表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スズサキ*  作者: さより
意識
33/63

*33

 結局、紅実ちゃんに変なサプリはやめとけって言われちゃった。

 どうしたらいいんだろ? せっかく付き合ってるのに、一緒にいられないの、やだな。

 こういうの、あたしのわがままなんだろうけど………。

 これからもっと一緒にいられないこととか出てくるかもしれないのに。

 こんなこと考えてるとか思われたら、うざいとかなっちゃうのかな? それで、やっぱり、みたいな……………やだやだやだやだ。考えたくないよっ。

 うざくはなりたくないもんね。くらい顔はあんまり見せないようにしないとだよね?


 昇降口で、鳥飼くんと顔を合わせる。

「あ、鳥飼くんっ。おはよっ」

 元気な感じ、元気なっ!

「おはよう」

 鳥飼くん、ちょっとびっくりしてる? 元気すぎたっ?

 加減わかんないっ。今までどんな感じだっけ?

 あと、話しすぎないっ!

「また、教室でねっ?」

 言って、紅実ちゃんのところに行く。

 近くにいたら話したくなっちゃうもんね。適度な距離、適度な。

「ど、どうだった?」

「ちょっとわざとらしいけど、いいんじゃない?」

 そっか。へへっ。

 こういう感じで、なれていけばいいよね?

 長く一緒にいるために、お互い無理はしないっ。

 鳥飼くんの言ってることもわかるもんね。

 そのぶん、おやすみの日会うときは、いっぱい会う。鳥飼くんもこの前、おやすみの予定とか聞いてくれたし、会えなかったけど。一緒にいたいって思ってくれてるってことだよね? ほんとに、学校で知られるのがいやなだけで。

 ピクニックみたいなのはOKってわかったし。可愛いのは食べにくいって言われちゃったけど………ちゃんと苦手なことも教えてくれてるってことだもんねっ。

 あたしも、次は手つなぎたいとか…………い、いいよねっ? 手くらい、付き合ってなくてもつないだりする人もいるし。

 手つなぎたいって言ったら、どんな顔するかな?

 いやだって言われるかな…………?

「無理はしないようにね? すれ違い出したら辛いと思うし。ちゃんとそこそこのわがままは言えるくらいの関係になんないとね?」

「うん」

 紅実ちゃんがちょっとさびしそうな顔をする。

 ……………もしかして、紅実ちゃんってそういうので別れちゃったのかな?

 けっこう秘密主義なとこあるし、たぶん付き合ってたことはあると思うんだけど……………。

「特にあんたはわがままだしね?」

 紅実ちゃんはにっと笑って、あたしの頭をぽんぽんする。

 また子ども扱いするっ‼︎

「そんなことないもんっ!」

「ごめんごめん。わがままなんじゃなくてあまえっ子だったね?」

「ちがうもんっ!」

 紅実ちゃんはははっと笑って、自分でしんみりしちゃったのをごまかすように笑った気がした。


     ✳︎♠︎✳︎♠︎✳︎♠︎✳︎


 今日、2人共いないから弁当でも買って帰れ、ってことだったけど…………。

 家の近くのスーパーに寄って考えていると、従姉妹と同じくらいの小さい女の子が残念そうに言う。

「ママ、パパのすきなカレーないよ?」

「仕方ないから他の買って帰ろうか?」

「やだっ。きょうはパパのすきなのにするのっ!」

 こういう言い方するの、うちのだけじゃないんだな。

 言い出したら聞かないというか………。

 母親と思われる女性はチャイルドシート付きのカートを押していて、そこには2才くらいの男の子が乗っていた。

「ほかのおみせは?」

「今からだと帰るの遅くなって、パパ帰ってきちゃうでしょ?」

「……………ママのバカっ。なんでもっとはやくかってないのっ⁉︎ きょう、パパのおたんじょうびなのにっ!」

「仕方ないでしょ? まあくんがお熱出してお買い物に来れなかったんだから」

 女の子が泣き出しそうな顔になってしまう。

 その家族の後ろを通り過ぎようとしたところで、棚の奥に商品がまだあるのが目に入った。

 店員の前出し作業が追い付いてなくて、上の棚の商品が下からだと見えなくなっているだけだった。

 こういう時、教えてあげた方がいいんだろうとは思うけど、見ず知らずの人間に声を掛けられるのも、今までの話を聞かれていたと思われるのも、怖がらせるだけじゃないかと思って躊躇してしまう。

「ちょっとすいません」

 覚えのある声と顔が現れて、目の前の家族と棚の間に割り込む。

「あ、すみません。ほら、どきなさい」

 母親が申し訳なさそうに下がって、女の子にもどくように促す。

「パパ好きなのって、これっ?」

 そいつが棚の奥からカレーの箱を取り出して、女の子に確認する。

「そうっ! それっ! なんであるの?」

 女の子がものすごく喜んでカレーの箱を受け取る。

「おねえちゃんに買って欲しくて、奥の方に隠れてたんじゃない?」

「すごーい!」

「すみません。ありがとうございます」

 母親もほっとして、嬉しそうな顔をする。

「いえいえ。パパに作ってあげるの?」

「うん。りいちゃんがね、にんじんハートにするの」

「へぇ? それはパパぜったい喜ぶね?」

「うんっ。おにいちゃん、ありがとう」

「どういたしまして」

 言って、手を振って家族を見送る。

 こういう事がスマートにできるのには感心する。

 そして、家族が見えなくなった後で、話しかけて来る。

「アイス買っていい?」

「だめだろ」

 大方、そんな事じゃないかとは思ったけどな。

「………さっきの、よくあんなタイミングで声掛けられるな?」

「タイミングとか、わかんねーよ。気付いたから、取っただけだし。にーちゃんだって気付いてたんなら取ってやったらよかったのに」

「お前とは違うんだよ」

 燕のように愛想は振りまけないしな。

「けど、にーちゃんのがやってんじゃん? 中学ん時も委員会とか係とかいろいろ。しかも一番他人に嫌がられたり、めんどくさそ一だったりするヤツ」

「それはやらされてたって言うんだよ」

「けどそれも、人望があって、じゃねえの?」

「そんな訳ないだろ?」

 ただ、大した理由もないのに断れなかっただけで、人望があった訳じゃない。

「あ、そーなん? でも、にーちゃんいつも言ってんじゃん? 普段できないことができるわけないだろ? って。にーちゃんはテストのことって言ってたけど、勉強以外にもあてはまんじゃねーの? って…………………つまり、おれの日々の積み重ねってヤツじゃね?」

 ちょっと自慢気に言われてイラっとする。

 けど、まあ、そうなんだろうな。

 海原さんにあんなふうに言われて、こいつの事も自慢の、とまでは思えないものの、こいつなりに考えてるよな、くらいは思う様になった。

 今僕が考えてるのも結局、そういう事なんだろうな。

「もしかして、にーちゃん自分で作ろうと思ってる?」

 カゴの中を除いて、弟が不思議そうに訊いてくる。

「………何だよ? 文句あるのか?」

 確かに燕の言う通りだった。ただ、自分の浅はかな考えを見透かされたようで、素直に返事はできなかった。

「作れんの?」

「何のために家庭科の授業があると思ってんだよ?」

「まぁ、そりゃそうだけど………あんなん、そういうのが得意だったり好きだったりする女子がやってくれんじゃん?」

 そうなんだよな。僕なんか邪魔だって言われるから端に避けてて、後片付けくらいしかやった記憶がない。

 それでも、海原さんが作って来てくれた弁当なんかを食べてから、このままじゃまずいよな? と思うようになった。

「で? なにすんの?」

「ご飯と味噌汁」

「で?」

「あと納豆とか…………?」

 そんなもんだよな。昔父さんとよくキャンプに行ってたときにご飯は炊いたことあるし、多分味噌汁も作ったことはあったはず。最初からハードルを上げすぎるのは得策じゃないよな?

「いや、朝メシじゃねーんだし。ってか、朝メシでもたんねーって」

「いきなりそんなには作れないだろ?」

「いや、だったら、何か買って帰えればいいじゃん? あっちにトンカツとか唐揚げとかあったし。にーちゃんだって、もっと筋肉つけてーんじゃねぇの?」

「っ……そんなこと言ってないだろ?」

「だって、部屋で腹筋とか腕立てとかやってんじゃん?」

「あれは…………………」

 何で知ってるんだよ?

「だったら、タンパク質だって」

「味噌汁に豆腐入れるし、納豆買って帰るって言ってんだろ?」

 そこは一応、僕だって考えてる。

「そんな量じゃ、増えるどころか減ってくって」

 ………………………………………減るのは困る、な。

「わかったよ」

 

     ✳︎♡✳︎♡✳︎♡✳︎


「はい。海原さんの分」

 運動会の予行練習の2日前、女子の体育委員の子から青いはちまきをわたされる。

 このために残ってって、言われたんだ?

 毎年1組は青だもんね。

 鳥飼くんも、青っ。

 …………別に2人だけってわけじゃないのに、同じなのうれしいとか思ってしまう。

 紅実ちゃんに言ったら、だったら鞄なんか1年のときからみんなおそろいじゃない? とか言われそうだけど。

「ねー、海原さん? はちまきのかわいい結び方知ってる?」

「そんなのあるのっ?」

「うん。それでね、ちょっと練習させて欲しいんだけど」

 七尾さんがにこにこしながら、席の近くに来る。

「あたし、部活…………」

「ちょっとだけ」

「いいけど、自分でできないの?」

「そういうわけじゃないけど、自分だとよくわかんないでしょ? どんな感じに仕上がるのか見たいけど、後ろとか見にくいし」

 確かに、合わせ鏡でも限界あるもんね。

「いいよ。紅実ちゃんに言ってくる。でも、部活あるからちょっとだよ?」

「ありがとう。海原さんの借りるね?」

 七尾さんにはちまきを貸して、廊下で待ってる紅実ちゃんにひとこと言って戻ると、七尾さんがはちまきを隠すようにごそごそしてた。

「どんな感じになるの?」

「ないしょ。あとで写真撮って送ってあげるから」

 言って、ちょっとにやにやしてる。

 大丈夫かな?

 ふつうに、カチューシャみたいになるように結ぼうと思ってたけど、それ以外にどんなのあるんだろ?

 たまに、結んで首にかけてるだけみたいな人はいるけど。

「後ろ向いて?」

「うん」

 って、後ろ向いたら鳥飼くんいるんだけどっ!

 ばっちり目があっちゃって、ちょっと笑ってみる。

 でも、鳥飼くんはちょっとびっくりした顔をしたあと、なにも言わないでそっぽを向いて、そのまま帰って行こうとする。

「あ、ば、ばいばいっ。またねっ?」

 ちっさい声で、こっそり言ったけど、鳥飼くんはちょっと会釈しただけで、そのまま教室を出て行ってしまう。

 こ、こういうのも、だめだったっ?

 挨拶くらいは、って言ってたのにっ。かなしっ。

「はい。いいよ」

 七尾さんのほうに向きなおると、ちょっと笑ってる。

「かわいいっ!」

「ほ、ほんとっ?」

「はい、写真撮るね?」

「うんっ」

 七尾さんがスマホで写真を撮ったあと、すぐにラインで送ってくれる。

 見ると、頭の両はしのほうに2つ三角の結び目ができてて、ちょうど猫耳みたいになってる。

「かわいいでしょ?」

 確かにかわいいのかもだけど………。

「これっ、子どもっぽいっ!」

「そっかな?」

「だって、保育園とか小学生くらいまでならかわいいかもだけど、高校生にもなって、こんなことするの子どもっぽくないっ?」

「そんなことないよーー、かわいいって。当日もやってあげるよ?」

「やだよっ! やだやだやだやだっ‼︎ ぜったいガキっ! とか言われるもんっ‼︎」

 あわててはちまきをはずす。

 あ………もしかして、これ鳥飼くんにも見られたよねっ? 子どもっぽいことやってんな、ってあきれてたっ?

 もーーーっ‼︎ 七尾さんのばかぁっ‼︎

「せっかくかわいかったのに」

 残念そうに、あたしのはずしたはちまきをとって、元に戻してくれる。

「でも、あたしは子どもっぽく見られるのやだな、って…………」

 あんまり思いっきりいやがって、ちょっと申し訳なかったかも…………。

 七尾さんはかわいいと思ってやってくれたんだもんね?

「でも、かわいいよ? あたしがやっても似合うかな? 一緒にしない?」

 …………複雑っ。かわいいって言われるのはうれしいけど、ほんとに子どもとか動物のかわいいとはちがうやつなのかな?

「あ、ごめんっ」

「え? あ?」

 いろいろ考えてて、七尾さんが返そうとしてくれてたのに気づかず、はちまきを取りそこねる。

 そして、あたしのはちまきはなぜかまだ開いたままになってた窓の外へ。

「うそーーっ⁈」

「ごめん! 拾ってくるね」

 言って、教室から七尾さんがあわてて出て行く。

 ついてないっ。

 あたしのはちまきだし、とりそこねたのあたしだし、七尾さんにまかせっきりにしてはおけなくて、追いかける。


 外に出る時に、昇降口の前で鳥飼くんを追い越した。

 あれ? まだ帰ってなかったんだ? 先に教室出たよね?

 鳥飼くんも、あたしと会うと思ってなかったみたいでふしぎそうな顔をしてた。

 今だったら、またね、くらい言ってもらえたかも?

「海原さん、先行ってるね一一⁉︎」

 七尾さんの声に、あわてて後を追う。


「落ちてないね?」

「うん…………」

 どうしようっ? 終わったあとは学校に返さなきゃなのにっ。紛失っ?

 買っても高いもんじゃないけど、借りたものなくすとか……………。

「あ、あそこ!」

 七尾さんの指さすほうを見ると、木の枝にはちまきがひっかかってる。

 あーーんっ、どうするのっ?

 あんなの取れないよっ?

「2階からだったら取れるんじゃない?」

「え?」

「教室の窓から」

「下からのが近いよ、ぜったいっ! それに、上からのが近いとしてもあそこ3年生の教室だよねっ?」

 七尾さんって、手は伸びるものとか思ってる? まんがじゃないんだからねっ?

 2人で顔を見合わせて、どうしようか迷っていると後ろから声。

「どうしたの?」

 振り向くと、鳥飼くんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ