*31
紅実ちゃんとか徳永さんはよくって、あたしはだめなのって、やっぱりあたしが子どもっぽくてはずかしいのかな? 紅実ちゃんとか徳永さんとかだったら大人っぽいし美人だから、仲いいとか思われても平気なんだっ。
せめて150センチ超えたら大丈夫だったっ?
身長伸ばす方法ってあるのかな? スマホで検索してみる。
身長のばすには?
えっと、牛乳っ。うん、毎日飲んでるっ。カフェオレ飲むとき使ってるもんねっ。納豆………今日買って帰ろっ。あと、せのびっ。
え? でもっ、牛乳1日1パックは? 納豆も2、3パックはって………そんなに食べてたらごはん食べらんなくなっちゃわないっ? あ、だから、サプリメントとか…………。
「ごはん食べながらスマホとか、めずらしいね? 何見てんの?」
「う、うんっ。ごめんねっ」
あたしってばっ、紅実ちゃんたちとごはん食べてるときにっ。
あわててスマホから顔をあげる。
「背が伸びる方法?」
いっしょにごはんを食べることになった徳永さんがあたしのスマホをのぞき込んでくる。
「や、やだっ! 見ちゃだめっ‼︎」
あわててスマホをふせるけど、もうばっちり見られちゃってる………。
「ナニ? 身長欲しいの?」
「う、うんっ」
「何で?」
「な、なんでって……………」
鳥飼くんとならんで歩いたときにはずかしくないように………とか、言えないよねっ。
「ふ、服とかっ、おとなっぽいの着れないしっ。靴もサイズなかなかないしっ、ヒールとか履きたいのにっ…………」
「でも、可愛いの着れるからいいじゃん? 子供服とかでも着れるんじゃない?」
「き、着れるけどっ、やっぱり子どもっぽくなっちゃうしっ、紅実ちゃんと歩いてても姉妹にしか見られないもんっ」
「靴は、私もヒールとか履けないからネ?」
「………え? なんでっ?」
ぜったい似合うのにっ? 足長くって、きれいなのにっ?
「5cmヒールでも男子平均身長軽く超えちゃうし、一緒に歩くと威圧感ヤバいでショ?」
「そ、そうなのっ?」
威圧感とか、あんまり気にしたことなかったけど…………。
「気にする人は気にするよね? 私もヒール履くのってちょっと抵抗あるもんね」
紅実ちゃんもっ?
「でもっ、普通に履いてるよねっ?」
「あんたが気にしないし、私もそこまで気になるわけじゃないからね。でも、気になる時はあるよ?」
「ちょっといいな、とか思った男子が自分より低いとかフツーにあるからね?」
「私も、たまにあるかな」
確かに高いな、とは思うけど。
「だ、だからっ、鳥飼くんっ⁉︎」
鳥飼くんっ、高いもんねっ?
「私が原因のケンカ止めてもらっといてなんだけど、西岡クンと飯倉クンのケンカ止めたってきいたから、どんだけでかいのかと思ったけど…………確かにでかかったけど…………細すぎでショ? 何で、アレで止められたワケ?」
徳永さんは不思議でたまらない顔をする。
あたしも見てなかったもんな。
「あははははははっ………やっぱ幸穂もそう思う?」
「え? え? で、でもっ、鳥飼くん、かっこよくないっ?」
あ……………で、でもっ、これくらいはセーフだよねっ? 付き合ってるって、ばれなきゃいいんだしっ。
男子だったら、だれが一番かっこいい? ってくらいの話だもんね?
「…………………アンタ、目悪いの?」
「そんなことないもんっ‼︎」
や、やだっ。むきになっちゃった。
「えっと………か、顔は、やさしい感じだからかっこいいのとはちょっと違うのかもだけど、ふ、雰囲気とかっ…………」
顔だけだったら、凛々しいとか、きりってしてるとか、そんな感じじゃないもんね。
でも、ほら、背高くってしゅってしてるし、身のこなしとか?
「いや、ナイし」
「ほら、言ったでしょ? 客観的な意見、わかった?」
紅実ちゃんまで………なんで鳥飼くんかっこいいのわかんないのかな?
あ、でも………っていうことはよ? 鳥飼くんって、徳永さんのタイプじゃないってことっ?
それなら、あたし心配することないのかなっ?
「で、でもっ、ごはんいっしょに食べたりとか…………」
「あ、あれは………………」
いつもクールな感じなのに、ちょっとあわてた様子で顔を赤くする。
やっぱり、鳥飼くんのことっ………?
紅実ちゃんが笑いをこらえている。
「私一人でご飯食べるのイヤだっただけだからっ! そ、それに、ヒロキと仲いいみたいだったし………実際はそういうワケでもなかったみたいだけど
………」
「……………え? でも、徳永さんって、手嶋くんのこと、ことわっ………あっ、えとっ…………あたし、あのとき見ちゃってて………ご、ごめんなさい」
「……………いいケド、別に。ヒロキって、トモダチだと思ってたし………でも、あんなバツゲームみたいなことされるんだと思ってショックだったから………大人気なかったな、とは思うけど」
「ば、バツゲームっ?」
…………なのかな? え? そんな感じじゃなかったと思うけど?
「そもそもヒロキはもっとカワイイ子と付き合うべきだと思うし……………………あの後から仲よくなったでショ? 付き合わないの?」
徳永さんが真っ直ぐにあたしを見てきいてくる。
…………………え?
「あ、あたしっ⁈」
「言っとくけど、咲妃が好きなの手嶋君じゃないよ?」
紅実ちゃんがお弁当を食べながらさらっと言う。
それはそうだけど、じゃ、だれ? とかなんないっ?
「なおさらヒドくない? あんな思わせぶりなのとか………」
…………思わせぶりっ? ひどいっ?
徳永さんがあたしのことをきつい目で見てくる。
「手嶋君、咲妃のことは同じクラスの女子、くらいにしか思ってないと思うよ?」
「は? そんなワケないでショ? オトコだったら自分よりちっさくてカワイイ子がいいに決まってるでショ?」
「羨ましいんでしょ?」
紅実ちゃんがぼそっと言う。
「ち、違うってばっ‼︎ 私はヒロキが遊ばれてんのかな、って……思って………なかなかカノジョできたとかきかないし…………」
「だいたいあんた初っ端から態度悪かったじゃない? 咲妃に対して」
「そんなことないってばっ! だって、ヒドイじゃない? 七尾サンとかしょっちゅう言ってるからネ? 早く付き合えばいいのにって」
「え? なんで、七尾さんっ⁉︎」
まるで接点なさそうなんだけどっ?
「部活の時、小原サンとかといっしょに話してるの聞こえるし…………」
ちょっとすねたように、言いわけしてくる。
七尾さんって、テニス部だよね? 徳永さんは…………ソフトボール部だっけ? あーー、近いかもっ。
…………っていうか、あたしちがうって言ってるのにっ‼︎ 手嶋くんもいい迷惑だよっ!
もしかしてほかのとこでも言ってる?
うわっうわ一一っ。もう七尾さんには鳥飼くんのこととかぜったい言えないっ‼︎
「う、うそだからっ! あたし、手嶋くんちがうもんっ! ぜんぜんタイプじゃないしっ‼︎」
「じゃ、ナニ? どういうのがタイプなワケ?」
……………………あ。で、でも、タイプまでならわかんないよねっ? ふつうにっ、一般的な感じでっ。
「え、と………せ、背が高くって、やさしい感じっ?」
「それ、ヒロキもそうじゃん? だいたい、アンタより背低い男子とかウチの学校いないんじゃない?」
……………た、たしかにっ。
「も、もっと高い感じっ。あ、あと、細身で、目とかまゆとかたれてたり?」
紅実ちゃんに、言いすぎじゃない? みたいな顔をされてはっとする。
「あ、ほら、その………み、見るからにっ、やさしそうな感じってことね」
ば、ばばばばれたりっ、してないよねっ?
「ふーーん? それ、さっきも言ってたけど、鳥飼クンみたいな感じ?」
や、ややややばいってばっ。ばれちゃったらどうしようっ? 鳥飼くんとの約束なのにっ! 約束守れないからとかって、きらわれちゃったらどうしようっ⁈
「それはないか。アレは細身でやさしそうって言うより、ガリガリで情けない感じよネ?」
徳永さんが勝手に納得してて、紅実ちゃんは必死で笑いをこらえてる。でもっ!
「そんなことないもんっ‼︎」
な、なんで、伝わんないのかなっ?
「咲妃の好きな相手より手嶋君の好きなタイプきいてみたらいいんじゃない? 意外に幸穂みたいのがタイプとか言うかもよ?」
紅実ちゃんっ! それは言いすぎじゃないっ?
「いや、ないでショ。それに、ヒロキとは付き合いたいとかじゃないし」
…………………え? えっ? え一一っ? そうなのっ?
「弟いたらこんな感じなのかな? って」
お、おとうとっ? 手嶋くん同い年なのにっ? 弟っ?
「そ? まあ、でも。弟と弟みたいは別物だからね」
言って、紅実ちゃんはからっぽになったおべんとうを包みなおして、バックにしまった。
「明日も来る? 咲妃のこと嫌な訳じゃないんでしょ?」
ちらっと、徳永さんがあたしを向く。
「まあ、そうネ。じゃ、他に食べる人いなかったら来てもイイ?」
ちょっとてれ気味に、きいてくる。
「あたしはいいよっ?」
「じゃ、ヨロシク」
言って、徳永さんは先に教室に戻って行っちゃった。
「幸穂、手嶋君にきくかな?」
「きかないと思う」
*♠︎*♠︎*♠︎*
「おはよ」
な、何で、今日も?
「おはよう」
無視するわけにはいかないけど、関わりたくない。
でも、今日なんかちょっとおかしい?
「あのさ、昨日、ゴメン」
「何が?」
「アンタの好きな子のこと悪く言って………」
す、好きな子? 海原さんのこと?
「い、いや。違うからっ」
「隠さなくていーって。私そういうのわかる方だし」
そうなのか?
「ヒロキが好きなら、アンタ邪魔って思ったけど」
「え? 手嶋君が?」
「海原サン、どう考えてもお似合いだと思わない?」
「あ、うん」
……………最初、僕もそう思ってたし、やっぱりそうなんだよな。
僕だと、見た目はもちろんだけど、頼り甲斐というか………中身の方がほど遠い。せめてもうちょっとでも、相手を楽しませるとか、癒してあげられるとか…………? できる気がしないけど。
待って、とは言ったものの具体的なことなんか思いつきもしない。
「海原サンはヒロキのことスキじゃないっぽいのよね。ヒロキはどうだと思う?」
……………徳永さんって、告白されたことあるんだよな? まだ好かれてるとかは思ってない?
「ち、違うんじゃないかな?」
「なんで?」
「なんで、って…………」
徳永さんのことまだ好きみたいだよ、とは言えないよな?
「タイプじゃないみたいだよ?」
とりあえず、誤解だけは解いといた方がいいよな?
徳永さんは驚いて僕の腕を掴んでくる。
「なっ…………⁉︎」
「アンタ、ヒロキとそういうこと話すの?」
「あ、いや、そんなには?」
「そんなには、ってことはちょっとは話すんだ? どんなのがタイプとか言ってた?」
ど、どんなの? 徳永さんのこと言っとけばいいよな?
「背高くて、派手で我儘な気の強い感じ?」
「ナニソレ? そんなオンナ好きになるヤツいるワケなくない? ジコチューでイヤなオンナにしか思えないんだけど?」
……………た、確かに、自分で言っててもそう思う。
「あ、でも、こう…………………………」
ごめん、手嶋君。手嶋君の好きな人のいいところが見つけられない。こんなことなら、どういうとこが好きなのかとかもっと訊いとけばよかった。
「ナニ?」
徳永さんが不機嫌そうに僕の返答を急がせる。
「あ、美人?」
多分。確か、言ってたよな? 森崎君も言ってたし。
「んーー、可愛いみたいなのより、美人が好きってコト?」
…………外見しか見てないみたいな言い方になってないか?
「まー、でも、海原サンとは違うタイプなんだ?」
「あ、うん。そうみたいだよ?」
よかった。取り敢えずは納得してもらえたみたいで。
「そっか」
徳永さんはちょっとがっかりしたような、ほっとしたような顔でため息混じりに言った。
「ほっとしてる?」
「そんなことないわヨ。トモダチだったモノとしては、付き合うならカワイイ、イイ子と両想いになってほしいじゃない? 海原サンもカワイイとは思うけど、ヒロキの好きなタイプじゃないなら仕方ないか、と」
「…………友達だった?」
「あ、まあ。ちょっと私がキレて無視しちゃってたから、私のせいなんだけど。大人気なかったな、とは思ってて………」
「多分、手嶋君は気にしてないと思うけど?」
「そんなワケないでしょ?」
もう口もききたくないとかだったら、まだ諦められないとか言わなくないか? それに、この前昼まで一緒に食べた訳だし。それに……………。
「だって、今でも愛称? で呼ばれてるでしょ?」
「………………そ、それって、クセとか、そういうコトでしょ?」
「よくわかんないけど、嫌いになったなら、そんな呼び方しないんじゃない?」
徳永さんって…………残念な人だったりするのかな? 人間関係とか…………他人の事言える立場じゃないけど。
「そ、そっか。アンタ結構嬉しいコト言ってくれるじゃん?」
「そんなことはないけど」
照れくさそうに僕の顔を見ると、ふっと笑った。
「アンタの好きな子、背が高くてガリガリの情けない顔したのがタイプなんだって。望みあるかもヨ?」
言って、笑いながら先に走って行ってしまう。
……………なんだ?




