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スズサキ*  作者: さより
意識
11/63

*11

「俺じゃなくてもいいだろ?」

 お、おれ?

 アイスを食べ終わっても、戻って来ない鳥飼くんの様子を見に行くと、店内入口から少し離れたところで話してた。

 …………ふだん、鳥飼くん俺とか言わないよね? しかも、ちょいちょい鳥飼くんっぽくない感じ。

「そのくらいで電話とかしてくんなよな?」

 あきらかに、不機嫌。それに、言葉づかいとか………。けっこう、口悪かったり?

 乱暴な人とか怖くて苦手だけど、鳥飼くんはふだんやさしいって知ってるから、怖くない。

 と、いうか、ちょっとどきどきしちゃうんだけどっ。これ、ギャップ萌えとかっていうやつ?

 紅実ちゃんに言ったらぜったいあきれて、ばっかじゃない? って、言われるとこだ。

 戻って来ないあたしを心配してか、紅実ちゃんまで様子を見にくる。

「あ、静? …………まあ、でも………帰りには寄ってやってもいいけど?」

 静っ? だれっ? 電話の相手って、女の子っ?

 紅実ちゃんと顔を見合わせる。

 ちょっと面倒だな、って思いながらもほっとけないって感じの言い方。

 気になるっ。だれっ? 彼女だったりっ?

 電話を切って、戻ってこようとする鳥飼くんに見つかる。

「あ、だ、大丈夫だった?」

「うん。大丈夫。ごめんね」

 いつもの、鳥飼くんだ。電話の相手、だれだったんだろ? 気になるっ。

「友達?」

 紅実ちゃんが何でもないふうに、きいてくれる。

 お願いっ。そうって、言って? ほんとは、友だちでもいやだけど。さっきの話し方とかからするとぜったい仲いい感じだし。

「友達………ではないかな」

 違うのっ? じゃ、やっぱり彼女とかっ?

 でも、これ以上、きいてもしつこいよね? きけないっ。

 3人で中に戻ると、手嶋くんがスマホでゲームをしながら待っていた。

「おそっ。コーヒー冷めちゃったんじゃない?」

「うん。ごめん」

「誰?」

 手嶋くんがきく。

 少し考えて、鳥飼くんが答える。

「幼馴染?」

 お、幼なじみ? って………なんで?なの? しかも、さっき、友だちの部分否定したよね?

 もしかしたら、それ以上かもだから? 幼なじみ以上恋人未満的なっ?

 考えてみたら、さっきの親し気な感じとか、ほっとけない感じとか。なんか、こう、特別な感じするし。彼女とまでは言えなくても、すきだったりとか? 素直になれなくて、ちょっと強いとこ見せてるような?

 だったら、いやだよーーーーっ。

 鳥飼くんもコーヒーとナッツバーを食べ終えて、お店から出る。

 なんか、いろいろ話した気もするけど、あんまり覚えてない。だって、静って子が気になって、頭からはなれないよ一一一っ!


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 弟の帰ってくる音が聞こえて、リビングに下りる。

「そこ、カツサンド置いて………」

 テーブルの上に置いてあったはずの紙袋が開けられていて、中身はすでに弟の口の中にあった。

「これ、にーちゃんのだった?」

 口の中のカツサンドを腹に流してから、訊いてくる。

「いや、お前に買ってきてたんだけど………せめて訊いた後に食えよな?」

「置いてあって、カツサンドだったらオレのと思うじゃん?」

 いや、そんな訳ないだろ? カツサンドくらいお前以外の人間だって食うんだから。

「たまたま、思い出したからな」

 坂上さんが言わなかったら思い出しても、買って来なかったけどな。

「思い出した?」

「約束だからな。食ったんだから、静には言うなよ?」

「……………わかってるって」

 言って、残りのカツサンドもたいらげる。

 いまいち信用できない気もするけど、まあ、いいか。

 いや、よくないよな。ちょっと浮かれてるな。自分でもわかる。

「これ、うめーね? どこの?」

「駅の近く」

「駅?」

「学校の最寄りの、青葉朝日ヶ丘駅」

「ふーん?」

 海原さんも楽しそうだったし、よかった、よな? 僕のおかげではないだろうけど。

 もし、僕と2人とかだったら、来てくれなかったんだろうな。

 多分、もう2度とこういうことって、ないよな。誘う理由もないし。

 学校で、挨拶くらいなら僕からしても、いいよな?

 ………海原さんって、彼氏とかいるのか?

 まあ、いても関係ないか。僕みたいのじゃ、どちらにしても相手にされないだろうし。

 ただ、僕が勝手に嬉しくて、それだけなんだから。それに、多分、今年1年の間だし。クラスが変わってまで、関わることなんてないもんな。

 そのくらい、いいよな?

「あ、ここの店パン屋じゃないんだ?」

 スマホでカツサンドの袋の名前から店を検索して、場所と評価を確認している。

「ん、ああ」

「あいさつの子と行ったん?」

「は?」

「だって、にーちゃんこういうとこ1人で入んねーじゃん?」

「クラスの奴と一緒だったんだよ」

 嘘じゃないもんな。海原さんも一緒だったけど。坂上さんは違うクラスだけど。

「女子も?」

「まぁ…………」

 にやにやしながら、僕の反応を面白がっている。

 くそっ。

 いろいろないことないこと想像してんだろうな。ムカつく。

 その後、スマホに目を戻し、何かに気付いて訊いてくる。

「あ、ここのアイス、スプーンで食べるタイプなのな?」

 少し、つまらなさそうな口振だ。

「それがどうしたんだよ?」

 海原さんも嬉しそうだったし、悪くなかったよな? もっと、相手任せとかじゃなく、自分でも調べた方が………?

「だって、女子といっしょなら、ソフトクリームとかのが、食ってるとこエロくね?」

「ばっ…馬鹿じゃないのか‼︎⁉︎ そんなこと考えるのお前くらいだろ⁉︎」

 いつになく、大きな声で怒鳴って、リビングのドアを思い切り閉めて部屋に戻る。

 今日の、海原さんの仕種を思い出して、また顔が熱くなる。

 ………………違う、よな?


     *♡*♡*♡*


 2人と別れた後、紅実ちゃんと顔を見合わせる。

「ど、どう思う?」

「………幼なじみって言うくらいだから、そうなんじゃない?」

「う、うん。そうだけど、帰りには寄ってやるとか、家行ったりするくらいは仲いいんだよね?」

「まあ、そうなのかもね」

 紅実ちゃんも、あたしに気をつかってか、あまりはっきりとは答えない。

「彼女って訳じゃないみたいだけど、そんな仲いい子いるとか………あたし、大丈夫かな一一っ?」

 泣きそうっ。だって、今までそういう存在がないと思ってたから、ちょっと安心してたし、期待もしちゃってたのに。

 あたしの勝手だけどさ。

「私は、鳥飼君って、咲妃のこと好きなんだと思ってるけどね」

「そ、それは、ないかも、だけど………」

 紅実ちゃんがはげましてくれるけど、いまいち浮上できない。

「明日、本人に訊いてみたら?」

「でも、それですきなんだよね、とか言われたらどうするのーーっ?」

「それは、その時あんたがどう思うかじゃない?」

 うーーっ。でも、もしそうなら、あきらめるのも早いうちがいいんだろうな。


「おはよう」

 と、鳥飼くんからっ?

「おはよ。き、昨日、ありがとう」

「ううん。結局、お礼になってない気もするけど」

「そ、そんなこと、ないよっ。楽しかったしっ」

「それならよかったけど」

 な、なななんかっ、今日の鳥飼くんって、変じゃないっ? いつもは、こんなにしゃべんないよね?

 でもっ、今なら、きけるかもっ。

「き、きのうの………」

 やっぱり、きけなくない? あたしまだ、そこまでの権利ないっていうか、ききたくない……彼女とか………。

「昨日の、何?」

 あ………どうしようっ?

「で、電話の人、何回もかけてきてたし、ほんとに大丈夫だったのかな、って」

 これも、アウトじゃないっ? いやがられたりしない?

「あ、うん。ちょっと、こけたらしいんだよね」

 こけた?

「ケガとか、大丈夫だったのっ?」

 もしかして歩けなかったりとか、たいへんな?

「うん。一応、帰りに寄ったけど、ただのすり傷。自分で電話してくるくらいだから、大したことないんだよ」

 電話の時みたいな、ちょっと仕方ないやつなんだよね、ってうんざりしてるのに、ほっとけない感じの言い方。

 それに、やっぱりおうち行ったんだ?

「そ、そうなんだ」

 こけて、すり傷って、そんなに大したことなさそうだけど………鳥飼君の言い方とか…………ひどかったのかな? でも、大したことなくても人にかまってもらいたくなるっていうか、そういう気持ちは、わかるけど。

 ケガしていたかっただろうし、落ち込んじゃったんだとは思うけど、それでもいいなとか、思っちゃうあたしって、さいていっ。

「あ、あたし、紅実ちゃん待ってるから先に行くね」

 言って、その場を離れる。

「鳥飼君何て?」

 あたしが鳥飼くんと話してたのを見て、紅実ちゃんがきいてくる。教室に向かいながら、鳥飼くんにきいたことを話すと、ため息まじりに言う。

「わかんなくはないけどね」

 たぶん、紅実ちゃんだったらそんなこと思わないんだろうな。相手のことすきになっても、こんなことでいちいち落ち込まない感じ。

 こういうとこも、子どもっぽいって、思われるんだろうな。


     *♠︎*♠︎*♠︎*


 何か、変じゃなかったか?

 話してても、あんまり顔上げなかったし、元気がないというか………。

 避けられてる?

 ………海原さんはそんなことしないと思ってたけど………いや、わかんなくないか? 今まで避けられなかったからって、これからもそうとは限らないよな?

 一緒に帰ってくれるくらいだから、少しぐらい僕から話しかけてもいいかと思ったのに。

 僕、昨日、何かしたとか?

 教室でも、他の人に対しては普通だ。

 やっぱり、僕何かしたんだ。何がだめだった? 途中で、電話鳴って、出て行ったから? いくらいいよって言われても出るべきじゃなかったんじゃないか? しかも、気にして様子見に来てくれてて…………………もしかして、電話で話してるの聞かれた? 静に文句言ってるのとか。さっきも、ケガしたのに大したことないとか、面倒臭そうに言ったから、酷い奴とか思われた?

 もしそうだったら、何言っても説得力ないよな? 実際、放っておいても問題ないと思ったし、面倒だと思ってたのも本当なんだから。

 でも、誰にでもってわけじゃないに。


 体育の時間、別のチームが試合をしている時に、手嶋君に訊いてみる。

「は? 誰が?」

「僕」

 手嶋君に思いっきり吹き出されて、大笑いされる。

「ないない。自分の顔、鏡で見たことある? 威圧感とか………」

 また、肩を震わせて笑う。

「た、確かに顔は……情けないとか言われるけど、身長が……無駄にあると言うか………」

「いや、海原から見たら木村だって十分でかいって」

 それは、そうなのかもしれないけど。

 試合を見ていた木村君がこっちに寄ってくる。

「オレの名前聞こえたけど。何?」

「鳥飼が、じ、自分の……ふっ……威圧感とか……くふっ…」

 言いながら、また思い出したのか笑いながら言うからよくわからない。

「僕が、怖がられてる気がするって話」

 自分で説明する。

「あーー、でも、七尾も言ってた。女子から見るとそうなのかもな?」

 木村君が教えてくれる。

 やっぱり、怖いんだ。

「話し方とかは気を付けてるつもりなんだけどさ、付き合いの長い人だったりすると、口も悪くなったりするし………」

「鳥飼でもそんなことあるのな? けど、俺も試合の時とか荒いよ、多分。あと弟と話してると血管切れそうになる」

「あ、それは物凄くわかる」

「鳥飼でもキレそうとか、あるの?」

 手嶋君が訊いてくる。

「あるよ。っていうか、実際キレてたりするし……」

 弟に関してはしょっちゅうだ。

 でも、そういうところなのかな?

「でも、相手によって話し方違うのとか普通じゃない?」

 だったら、何で怖がられるんだろう? 特に海原さんには今まで怖がられてないと思ってたのに。もともと怖かったけど、無理してた、とか?

「そんなに気になるんだったら目線合わせてやったらいいんじゃない?」

 木村君が提案してくれる。

「め、目線?」

「ちょっと、姿勢低くしてやるとか?」

「しゃがむってこと?」

 試しにしゃがんで手嶋君を見上げてみる。

「あ、それなんかすげぇムカつく」

 手嶋君にものすごく不機嫌な顔で見下ろされて、慌てて立ち上がる。

「な、何で⁉︎」

「ガキ扱いされてる感じ」

「じゃ、どうしたらいいって言うの?」

「だから、下からじゃなくて、合わせるんだって」

 木村君がちょっとだけ前傾姿勢になって、手嶋君と目線を合わせる。

「どう?」

「どう、って………」

「ポイントはさり気なくされるのがいいらしい。少女マンガ読みながら、七尾が言ってた」

 どうなんだろう? それで何か変わるのか?

「っていうか、さっきからオレが女役ってのがムカつく」

 手嶋君は明らかに、不機嫌だった。

「だって仕方ないだろ? この中じゃてっしぃが一番低いんだからさ」

「そりゃ、そうだけど。そこまでじゃなくない?」

「そこまでって? 誰か特定の子がいるの?」

 木村君には、まだ海原さんのことバレてないよな?

「い、一般的にだよ」

 木村君は最近、七尾さんと仲良いもんな。もし、海原さんにまで伝わったらと思うと、気が気じゃない。

「そーそー、女子だって150センチ代とか多いじゃん?」

「ふーん? 鳥飼って、女子に興味ないのかと思ってたけど………何でいきなり?」

 な、何て言ったらいいんだろう? でも、本当にいきなりだよな? 今まで、関わろうともしてこなかった訳だし。

「次の人入ってー⁉︎」

 そこで、先生の声が掛かって、ほっとする。

 慌ててコートの中に入る時、手嶋君が小さく言う。

「がんばってな?」

 そんなこと言われてもな…………。

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