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スズサキ*  作者: さより
意識
35/63

*35

 海原さんが席に座る前、僕に小さく言う。

「ありがとっ」

「うん……………」

 僕の返事に、照れたように笑い返してくれる。

 こんな顔が見れると思ってなくて、くすぐったい気がした。

「邪魔」

 自分の席に戻ろうとする笹丘君が、立ったままだった海原さんに冷たく言う。

「ごめっ」

 海原さんが慌てて自分の席に座ると、しゅんとしてる感じが背中からも伝わってきた。

 そんなにきつく言うことないのに。

 ……………僕だって、海原さんに嫌なこと言ってるのに、笹丘君の態度にイラついて、何も言えなかった自分にもイラついた。

 こんなんで付き合ってるとか言えないよな………。海原さんに我慢させてばっかりだし…………。

 そもそも僕と喋りたいとか、一緒に登校してるのうらやましいとか………よくわからない。こんなふうに付き合うのだって初めてな訳だし………。

 海原さんは可愛いし、一緒にいると癒されるというか、この前みたいな事でも喜んでくれて、嬉しくさせてくれるからわかるけど、僕はどうなんだろう? と思う。

 海原さんに対して、何も出来てなくないか?

 さっきのだって、後ろから戻って来る人いるのはわかってるし、僕の方が先に気付いて避けるように促すべきだったよな? そしたら、海原さんもあんなふうに言われなかったはずだし………………今までそんな事して来なかったから……………。

 やっぱり、いきなりそういう人間になろうとしても、上手くいかないよな…………。

「鳥飼って、そんな奴だっけ?」

「え?」

 後ろから話し掛けられて振り向くけど、笹丘君はしらっとしてて、今日宿題として出されるだろう問題をノートに解いていた。

 今の、笹丘君………だよな?

 そうは思いつつも、もう一度聴き直す事は出来なくて、そのまま前に向き直る。

 やっぱり、僕みたいのが他の人と……しかも海原さんみたいな子と喋るのって、不釣り合いだって、思うよな?

 あの時も七尾さんが、僕の事意外だって思ってたらしいし…………僕はある程度覚悟してる訳だけど…………海原さんは、大丈夫だよな?

 目の前の小さな背中を見て心配になった。


     ✳︎♡✳︎♡✳︎♡✳︎


「鳥飼君がおかしい?」

 紅実ちゃんに話すと、お箸を止めてききかえしてくれる。

「顔が? それともあれだけでかいのに目立たない事?」

「そんなんじゃないってばっ!」

「わかってるわよ。冗談でしょ?」

 紅実ちゃんってば、いっつもそうっ!

「で? 何がおかしいの?」

「う、うんっ。あのねっ、何かすっごいやさしいのっ」

「…………それで?」

「数学の時間に、高い所の問題変わってくれたり、距離近かったり………」

「それ、海原サンのこと好きだからじゃないの?」

「え? あ…………?」

 徳永さんだっ! 今のきかれて…………?

 今日、遅いから来ないと思ってたのにっ!

「そっかそっか。そのうち告られちゃうかもヨ?」

 どどどどどうしようっ? あやしまれてるっ? 付き合ってるの、ばれないよねっ?

「海原サンも好きならいいじゃん? 付き合っちゃえば?」

「え? や、ち、ちがっ………」

「この前鳥飼クンのコト、カッコいいとか言ってたでしょ?」

「い、言ったけどっ!」

「そのやさしさにドキドキしちゃったワケでしょ?」

 ……………そうだけどっ。

「好きでも、そんなすぐに付き合わなくてよくない?」

「何でヨ?」

「付き合う前の方が楽しいってこともあるんだしさ」

 紅実ちゃんがさらっと言って、徳永さんが納得したふうに、力強く頷く。

「そ、そっか! それはわかるっ! 両片思いってヤツよね? そっか一一。そういう見方もあるよね?」

「付き合う前は優しかったのに、付き合ってからそうでもなくなったりして」

「あ一一、そういうオトコもいるよね? 海原サンは、付き合い出しても素っ気ないくらいでちょうどいいからね? あんまりデレてると図にノるヤツとかいるし」

「う、うんっ」

 付き合い出してからこれだから、そういうことはないと思うんだけど………。


 そんなこともありつつ、あっという間に体育祭本番っ!

 鳥飼くん運動苦手って言ってたけど、予行練習で100m走の順位真ん中くらいだった。あたし、最後だったのにっ!

 他の種目も見てたけど、苦手って言っててもそこそこできてるじゃんっ! て、思っちゃった。確かに1番取れたのないし、騎馬戦とかほかの人と高さ合わせるために窮屈そうだったりしたけど、かっこいいな……とか……………。だって、かっこよかったんだもんっ。ずるくないっ?

 狩り人競争もメガネの人ってことで飯田くんと走ってたし…………。

 はちまきだって学校に返すからすきな人と交換とかないし、体育祭終わった後は片付けて解散だから後夜祭とかもないし。

 あんなの、ほんとにやってる学校あるのかな?

 今日本番だけど、まんがとかドラマみたいなどきどきイベントなんて、そんなにないよねっ?


     ✳︎♠︎✳︎♠︎✳︎♠︎✳︎


 昔っからくじ運とかよくないけど、これは最悪じゃないか?


【好きな人】


「青組、足が止まってしまいました。お題は何なんでしょうか?」

 放送係が盛り上げようとしてくれてるんだろうけど、ほっといて欲しい。

 動揺して足を止めてしまった事で、余計に注目されることになってしまったのは迂闊だった。

 注目されたら、余計に探しに行けない。

 …………とりあえず、同じクラスの人たちのところに行こう。

 大体なんで、こんな種目があるんだよ?

 こういうのって、盛り上げるのうまい人とかそういう人が出るべきなんじゃないのか?

 それこそ手嶋君とか………。

 あんまり適当にして、失格になってしまうならまだしも、やり直しにでもなったらどうしようもないもんな。

 迷惑掛けるにしても、それなりの…………。

「お題、なんだった⁈」

 青組のテントの方に行くと、手嶋君が必死な様子で声を掛けてくれる。

「いっしょに探すよっ?」

「え…………?」

 海原さんが声を掛けてくれて、つい海原さんが一緒に走ってくれるところを想像してしまう。

 いや、ありえない。海原さんを晒し物にする訳にはいかないと、堪える。

「お題、女子でしょ?」

 七尾さんまで声を掛けてくれる。

 多分、順位は最後だけど失格だと点数もらえないもんな。

 お題の意図とは違うと思うけど、好きもいろいろだよな? 僕に決めたの手嶋君だし、半分くらいは責任とってもらってもいいよな?

「…………………………………て、手嶋君、いい?」

「え? オレ? いいけど?」

 きょとっとした顔で、出てきて一緒に走ってくれる。

「何だよ? オレなら迷うことなくない? 何迷ったわけ?」

「…………………………どうにでもとれる内容だったから」

 こういうの、勝敗掛かってるし手嶋君は断らないとは思ったけど、お題ばれたらどうなるかわからない。とりあえずゴールまでは黙っとこう。

「まだ白組うろうろしてるし、もしかしたら最後にはなんないかもよ?」

 言って、僕の手首を握って走ってくれる。

 ゴールすると体育委員がお題の紙と連れてきた人とでチェックをする事になっている。

 体育委員の先輩は僕の渡す紙を受け取りながら手嶋君に話し掛ける。 

「お、てっしー頑張ってんじゃん? お題はちびっこだったか?」

 手嶋君って、先輩にも人気あるんだな。

「いやいや、イケメンじゃないですかね? もしくはクラスの人気者、とか?」

 話しながら紙を広げる先輩の顔から笑いが消える。

「何だったんですか?」

 ひょいっと先輩の手元の紙を覗き込む手嶋君からも笑いが消える。

 まあ、予想はしてたけど………。

「えっと…………君、てっしーのこと………?」

 先輩が戸惑っている。

「わりぃ。オレ、お前のこと友達としか……………」

 手嶋君まで戸惑いつつも、真面目に返事をしてくれる。

「わかってるよ! 当然でしょ?」

 こっちまで、恥ずかしくなってくる。

 そしていろいろと協議された結果、失格にはならなかったものの、放送でお題と結果を伝えられて、みんなから余計に注目される羽目になってしまった。


     ✳︎♡✳︎♡✳︎♡✳︎


「第7走者の青組、お題は【好きな人】でしたが、告白の結果撃沈してしまいました」

 みんなが笑うなか、ちょっと落ち込む。

 あたし、いっしょに走ってもよかったのに。

 からかわれて、ごまかされてもいいからいっしょに走りたかったな。

 でも、みんなにばれちゃうのはずかしいから、ちょっとほっとしてるとこもあるけど………あたしも、みんなに公表まではしたくないし。

 ただ、近い人には報告したいっていうのと、ばれちゃったときに否定まではしたくないかな………くらいで。

 手つないだりはしたかったけど。

「鳥飼君って、手嶋君のこと好きだったんだ?」

 七尾さんがびっくりして話しかけて来る。

「と、友達としてとかってことだったんじゃないかなっ?」

 そうだよねっ? たぶん、あたしがいっしょに走ってからかわれないようにとか、そういうことだよねっ?

「ごめんな、鳥飼。俺気付いてやれてなくて………」

 戻ってきた鳥飼くんに木村くんが申し訳なさそうに言ってる。

「木村君まで⁈ だから、違うって………単純に人としてというか………友達としてというか…………」

「俺も、友達のつもりだったんだけどな…………」

 ちょっと木村くんが落ち込んでる。

 でもでも、あたしも彼女だって思ってたのに選ばれなかったんだからねっ?

 悲しいんだからねっ?

「そういうんじゃなくて……………」

 たぶん、しばらくは噂になるだろうし、大変だろうな。

 鳥飼くんの気持ちはわかるし、あたしだけでもめんどくさいことは言わないようにして、忘れちゃお…………。

「でもさ、手島君と鳥飼君とか、アレじゃない?」

 ひそひそと女子の話し声も聞こえる。

「身長差とか陽キャ×隠キャとか……木村君も絡んでるみたいだし………?」

「うんうん。しかも、手引っ張って走ってるのとか、ヤバかったよね?」

 …………………やっぱり、なんかやだっ!


 結局、青組は3位と1点差で2位だった。

 あたしも体育祭って貢献できないタイプだし、順位なんかどうでもいいと思ってるけど、手嶋くんみたいな人たちが本気で喜んでるのを見るともうちょっとがんばれたらよかったな、くらいは思う。

 1位だったらもっと嬉しかっただろうし。

 片付けに入って女子はいすの足を拭くように言われる。七尾さんと体育館の入り口付近で拭いていると、鳥飼くんが追加のいすを持ってきた。

「これも、頼んでいい?」

「うんっ。いいよっ。置いといて?」

「あ、うん……………」

 いすをどこに置いていいのか迷ってるのか、ちょっと立ちっぱなしだった。

「どこでもいいよっ?」

「じ、じゃ、海原さんの横に置いとくね?」

 言って、あたしの横に置く。

「拭き終わったの、持って行くね?」

「あ、うん。ありがとう………」

「じゃ、海原さん、こっちのも持って行ってもらっていい?」

 七尾さんが自分の拭いたほうのいすを指さす。

 それを持って行こうとすると、鳥飼くんが引き止める。

「いいよ。僕いっしょに持って行くし」

 言って、七尾さんのほうのいすも持っていってくれる。

「…………鳥飼君って、よくわかんないね?」

「え? うん?」

あけましておめでとうございます。

昨年も読んでくださっていた方、今年から読んでくださっている方、ありがとうございます。


活動報告の方にも書かせていただきましたが、まだまだ不慣れで失敗も多々ありますが昨年以上に頑張っていきたいと思います。

今後も引き続きよろしくお願いいたします。


この作品は、ほとんどをスマホで書いています。

効率化を目指し、昨年9月にやっとパソコンを購入しましたが、なかなか作品には活かせておりませんm(__)m

今後はもう少しでも効率を上げつつ、よりよい作品作りをしていきたいと思っております。

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