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スズサキ*  作者: さより
意識
26/63

*26

 手嶋君がカレーを頼んで戻って来ると、違うクラスの男子も一緒だった。

「一緒いい?」

 徳永さんの様子を伺うと、僕を見る。

「僕は、いいけど?」

 僕に選択権はないと思うし。

「私も、いいよ」

 言って、ちょっと沈んだ様子でわかめうどんを食べはじめた。

 僕が徳永さんの前に座っていて、手嶋君が徳永さんの横に座る。森崎君が僕の隣に座るけど、食堂はなかなかいっぱいで申し訳なかった。

「俺、4組の森崎。君が鳥飼君? テッシーからきいたけど、西岡投げたんだってね?」

「な、投げ………? 誰がそんな?」

 噂に尾ひれ……レベルの脚色じゃない気がする。

「アハハハハ。やっぱ、テッシーがかなり盛ってただけなんだ?」

「手嶋君⁉︎」

「えー? だって、柔道だったら1本取れてるとこでしょ?」

「知らないよ! 不意打ちだったし、たまたまうまくいっただけだから‼︎ 先生達にまで伝わったらどうするの⁉︎」

「まーまー、でも、あの後職員室に呼ばれてたけど、事情きかれただけだったんでしょ? 大丈夫だって」

 ……………後で問題になって、停学とかなんないよな?

「でもさ、何でわざわざ止めに入ったりしたの?」

「…………何となく?」

 海原さんのことなんか言えないし、濁すつもりで曖昧に答える。

 その後、森崎君はじっと僕を見た後、こっそりと訊いてきた。

「鳥飼君って、徳永のこと好きなの?」

 ………………………………………………………………は?

「え? 何で?」

「やっぱ徳永って、美人じゃん? スタイルもいいし、男としてそんなオンナに誘われたら悪い気しないじゃん?」

 まあ、そっか。そういう雰囲気だもんな。派手で目立つし…………我儘っぽいけど…………髪型とか…………母さんに似てる感じがして苦手だけど。

 でも、できることなら昼食くらい静かに摂りたい。こんなに、みんなの視線を感じる中で食べたくない。落ち着かない。

 僕が見られてる訳じゃないんだろうけど。

 …………そんなこと言える立場じゃないよな。

「そこまで、自惚れてないよ」

「そっか、そっか。それならいいけど、徳永って誰にでもあんなだから、期待しない方がいいよ?」

 誰にでも?

「2組のケンカもさ、徳永に二股かけられたのが原因だし?」

「森崎、言いすぎ」

 手嶋君にも聞こえていたみたいで、たしなめる。徳永さんも険しい顔をしていた。

「私はそういうつもりじゃなかったんだけど、向こうが勝手に………」

「気にすることないんじゃない? 勘違いしたほうにも責任はあるんだしさ」

 優しく、慰めるように言ってはいるものの、手嶋君もちょっと辛そうに見えた。

 でも、それで何となくわかってしまった。多分、手嶋君も勘違いするくらい仲良くしてだんだろうな、と。

 そして、手嶋君にそういう思いをさせた徳永さんが森崎君は気に入らない、って感じだよな?

 徳永さんは………どうなんだろう? 自分から誘っておいて僕より、手嶋君のことを気にしてるみたいな……………。


     *♡*♡*♡*


 昼休み終わって、帰りに少し話せるかな? って思ってたけど、1人になったとこつかまえられなくて、結局話せないままだった。

「そんなに気になるんだったら行かないでって言えばよかったのに。手嶋君は知ってるんでしょ?」

「…………でもっ、なんかっ、うざいかなっ、て」

 そんなので嫌われたくないなって思ったんだもんっ。

 あんなきれいな人から誘われたら嫌な気しないよね? だからって、好きになるとは限らない、とは思うけど…………。

「ラインは?」

「………たぶんねっ、今ラインしたらうざくなると思って」

「我慢してるんだ?」

「うん」

「まー、確かに非モテだった奴がモテはじめるとフラフラしそうだよね?」

「鳥飼くんはそんなんじゃないもんっ」

「だったら、心配ないでしょ?」

「で、でもっ…………」

「わからなくはないけどね。最初からそれでどうするの?」

「だって…………」

「海原ちゃん、これ着てみてくれない?」

 部長でもある二ノ宮先輩がすそのひろがった、背中と腰のあたりに大きなリボンがついてるミニドレスをもってくる。

 どう見ても、子ども向けだ。

「小さくないですか?」

「海原ちゃんなら細いし、大丈夫でしょ?」

 うん。たぶん余裕で着れると思う。

 でも、着れちゃうのがやだ。だって、子ども体型実感しちゃうから。

 それでも、先輩からのたのみだし、デザインもかわいいから着てみたくないわけじゃない。

 しぶしぶ、というわけでもないけど、着てみる。

 ……………かわいいっ。

「かーーわいいっ。これ、『魔法探偵マジカルみんと』のみんとが14話でパーティーに潜入する時の服なの。どう?」

「かわいいですっ」

 さすが女の子向けアニメのヒロイン衣装だっ。

 あたしも昔は見てたな。あのころはマジカルらいむだったけど。いっつもかわいい服着ててうらやましかったんだよね。耕太くんていうちょっと頼りない男の子が助手で、いっつも大事なヒントをくれる和介おじさんがかっこよかった。

「でしょでしょ? 今度コスプレイベントあるんだけど、一緒に行かない? 私が陽太くんやるから」

「それは………すみません。行かないです」

 コスプレイベントって、いろんなポーズ決めていっぱい写真撮られたりするやつだよね? むりむりむりっ。そんな恥ずかしいことできないっ。

 そもそもあたし、今は見てないしっ。

「咲妃、ちょっとこっち向いて?」

 紅実ちゃんの声に振り向きざま、スマホのシャッター音が鳴る。

「いまっ、撮ったっ⁉︎」

「うん。可愛いよ」

 にやーっと笑って、今撮った写真を見せてくれる。

「やだやだやだっ。消してよっ」

「可愛いからいいじゃん? ラインで送っといたげる」

「ほんと、可愛いっ。坂上ちゃんわたしにも送って? これ目線入れるからオンスタあげてもいい?」

「ぜったいやですっ‼︎」

「えーー、残念。これアップしたらフォロワー数増えそうなのにな」

 冗談がすぎるっ。

「これ、咲妃に合わせて作ったんですか?」

「アハハハ。実はこれ、いとこがピアノ発表会で着られるように作ったんだ。多分、海原ちゃんと同じくらいかなーと思って」

「いとこって?」

「小5。でも、ぴったりだね?」

 確かにっ…………。でもっ、小5………。

 ショックだっ。あたし自分ではおさなく見られても中学生くらいだと思ってるのに、小学生っ…………。

「みんとも小5だし、そのうちでいいからコスイベ出てほしい。絶対バズるよ?」

「やですってっ。そのいとこさんと行ったらいいじゃないですかっ?」

「そうなのよねー。でも中学生だからな一一一、うーーーん…………」

 言いながら、リボンの位置を確認してる。

「うん。ありがとう。もう脱いでいいよ」

「はい」

 ドレスを脱いで、先輩に返す。

「鳥飼君にも送ったげたら?」

「やだよっ」

 だって、ドレスかわいかったけど、子どもっぽいもんっ。徳永さんとかあんなに大人っぽくてきれいだし、マーメイドドレスとかおとなっぽいの似合うんだろうな。

 落ちこんでいると、ラインが届く。

一一まだ部活?

 鳥飼くんだっ! え? なんでっ?

 とりあえず、返事っ!

一一うん。学校にいるよっ。

 思わず、高速で返信しちゃうっ。

一一ごめん。またラインするね。

 え? 少しくらいいいのに。なんだろ? 気になるっ。

 鳥飼くんからって、めずらしいよねっ?

 で、でもっ、明日おやすみだしっ、もしかしてデートのお誘いだったのではっ⁉︎

 なくはないよねっ? 付き合ってはじめてのおやすみだしっ。

 天気いいみたいだしっ、もしちがっても、あたしから誘っていいよねっ? また公園とかっ? お弁当とか作っちゃったりっ? やだ。どうしよっ。鳥飼くんいやがるかなっ?

 この前、ツナエッグ食べてたけど、おさかなのほうが好きなのかな?

 たまごがすきとか?

 でも、気合い入りすぎみたいなのより、軽いもののほうがいいよね? おにぎりとかならベンチみたいなとこでも食べれるし。一応、レジャーシートは持って行くけど………。

「彼氏のよろこぶおべんとう?」

「みっ、みないでよっ!」

 スマホで検索していたワードを見られて、あわててかくす。

「男なんか唐揚げ入れときゃいいのよ」

「でもでもっ、それだけってさみしくないっ? それに、可愛いとか思われたいもんっ」

「そりゃそうかもだけど。だからって、そんなパンダちゃんのキャラ弁とかどうなの?」

「あ、そっか。鳥飼くんだったら鳥のほうがいいよねっ?」

「いや、そういうんじゃなくて………」

「これ、かわいくないっ? シマエナガちゃんのおにぎりだって」

 しかも、これならかんたんにできそうっ。あと、おかずもちょっとくらいほしいよね?

 あー、でも手軽に食べられられるって、考えたらラップサンドとかになっちゃうのかな? 野菜もお肉も入れられるけど………。

「ねえ、紅実ちゃん?」

「何?」

「おにぎりとサンドイッチだったらおかしいかなっ?」

「………いいんじゃない? ど一一でも」

「どうでもはよくないのっ! おかしいって思われて、ひかれちゃったらどうするのっ⁉︎」

「その時は私が慰めてあげるわよ」

「そんなんじゃなくてっ! そうならないように、かわいいなーとか、はなれられないなーとか、思われたいのっ!」


     *♠︎*♠︎*♠︎*


「今日、トリートメントどれ付ける?」

「どれでも」

 母さんはビールを飲みながら面倒臭そうに答える。

「じゃ、これにするね。乾かしてる時もいい匂いするし」

 母さんが父さんに髪を乾かさせてる。

 思わずため息がもれる。

 髪くらい、自分で乾かすか、面倒なら短くすればいいのに。

 父さんも母さんの召使いじゃないんだから、そこまでする必要ないって、わかんないのかな? だいたい母さんが結構な我儘を言ってもきいてやったりするから、調子に乗るんじゃないか?

 前に一度、嫌になったりしないのか訊いたことはあったけど「だって、母さん美人だろ?」とか言われてはぐらかされた。

 多分、父さんも言えないんだろうな。

 そう思うとため息が出た。


 自分の部屋に戻って、さっき届いたラインの返信を確認する。

一一忙しくないよっ。なんかようだった?

一一通話してもいい?

 自分から言っておいて、こういうこと思うのもどうかとは思うけど、学校であまり話さなくしている分、海原さんの声が聴きたかった。

 昼休み、ちょっと元気なさそうだったし、そういうの心配して電話とかしても変じゃないよな? 一応、彼氏なんだし。

 すぐにエナガのスタンプでOKと返って来る。

 すぐに通話ボタンをタップする。

「ごめん。迷惑じゃなかった?」

『うんっ。大丈夫だよっ。なんだった?』

「何って事はないんだけど、昼休みにちょっと…………元気なさそう……って思って………」

 やっぱり、用って言う程の用じゃないし、どうなのかな?

 海原さんだって家に帰ってもすることはいろいろあるだろうし。

『大丈夫だよっ。鳥飼くんからの通話で元気出たっ』

 言って、へへっと笑うのがわかった。

「そっか」

 こういうの、自分も言われるとは思ってなかった。気を使って言ってくれてるって分かっても、嬉しいもんなんだな…………通話でよかった。

 多分、今顔赤くなってる気がする………。

 こういう時、他に何話せばいいんだろう? わざわざ通話してまで訊くことって…………そもそも、元気なさそうだったって言うのも、わざわざ通話じゃなくてもよかった気がするし。元気出た、とは言ってくれたけど…………。

「元気なかった?」

『………え?』

「ごめん。さっき、元気出たって言ったから、それまでは元気なかったのかと思って………」

『あ………うん…………』

「何かあった?」

 いいよな? 彼氏なんだし。このくらい心配しても。

『徳永さんと、お昼………どんなだったのかなっ? て』

「特に、何も?」

 本当に、何のために一緒に食べたのか。意味あったのかな?

『なんでっ、徳永さんとごはん食べるってなったのっ?』

「僕もよくわからないんだけど、一昨日のケンカは自分の所為だった、って言ってて、止めてくれたからお礼に? みたいな感じだった」

『ほんとに、それだけ?』

「うん。最初お礼に定食奢るって言われたけど、僕弁当あるし。結局何のためにいっしょに食べたかはわかんないけど」

『…………どう、だった?』

「どう? って?」

『徳永さんって、きれいだよねっ?』

「あ、うん」

 派手なだけで、普通じゃない? とは、言いづらい。でも、まあ、みんなそう言ってるし、そうなんだろうな、とは思う。

『やっぱり、鳥飼くんも徳永さんみたいな人、いいなって思う?』

「え?」

 あれ? もしかして、今日僕が徳永さんと一緒に食べたの、気にしてる? それで元気なかった………?

 いや、そんなことないよな。昼食べるくらい…………………………。

「今度、一緒に食べる?」

『いいのっ?』

 ちょっと言ってみただけだったのに、海原さんの反応が、いい?

『じゃ、あしたかあさってはっ? また公園かどっかで』

「明日?」

『あ、ごめっ。鳥飼くんの予定もきかないで………』

 明日、休みだ。明後日も。

 そっか。付き合って初めての………。誘ってもよかったんだ。

「いいよ。でも、ご飯食べるなら公園の中とかは混んでたから他の………」

『あ、えとね………』

 どうしたんだろう? 緊張してる?

「行きたいとこあるの? それなら、混んでてもいいよ?」

『ちがうのっ。あのねっ、いやだったら、ぜんぜんっ、ことわってくれていいんだけどっ、お弁当とかっ、作って行ってもい?』

「お弁当?」

『うんっ。この前の公園、芝生広場とかあったしっ、どうかなっ、て………』

「そういうの大変じゃない?」

『ううんっ。大丈夫っ。そんなにたくさんは持って行かないようにするし………いやっ?』

「そんなことないけど………」

『あ、あたしねっ、か、彼氏っ、できたらピクニックとかしたいなっ、て思ってて………憧れてたっていうか………』

 こういうの、どう反応したらいいんだろう? 本当に、電話でよかったと思う。

 顔、見せられない。

「いいよ」

『ほんとっ? じゃ、鳥飼くんあまいのは苦手って言ってたけど、ほかに食べられないのとかあるっ?』

「ないよ」

『すきなものはっ?』

「特には………」

『ふだんはっ? 紅実ちゃんってば、からあげ入れとけばいいよ、とか言うんだけど、すきっ?』

 外では結構食べるけど……………そんなには食べられないけど………もたれるし……………それに、揚げ物とか家でするのは面倒じゃないのか? 母さんは料理自体が面倒とか言ってるから別としても………父さんも……………。

「あんまり食べないかな?」

 本当に、家では食べないし。

 海原さんは家でも唐揚げとか作るのかな?

『じゃ、さっぱりしたのほうがいいっ? 鳥ハムとかっ?』

「うん。そういう感じの方がよく食べるかも」

『そっか。じゃ、あげものなしで作って持って行くねっ?』

 ………………これ、もしかしなくても僕のも、ってこ

とだよな?

 彼女がお弁当作って、とかきいたことあるけど…………そういうこと、だよな?

 まさか、自分がそういうことをされる側になるとは思っていなくて、どうしていいのかわからない。

 海原さんに全部って………悪くないか?

 僕、何もしなくていいのか? いや、いい訳ないよな?

『あしたでもいいっ?』

「うん」

『じゃ、あしたっ。時間とかどうしゅっ! にゅっ?』

 ん?

「え? 何?」

『ごめっ。くしゃみ。時間どうするっ? て言いたくて………』

 恥ずかしそうに、教えてくれる。

 くしゃみ?

「大丈夫?」

 そんな可愛いくしゃみとか、あるか?

 しゅっ! にゅっ? って…………。可愛いすぎないか?

『うん。髪かわかしてなくて……』

「そっか。ごめん、切るね? 早く乾かして?」

『だ、大丈夫だからっ。まだ時間とかっ………』

「じゃ、11時くらいにまたホームまで行くから、電車乗ったらラインして。じゃ、明日。おやすみ」

『う、うんっ。おやすみなさい………』

 ちょっと残念そうな声だったけど、風邪でも引かれたら会えなくなるもんな。

 一緒にいたら、乾かしてあげられるのに……………いや、そういうの、普通は自分で乾かすだろ? 手順というか、適当に乾かすんじゃダメだろうし……………普通はそうだよな?

 そんなに長くないから大して時間もかかんないだろうし………………髪もつやつやしてるけど、柔らかそうだもんな。きっとすぐ乾くんだろうな……………と、少し残念に思ってしまって、はっとする。

 いや、ないな。ある訳ない。ないない。大体どういう状況だよ?

 僕が海原さんの髪乾かすような状況とか、ある訳ない。

 もし、あったとしても海原さんはそんなこと言わないし、可愛いから…………。

 そしてまた、言い訳が父さんみたいだと気付いて、がっくりする。

 違うからな。僕はさせられるんじゃなくて……………。

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