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スズサキ*  作者: さより
意識
34/63

*34

 何で女子って、教室であんなことするんだろう? それに、よく考えつくよな? はちまき使って猫耳とか…………。

 この前、海原さんを呼び出した階段で熱が冷めるのを待って、教室の様子を思い返して、不安になった。

 見てられなくて教室出てきたけど……窓閉め忘れた気がする。

 今でも顔熱いし、また教室に戻るのもな………。

 誰か閉めるよな? まだ残ってる人もいたし…………海原さんのこと、可愛いね、とかって声掛ける奴いなかったよな?

 もう、部活行ってるよな?

 熱が冷めた後、昇降口に行く途中で、海原さんが小走りに僕を追い越して行く。

 あれ? 部活じゃ……………?

 少しだけ海原さんのスピードが緩んで、その時にちらっと目が合う。

 そして、少し驚いた顔をした後に表情が曇る。

「海原さん、先行ってるね一一⁉︎」

 先に追い越して行った七尾さんの声で、海原さんははっとして、また小走りで駆けて行った。

 …………何かあった? でも、後付けて行ったら、気持ち悪いよな……………。

 そう思って、そのまま帰ろうとしたけど、やっぱり気になって海原さん達が走って行った方の様子を確認する。

 そこで七尾さんと揉めているような声が聞こえた。

 …………………僕が出て行っても、どうなるもんでもないよな?

 それに、いきなり声かけるのも……後付けて来たってわかるだろうし…………………。


一一日々の積み重ねってヤツじゃね?


 迷った末に、声を掛ける。

「鳥飼くんっ?」

 海原さんはびっくりしてこっちを向いた後、気まずそうに俯いた。

 だけど、こっそりと僕の様子を伺っているのがわかる。

 …………これ、僕が言ったこと気にしてて、話していいのか迷ってるんだよな?

 僕だって、本当はもっと一緒にいられる時間とか大事にしたいと思ってる。でも、海原さんが、変に思われるのが嫌で我慢してるだけなんだ。

 海原さんは僕と話したくらいでそんなことにはならないと思ってるんだろうけど、世間ってそんなに甘くないと思う。そういうのわかってないだけなんじゃないかって。

 ただ、これからも一緒にいたいって思うのに、何もしないでいたらいつか離れる時が来て、それがそんなに遠くないんじゃないかと思って怖くもある。

 それに少しでも抗いたいと思ってしまうのって、それだけ離れたくないって、思ってるんだよな。僕も。

 なるべく、やさしい感じで?

「何かあったの?」

 いくらやさしくって言っても、今の訊き方は小さい子に話すみたいじゃなかったか? 

「海原さんのはちまきが木に引っかかっちゃって、あそこ」

 七尾さんが代わりに答えてくれる。

 ……………七尾さんには嫌われてるのかと思ったけど……木村君も言ってたよな?

 そう思いつつも、七尾さんの指差した方を見ると、はちまきが引っかかっている。

 それを見て、僕の閉め忘れた窓から飛ばされてしまっただろうことは簡単に想像できた。

「ごめん、僕が帰りに窓閉めてなかったから…………」

「そ、そんなことないよっ! 鳥飼くんが窓締め係さんってわけじゃないし………今まで気付いてなくて………ごめんねっ?」

 海原さんが慌てて僕を庇ってくれる。

「いや、でも、僕の方が鍵の場所に近い訳だし」

「それにっ、あれは、あたしたちが遊んでて、飛ばしちゃったんだしっ。せ、先生に言って取れそうだったら、取ってもらうし………」

 そこまで高い訳じゃないけど……………無理、かな?

 試しに、はちまきの下に行って手を伸ばして、ジャンプしてみるけど、掠りもしなかった。

「おしいっ‼︎」

 2人が驚いた顔で見てくる。

 ……………そうだった、か?

「もう1回やってみて!」

 七尾さんが言ってくる。

 これ、もしかして期待されてる、のかな?

 もう一度、今度は荷物を置いて、試してみるけど、はちまきの端が指に掠っただけだった。

「さすがに鳥飼君でも無理か〜〜」

 七尾さんががっかりして、ため息を吐く。

「でもっ、ありがとっ。あたし、先生に言ってくる。じゃね? ばいばいっ」

 海原さんは嬉しそうにお礼を言ってくれたけど、それが返って悔しかった。

 仕方ないよな。届かないんだし。

 2人が先生に言いに昇降口に向かう。

 ……………これ、取れてたら海原さんはどんな顔したんだろう?


     *♡*♡*♡*


 ど、どどどどうしたんだろっ?

 鳥飼くんっ、自分から話しかけて来てくれるとかっ。それにっ、はちまき取ろうとしてくれたりとかっ。

 さっき追い越すときに目合ったけど、それで心配して? 

「びっくりだね? 鳥飼君、私達の後付けて来たのかな?」

 七尾さんが不思議そうな顔をして言ってくる。

「さっき、昇降口のとこで目合って、それで心配してくれたんじゃないかな?」

 うん。たぶんそうだ。あたし顔に出ちゃってたと思うし。

「鳥飼君って、そういうタイプだった?」

「え? でも、あたし前にも…………」

「結構あるの?」 

「そ、そんなには、ないけど………」

 あれ? でも、けっこうある? 困ってるとき声かけてくれるの。

「へえ? でも、意外。あたし話し掛けられた事もないよ?」

「ほらっ、あたし席も近いしっ、どんくさいとことかあるしっ、見てらんないとかかもっ?」

 あ、なんか自分で言っててかなしくなってきたかも…………。

 いっつも、できないことばっかり見られてる気がするし、なんであたしのことすきとか言ってくれたんだろ?

「でもさ、そういうとこが守ってあげたい! とかなるんじゃない?」

「そうなのかな…………?」

 それなら、いいけど…………あたしの、どこがすき? とか…………まだきく勇気ないよ一一っ!

「海原さんは、どうなの? 鳥飼君」

 そ、そんなのっ、すきに決まってるよっ‼︎

 だって、すきじゃないと付き合ったりしないよねっ?

「え、と……………」

 あたしがすきなのはばれてもいいかな?

 ………でも、七尾さんだったら言わないでって言っても言うよね? みんなにばれちゃう。そしたら、うわさになっちゃったりして、いやだよね?

「海原さん!」

 呼ばれて、振り向くと鳥飼くんが慌てて昇降口に入ってくる。

「あ、な、なにっ⁈」

 なんでっ? 今度こそ帰ったと思ったのにっ。

「さっきの、取れたから、これ」

 言って、手に持ってたはちまきを渡してくれる。

「とれたのっ⁈」

「あ、うん…………」

 ちょっと恥ずかしそうに、汗を拭く。もしかしてあたしたちいなくなってからも………?

「すごいっ! ありがとうっ! うれしいっ‼︎」

「いや、うん…………じゃあ………」

「うんっ。ほんとに、ありがとねっ? ばいばいっ」

 手を振ると、鳥飼くんもちょっと手をあげてくれる。

 あたしたちいなくなっても、がんばってくれたんだっ?

「やっぱり、なんか違う気がする〜〜」

 確かにさっき、ちょっとテンション高かった……………?


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 ……………変に思われたよな?

 子どもでもないのに、あんな………はしゃいだみたいに…………。

 2人が見えなくなって、もしかして助走つけてジャンプしてみたらと、さらに何度か試してみた。

 最後は上手い具合に指で挟めて、するりと取れた。

 柄にもなく頑張ってみたりして………しかも取れたの見せたらもっと喜んでくれるのかな……とか……………。

 喜んでくれたけど…………可愛かったけど…………。

 もうちょっとスマートな感じで渡したかったのに……………………。

「あ、鳥飼くんっ、おはよっ。昨日、ありがとね?」

 言って、へへっと笑う。

 もう、昨日聴いたのに………可愛い。

「おはよう。気にしないでいいよ。たまたま上手くいっただけし」

「うんっ、でも、外暑かったのに、あのあとも試してくれたのかな、って思って」

 ばれてるし。恥ずかし過ぎる。

 顔が熱くなって、隠す。

「これ、お礼」

 言って、鞄の中から小さな包みをくれる。

「え、いいよ。そういうつもりじゃなかったし」

「うん。でも、あたしうれしかったし。たいしたものじゃないから。おいしいかわかんないけど、帰りにでも食べて?」

 いいのかな、もらっても。

「ほかの人来ちゃうよっ?」

「え? あ、うん………ありがとう」

 急かされて、受け取ってしまう。

「ううんっ。また教室でねっ?」

 言って、小さく手を振ってくれる。

 そのすぐ後で七尾さんが来て、慌てて海原さんにもらった小さな包みをズボンのポケットに入れる。

 ………………………こんなの、もらっていいのか? たかがあれくらいで?


 帰りにでも、とは言われたものの、昼休みに見てみたらそんな適当に食べるのはどうかと思って、家で食べることにした。

 大した物じゃないとは言ってたけど、開けると小さいナッツバーで、コンビニとかスーパーで売っているような感じのじゃなかった。

 前に、僕がこういうの好きって言ったの覚えてて、買ってきてくれたんだよな? わざわざ。

 大事に食べよう……………。

 そう思ってキッチンでコーヒーを淹れていると、弟が帰ってくる。

「ただいまーーっ」

 無駄にでかい声と共に、弟が玄関から直接キッチンに入ってくる。

 そして、ちらっと見てくる。

「何だよ?」

「こんな暑い日にもしかしてホット? ジジイじゃん?」

「ほっとけよ」

 本当に、余計なことしか言わない。

 しかも、コーヒーメーカーの近くに置いてあったナッツバーに気付いて、にやにやしながら訊いてくる。

「これうまそーじゃん? もらったん?」

 慌てて取り上げて、シャツのポケットに入れる。

「やらないからな?」

「いや、さすがにそんなことしねーよ。咲妃さんからだろ?」

 こういうときに、イラっとする。何でお前が名前で呼んでんだよ? とか………。

「にーちゃんのために作ったんだろーし」

「………………………………は?」

「あ?」

「作った?」

 弟が冷凍庫から取り出したアイスを口に入れながら振り向く。

「じゃねーの? 違った?」

「あ、いや、訊いてないけど……………」

 その発想はなかったけど、言われてみれば…………。

 普通のケーキ屋とかで売ってるように透明の袋に入ってて、これが入ってたのもサイズとかぴったりの専用の袋って感じだったし…………。

「大した物じゃないって言ってたのにか?」

「自分で作ったの大したモノですとかフツー言わなくね?」

「あ……まあ……そう、か……………」

 動揺して、とは言え、間抜けな返事だったと自分でも気付く。

 ただ、こいつに普通を指摘されるのはイラっとする。

「けど、きれいに包んであるし、ドライシートみたいなのも入ってるのにか?」

「わかんねーけど、咲妃さんってそういうことしそーじゃん?」

 サンドイッチの時もそうだったし、クリップの時も………。

 部屋にコーヒーを持って行き、ラインを送ってみる。

 少しして、ちょっと不安気な顔のエナガのスタンプが送られてきて、追加のメッセージ。

一一おいしくなかった?

 ……………………………………ムカつく。

 アイツに指摘されて気付いたのが悔しくて堪らない。

一一ごめん。まだ食べてない。また後でラインするね。

 女子って……………ちょっとしたお礼にお菓子とか……それだけでも、え? と思うのに、手作りって…………しかも、こういうのって、もっとこう見た目でわかるイメージだったんだけど…………。

 こんな普通の日に食べていいのか?

 でも、手作りってそんなに保たないとか言うし、食べられなくなったらそれこそ悔やんでも悔やみきれない。

 食べてしまうのが惜しい気もしたけど、結局食べることにした。

 微かに感じるくらいの甘さと、しょっぱいのが丁度よくて、おいしかった。

 それで、僕に合わせて作ってくれたのかと思うと泣きたくなるくらい嬉しかった。


     *♡*♡*♡*


 通話の都合を伺うラインの後、返事をすると鳥飼くんからすぐにかかってくる。

《今日、ありがとう。おいしかった》

「そっか。よかった」

 へへっ。ほんと、よかった。

 鳥飼くんの苦手なあまさ、ってまだよくわかんないし。

 でも、あのくらいなら大丈夫だったってことよね?

 味見しても食べられないほどまずくはないよね? って思ったから持って行ったけど、心配だったんだよね。

《大した物じゃないって言ってだけど、そんな事ないから》

 あ、もしかして重いとか思った? かな? なるべくそう思われないように、ちっさい感じにしたのにっ。

「えっとね、ついで、っていうか………けっこうね、自分のおやつも作ってたりして……それで…………そんなに手の込んだものじゃないし………ふつうのことだからっ……鳥飼くんも、ふつうにおやつ食べるくらいの感覚で食べてくれるとうれしいなっ、て」

《普通?》

「うんっ。ふつうに」

《………………………………それは、贅沢だね?》

「そ、そっかな?」

 だって、手作りって気持ちが重いとかってよく言うけど、高いからいつもは買えないものを自分で作ってみて心とお腹を満たす的な………食べ物に関しては、どちらかというと食いしんぼうの気持ちが強いだけだと思う。作る過程も、もちろん楽しいんだけど、食べるために作るものだしね。

 今回は鳥飼くんがおいしいって思ってくれたらいいなっ、とは思ったけど。そのうち一緒に食べるのがふつうになったらな…………とかは思ったけど。

 ………………こういうのが重いんだろうな、たぶん。

 でもっ、手作りじゃなくてもすきだったらこのくらい思っちゃうよねっ?

《じゃあ、この前の公園の時みたいなのも?》

「うんっ、そうっ! ああいうのも普通になったらなって…………」

《……………そっか》

 あれ? ちょっと、がっかりした感じ?

 もしかして、いやだったのかな? この前…………。

「あっ、でもねっ、もうっ、寝ないよっ? あの時はたまたま…………」

 鳥飼くんがちょっと吹き出したみたいに笑ったのがわかった。

《それはいいんだけど………ただ、普通になるのには随分かかりそうだから、大変だな、って思って》

 そんなに会えないからってことっ?

 毎週あんなのは無理だよって、ことっ?

「そんなことないよっ。いっぱい、ああいうことしてたら、すぐに普通になるよっ?」

《うん。でも、すぐには無理だよ》

 やっぱり、乗り気じゃないのかなっ?

「鳥飼くんは、もっとちがうことしたかった? 今度は、どんなことしたいっ?」

 ちょっと、間があって言う。

《ごめん。今、思いつかない》

 そのあと、ちょっともうしわけなさそうに笑った。

 今、どんな顔してるんだろ?

 大丈夫だよねっ? 昨日だって…………。

「あ、昨日っ、なんで声かけてくれたのっ?」

《え?》

「あのときっ、七尾さんもいたのにっ」

《ごめん。僕がどうにかできることじゃないのかもしれないとは思ったけど………僕の事で何か言われなかった?》

「うんっ。でもねっ、声かけてくれたのは意外だったみたい。あたしもほかの人のいるとこで声かけてくれると思わなかったから、うれしかったっ」

《うん………》

 そのあと、また少し話して通話を切った。

 あれ? 結局、なんで声かけてくれたんだろ?

 鳥飼くんのほうが話しかけられたくないみたいだったのに。


「じゃ、海原問1、鳥飼問2、笹丘問3…………」

 数学の答え合わせで、窓際の席のみんなが当てられる。

 そんなに難しかったわけじゃないからいいんだけど………。

 黒板の番号をふられた位置が高いっ。

 しかも途中の式が長いからできれば上の方から書きたいのに、あんなとこまで手届かないっ。

 …………真ん中くらいからでも、ちっさく書けば大丈夫かな? 後ろの人、見えないかもだけど。

 仕方なく書き始めようとしたところで、後ろからいきなり声をかけられる。

「問2解けた?」

「⁈」

 鳥飼くんっ?

 後ろからノートを覗き込んでくる。

 こういうふうに近くに立たれると、やっぱりおっきいなとか思って、余計にどきどきしちゃうっ。しかもっ、けっこう近くないっ?

 鳥飼くんって、たまにそういうとこあるけど、無自覚なのかなっ?

 なんでっ? はちまきのときもだったけどっ、ほかに人いるのにっ。しかも授業中とかっ…………。

「う、うんっ。解けてるよっ」

 ノートを見せると、くすっと笑って言う。

 そ、そんな顔教室でしちゃだめだってばっ。

 心臓、爆発しちゃいそうっ。顔赤くなってないかなっ?

「問2と変わってもらってもいい?」

「あ、で、でもっ………」

 先生に言わなくても大丈夫なのかな? と、思ってたら、鳥飼君が言ってくれてるっ。

「先生、いいよって」

「う、うんっ」

 昨日、七尾さんも言ってたけど、やっぱり違うかもっ。やさしいのは変わんないけど、やさしすぎるっていうか………あからさまっていうか………。

 ほんと、なんでっ?

 し、しかもっ、同時に書いたらちかいってばっ! こんなのっ、こまるってばっ!

 顔、あげらんないっ。

 字ふるえてないっ? このあと、席戻るとき、どんな顔すればいいっ?

 確かに、あたしがこの前しゃべりたいって言ったとき、待ってって言われたけど、もういいってことっ? まだ先だと思ってたけどっ? それにっ、あたしここまでとか、思ってなかったんだけどっ?

 も、もうちょっとふつうでいいんだけどっ⁈

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