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スズサキ*  作者: さより
意識
17/63

*17

 可愛い。可愛い可愛い可愛い。

 さっきの、いつもは可愛くないみたいに思われてないか? 気にしてない、よな?

 ちらっと、横を見るとすぐ近くに海原さんがいる。

 髪とかいつもと違ってふわふわしてる。しかも横のとこ、ゆるく編んできらきらしたピンで留めてたりとか………。

 ブラウスもふわっとしてて、清楚な感じはするのに、衿元がゆるくて鎖骨とか………それに、スカート………。

 立ってるだけなら制服みたいな普通のプリーツスカートで、気付かないくらいなのに、片側にスリットが入ってて歩くたびに太ももまで見える………これ、見えてていいのか? そういう服、なんだよな? いや、見えてていからって、見るのはどうなんだ?

 慌てて目を逸らすものの、気になって目が行ってしまう。

 海原さんって、休みの日は普通にこんな感じなのかな? いつもの格好でも十分可愛いのに、こんなのとか………どきどきする。

 そして、自分がものすごく普通の格好で来てしまったことに後悔した。

 一応、新し目の物は選んだつもりだけど………変、ではないよな? 着る物とか興味ないけど、それなりの格好はできてるつもりだったけど………。もしかして、隣歩くの恥ずかしいとか思われてないか? いっそ、制服の方がマシだったんじゃ………。

「いろいろ考えてくれて、ありがとう。わざわざホームで待っててくれたりとかも………電車で、初めての場所って、不安だったから」

 言って、照れたようにへへっと笑う。ちょっと、ぎこちない感じはするけど。

「あ、いや、別に………」

 ………よかった。ホームで待ってて。

「公園って、どっち?」

「あ、5番」

「5番?」

「あそこ」

 5番出口の表示をしてある、案内板を指す。

「ほんとだ。書いてあるね?」

 言って、海原さんが案内板に従って歩き出すと、スカートが揺れる。

 こんなの、心臓もつのか?


「なんで、ここ来たかったの?」

「カワセミとかハクセキレイが見られるみたいで……」

「カワセミは知ってる。こんなとこで見られるの?」

「遭遇率はあんまり高くないみたいだから、わからないけど」

「そうなんだ? もっと山奥の川とか、そういうとこでしか見られないのかと思ってた」

「意外と街中で見られる種類も多いよ。エナガとかもそうだし………」

 こんなの、本当に自分の趣味だけで決めたみたいじゃないか? もっと………。

「よかった」

 ほっとしたように、海原さんが笑う。

「ここって、鳥飼くんの家から遠いみたいだし、あたしに気つかってるのかな? って思ってて。ほんとはそんなに行きたいわけじゃなかったんじゃないかって、気になってたから」

「ごめん。他に、思いつかなくて」

 そんなふうに思ってくれてたんだ? 僕の事気使ってくれて………こういうところがたまらなくなる。

「でもね、あたしもカワセミは見てみたいって思うよ?」

「そうなの?」

「うんっ。刺繍の図案集とかにもカワセミってのってたりするんだけど水色なの。でも、写真とか見ると青いのとかもいて………どんな種類のが見られるの?」

「それは、同じ種類なんじゃないかな?」

「でも、ぜんぜん色違ってたよ?」

「それは構造色って言って、光の当たり具合で緑っぽい青に見えたり水色に見えたりするから。ほら、シャボン玉とかも本当は色ないのに緑に見えたり、ピンクに見えたりする………」

 こんな話、興味ないよな?

 ちらっと、海原さんの反応を確認するときらきらした目で言う。

「シャボン玉といっしょ?」

「………うん」

「すごいねっ、確かに緑だったり、ピンクだったりするもんねっ? だから写真によって違ってたりするんだ?」

「うん。その時の光の加減によるからね」

「そっか。だったら、水色っぽい糸の間にに緑っぽいのとか青っぽいのまぜたりしても…………あ、こんなの、興味ないよね?」

 言って、誤魔化すように笑う。

 僕と一緒のこと考えてた?

「そんなことないよ」

「そう?」

「………鳥の名前のついた色も、結構あるしね」

「あ、うん。あるね。(ウグイス)色とか(とび)色、烏の濡れ羽色とかもあるよねっ?」

 答えながら、ちょっと得意気にへへっと笑う。

「うん」

 そして、僕を見て笑ってくれる。

 他に、どういうこと話したらまたこんな顔してくれるんだろ? すごく楽しそうに話してくれる。

「あと、雀色とか………」

 思わず、口を抑えて申し訳なさそうに言う。

「ご、ごめっ」

「大丈夫だから。もう、気にしてないし」

「うんっ………」

 そんなに気にさせてたんだな。悪かったな。


     *♡*♡*♡*


 鳥飼くん、自分の名前きらいだって言ってたのにっ。どうしよっ。やな感じとか、思われてないかな?

「海原さんは、家から学校まで遠いの?」

 あ、ほんとに気にしてない、かな?

 よかった。でも、気をつけないとねっ。

「そんなに遠くないよ? 歩いて20分くらい。鳥飼くんは?」

「電車で1時間ちょっとくらいかな?」

「遠いね? 大変じゃない?」

「まあ、大変だと思うこともあるけど、休みの日も定期でこういうとこ来れるしね」

「そっか」

「うん」

 言って、少しだけ笑う。本当はもっと行きたいとこあったのかな?

 桜台からなら照葉とか………最寄駅って桜台の隣だから、自転車でも通えると思うのに。でも、青葉より偏差値は高めなんだよね。鳥飼くんなら大丈夫そうだけど。中学のときは今ほどじゃなかったのかな?

 でも、よかった。鳥飼くんが、もしそこ行ってたら、会えてなかったもんね。

「海原さんは、近いから?」

「それもあるけど、紅実ちゃんと同じ高校行きたくて。すっごい勉強したし、運もよかったのかな、って思うけど」

「そうなの?」

「うん。おねえちゃんにもね、すっごいびっくりされた」

「お姉さんいるんだ?」

「うん。4つ上。鳥飼くんは? 弟いるんだったよね?」

「え? あ、うん」

 ………あれ? なんか、あたし変なこときいた?

 一瞬、そう思ったけど、鳥飼くんはいつもみたいにやさしく答えてくれる。

「2つ下」

「受験生だ?」

「全然勉強しないけどね」

 言って、困ったようにちょっと笑った。

 心配なんだろうな。弟くんのこと。面倒見よさそうだもんね。勉強教えてあげてたりするのかな? 教えかたとか上手だったし。

 弟くんもちゃんと復習してるのか? とか言われてたりして。ふふっ。

「どうしたの?」

「あ、ううん。鳥飼くんと弟くん、どんな感じなのかなっ思って」

「どんなって………言うこときかないし、余計なこと言ってくるし、大変だよ」

 ふふっ。口ではそんなこと言ってるけど、仲よさそうっ、とか言ったらいやなんだろうな。

「似てる?」

「え?」

「鳥飼くんと弟くん」

「全然」

「そうなんだ?」

 でも、本当は似てたりして。見てみたいな。鳥飼くんの弟くん。鳥飼くんはあんなこと言ってるけど、いい子なんだろうな。だって、鳥飼くんの弟だもんね。ふふっ。

 こうやって、いっぱい知っていけるのうれしいっ。へへっ。

「あ、ここかなっ?」

 長いフェンスがはじまって、少し歩くとあおばの森自然公園の看板があった。

 鳥飼くんの様子をうかがうと、ちょっとうれしそうなのがわかる。ふふっ。こんな顔見れるの、いいなっ。

「とりあえず、一周回ってみてもいい?」

「うんっ」

 池のまわりをなぞる感じで、遊歩道が整備されていて歩きやすくなってる。

 ふふっ。いっしょに歩いてるだけなのに、なんかうれしくなっちゃう。

 ちらっと、鳥飼くんを見あげる。

 背高いなぁ。あたしももうちょっと高かったら、もっと目あったりしやすいのかな?

 思ってると、鳥飼くんが振り返って目があう。

「歩くの、早い?」

「あ、ううん。大丈夫だよっ」

 となりすぎなのもどうかと思って、ちょっと後ろを歩いてただけなんだけど、遅いって思われた?

 ちょっと小走りでとなりに並ぶ。

 鳥飼くんは待っててくれて、なんか、きゅんってなる。

「何か、変?」

「なんで?」

「さっきから、僕のこと見て笑ってる気がする」

「そ、そんなことっ、ないよっ?」

「そう?」

 納得はしてないみたいだったけど、鳥飼くんはまた前を向いて歩きはじめる。

 そ、そんなにだだもれてたっ?

 でも、だって、鳥飼くんといっしょにいるってだけでもうれしいんだもんっ。仕方なくないっ?

「あ、あそこ、あれは?」

 はずかしくって、ごまかすように池のそばにとまっている鳥を指差す。

「あれがハクセキレイ」

「そうなんだ?」

 なんかふしぎだ。名前を知るってだけで、特別な感じがする。

「しっぽのとこ、ぴこぴこしてるね?」

「うん。それ、ハクセキレイの特徴だしね」

「そうなんだ?」

 他の鳥って、あんなふうにぴこぴこしないんだっけ? なんかすごい気になるっ。今度ほかの鳥見るとき気をつけて見てみよっ。

「鳥飼くんはお家でも飼ってたりするの?」

「母親が生き物嫌いだし、野鳥は飼えないからね」

「えっ、飼えないのっ? なんでっ?」

 鳥飼くんはちょっとびっくりした後、困ったように笑った。

「鳥獣保護管理法っていうのがあって……」

「法律で決まってるのっ?」

「うん。鳥獣の保護、狩猟の適正化、鳥獣の管理っていうのが目的で、生物多様性の確保とか生活環境保全とか……要は、鳥獣と人との適切な関係をって、ことなんだけど………」

 あたしっ、知らなかったっ。

 うわーっ、どうしようっ? 常識ないヤツって思われたっ?

「弱ってるからって保護して、そのまま飼ってたりするケースもあるらしいから、知らない人もけっこういるのかもね」

 そうなんだっ? 他にも知らない人いるんだ? ちょっとほっとするけど、それじゃだめなんだよね?

「弱ってて、保護するのはいいけど、そのまま飼っちゃだめってこと?」

「保護も、許可なくっていうのは厳しく言えば違法になるんだよね。野生生物だから、自然の中での出来事については見守ることが基本だし。ほっとけなかったら、まずは担当機関に連絡、かな?」

「…………そうなんだ」

 自然の中でケガしたり、病気になったりしたら見守るのが基本なんだ? けっこうきびしいっ。

 人だったら、病院で治療してもらったりとかってふつうなのに。

「冷たいなって、思った?」

「そんなこと、ない、けど…………」

 でもっ、気付いて、助けてあげられそうなのに助けてあげないのはかわいそうな感じするかも。

「まあ、でも、希少種だったり、交通事故みたいな明らかに人間が原因の怪我だったりすると、救護の対象になったりするけどそれがそうなのか、わかる? どうやって面倒みたらいいかとか」

「わ、わかんないっ」

 たしかにっ。目の前での事故だったりしたらわかるけど、ケガの種類とか……鳥のえさも、植物だったり、虫だったり、魚だったりするんだよねっ?

「だから、よく知ってる人の指示を仰ぎましょう、ってこと」

「そ、そっか」

「間違った保護を防ぐ意味もあると思うし」

「まちがった保護?」

「自分で自然に帰れる力があるのに、それを奪ってしまうとか」

 そっか。人間が飼っちゃうと自分でえさがとれなくなるとかきくもんね。生きられなくなっちゃうんだ。

 かわいそうとか、すきだからってだけじゃだめなんだ。

 生態系のバランスとか生物多様性とかってよくきくけど、なんとなくしか考えてなかった。なんでも助ければいいわけじゃないんだ。

 こんなこと今さら知るとか、はずかしいっ。

「実は僕も小さい頃ヒナが落ちてて、拾おうとしたことあるんだよね。父親に止められたけど」

 そうなんだ? 

「そっか。ヒナとか、ぜったい助けたくなっちゃいそう………」

「でも、飛ぶ練習してるところで、親鳥が見守ってたりするのに人間がいると近付けなくなるだろ? って」

「そっか。飛ぶ練習………」

 そんなちっさい子が地面に落ちてたらぜったい弱ってて飛べないんだなって思っちゃいそうっ。

 最初からうまく飛べるわけじゃないんだ。練習してるだけなのに、拾って連れて帰ったりとかしたら、親からすると………誘拐犯っ?

「まちがった保護っ?」

「うん。危うく」

「そんなのきいたら手出せない。でも、気になってずっと見ちゃいそうだけど、それもだめなんだ?」

「うん。だから、巣のあるとことかもなるべく近寄らない、とかね」

 人いたら、気になって卵あっためられなかったり、エサあげに来たりできなくなっちゃうってこと? 大変だっ。そんなつもりないのに、いじわるしてるみたいになっちゃうんだ? しかも生死に関わるやつ。

 そこまで、考えたことなかったっ。あぶなかった。

 すごいな………。あたし、子どもっぽいんじゃなくて、子どもだ一一一。

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