第85夜 社長 ナイフのコレクター 額装して社長室に飾り
翌日 1月29日 日曜日
イベントも済んだし、明日にはマッシモたちが来て板を見て と
スキー合宿に行く準備を済ませると
栄子ちゃんは 2Fの和室に籠もったので 声も掛けれず
昔買った出来合いのスヌケで使ってないのを6本積み込み
ターマック仕様のD車で 鉄工所と材木屋とをめぐる
鉄工所の爺さんから「ほい 50本」と先端を研いだ三角ヤスリを受取り見てみる
「爺さんのグラインダーの研ぎがいい 中南米とかアフリカだと
グランダーの砥石はショボいわ 自分で研いだけど鈍いんだ」
「量で値引きがあったから5万でいいぞ」爺さん
「それ 研ぐ手間賃が入っていないやん
値段が取れる価値のある仕事 20万置いてくわ」
「ありがとな これで 婆さんと旨いもの食ってくるわ」
次は材木屋 若大将が相手をしてくれる
「一寸五分 45mm 檜だ 寸まではあるが これがなくてな
四尺の尺だし 探すの諦めて製材所で10枚作って貰った 高いぞ」
「寸角の三尺は」
「材木丸ごと買って 板作った余りで 作れるだけ作ったけど 寸角がな
バラバラだ ニ寸の一寸五分とか 細いより太いほうがいいだろ ほれ」
「またキレイに仕上げて」
「何処で何するかは訊かないが、うちの店で出す材木 恥ずかしいのは出せない」
「了解 弓場のコンパネと奥の土嚢の前の壁が穴だらけ
あれも3月末までにできそう?」
「その件な 夕方 もう一回来て 木じゃぁ限界だ 化学素材の手配をしてる
俺の大学の同期で 営業の佐々木ってのが来る」
急速に嫌な予感がしてくる ブッチするか と板と棒を積めるだけ積んでいると
「大円くん 来てくれたぞ ヤマハの営業さん二人 と 開発の二人」若大将
立ち眩みがするほど見覚えのあるヤマハの営業二人に開発一人 初めて見る開発の人
「上村さん 16時に 俺のマンションに来て 現物を見ながらが話が速い
佐々木さんが何度も来て知ってる 乙は 飯食って 用事済ませてくるから」
「それでは甲も 夕方まで 大学の同期とゆっくりしています」
「大円くん なんだ その 乙に甲 って契約書みたいだな」と笑う若大将
そのものなんだけど と思いながら 約束したヤバイ金融へ移動する
社長と若いの4人で飯を食って ヤバイ金融ビルにある道場へ
みんなで材木とスヌケを運ぶ
「社長 今度の若い衆 4人の出来は?」
「呑みに行くのも下の三軒が多いし 他もタクシーで行くから 廃車はないよ
流石 本家の行儀見習い なんだけど ウチで採用した5人がな 俺が なんだ」
「丁度いいじゃん 教え鍛え 一緒に 机持ってくる序に呼んできて
廃車の五人組には見本を見せただけで終わったから 新人は練習から」
「この板は」と工藤兄の1
この工藤くん 双子+弟 よくもまぁ揃って数字に と思っていたら
中学を卒業したら親が蒸発して 苦労してる所を古参の直参に拾われて
本家の行儀見習いで高校と映像系専門学校までは行かせて貰った苦労三兄弟
ビデオ編集もバッチリ
もう一人の川藤くんも親が夜逃げで 追い込みかけた数字金融が拾って
高校と商業の専門学校まで行かせて貰ったらしい 普通に財務三表が読める
数字も腕っぷしだけではやっていけない時代に突入してる
応接セットの机と小生意気なリーゼントが5人入ってきて
「工藤兄の1くん 机に立てて置いてみて」 立てて置く 工藤兄の1
「さて 檜の一寸五分の一枚板だ これが盾になるか ならないか どう思う」
「エモノは」リーゼントの三国くん
「まずはこれ 三角ヤスリ 爺さんの研いだやつ」
「なります」三国くん
「向こうに立ってみて いい?」
3m離れた位置からスッと三角ヤスリを刺して抜いて戻る
三国くんの目の前の一枚板に穴が開いている
「じゃ 次いこ そこの棒 俺に向かって放り投げてみて」
縦にしてぶつける気で投げてくる リーゼントの国田くん
すっと動いて スヌケで切っていく
「スヌケは出来合いの古いのだけどまだ使える 6本をみんなで使って
これもあげる 並んで」
スヌケは立て掛け三角ヤスリを1本づつ配る
「これも抜いて 練習してね」
9本を置いただけの檜の一枚板の最上部ににキッチリ根本まで刺す
「数字 頭も要るけど 最後は殺る気と気迫 その為の練習 頑張れ」
まだ早いから、材木屋に向かう大円
ヤバイ金融の工藤兄弟と川藤くんは
引き継ぎで 強烈な人が居ると聞いているので リーゼントの5人に伝える
「どうも、元傭兵 それも世界中の激戦区の最前線で戦ってきた
100人以上が1分未満で片付けられた 三角ヤスリは暗鬼
バカでかいショットガン 2丁持ちで おもちゃみたいに扱って
前任の5人は1発で肩がしびれたのを バンバン片手で撃ったらしい」
そこまでは聞いていて、半信半疑ではあったが
一発目 3mの距離が無になり一寸五分の板に穴が空いていた 見えな無かった
スヌケで宙に浮いてる檜の2寸の1寸が切れてる そのスヌケを置いていった
スヌケでやってみても 檜の棒が飛んでいくだけ
9人で納得するしか無い
三角ヤスリ 3人で一生懸命板を押さえて 一人が引っぱても抜けない
喧嘩で木刀を振り回した リーゼント組 板を立てて 棒を置いて スヌケで撃
手がしびれて 切るどころか 折れもしない 二寸の一寸の檜の棒
リーゼントの伊藤君 工業高校卒 考えて言葉を発する
「ヤスリだ こすれば穴が大きくなり 抜ける 押して引いてを繰り返す」
やってみて抜いて見せる
次は刺す練習とやってみるが
置いたままでやると 板が倒れるだけ 押さえて貰って1cm刺さるだけ
「あの人 置いただけの板に 片手でサクッと刺していったよな」工藤弟
「練習しろって事だ この板だって檜の一枚板 相当する」リーゼントの吉井君
大工の見習いをしてたら、親方が急死 路頭に迷ってる時に笹本くんとヤバイ金融へ
「こっちのスヌケの練習用の棒 これも檜 かなりする
それを こんなに沢山 俺達の練習用って」元大工見習いの笹本くん
「行儀作法は俺達が教えるから 此の板に恥ずかしくないようにな」工藤兄の2
「いいか 俺が の世界から出て 上には上が居ると解ったら 服とか買いに行くぞ
見習いは 張り込みからだ 逃げてるやつの部屋や家に張り込む まだ寒いしな
ちゃんとした服にしないと いざという時に動けず逃がす」社長
5人を連れて 矢田の店に一式を買いに行く
矢田の店に着くころには横着坊主候に戻った五人
さっきの大円の見本を忘れて 能書きを垂れる
矢田 社長の目を見て OK サクッとほっぺをプニッと撫でていく
「俺ごときに プニっと撫でられるようでは ゴミだな」元柔道部主将の矢田
清流高校の横着坊主を引き連れて県を抜け 中部地区上位まで連れて行った
個人ではインハイに高2 高3 で出て 金鷲旗もいいとこまで行ってる
顧問は生活指導の加藤先生 社会人全国上位に行った経験を持つ
「まぁ 毎度 矢田くんの教え鍛え 有難う 沢山買ってくわ」社長
「大円ほどではないですが 人の出来る範囲で」矢田
「ホントに有り難い 大円君は離れすぎて 正常性バイアスで認知できない
矢田君の教え 不良在庫 全部 引き取る」
「社長 それって 俺に商売の見る目がないと」
「そうじゃなくて ラブレスとか相田なんて普通は受注生産 店にはおいてない
それが普通に店に置いてある 有り難さを知らない人が多い 買ってくわ」
「そっちより この関の 量販メインだけど物はいい」ショーケースから出す矢田
アメリカンカスタムナイフの有名どころ揃えてきた社長 量販はと思うが
「あ、Gサカイ 高いのから安いのまで 俺 金貯めて いいやつを買うんだ」
笹本くんと吉井くんのコンビ
「ラブレスと相田はお買い上げで Gサカイのカタログも見て考えて」
ナイフと山ほどのウェアを買っていくヤバイ金融の社長
社長 ナイフのコレクター 額装して社長室に飾り 眺めて悦に入る変態
主に ブレードの装飾の絵の綺麗なナイフを収集していたが
矢田の店のカスタムは完全に質実剛健 作家のサインすら 小さいこともある
「ねえ 矢田くん そろそろ そこの非売品の1本位は売ってくれない」社長
「これは ちょっと」矢田
大円が金にアカせて 思いっきりの質実剛健でワンオフもいいとこで作ったナイフ達
本人が工房を訪ね歩いて ナイフを使って見せて 作家を納得させての発注
幾ら掛けてるか 解ったもんじゃない
その伝で アメリカンも関も堺も ナイフ関係は仕入れが出来ている
ラブレスの工房とのやり取りで 大円が行った時の事を教えてくれた
『裏庭に熊が出て 子供が襲われて 子供と熊が近いので銃も使えない
ナイフを借してくれって言うので その辺にあった刃渡り5inchのを貸したら
無造作に熊に近寄ったよ 熊の肩を叩いて なにか言ったら 熊が去っていった
ナイフは不要では と訊いたら
『子供が怪我してたら ナイフで切り刻む でも怪我もなく熊は俺の説得で帰った
熊に向かうのに腰にナイフがカッコいいしな この邪魔な枝の剪定していいか』
と答えられて どうぞ と言ったら 3inchの邪魔な枝をスパッと切った
侍が来たと 子供たちは大はしゃぎだ 俺もはしゃいだよ
矢田は侍の友達だ ポツポツ侍仕様のを送るから買い取ってくれ』
なのでラブレスは仕入れに行くと言うよりラブレスの趣味のナイフが
請求書と共に 送られてくる 相田さんも古川さんも同じ
しかも激安の請求書
偶に挑戦したと請求書がないのもある それは非売品コーナーに行く
高3で出国前に貰ったのが20本 二度目に日本を出る時に 貰ったのが20本
まぁランドールだわ ラブレスだわ 相田だわ 古川だわ ガバーだわ
関や堺の有名作家も無名作家も カスタムもいいとこのワンオフが並んでいる
カーショウですらワンオフ Gサカイもワンオフ 矢田の店の格を示すナイフ達
本人の大円は三角ヤスリの先の研いだのがお気に入りで やるって渡してきた
社長 ショーケースに張り付いて見てる
「社長 子供みたいですよ」とリーゼント組
「それはねぇ ナイフマニアだと この1本で自慢ができる
そんなのが50本以上もショーケースに 店の格を瀑上げというか
ナイフの博物館だよ」社長
「社長用に 松田さんも仕入れますから
あとGサカイ これのワンオフも頼んでおきますから」矢田
「えええええ 松田さん 手に入るの」社長
「頑張って仕入れますよ 何時もウェアを買って頂いてますし
売れるのが確定してるので 強気で交渉してきます
ここにある装飾ゼロの質実剛健系で 仕入れに入ります」矢田
社長しゃがみこんで悩む 此のショーケースのナイフは装飾ゼロ 機能美で美しい
でも 矢田くんの店に来るまでは ナイフに装飾が職人芸で美しいと思っていた
今此のショーケースのナイフ達 なにも装飾がなくても美しい
グルグル廻る
「社長 装飾で美しいのは当たり前 質実剛健の機能美で美しい
それの究極が三角ヤスリ と大円が言ってました
装飾なしで 仕入れてみますから 予約しておきますか」矢田
「社長 そこでNoは無い」とリーゼント組
「まぁいいです うちに店なら スカっても売れるから
仕入れておきますよ」矢田 送ってくるとかは黙っている
「予約で 何時出来るとかは別途 連絡で」折れた社長
「ワンオフなので 金額と納期は別途 向こうの言い値になりますが
頑張ってはみます」矢田
「値段は気にしないで 大円くんからの直参の祝儀 ええだけ
もう使い切れないほど頂いたから 趣味のナイフなぞヘみたいなもん
行くとこまで やってね」社長 直参の祝儀50億貰ってる
「それなら 頑張って仕入れます 期待して待っててね
松田さんに会いに 関にも行ってきますし」矢田
「その仕入れの席に 俺も行きたい」社長
「じゃ 一緒に行きますか でも俺の手数料が乗るのは」矢田
「そんなの当たり前 俺だけが行っても 話どころか会うことも出来ない
その取次 俺なら4割は抜くし そう言う世界だ」社長
日程調整に入る 矢田と社長
本来の目的のウエアの入った紙袋を両手に持って待たされ 呆れ返るリーゼント組
今宵も深けたようで




