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スズサキ*  作者: さより
意識
18/63

*18

 小学校の時を思い出す。ツバメのヒナが落ちていて、同じクラスの子が手を出そうとしているのを、父さんの真似して止めたんだっけ。

『ひどーい。飛べなくなってるのほっとくの?』

『つめたーい』

『ふまれたらどうするの?』

 海原さんも、そう思った?

 いくら正論でも、もっと言い方とか………笑わなくなったし。

「ごめん。何か説教臭いっていうか………」

「ううんっ。自分が知らなかったのがはずかしいなって。鳥飼くんの言うこと、なんかすとんって入ってきて……そのぶん、ちょっと、ショックというか………でもっ、知らないじゃすまないもんねっ?」

「あ、うん………?」

「そんなことも知らないって、嫌いになるっ?」

 心配そうに僕を見上げてくる。嫌いにとか………。

「そんなことないよ。僕…………」

 海原さんは僕の言葉の先が出てこないのに、ちょっと首を傾げる。

「どうしたのっ?」

「ごめん。何でもない」

 顔見たら、無理だ。あんな上目遣いとか………いや、僕が立ってる時に目合う人なんて上目遣いが多い訳だけど。海原さんのはこう、なんか………意識持っていかれるというか………あんな風に首傾げたりとか………可愛すぎないか?

 それにさっきの……少しは、僕のこと好………いや、そこまでは。

 だいたい、こんなついでみたいな言い方じゃなくて、ちゃんと言うべきじゃないか?

 ちらっと斜め下を見ると、海原さんの頭が見える。

 ちゃんと、顔は見て言うべき、だよな?

「疲れてない?」

 訊くと、顔を上げて答えてくれる。

「大丈夫だよ」

「ネットで調べてた時に、近くにカフェがあるみたいで………そこで休憩とかって、思ってたけど………」

 大丈夫って言ってるし、どうしようか? このあとだと、まだしばらく歩きそうだし………。

「あ、えっと、金井珈琲店ってとこ?」

「うん。知ってた?」

「あたしもね、鳥飼くんに言われたあとちょっと調べたの」

 言って、ちょっと得意気に笑う。

 あ、よかった。元気になった?

「そこ、ケーキとかおいしいって書いてあったから、どうかと思って」

「でもっ、そこケーキとコーヒーしかなさそうだったよっ?」

 ケーキ嫌いだった? 甘いの好きそうだから大丈夫だと思ったけど。

「もうちょっと歩いたら、もうひとつカフェあるよね? そっちにしよっ?」

「うん。海原さんがいいなら」

 返事の代わりに、にこっと笑ってくれる。

 だ、大丈夫かな? もう一つのとこ、写真見たけど狭そうだったんだよな。ちょっとうるさいとか書いてあったし。ケーキの方が海原さんが好きそうだし、静かな方がいいんじゃないかと思ったけど。

 僕も、海原さんのこと少しは知ってるつもりになってたけど………やっぱり確認しとけばよかった。

「まだ少し歩くみたいだけど、大丈夫?」

「うんっ。紅実ちゃんと買い物行った時とか休憩なしでいっぱい歩くし、けっこう重い物持ったりするし、大丈夫だよっ」

「でも、疲れたら遠慮なく言ってね?」

「うんっ、ありがとうっ」

 無理してない、かな? もうすでにけっこう歩いてるし。

 そう思いつつも、東側の店についてしまって、海原さんが外に置かれていたメニュー表を確認する。

「やっぱり」

 ほっとしたように、笑う。

「ネットでも見たけど、ここワッフルサンドもあって、ハムエッグとかHLTとかもあるみたいだよ?」

「HLT?」

「ハムとレタスとたまご」

「ああ」

 そういうのが食べたかったんだ? そうだよな。その時の気分もあるもんな。難しいな。

 軽くため息がこぼれる。

「ここだったら、いっしょに食べれるよね?」

「え?」

「だって、この前あまいの苦手って、言ってなかった?」

「言った、けど………」

 もしかして、僕のこと気にして?

「またコーヒーだけにするつもりだった?」

「考えてなかった」

 海原さんのことしか考えてなかった。

 それに、もし気付いてたとしても、食べられそうなのがなかったら、それでもいいとか思ってた気がする。

 海原さんはちょっとびっくりした顔をして、ふふっと笑った。

「鳥飼くんって、おなかすかないの?」

「そんなことないよ。普通に食べるし」

「だったら、いっしょに食べたいっ」

 言って、笑う。

「…………うん」

 大して面白い話もできないし、ただ歩くだけみたいな場所で、こんな楽しそうにしてくれて、こんなことまで気遣ってくれて………。

 海原さんからつまんないと思われないように、って思ってただけなのに。自分の方が楽しんでないか?

 海原さんの反応を気にして見ると、目が合って、照れたのをごまかすように笑って目を逸らす。

 そんなことが今日、何回あった?

 そもそも、こんな天気のいい休みの日に僕みたいのと会ってくれるだけでもすごいと思うのに。

 言うだけなら、いいよな?

 多分、それすらなかったら、席がもうちょっと離れたり、電車の時間が変わって登校時間がずれたりすれば、それだけで今までみたいには喋らなくなったり、もしかしたら挨拶すらしなくなったりするかもしれない。

 前に手嶋君が言ってたよな。

『でもさ、まったく気付かれないのって、寂しくない? 少しくらいはオトコとして意識されたくない?』

 今なら、分かる気がする。海原さんからしたら、迷惑なだけかもしれないけど。


     *♡*♡*♡*


「いっぱい?」

「うん。あと、4組くらいみたいだけど、どうする?」

 鳥飼くんが、店内にあった表を見て、確認してくれる。

 どうしようっ? けっこう待つ? 待つよね? ちょっとだらだらしたりしたいもんね。それに、お昼ごはんの人も、おやつの人もいるくらいの時間だし。

 やっぱり、鳥飼くんが言ってたほうのお店にすればよかったかも? でも、そしたら、いっしょに食べられなかったと思うし。

 たぶん、鳥飼くんもお腹すいてるよね? ぺこぺこじゃなくても、ちょっと食べたいな、くらいはっ。

 でも、ただ待っててもつまんないよね?

「………ここの、食べたい?」

 うっ、ん〜、どうしようっ? 食べたい、とは思ってる。だって、焼きたてワッフルだし、いちごと生クリームのってて、キャラメルソースかけてくれてるのとかあるし。

 それに、いっしょにごはん食べたらそのぶん仲よくなれる感じするし………ん一一一。

「けっこう待ちそうだもんね? また、今度にしよっか?」

 残念だけど。ものすごく残念だけどっ。まってたら、それだけで終わるかもしれないし…………。

「今度?」

「え? あっ、あ………」

 あ、あたしっ、こ、今度とかっ、あるかわかんないのにっ。当たり前みたいにっ。かってすぎ一一一っ。

 そりゃ、また今度とかあったらいいなって思ってたけど。あってほしいけど。

 鳥飼くんもおんなじ気持ちかはわかんないのにっ。鳥見たいんだったらぜったい、一人の方が楽しいだろうし、もっといろいろまわれたはずなのにっ。

「あ、えっと………それでもいいけど……嫌じゃなかったら外とか……テイクアウトできそうだしと、思ったんだけど………」

「食べるっ‼︎」

 あ、あたし、思わずっ………。

 はずかしくって、顔あげらんないっ。

「………っ」

 ん?

 顔をあげると、鳥飼くんが口を抑えて肩をふるわせている。

 わ、笑ってるっ?

「な、なにっ?」

「ごめん………っ……」

 まだ、ちょっと笑ってる? がまんしてるっぽいけど。

 こんな笑ってるのはじめてじゃないっ?

「あ、あたし、そんな変な顔してた?」

「ち、違っ………その…か、可愛い……と思って………」

 あ、笑ってるの止まった。けどっ、今度はてれってれだ。

 それにっ、今っ、かわいいって言ったよねっ?

 なんか、今日、鳥飼くんちがわない?

 いっつもそんなこと言わないのに。駅でも………。

 どうしたんだろっ?

 もし、もしよ? 付き合えたりなんかして、彼女とかなれたら、いっつもこんな顔見れたり、かわいいとか言ってくれたり、するのっ?

 なんかもう、たまんないんだろうな。


 それぞれでワッフルとコーヒーを買って、少し離れた場所のベンチで食べることにした。

 となりって、近いねっ。緊張するっ。大丈夫かな? 汗かいてると思うし、臭ったりしないかな?

 ちらっと、鳥飼くんの表情をうかがう。

 でも、一緒いられるのうれしっ。

 鳥飼くんは、あたしといっしょで楽しいとか思ってくれてるのかな?

「海原さんって、キャラメル味好きなの?」

「え? あ、そうかもっ」

 うん。確かによく買っちゃう。今日もキャラメルラテにキャラメルソースだもんね。あはっ。

 鳥飼くんはブラックコーヒーとツナエッグのワッフルサンド。

 あたしのほうはフードボックスに入ってて、開けるといい匂いがした。

 お店でつけてくれたフォークでワッフルを口に入れる。

 おいしっ。

 鳥飼くんも食べてるっ。

「鳥飼くんって、ふだんおやつとか食べる?」

「食べるよ。やっぱり昼の弁当だけじゃ足りないし………僕って、そんなに食べなさそう?」

 食べてるとこ、あんまり見たことないからかな? ごはんは食べてるんだろうけど、おかしとか食べてるイメージない。

「んー。食べなさそうって言うか、あまいの食べないって言ってたし、なに食べるのかな? って」

「………パンとか、おにぎりとかかな」

「おかしとか、食べないの?」

「本当はナッツバーとか好きなんだよね」

 そうなんだ? また、すきなもの、知れちゃったっ。ふふっ。

「この前みたいな?」

「うん。でも、ああいう甘くないのってあんまりなくて、あっても高かったりとか………」

 そっか。確かにコンビニとかで売ってる安いのって、あまいもんね。おいしいけど。あまいの苦手だったら、ちょっと残念なんだろうな。

 でも、あまいの食べないからやせてるのかな? 全体的に筋ばってる感じするし、手とか………手、おっきいよね? 手つないだら、どんな感じなんだろ?

 ………やだっ、あたしってばっ、いくらデートって言っても………あたしが勝手に思ってるだけだけどっ。付き合ってるわけじゃないし、まだむりだよねっ。

 そう思って鳥飼くんから目を離す。

 ワッフル、ワッフル食べようっ。

 さくもちってしてておいしい。生クリームとかキャラメルソースとか、あまくておいしい。それでたまにいちごのあまずっぱいの。

 でも、また鳥飼くんと目が合わないように、隣を見る。

 背高いし、ごつごつしてる感じするし、ぜんぜん違う。

 それに、鳥飼くんって、服とかもけっこういいの着てるよね?

 ジーンズもさっきちらっとロゴ見えたけど、紅実ちゃんが好きなとこのメンズラインだったし、多分シャツも。鳥飼くん普通に着てるけど、紅実ちゃんが日本人で似合う人なかなかいないって言ってなかった?

 しかも、高いからお年玉もらった時くらいしか買えないとか………。

 もしかして鳥飼くんって服にお金かける人?

 ちらっと、鳥飼くんの顔を見ると目が合う。

「疲れた?」

「う、ううん。大丈夫だよ」

 慌てて顔を逸らして、またワッフルをほおばる。

 あたしの今日のブラウス、元値こそ7800円とかだけど、60%オフだったから買えただけだよ? それでも迷ったし。

 桜台って言ったら紅実ちゃんの好きなお店近いし、たぶんまちがいないよね?

「鳥飼くんって、服とかどんなとこで買ってるの?」

「ネットで………あとは親が買って来たのを適当に………? 変?」

「ううん。か、かっこいいなって思って」

 ネット? ネットか………。ネットだと安く買えるのかな? でも、サイズがな………Sサイズでもちょっとおっきかったりするのあるし、かといって子ども服だと余計子どもっぽく見えちゃうしな………? 鳥飼くん、またてれてるっ?

 あたしがそう思ってることに気付いたみたいで、鳥飼くんが慌てる。

「いや、あの、ごめん。社交辞令ってことは分かってるんだけど、ちょっと、不安だったし」

 社交辞令っ?

「ふあんっ?」

 な、なにがっ?

「海原さんは、せっかく可愛い格好して来てるのに、こんな格好でよかったのかな、と思ってて………」

「こ、こんなじゃないよっ?」

 な、ななななに言ってんのっ? 鳥飼くんって、たまにけっこうずれてるよねっ? 天然? 天然なのっ?

 でもっ、かっこいいのにぜんぜん嫌味っぽくないのとか、いいよねっ。

 鳥飼くんはくすっと笑って、やさしい顔をする。

 だからっ、そういう顔されると、どきどきしすぎちゃうんだってばっ。

「海原さんって、やさしいよね?」

「そ、そんなことないよっ?」

 鳥飼くんのほうが絶対やさしいもん。

 もともと背の高い人とかすきだったけど………去年のこととかおぼえてないんだろうな。

 同じクラスになって、ちょっと話すようになって、それでもただのクラスメイトでしかないのかもしれないけど。今日、あたしが言うことに対して、びっくりして困らせちゃったりするのかもしれないけど。

 少しはそういう対象なんだって意識してくれるようになるかな?

「食べないの? お腹いっぱい?」

 あ、また。やさしい顔。

「ううん。大丈夫っ」 

 あわてて続きを食べる。

 鳥飼くんはもうワッフルサンドは食べ終わってて、コーヒーを飲んでいる。

 食べるの遅いとか思われてるかな?

 ちょっと、急いで食べよっ。

「急がなくていいよ」

「急いでないよっ」

 だって、鳥飼くんほんとはもっと見たいとこあったりするんじゃないかと思うし。

 …………でも、もうすぐ一周回ったことになっちゃうけど、そしたらどうするのかな?

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