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スズサキ*  作者: さより
意識
25/63

*25

「いっしょに食べたかったんじゃないの? あたしなら気にしないよ?」

「う、うんっ。でも、大丈夫っ。学校だしっ、いいのっ」

 ほんとはすっごいいっしょに食べたかったけどっ。

 たぶんお休みの日は遊べると思うし、仕方ないもんね。鳥飼くんないしょにしたいって言ってたし、学校だとだれが見てるかわかんないもんねっ。

「小林さんが鳥飼君って、逆高校デビュー? とか言ってた」

 思わず、吹き出してしまう。

「なにそれっ? そんなことあるわけなくないっ?」

 中学の時は鳥飼くんがヤンキーとかそういう人だったってこと? 想像力たくましすぎない?

「でもねー、ほら、西脇君とかみたいのとも仲良さそうじゃない? ヤンキーとまでは言わないけど、ケンカくらいはしてたのかなー? とか」

 …………確かにっ。西脇くんとしゃべってるときはちょっと口悪かったりしたもんね? で、でもでもっ………。

「そ、そんなことないよっ。だって、今回だって西岡くんとか飯倉くんのこと殴って止めたわけじゃないんでしょ?」

 見てなかったからよくわかんないけどっ。

「まあ、そうね。でも、西岡君には足払いかけてたよ?」

「あ、あしばらいっ?」

「そ。すごいよね? 西岡君柔道部なのに。慣れてんのかな? って思ったけど?」

 な、なんか、イメージがっ………。

「イメージ違った?」

「う、うんっ。鳥飼くんってそういうとこはちょっと………あ…と………れ、冷静に、先生とか呼んで来てくれるタイプかと……」

「今いないんだから正直に言ったら? 弱そうって」

「違うもんっ。弱そうとかじゃなくてっ、やさしいんだってばっ」

「ま、私はちょっと見直したけどね? 咲妃と付き合うんならちょっとくらい頼りになるとこ見せてくんないと、素直に喜べないからね」

 空になったお弁当箱を包みながら、にこっと笑ってくれる。

 へへっ。


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 何してるんだろう? それに、誰だ?

 昼休みが終わって、教室に戻ると僕の席に女子が座っている。

 しかも一人で。

 一瞬、ためらって教室に入るのをやめる。

 たまに弁当を食べたり、話をしたりするに、席を使われていることはあるものの、一人で、というのは初めてだった。

 周りにいる人が僕の席に座っている女子を気にして、ちらちらと振り返っている。海原さんも。

 女子はゆるいウェーブの髪をいじりながら、つまらなそうにしている。

 席の主が戻って来たってわかったらどいてくれるよな。

 溜め息に似た深呼吸をして自分の席に戻る。

「ごめん。そこ僕の席なんだけど」

 女子が僕に気付いて、振り向く。

「知ってる」

 言って、僕を見て立ち上がるだけで、どく気配はない。

「鳥飼っていう背の高いヒトって、アンタ?」

「そう、だけど?」

 僕に、用事? いや、でも、僕知らない人だし、用なんかないよな?

 でも、どう見てもここで僕がどいて、とでも言おうものなら、周りから避難される気がする。

 返答に困っていると僕の後ろから声がした。

「なんか用だった?」

 戻って来た手嶋君が、親しげに声を掛ける。

 知り合い………?

「ま、ネ」

 女子の方は少しぎこちない様子で、答える。

「昨日ケンカ止めてくれたって人見に来ただけ」

 昨日の? わざわざ?

 2人が僕を見てくる。

「あのケンカ、私のせいだったみたいで、ごめんネ。じゃ、また」

 女子はそれだけ言って、教室を出て行った。

 何だったんだろう?

 昨日のケンカ? あの時、あんな人いたかな? 気にしつつも、やっと空いた自分の席に座ると、手嶋君も自分の席に座った。

 ちょっと不機嫌そう、かな?

 手嶋君は後ろを振り向こうともしなかった。

 それでも気になって、後ろから小声で訊いてみる。

「さっきの、知ってる人?」

 手嶋君は少し驚いたように振り向いて、そのあと、あっと思い出したように教えてくれる。

「徳永幸穂」

 言って、手嶋君はまた前を向く。

 徳永幸穂………って、手嶋君が好きな人じゃなかったか? さっきの人? 手嶋君の好きな人ってさっきの………⁉︎

 告白したけど振られたっていう………?

 また? 何で僕に? っていうか、わざわざ、来る必要ないよな? そもそも黙っとけば自分の所為とかわからなかった訳だし。何考えてるんだろう?

 次の授業の準備をし始めると、ラインが届く。

一一なんの話だったの?

 海原さんで、エナガのスタンプが『?』を飛ばしている。前を見ると、海原さんが心配そうな顔でこっちを見ていた。

 僕にもさっぱり、なんだよな。


     *♡*♡*♡*


 なんで徳永さんがっ?

 あいかわらず、きれいっ。はなやかっ。お姫さまみたいっ。

 背も高いし、スタイルいいから鳥飼くんといると絵になるというか………。

 男子って、やっぱり徳永さんみたいな人のほうがすきだよねっ?

 美人だし、女らしいっていうか…………。

 あ、手嶋くんだっ。なに話してるんだろっ? 鳥飼くんともなんか話してるけど、どういう関係なのかなっ?

 きいてもいいよねっ? あ、あたしっ、か、彼女だしっ。

 …………やっぱり、あんまり気にされるとうざいのかな? スマホを持ったまま、なかなかラインを送れないでいた。

 あーーんっ。どうしようっ?

 軽い感じでなら、大丈夫かなっ?

 まよったあげく、えいっ、と送信する。

 あ、スマホ見てる。返信、すぐくるかなっ?


「で、なんて?」

「鳥飼くんも、よくわかんないって」

 あのあと、すぐに先生が来て返信もらえなかったけど、5時間目終わったあとに、僕にもよくわからない、ってことだけ。

 そのあと、話せないまま帰っちゃって、今部活…………。

 ハンカチにスズメの刺繍とかしちゃってるし。

「紅実ちゃんって、徳永さんと仲いいよねっ? なんかきいてないっ?」

「そこまでじゃないよ? 最近はあんまり話さないし」

 紅実ちゃんと徳永さんは小学校がいっしょ。でも、中学にあがる前に引っ越したみたいで、中学からいっしょのあたしは徳永さんを知らなかった。

 高校に入って紅実ちゃんが徳永さんと再会したときに、あたしも少しだけ話したのが最初。

 あんまりきれいな人だったし、あたしも仲よくなりたくて、自分から話しかけたりしてたけど、なんかちょっと冷たい感じ。紅実ちゃんにはそんなことないのに。

 あたし、見た目も話すこととかも子どもっぽいとか思われてたのかな? 話し合わないとか………。

 あたしは徳永さんみたいな人って、あこがれるんだけどな。

 鳥飼くんといっしょにいるとことかお似合いだったし………。

 あっ、もしかして、前に七尾さんが言ってたの、鳥飼くんと徳永さんくらいじゃない? 

『ハグしやすいのは15センチ差らしいよ?』

 ………や、やだやだやだやだっ。

 想像してしまって、いやになる。

 でもっ、鳥飼くんすきって言ってくれたもんっ。徳永さんがいくらきれいだからって、そんなすぐにどうこう、みたいなのはないよねっ?

「徳永さんって、鳥飼くんのこと気になってるのかなっ?」

「………何で?」

「なんとなく………」

 だって、徳永さんって4組なのにわざわざ1組までくるとか………。しかも、どう見ても鳥飼くん待ってたよねっ?

「あんた、もしかして自分の彼氏は世界一かっこいいとか思ってる?」

「さすがにそこまではっ………」

「女子ならみんな好きになるよね、みたいな?」

「………だ、だって、背も高くてかっこいいでしょ? 見ただけでやさしいのわかるし、中身とか知ったら、好きになっちゃうよね?」

「………………あばたもえくぼっていうか………まあ、人の好みは千差万別だけど……………客観性って、わかる?」

 こまって、言いきかすように言う。

 また子どもあつかいだっ。

「そのくらいわかるもんっ。だれが見てもそう思うとか、そういうことでしょ?」

「説明できても理解できてないのかね?」

「どういうことっ? あたし、客観性がないってことっ?」

「鳥飼君に関しては?」

「わかんないってばっ」

「……………咲妃と鳥飼君だと身長差結構あるけど、ちゃんと顔とか見えてる?」

「見えてるよっ! 紅実ちゃんひどいっ!」


     *♠︎*♠︎*♠︎*


「今帰り?」

 昨日、帰るの遅くなったから今日は昨日できなかったとこもやって……。

 スマホをチェックするとラインの通知が来ていて、母さんからだった。

 そっか。今日母さん休みだから、家いるんだっけ。多分今まで寝てたな。

 帰りに買い物とか………。

「ねえ、無視?」

 帰ってから、もう一回行って来いって言われるよりはマシか。グループラインに入ってるけど、僕が行くべきだよな。

 燕に頼むと余計な物買ったり、足りなかったりして母さんの機嫌が悪くなるし、最悪出直すことになるもんな。あと、金持ってるのか、とか。部活もあるから、僕のが早いしな。

 そもそも、母さんも休みの日くらい夕飯作るとか無理しなくていいのに。

 父さんの方が料理はうまいんだし、むしろ僕が…………。

「ねえってば!」

 目の前に女子が現れて、不機嫌そうな顔を向けてくる。

 徳永さんだった。

「え?」

 僕に話し掛けてた?

「ごめん。気付かなくて………何か?」

 周りの視線が徳永さんに集まっていて、僕にまでそれが及ぶ。

 目立ちたくないのに………何の用?

「お礼したいんだけど?」

「お礼?」

「ケンカ止めてくれたでしょ?」

「別に、徳永さんのためにやった訳じゃないし、気にしなくていいから」

 言って、横を通って帰ろうとすると、腕をつかんでくる。

「明日、定食おごってあげる。いっしょにお昼食べよ?」

「いいよ。弁当あるし」

「もしかして、迷惑?」

 はっきり、迷惑って言っていいのかな? できる限りこういう目立つ人とは関わりたくない。

「一緒に食ったらいいじゃん?」

「?」

 返事に困っていると、手嶋君が間に入ってくる。

「弁当あるなら、学食で弁当食えばいいんじゃない?」

 言いながら、手嶋君も靴に履き替える。

 それだと、お礼、じゃないよな?

 手嶋君もちょっと不機嫌そうだ。

「せっかくサチが誘ってんのに、断んの?」

 せっかく………って。

 こんな目立つ人と一緒に昼ご飯とか、注目浴びて落ち着けない気がする。

「………じゃ、手嶋君が一緒に………行けば………」

 途中まで言って、はっとする。

 手嶋君、徳永さんのことまだ好きみたいだけど、一回断られてるんだよな? まずかったかな?

「いや、鳥飼とって………」

「ヒロキも一緒でいいヨ?」

 ちょっと、徳永さんが仕方なさそうな顔をする。

 ………………。

「じゃ、決まりね? 明日、学食来てネ」

「オレも、いいの?」

「だって、仕方ないから………いいヨ」

 言って、文系クラスの昇降口の方に走って行った。

 ちらっと、手嶋君の方を向くと徳永さんの後ろ姿が見えなくなった後で、僕を向く。

「ごめん。巻き込んで」

「オレが好きなの知ってたから気利かせたんじゃないの?」

「そういう訳でも……いや、でも、その……断られた、とか、言ってたから…………どうかと…………」

「確かに断られてるけど、オレとしては納得できてないからね」

「どういうこと?」

「やっぱ、鳥飼くらい背高くないと徳永とはバランス取れないもんな」

 身長の話? バランスって………。

「………関係ある?」

「そういうとこがムカつくんだって。身長あるヤツに言われたって、説得力ないし」

「ごめん………」

 でも、身長だけあってもね………。

「あーぁ、オレもせめてあと10センチくらい伸びないかなー一一?」

 手嶋君は部室に向かってて、僕が表門から帰る別れ際に、戸惑う。

 今、言ってもいいよな?

 そう思っても、なかなか恥ずかしくて言い出しづらい。

「帰んないの?」

「あ、あのさ。ちょっと……その…………報告、と言うか………」

「何?」

「………僕、海原さんと、その………ちょっと……」

「海原と? 告白でもされた?」

 冗談でも言うように、笑いながら訊いてくる。

「いや、その…………した………?」

 かなり驚いたようで、笑いが消える。

 僕も顔が熱くなって、手で覆う。

「え? マジで? 言うつもりないとか言ってなかった?」

「まあ、うん……ちょっと、成り行きで………」

「それで?」

「つ、付き合う? みたいな………」

「へぇ〜? よかったじゃん?」

 言って、にっ、と笑ってくれる。

 その顔を見て、少しほっとする。

「木村には?」

「木村君には……七尾さんと仲良いし………」

 多分、七尾さんって僕のことあんまりよく思ってないもんな。あまり伝わってほしくない。

 海原さんには悪いけど。

 木村君にも申し訳ないとは思うけど。

「内緒?」

「まあ、うん。まだ、ちょっと自信ないと言うか……もしかしたらすぐ振られるかもしれないし………」

 そうならないための努力はしていこうと思ってるけど、まだ、どうしたらいいのかはわからない。その間に嫌われなければいいけど。

「そんなことないでしょ? でも、どうすんの?」

「何が?」

「サチのこと」

「徳永さんは、関係なくない?」

「………ごめん、オレ部活急ぐから」

 後ろを通りかかった違うクラスの男子に話しかけながら、手嶋君は部室棟の方に行ってしまった。


     *♡*♡*♡*


 4時間目が終わって、紅実ちゃんと話しながら教室を出て行こうとすると、手嶋くんと鳥飼くんがもめてた。

 めずらしっ。どうしたんだろっ?

「どうしたの?」

 あたしより先に紅実ちゃんが話しかける。

「鳥飼が一緒に昼食べる約束してたのに、どっか行こうとしてんの」

 ちらっと、鳥飼くんは弱った顔であたしに視線をくれたあと、言い訳するように答える。

「してないし、僕行かないよ」

「したじゃん⁉︎ 2人じゃ気まずいからオレもって、なったんでしょ?」

 え? ちょっとまって? 思わず、2人の会話に口をはさむ。

「え? 2人っ? だれとっ?」

 気まずいから手嶋くんも? え? だれと食べる気だった?

 いやな予感がするっ。

「サチ」

「徳永さんっ?」

 やっぱりっ‼︎ でも、どういうことっ? いつの間にっ? あたしだって、お弁当いっしょに食べたいのにっ‼︎

 そういうのが顔に出てたのか、鳥飼くんが申し訳なさそうに言う。

「ご、ごめんっ、昨日の帰りに………でも断ったし」

「いつ?」

 手嶋くんが鳥飼くんをにらむ。

「手嶋君もいたでしょ? 僕断ったけど、一緒に食べる人欲しいみたいだったから手嶋君のこと言って、いいよってなったでしょ?」

「いや、あれ、3人でって、ことでしょ?」

「…………え? 3人でとか、言ってないよね?」

「は?」

「僕は手嶋君と徳永さんと2人で、の、つもりだったけど?」

「いや、サチも3人と思ってるって」

「…………嘘でしょ?」

「いや、嘘じゃないし」

 あきれた顔で、手嶋君が自分のスマホのライン画面を見せる。

 徳永さんからだった。

一一窓際の奥の方に、3人分席とってるね。

 鳥飼くんはそれを見て、信じられないっ、て顔をする。

 ………鳥飼くんってたまにはげしく勘違いしてるよね? スマホ忘れて取りに戻ってきて、実は持ってたとか。あたしが燕くんのこと好きだと思ってたりとか。

 これからだいじなことは、ラインでも念押ししようっ。

「とにかく、そういうことだから行くよ」

「ちょっ………」

 言って、手嶋くんが鳥飼くんを連れて行こうとする。

 そうなると、鳥飼くんって徳永さんといっしょにお昼食べるの? 手嶋くんもいるけど………。

「いいの?」

 手嶋くんに連れていかれる鳥飼くんの後ろ姿を見ながら、紅実ちゃんが気づかってくれる。

「よくは、ないけど………」

「幸穂もどういうつもりなんだろ?」

「やっぱり、鳥飼くんのことすきなのかな?」

「それはないと思うけどね」

 でも、やっぱり心配だよ一一一っ。

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