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スズサキ*  作者: さより
意識
21/63

*21

 なんか、早く帰りついちゃったな。

 もしかしたら少し遅くなるかもとか、言って出たのに。

 でも、楽しかったし、燕くんから家での鳥飼くんのこときけたし……うん。告白はできなかったけど、よかったことにしよっ。

 鳥飼くんにライン送っとこ。

一一今日、楽しかった(^ ^) ありがとう❤︎ また遊ぼうね?

 ………い、いいよね? ちょっとくらい。こういうハートとか入れちゃっても。

 やっぱり、燕くんにはばれちゃってるよね? ほんとに言わないかな?

 もしかしたらとっくに、鳥飼くんにもばれてるのかもしれないけど。

 あたし、ほんとに鳥飼くんのタイプなのかな? 見た目、かな? それだったら、背ちっさくて合う服ないとか、ロリっぽいとかばかにされてきたりして、いやでたまんなかったけど、初めて自分のこと肯定できる気がする。

 今日は言えなかったけど、次はがんばれるっ。たぶんっ。

 次はあたしから誘っても、いいよねっ?

 どこがいいかな? また公園とか?

 ピクニックとかどうだろ? お弁当作って行ったりして………。

 や、やだなっ。あたしもう、鳥飼くん来てくれる前提で考えてる。

 燕くんのせいだっ。鳥飼くんがクリップもらったのすっごいうれしそうにしてたとか、ライン確認するときにやにやしてるとか、うれしいことばっかり言ってくれるからっ。

 でも、ほんとだったらいいな。

 とりあえず、明日はみつあみしてこ。

 ほんとにしてきたんだ? とか、思われるかな? ちょっとくらいよろこんでくれるかな?

 ふふっ。

 

 …………ライン、既読になってるのに、返信来てない。どうしたんだろ?

 いつも、短かったり遅かったりはするけど、スルーってなかった気がする。

 疲れてて、早く寝ちゃったとかなのかな?

 ま、いいや。朝会ったとき直接言ってみよっ。ちょっとくらい、いいよね?


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 こんなの、もう何の意味もないのに。

 それでもどきっとしてしまうのが悔しかった。

 一一今日、楽しかった(^ ^) ありがとう❤︎ また遊ぼうね?

 少し早い時間の電車に乗って、揺られながら何度も確認してしまう。

 ほんとに、楽しかったとか思ってるのかな?

 こんなのに、どんな返事したらいいんだろう?

 そう思いながら、結局次の日になってしまってる。学校に着くと手嶋君と木村君が話していた。

「あ、鳥飼おはよ」

「おはよ」

 手嶋君と木村君の返事に挨拶を返す。

「おはよう」

「何かあった?」

 手嶋君が訊いてくる。

「何もないよ」

「けど、泣きそうな顔してる」

「元からだよ」

 思ったよりも冷たい声になってしまっていて、はっとする。

「ごめん、やっぱりちょっとイライラしてるかも」

 言って、愛想笑いで誤魔化す。

「どしたの?」

「電車で舌打ちされて……多分、僕が邪魔だったんだと思うけど」

「鳥飼もそんなんでイライラするんだ?」

 木村君は、ははっと笑って信じてくれたみたいだったけど、手嶋君には嘘だってばれたみたいだった。何も訊いては来なかったけど。

 そのあと、木村君の話を上の空で聞いて、適当なところで相槌を打ってみたりする。

 嫌な奴だよな。こんなだから、どうでもいいようにしか扱われないんだ。

 少しして、海原さんと七尾さんが教室に入ってくる。

 七尾さんが木村君の横で立ち止まる。その関係で、僕の横の近い位置で海原さんの存在も止まる。

「将翔君、おはよう」

 七尾さんが少し恥ずかしそうに、木村君に言う。

「あ、うん。おはよう」

 木村君も少し照れ臭そうに、返事をする。

 呼び方、変わってる。

 七尾さんって、つい最近まで手嶋君のこと好きじゃなかったか? 木村君もそれ知ってるはずなのに。いいのかな?

 …………だめだな。木村君のことまで否定的になってる。

 人の気持ちなんて変わるものだし、そもそもそうなればいい、と思ったのは僕なのに。

 そのやりとりの端で、僕の肘に何かが当たる。つい、振り向いてしまって、海原さんと目が合った。

「あ、お、おはよ」

 木村君達に気付かれないような小さな声で言ってくる。

「おはよう」

 どんな顔していいのかわからなくて、それだけ言って目をそらす。

 …………三つ編み、してたな。

 媚びてるのかな? 僕にってわけじゃなくて………。


     *♡*♡*♡*


「うそっ?」

「ほんと」

 朝、昇降口で鳥飼くんに会えなくって、残念だなって思ってるところに、七尾さんのお知らせだった。

 金曜日の夕方、部活終わった後木村くんといっしょに帰ったらしい。

 あたしも一緒に帰ったことあるし、昨日はデートだったもんっ。

 教室に行くと、鳥飼くんはもう来ていて、木村くんたちと話してた。

 今日、来るの早かったんだ?

「将翔君、おはよう」

 え? 名前呼び?

 それは、すっごいうらやましいっ。いいなっ、いいなっ。

 ちらっと、鳥飼くんを見る。

 あたしに気づいてないのかな?

 こっち向かないかな? みつあみしてきたし………。

 迷ったけど、ちゃんと顔が見たくて、鞄をちょっとだけ鳥飼君の肘に当てる。

 あ、こっち向いてくれたっ。

「お、おはよ」

 笑って、こっそりとあいさつしてみる。

「おはよう」

 いつもより、そっけない声で返ってきて、すぐに目をそらされる。

 あ、あれ? やっぱり、教室でって、いやだったのかな? このくらい、いいかな? って思ったけど。


「へえ? 告白はできなかったけど、そんなことがね〜?」

 紅実ちゃんがにやにやしてる。

 うん。でも、今日はいい。ゆるしたげる。昨日のことで気分いいし。

「期待してもいいよねっ?」

「いいんじゃない? 咲妃もとうとう彼氏できるんだ?」

「ま、まだわかんないよっ? 弟くんの話とか、ほんとかわかんないしっ」

「大丈夫だって。だいたい、好きじゃなかったら2人で遊びに行こうとかなんないんじゃない?」

「そうだよねっ?」

 紅実ちゃんからの後押しもあって、よけいに自信がついてくる。ぜったい、次がんばるっ!

「今日、三つ編みしてるのも鳥飼君に言われたから?」

「う、うんっ」

「何か言われた? 本当にしてきてくれたんだ? とか」

「それは、ないけど。教室だとあんまりしゃべらないし」

「照れてんのかね?」

「どうかな?」

「いつ言うの?」

「こんど、遊び行ったら……こんどはねっ、あたしからさそうの。………や、やめたほうがいいかな?」

「いいんじゃない? どんな反応するだろうね? 嬉しくて鳥飼君の方から言ってくれたりして」

「そ、そこまではっ………」

 あったらうれしいけど、そこまでうまくはいかないよねっ?


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 掃除の時間、ゴミ捨て場に海原さんと木村君が話しながらやってくる。

 同じ班だっけ?

「鳥飼って、いっつも一人でゴミ捨て当番なのな?」

「いつもじゃないよ」

 班の中で片付けとかやるより、一人でゴミ捨ての方が気が楽だからやってるって言った方が正しい。

 海原さんがちらっと僕を見て、木村君に言う。

「先に戻ってるね?」

「あ、うん」

 戻るんだ?

 ………別に、用とかないもんな。

 海原さんの後ろ姿を無言で見送ったあと、木村君が話しかけてくる。

「鳥飼んとこの弟って、やっぱ勝ってんの?」

 昨日、試合って言ってたやつかな?

「勝ってるんじゃないかな?」 

「そっか。鳥飼んとこって、強いもんな。負けないか」

「そんなことはないと思うけど」

 興味ないけどな。いくら母校で、弟がやってるからって言っても。

「海原んとことは当たるかも知んねーけど、鳥飼んとことはブロック違うからな」

「………海原さんって、サッカー詳しいの?」

「そこそこじゃない? 坂上の弟がやってるって言ってたし、多分それで?」

「坂上さんの………」

 それで、か。

 坂上さんの弟の試合、一緒に見に行ってて、とか? ブロックが違っても、県大会くらいまで進めばぶつかることもあるよな?

 …………全部、納得できてしまってすっきりした分、辛かった。

 夜、風呂から上がってスマホを確認すると、海原さんからラインが来ていた。

一一今度の土曜日か日曜日、ひまだったりする? またどこかいっしょに行きたいな。

 壁の端からこっちを伺うエナガのスタンプも一緒に送られてくる。

一一次は鳥飼くんのうちに近いところにする?

 家近い方が弟と会う可能性も高いとか思ってるのかな?

 そもそも家の近くの屋外なんかうろつく気にもなれないのに。

 特に中3の頃なんて酷かったもんな。

 今なんて、その頃よりずいぶんマシなのに、何でこんなに辛いんだろう?

 海原さんのラインとかいちいち気にして………いちいち確認するから気になるんだよな。

 溜め息がこぼれる。

 僕に興味があるわけじゃないだろうし、もういいよな…………………。

 海原さんのライン画面から、メニューを開いてブロックをタップする。

 もうこれで、気にすることなんかなくなるはず。

 同じクラスだから、目の端くらいには映るけど。


     *♡*♡*♡*


 おかしい、よね?

 あれから、全然返信来ない。最後に送ったラインなんか既読にもなんないし、朝いつもの時間に行ってもぜんぜん会わない。

 なんでっ?

 あたし、さけられてる? なんかしたのかな?

 公園で、鳥飼くんの言ったほうのお店行かなかったし、ワッフルがっついちゃったし………そういうのっ?

 それとも、燕くんに会っちゃったから、家でいろいろ言われていやだった?

 燕くんからあたしが鳥飼くんのことすきとかきいて、そんなつもりなかったから、とか?

 そうやって思いはじめると悪いことしか思いつかない。

 このままだったら、前みたいにもなれないのかな?

 せっかく同じクラスになれてうれしかったのにっ。ちょっとくらい仲よくなれたらって、思ってただけなのに、鳥飼くんがやさしくって、思ったよりかわいいとこもあったりして、もっと仲よくなりたいって思った。

 美化委員の仕事も、偶然が重なってラインも交換できたりして、こういうタイミングがあうのって、運命だったりするのかな、とか………どきどきして、たまらなくなった。

 でももう、誘うのとかもやめたほうがいいのかな?

 ………あいさつくらいならいいよね?


     *♠︎*♠︎*♠︎*


「かーちゃんがメシってさ」

「勝手に入ってくんなよ?」

 相変わらず、ノックもなく入ってくる。いつも以上に自分がイラついてるのがわかる。

 それを弟も感じてイラっとして、揶揄(からか)うように言ってくる。

「何? 咲妃さんと電話でもしてたん?」

「うるせえよ。黙れ」

「何イラついてんだよ?」

 コイツが悪い訳じゃないのはわかっているのに、ムカついてたまらない。

「別に」

「そんなイライラしてっと嫌われんじゃね?」

「うるせえって言っててんだろ?」

 思わず、燕の胸倉を掴む。

「はっ、なんだよ? 図星さされてキレるとか、ガキかよ?」

 はっとして、手を緩めたところに燕が蹴りを入れてくる。

「仕返し」

 言って、馬鹿にしたように舌を出す。

 それにまたカッときて、ずいぶん騒いでしまったみたいで、母さんが怒鳴り込んできた。

 そのあと、リビングで母さんがケンカの原因を訊いてくる。何も答えないでいると、質問を変えた。

「どっちから?」

 ………………僕だ。そのくらいは覚えてる。

 でも、それを黙っていると、燕がふざけたように言う。

「にーちゃんから」

「そ。あんたは風呂入って寝なさい」

「メシは?」

「ある訳ないでしょ? そんなに食べたかったら、明日まとめて食べなさい」

「なっ…………」

「何?」

 母さんが睨むと燕が仕方なく、出て行こうとするけど、立ち上がる時に舌打ちをして、またドスの効いた声で怒鳴られる。

「舌打ちをしないっ‼︎」

 燕はまた舌打ちしそうになるのを我慢して、リビングから出て行く。

 それでも、やっぱり母さんは燕に甘い。

「で? 何で手出したの?」

「…………燕が余計なこと言ってきたから」

 投げやりに答える。

「余計なことって?」

 言える訳ない。

 黙っていると、溜め息混じりにまた喋り出す。

「まあ、いいわ。それなら、普通にしときなさい」

「普通だよ」

 特別なことなんかひとつも持ってない。

「日曜からずっと、機嫌悪いまんまでしょ? そのせいで家の中まで重くなってるの、わかってる?」

 それは、何となくわかる。でも、仕方なくないか? 実際、イライラして堪らない。

「将来、社会に出ればクソみたいなヤツ相手にも平然と対応しなきゃならないこともあるのに、燕くらい適当に相手できなくてどうするの?」

 学校ではうまくやってるつもりだ。

 多分、手嶋君にはバレてるけど。

 ムカつく。

「………母さんって、燕には甘いよね?」

 母さんは少し大きな溜め息をついて、続ける。

「あんたは昔から交友関係狭いから、相手との距離をつかむのがうまくないのよね。そういうところは、人と付き合っていく中で自然と身につくことだから………少しくらい乗り気じゃなくても、周りの人との関係を優先しようとか、そういうこと考えたことある?」

「………無理する必要ないでしょ?」

 不貞腐れて答える。情けない。

 子どもみたいだ。

「無理する必要はないわよ。ただ、無理しない付き合い方ができるようになりなさいって言ってんの。わかる?」

 わからない訳じゃない。でも、自分ではうまくやってるつもりだ。

「自分では聞き分けいいつもりなのかもしれないけど、違うからね? 今も、自分が我慢すればいいと思ってるでしょ? 周りからしてみれば、それこそ無理してるように見えるわよ」

 ………………………。

「以上。ご飯食べなさい」

 母さんが立ち上がって、キッチンに向かう。

「………いい。食べる気しない」

 言って、リビングから出て行こうとすると、腕を引っ張られる。

「食べなさいって言ってるでしょ?」

「燕はメシ抜きなんでしょ? 僕も…………」

「燕とあんたは違うでしょ? 少しでいいから食べなさい」

 言って、冷蔵庫から缶ビールを出してリビングから出て行く。

 キッチンには父さんがいて、冷めた夕飯を温め直してくれる。

 母さんが出て行って、父さんと目が合うとふっと笑って、楽しそうに言ってくる。

「母さんって怒ると迫力あるよな? 美人だからさ」

 父さんはいつも呑気だ。思わずため息がこぼれる。

 最後の一言には同意しかねるけどね。

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