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スズサキ*  作者: さより
意識
15/63

*15

 でも、あといっこきいとかないと、ぜったいこれからも考えちゃう。

 ついでみたいに、なるべく気にしてないみたいに。

 笑いながら、軽い感じを心がけてきいてみる。

「ほ、ほら。この前、西脇くん? が、言いかけてたでしょ? 誕生日プレゼントもらってたって。西脇くんはあたしと思ってたみたいだけど。あたし鳥飼くんの誕生日とか知らないのにねっ?」

 鳥飼くんの反応を確認すると、顔をそらしててわからなかった。

 い、勢いよく、しゃべりすぎ? 引いてる?

 そのあと、鳥飼くんはうつむいて、首の後ろに手をやる。

 引いてるわけじゃ、なさそうかな?

 照れてる? もしかして、実はやっぱり、とかだったら、ききたくないかもっ。

 きいて、ふつうでいられる自信、ないっ。

「ご、ごめっ、きかれたくなかったのなら、それで………」

「5月7日」

 鳥飼くんの、たんじょうび、ってこと?

 そ、そうだよね? 5月7日っ!

 でも、もう終わっちゃってるっ。今年しかないと思ってたのに。

 ちょっと落ち込んでしまう。

 でも、それにはかまわずに鳥飼くんは顔を上げないまま、続ける。

「海原さんにクリップもらった日」

「クリップ?」

「うん。オオルリの」

 あ、あれっ?

「それ、しまうとこ、弟に見られて………弟が言ったんだと思う。よく会うみたいだから」

 え? ち、ちょっとまって? 誕生日プレゼントって、クリップのこと? あげたの、あたしっ?

「………ふ………ふふっ……それ、かなりかんちがいだね? あたしのせいでごめんね? ふふっ」

 ほっとしたのと、かんちがいもはなはだしいよね、って思えて、笑ってしまう。

「そんなこと、ないよ。本当に、嬉しかったし…………」

 こっちを向いて、鳥飼くんがだまる。

 その顔にどきどきして、目をそらす。

「海原さんは、いないの?」

「え?」

「………誤解されて、困る人。彼氏とか、好きな人とか」

 あたし、そんなふうに見えるっ? 彼氏いそうとか? わざわざそんなこときいてくるとか、期待しちゃうよっ?

「いないよっ」

 ほんとはいるけどっ。すきな人なら、目の前に。言えないけどっ。

「そっか」

 あたし、彼氏いそうとか、見えるのかな? いたことないけど。子どもっぽいとか思われてるだろうな、とかは思ってたけど。そういうのは考えてなかった。

 でも、よく考えたら、あたしがきいたから、きき返してくれただけだよね。

 社交辞令的な?

 少し間があって、鳥飼くんが続けてきいてくる。

「坂上さんも、いるのかな?」

「紅実ちゃん?」

 なんで、紅実ちゃん? ほんとは紅実ちゃんのことききたいだけだったり?

「静が、また会いたいって言ってて、誘ったら来てくれるかな? さすがに2人はいやだろうから僕と海原さんも含めて4人で、とかならどうかって言われたんだけど」

 鳥飼くんも? あたしも? い、行きたいっ。でもっ………。

「それは、むりだと思う」

「そっか。だったら、そう言っといていい?」

 なんか、いつもよりちょっと早口? いっぱい、しゃべってる気がする。

「あ、でも、一応きいてみるね?」

 遊びに行くだけなら、って言うかも知れないし。

 なにより、あたしが行きたいっ。

 だって、学校以外の鳥飼くんとも会ってみたい。もっと、仲よくなれる気がするし。

「僕、坂上さんのライン知らないし、連絡とか海原さんに間に入ってもらってもいい?」

「うんっ。いいよっ」

 よかった。ほんとは紅実ちゃんのライン教えた方が早いんだろうけど、鳥飼くんに紅実ちゃんのライン知って欲しくない気がする。紅実ちゃんはタイプじゃないって言ってたけど、わかんないもんね。鳥飼くんかっこいいし、やさしいし。

「でも、ほんとに期待しないでね? 紅実ちゃん、その気ないみたいだったから、むずかしいと思うし」

 だよね。西脇くんには悪いけど、紅実ちゃんのことも大事だから。いやって言うのを無理強いはしたくない。

 学校以外の鳥飼くんに会えないのはものすごく惜しい気がするけど。

「うん。いいよ。その時は、それ以外で誘っていい?」

 ん?

「…………それ以外、って?」

 鳥飼くんの、顔を見上げる。

「海原さんのこと」

「………あたしの、こと?」

 え? それって……………。

 突然のことすぎて、返事ができなかった。

「ごめん………」

 言って、顔を見られたくないのか、慌てて立ち上がる。そのままどっかに行ってしまいそうな感じがして、思わず制服の袖をつかむ。

 でも、あたしも顔見れない。

 今から言うこと、まちがってたらどうしよう? でもっ、まちがって、ないよね? まちがってませんようにっ!

「そ、それっ、ふ、2人でっ、てことっ?」

「………うん」

 ど、どうしようっ。うれしいっ。

 そういう意味だって、思ってもいいのかな?

 袖をつかんでいた手を離して、見上げる。

 鳥飼くんも、顔、あかい?

「ら、ラインするね?」

「ありがとう」

 素っ気ないくらいの返事で、鳥飼くんは校舎の方へ歩いて行った。

 鳥飼くんの後ろ姿を見送って、袖をつかんでいた手をぎゅっとにぎる。


     *♠︎*♠︎*♠︎*


一一紅実ちゃん、やっぱりいやだって。

 リビングでテレビを観ている時に、海原さんからラインが来る。

 そうだよな。悪かったな。わざわざ2回も断らせて。

 父さんが横に居るのが気になって部屋に戻ってから返信する。

一一わかった。ありがとう。

 この後、どうする? 誘ってもいいかって訊いた時、いいよって………言われてなくないか? いや、でも、流れからして、いい感じだった、よな?

 少なくとも、ダメとは言われなかったし………この前みたいに、一緒に帰るくらいなら大丈夫、か?

 変な汗がにじむ。

一一今度、またどこか寄って帰らない?

 前に1度一緒に帰ってるし、これくらいなら大丈夫だよな?

一一鳥飼くん、帰宅部だよね? あたし、平日は部活あるから。ごめんね。

 ………そう、だよな。忘れてた。あの時は、試験期間でたまたま部活が休みだったってことだもんな。

 待ってるって言ったら、気にするよな? いや、これ、遠回しに断られてるんじゃないか?

 他にも人がいればいいのかも知れないけど、2人でいるのとか見られたくないよな? もし、一緒にいるのを見られて、海原さんが悪く言われるのは僕も嫌だ。

 もしかしたら、と思っていても不安が消えることはない。

 何て返信していいのかわからなくなって迷っていると、さらに追加のメッセージがくる。

一一日曜日とかでもいい?

 日曜日? 日曜日⁉︎

 たったこれだけの文面を、何度も、確認する。

 間違いじゃ、ないよな? 日曜って、学校休みだってわかってるよな?

 どういうつもりでこんなの送ってくるんだろう? 本当は断って欲しくて? それとも、文面通りの意味に捉えてもいいのか? もし、嫌だったら最初の文だけで十分だよな?

 手に汗が滲んで、スマホが濡れる。

 それを袖で拭きながら返信する。

一一いいよ。どこか行きたいところとかある?

 …………返信が遅い、気がする。もしかして、このまま来なかったりしないよな?

 やっぱり断ってほしかったのか………?

「にーちゃん、風呂空いた!」

 思わず、体が強張る。

「ノックくらいしろって言ってるだろ‼︎」

 心臓に悪い。

「なんだよ? 別にいーじゃん? なんかやましーことしてたわけ?」

「そういうことじゃないだろ?」

 そんな時に机の上に伏せて置いたスマホがバイブ音で着信を知らせる。

 海原さんだ。

 慌てて、返信を確認する。

一一ごめんねっ、思いつかないσ^_^; 鳥飼くんは普段どんなとこで遊んでるの?

 よかった。考えてただけか。

「かいはらさきひ?」

 いつの間にかすぐ後ろに来ていた弟に驚く。

「見んなよ?」

 慌てて、画面を隠して睨み付けた。

 文面までは、見られてないよな?

「それって、あいさつの子? 誕プレくれた?」

 睨まれたことなんか何とも思っていない。もしかしたら、睨んだことすら気付いてないのかもしれない。

「お前に関係ないだろ?」

「そんなんわかんねーじゃん? 将来、オレのねーちゃんになるかもしんねーし」

「なっ…ばっ……ま、まだ付き合ってるわけでもないのに、そんなことある訳ないだろっ⁉︎」

 少し驚いた顔をした後、にやにやしながら、見返してくる。

「まだ、ね?」

 何だよ? いつも大して他人の話なんか聴いてないくせに、こんな時ばっかり引っかかりやがって。

「さっさと出て行けよ⁉︎ 蹴るぞ?」

「へーへー」

 弟を追い出して、ドアの前にずるずるとへたり込む。

「何言ってんだよ? まだ、とか………」

 でも、もう無理だ。期待しないとか。


     *♡*♡*♡* 


 返事、来ないっ? ずうずうしかったかなっ?

 でも、鳥飼くんのこともっと知りたいって思ったし、ほんとに思いつかなかったんだもん。

 学校以外でもほとんど紅実ちゃんとしか遊ばないから、どっちかの家か買い物くらいだもんね。そんなとこ、鳥飼くんぜったい興味ないと思うし。

 でも家の人に呼ばれたとか、そんなことかも知れないよね? 紅実ちゃんもそんな時あるし。あたしも寝落ちとかしちゃうし、大丈夫だよね?

 そう思ってたところで返信が来る。

一一ごめん。また連絡する。

 すこし、ほっとする。よかった。やっぱり、家の人に呼ばれたとかだったんだよね?

一一大丈夫だよ♪( ´▽`) あたしも、もうちょっと考えてみるね⭐︎

 あたしも今のうちに髪乾かしちゃおっ。

 鳥飼くんって鳥すきなんだよね? 普段は行かないけど、動物園とか?

 でも、いがいに鳥ってあんまりいないよね? ゾウとかキリンとか。そんなイメージだし。生き物全般がすきならそれでもいいけど、どうなんだろ?

 それなら映画とかのほうがいいのかな?

 雨降っても大丈夫だし………あ、天気どうだった?

 慌てて天気予報を確認する。

 うん。今週の日曜日なら晴れだ。よかった。

 雨でも鳥飼くんと一緒なら楽しい気がするけど、髪とか巻いてもすぐとれちゃいそうだもんね。

 …………髪巻いたりしてったら気合い入りすぎてる感じするかな? 重いっていうか、引かれちゃったりとかしない? もうちょっとふつうっぽいほうがいいかな?

 でも、少しでもかわいいって思われたいし、大人っぽいとか思われたいっ。

 鳥飼くん大人っぽいし、ふつうにしてたらぜったい同い年に見られる気がしないもん。

 恋人同士には見えなくても、せめて友だちくらいには見られたい。

 で、デート、だもんね? 鳥飼くんはそこまで思ってないかもしれないけど。

 …………でも、ちょっとくらいはその気があるって思っていいよね? 今、言ったらいいよって、言ってくれるかな?

 まだ早いかな? でも、日曜日楽しいって、思ってくれたら………。


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 僕が普段行ってるところなんて、山とか海とか。それも、キャンプとか泳いだりとか、そんな訳でもなく、ただ鳥観に行くだけとか………。絶対に退屈なはずだし、雨とか降ったらどうするんだ?

 念の為天気予報を確認すると、当日は晴れになってる。

 外でも大丈夫、だよな? だからって、思いつくところがある訳でもないけど。

 自分から誘っておいて、行き場所も決められないとか………ラインの時もそうだったし。

 全部海原さん任せとか、情けないよな?

 海原さんも思いつかないって言ってるのに、僕から何も言えないとか。

 坂上さんとかなら買い物に行ったり、ごはん食べに行ったりするんだよな、きっと。

 そんなところだと僕が楽しくないからって、気遣ってくれてるのもあるんだろうけど。せっかく僕のこと訊いてくれてるのに、あんまり海原さんよりでも気にするよな?

 風呂から出てもずっと考えていて、不安に思いつつも返信を送る。

一一僕の行ってみたいところでもいい?

一一行ってみたいところ(`・ω・´)?

一一あおばの森自然公園。緑が丘駅から少し歩くけど、どうかな?

 どうだろう? 学校の最寄駅から2つ目くらいだし、そんなに遠くないよな?

 そのあとすぐに、いいね、と羽を拡げる嬉しそうなエナガのスタンプが来て、ほっとする。

 待ち合わせとかどうしたらいいんだろう? 朝早いのは大変だよな? 帰りは遅くなると困るだろうし。何より、そんなに長い間退屈させないでいられる自信もない。

一一昼からくらいにしようか? 何時くらいなら大丈夫?

一一何時でもいいよ。

 何時でも、って………普通は何時くらいなんだ?

一一13時くらいでもいい?

一一いいよ。待ち合わせ場所は、どこにする?

 駅の中って、分かりやすいところあるかな? 緑が丘駅の改札出た辺り?

一一海原さんも電車で来るよね? どこから乗るの?

一一青葉朝日ヶ丘駅。鳥飼くんは?

 学校の最寄駅だ。海原さんの家って、学校から近いのかな? 今度訊いてみよう。今訊いてしまったら2人の時、話すことなくなりそうだし。

一一桜台駅。電車乗ったらラインしてもらってもいい?

一一うん。わかった。

 OKのエナガのスタンプが送られてくる。

 送られてくる度につい、頬が緩む。

 こういう風に、休みの日に会うとか一緒に出かけるとか、人によっては何でもないことなんだろうけど、特別に思えて仕方なかった。

 これがラインじゃなくて、普通に喋れていたら、たまに見せてくれるみたいな嬉しそうな顔とか見れたのかな? もう少し、近付けたらもっといろいろな顔が見られるのかな?

 でも、ここで僕が何か言ったらこの関係性は変わってしまって、それが今よりも悪くなることだって十分にある。それでも、もしかしたら、と思わずにはいられなくなっていた。

 ………言ったら、海原さんはどうするんだろう?

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