*19
急いで食べてるの、可愛いけど。
僕が先に食べ終わったから気使ってるだけだろうし。
それに、このあとどうしたらいいんだろう? このままずっと歩いてるだけなのもつまんないよな?
と、いうか、そもそも楽しんでくれてるのか?
「鳥飼くんは、このあと行きたいところあるっ?」
本当はもうちょっと歩けてない部分とか行きたい気はするけど、1周歩くだけでも3キロくらい歩いてるもんな。
それに公園ばっかりも飽きるだろうし。どこか違う場所の方がいい?
「海原さんは、どこか行きたいとこある?」
「池の真ん中くらいに島みたいなとこあったでしょ?」
「うん」
「あそこ、行ってみたい。ちょっと戻るけどいい?」
「いいけど、大丈夫? 疲れてない?」
「大丈夫だよっ。ちょっと休んだし」
まだ、元気そうだよな? 大丈夫、か?
「あとね、入ってきたところくらいに桜並木あったでしょ? そこも行きたい」
「桜並木?」
「うんっ」
言って、へへっと笑う。
「桜って咲いてるときはもちろんきれいだけど、花散ったあとに葉っぱが出てきてるの、すきなの」
そうなんだ? そういうふうに思ったことなかったな。
「新緑の時期って、寒くないし、お外でごはん食べるのもおいしいよね?」
確かに、そうかもな。もう少ししたら、梅雨に入って外に出辛くなるし、それが終わったら暑くなって紫外線も厳しくなるし。
「じゃ、食べ終わったらその島みたいなとこ行って、桜並木に行く?」
「うんっ」
言って、へへっと嬉しそうに笑ってくれる。
「いっつも、こういうとこくるの?」
「普段は、山が多いかな。たまに海も行くけど」
「海も行くんだ?」
「泳がないよ?」
「そっか。あたし、泳ぐの苦手。うちの高校、プールないからほっとしてる」
「海原さんはこういうとこ、好きなの?」
「うん。たまに、こういう木の多いとことかくるとほっとする」
「木の多いところ?」
「おばあちゃんのうちが山の方だったから…………」
「鴨とか学校の近くの川にもいたりするよね?」
「うん。体育館の方から、よく見えるよ」
「もしかして、それでお昼あそこで食べてるの?」
「うん。まあ………他にも来るしね」
こういうふうに、少し話しながら歩いてるだけで、たまに喋らなくなる時もあるけど、気まずいわけじゃなくて、ただいっしょにいるだけみたいな感じとか、いいな、と思ってしまう。ちょっと、くすぐったいような気はするけど。
*♡*♡*♡*
なんか、いい感じだよね?
たまに沈黙ながれるけど、重たい感じとかじゃなくて、こそばゆいっていうか、ちょっとどきどきして、きゅんってなる。
だって、ちょっと見上げたら鳥飼くんいて、目が合うんだよ?
はずかしくって、すぐにそらしちゃうけど。なんでこんなに目線ちがうのに、ちょいちょい目合うのっ?
すごくないっ? もしかしたら、鳥飼くんもあたしのこと少しくらいはすきかも………とか?
こんな期待しちゃってて、ごめんってなったらどうしよう?
でも、少なくともきらわれてはないよね? お友だちから、くらいはいけると思ってるんだけどな。それも、期待しすぎかなぁ?
「今日、三つ編みしてるけど、もう、学校にはして来ないの?」
え? 髪っ?
「あ、あれはっ………最近はっ、寝ぐせ、ついててもちゃんとなおしてるからっ……」
もうっ。七尾さんのせいだっ。こっそり言った意味なかったやつっ。はずかしっ。
「寝癖治せないときしかして来ないの? 今日もちょっと編んでるけど」
今日のも、寝ぐせついてたからって、思われてるっ?
約束してから、いつも以上にヘアケアとかがんばってるのにっ。
そんなんじゃないのにっ。
「今日はっ、違うよっ? 今日はついてなかったしっ」
「そうじゃなくて、普通の時もしてきたらいいのに、と思って」
「ふつうのとき?」
「いつもしてたら、寝癖ついてたとかわかんないし」
「あ、そっか。でもっ、子どもっぽくない?」
今日は、髪巻いてるし、ちょっと大人っぽく見える感じでやってみたけど。
「そんなこと、ないと思うけど? …………似合ってる、と思うし」
「え? に、似合っ………?」
「こ、個人的な感想………あ、でも、いつものが似合ってないとかじゃなくて………」
個人的なって、もしかして、みつあみすきなのっ? もし、そうなら毎日でもしてくるよっ? 学校行くときのみつあみって、子どもっぽく見られそうで寝ぐせついたときくらいしかしなかったけど、鳥飼くんが似合ってるって言ってくれるならするよっ? うん。明日からみつあみっ。寝ぐせ、ついてなくてもっ。
けっこう見てくれてるんだ?
そういうの、あんまり興味ないと思ってたけど。
やっぱりっ、今日、なんかちがうよね?
「ごめん。気にしなくていいから………」
気にするよっ? 社交辞令ってわかってても、うれしいもんっ。
彼女になれたら、毎日こんなこと言ってくれたりするのかなっ?
「鳥飼くんと付き合ったら、毎日どきどきしちゃいそうだねっ?」
「え?」
思わず、鳥飼くんが立ち止まる。
「あ………」
う、うわっ。ど、どどどどうしよっ? 鳥飼くんが彼氏だったらとか………心の声もれちゃったよ。
へへへんに思われてないっ?
もう、告白みたいに思われてない? こんなついでみたいな感じじゃなくて、もっとちゃんと言おうと思ってたのにっ。
「それって…………」
「ご、ごめんねっ。あたし、ちょっと…………」
やばいやばいやばいってばっ。
ででででもっ、もう、言っちゃうっ?
鳥飼くんのこと好きですっ、て。
「あ、あたしっ……………っ…お、おおお手洗い行ってきていっ?」
「あ、う、うん。じゃ、僕も………」
鳥飼くんの返事を最後まできかないうちに、その場をはなれる。
な、なななななにやってんだろ? もう告白するつもりなんだし、言っちゃえばいいのにっ。
ぜったい鳥飼くん、へんに思ってるよね?
だって、思わせぶりなこと言ってて、ごまかすのって、やな感じだよねっ?
しかもっ、トイレこんでるっ。そんなに行きたいわけじゃないし、やめよっかな。
でも、あとでまたすぐに行きたくなったとき、実は行けてなかったとか言いづらい………。
一度トイレから出て、まわりを見ると公園を出て少し行ったところにコンビニが見えた。
コンビニのほうがすいてるかな?
鳥飼くんにラインを送ってコンビニに行ってみると、お客さんは思ったよりもいなくて、お手洗いもあいていた。
ちょっと、落ちつこう。
トイレから出て手を洗ったあと、鏡の前で深呼吸をする。
それで、戻ったときに言うっ。さっきの、願望が思わずっ………願望とかっ、やだやだやだ。そんなこと言われても引くよね? でも、すきですって、ちゃんと言う。
そうしようっ。
でも、まだ心の準備がっ。もうちょっと落ちついてからっ。
コンビニの中をうろうろしながら、ドリンクコーナーの前で立ち止まる。
もう、残り少ないもんね。ついでに買っとこう。あと、鳥飼くんのも。さっき見たとき少なかったし。
お水がいいのかな? 前見た時もお水だったもんね。
ドリンクコーナーの真ん中くらいに置いてあるペットボトルをとろうとしたら、上の方にもあった。
あれ、鳥飼君がいっつも飲んでるやつ。
……って、いってもそんなに知らないけど。
でも、こっちの方がいいかな。あんまり変わんない気もするけど、同じほうが安心だよね?
真ん中くらいをやめて、上のほうに手をのばしたところで、同じペットボトルに腕がのびてくる。それと同時に、鳥飼くんの声。
「これ?」
「鳥飼くんっ⁉︎」
うわわっ、どうしようっ? こ、こころのじゅんびっ…………。
*♠︎*♠︎*♠︎*
何、考えてるんだろう?
僕と付き合ったらとか………思わず、想像してしまった。
今日みたいに休みの日も会ったり、いっしょにご飯を食べたりとか。
学校では見られない海原さんのことを知れるんだろうな、とか。
今日みたいな可愛いのもまた見れたりするのかな、とか。
話の流れで、つい言ってしまっただけなんだろうけど、激しく動揺してしまった。
………………情けない。
あそこで、じゃ、付き合う? とか………言えるくらいならこんなに動揺したりしないよな。こんなんで今日、本当に言えるのか?
その時、ラインの着信があって海原さんからだった。
一一女子のほう、こんでたから公園の前のコンビニに行ってくるね?
それを見て、少しほっとする。
戻るの、少しくらいなら遅くなってもいいよな?
こんな気持ちのまま、こんな顔のままで戻れないと思った。
一一わかった。ごめん。あとで行くね。
一一いいよ。あたし、戻るから。
その後に、まっててね、のエナガのスタンプ。
可愛い。
去年まではクラスも別で、たまに見かけるくらいで、ラインしたりとか、一緒に出かけたりとか、あるわけないと思ってた。
僕が可愛いとか言っても気持ち悪がらないでくれるし………気持ち悪がられてないよな?
それでも、好きだとか言ったら、びっくりするだろうけど。
嫌われてはないと思うけど、そういう対象じゃないとか。
それがきっかけで嫌がられて、挨拶もしなくなるかな?
それでも、言うって決めたんだ。
海原さんが戻ってきたら、言う。
さっき、海原さんと別れた場所に戻って、深呼吸をして自分を落ち着かせる。
なかなか戻って来ない海原さんが心配になって、ラインを送ってみようかとか思いつつも、急かしてるみたいに思われるんじゃないかと思ってできずにいた。
どうしようか? 公園の前のコンビニって言ったらすぐそこだもんな。こっちから行ってみようか?
水も残り少ないし、ついでに買いに来たとか言ったら、おかしくないよな?




