

「うん」

 鳥飼くんは上履きを靴箱にしまうとぼそっと早口で言う。

「学校であんまり話しかけないで」

「あ、ご、ごめっ」

 そして、さっさと帰ってしまう。

 お、怒ったっ? どうしようっ?

 追いかけて、もうちょっとちゃんとあやまったほうがいいのかなっ?

 あわてて靴にはきかえていると、ラインがくる。

一一今度の休みは、勉強する?

 ………いいんだ。ラインで誘ったほうがよかったっ?

 あ一一んっ。よくわかんないっ!


 休み時間に七尾さんとちょっとわからないところの教え合いっことかする時間が多くなる。

 来週はテストだもんねっ。期末だから教科も多いし。

 それで、七尾さんが鳥飼君の席に座ったりするのを、ちょっとずるいとか思ってしまう。

 あたし、こころせまいなっ。

「海原さんって、数学できる?」

「うんっ。数学はねっ、まあまあ」

 鳥飼くんに言われて復習するようにしたら、迷わずに解ける問題がふえて、ちょっと楽しい。

 でも、化学は………なんで、あたし化学とか選択しちゃったんだろ? って、紅実ちゃんが化学って言ってたから化学にしたんだけどさっ。

 最初は鳥飼くんとも同じだしラッキーとか思ってたけど、むずかしくってよくわかんないっ。

 七尾さん、選択ちがうからきけないし、紅実ちゃんは説明してくれるけど、よくわかんないし………あんまり何回も説明させちゃうのも悪い気がして、ごまかしちゃったりするからよくないんだろうな。

 中間はなんとか平均、くらいだったけど………今回はちゃんと勉強しないと平均点いかないよねっ?

「七尾さんって、物理とかどうしてるっ?」

 あ、あれっ?

 ちょっと照れながら答えてくれる。

「木村君と一緒にやってる」

「え? え一一っ?」

「海原さん、声おっきい!」

「ご、ごめっ」

「木村君もそんなにできる方じゃないから、一緒に頑張ろうって感じなだけなんだけどね」

 い、いいな一一っ。

 そっか、数学教えてもらったことあるし、化学も………?

 また、紅実ちゃんにきいたら? とか言われるかな?

「そういえば、鳥飼君も選択化学じゃなかった?」

「え? あ、うんっ。そうだったかもっ」

 かもっ、て。そんなの知ってるってば一一っ!

 最初っからちゃんとチェックしてるんだからっ。

 なにげに、選択科目全部かぶってるんだよねっ。へへっ。

「きいたら教えてくれるんじゃない? 頭よさそうだし」

「え? え、え?」

「あ、戻って来たね?」

 鳥飼くんが戻ってくると、七尾さんが席を立つ。

「ごめんね、使わせてもらってた」

「あ、うん。別に………」

「鳥飼君って、理科の選択化学だったよね?」

「そうだけど」

 鳥飼くん、めっちゃふしぎがってる。あたしも、そう思う。

 はちまきのときくらいから、七尾さん鳥飼くんに対して、ちょっとからむの多くないっ?

 鳥飼くん、あたしのだからねっ?

 …………あ、でも、木村くんのことすきなんだっけ? あれ? じゃ、なんで?

「海原さんが教えてほしいんだって」

「え?」

「あ、あたしっ、言ってないっ!」

 うわっ、はずかしっ。鳥飼くんに化学もできないとか思われたくないのにっ!

 数学はきいたことあるけどっ。化学は教えてもらっても理解できる自信がないんだもんっ。教えてもらったのに点数悪かったら、がっかりさせちゃうよねっ?

「僕でわかるとこなら」

「だって。あたし席戻るから、ゆっくり教えてもらったら?」

 言って、七尾さんが席に戻ってしまう。

 ど、どどどうするのっ?

 ほらっ、鳥飼くんもこまってるしっ。

「……………どこ?」

 仕方なさそうに、きいてくれる。

「こ、この前やったとこ」

「ここは…………………」

 鳥飼くんって、説明ていねいっ。

 わかりやすいっ。大丈夫そうかもっ。

「わかった?」

「うんっ。たぶんっ、大丈夫っ」

 たぶん、テストで出てもできたよって、言えそうっ。

「じゃ、僕に教えてくれる?」

「…………………え?」

「今のとこ。教えて?」

 にこってして言う。

「え? え? な、なんでっ?」

 だ、だめだっ! どきどきしすぎてあわわわわってなるっ。鳥飼くんからそんな、教えて、とかっ…………。

「今の、わかったかな? と思って」

 そ、そういうことねっ。やだっ、でもっ、今のでとんじゃったかも一一一っ⁉︎

 だめだって、ちゃんと説明できないとっ!

「あ、え、えっとね、ここがっ…………」

 どきどきおさまんないんだけどっ!

 たまにこっそり顔見るとやさしい顔してるし、あたしが顔あげるとにこってするしっ、その顔っ、あたしすきすぎてだめなんだってば一一一っ!

「………って………それからっ………」

 あ、あれっ? この先、なんて言ってたっけっ? どうしようっ? ちゃんときいてたのにっ。

「ここは、こっちにも書いてるけど…………」

 結局、もう一回説明してもらってるし…………。

「大丈夫そう?」

「うんっ。今度こそっ! 大丈夫っ。たぶんだけど………」

「もう先生来るし、また明日教えて?」

「あ、あしたっ?」

「うん」

 明日もっ、こんな感じなのっ?

 いいのっ? けっこうしゃべってる気がするけど、いいのっ?

 毎回、もっと余裕をもって投稿の準備をしようとは思うものの、なかなかそうもいかずに日付が変わってしまっています(;^_^A

 普段は早く寝てしまうのですが、今日は目がさえているのが救いです。


 今回体育祭でのエピソードで、自分の記憶を呼び起こしながら(狩り人競争などはなかったと思いますが)書いてはいたのですが、現在の体育祭はどうなんでしょう?

 ちなみに私は体育祭なんかなければいいのに、と思ってる方でした。

 なので、人数の多い男子校出身者から、希望者のみで自分は出なくてもよかったと言っており、驚きとともに羨ましくもありました。

 確かに、人数多いと1人1種目だとしても物凄い時間かかりそうですから納得です。

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