第3夜 だって絶滅してるんだよ 居るはずのないものを見る目だ
涼子さんから「その長野親父ってなにもの」と訊かれ
「俺もよく知らないけど、五竜の民宿で相部屋になった人の先輩で
長野県民で其の筋では有名人 インハイと国体は出て 国体は賞を貰ったらしい
その人と日程を併せて30日位教えて貰って やっとしょぼい技だよ
フロントムーンサルトが最低らしい 出来ないと恥ずかしいらしいから」
「大円さん 教えるのも上手いんですよ 私 足が揃いましたし
片足で滑るのも見せてくれましたし」と栄子ちゃんが援護射撃をしてくれる
皆の視線が 矢田の友達の足元に集まる 片足しか板履いてない
「今 ゲレンデを滑って来たわよね」と美沙さんに確認される
「うん この斜面なら片足で充分だし 二本履いてれば後ろ向きで行けるよ」
「はい??」と発見したニホンカワウソを見る目が続く
「だってコブで飛んだ時に 板が外れるとかあるじゃん
片足で減速して止まれないと危ないから 五竜のコブで身にしみたから」
「その五竜のコブって 下から見て左手のコースなの」涼子さんに訊かれる
「そう 中腹まで降りちゃえは楽なんだけど 上でやらかすとキツイ
でも、あそこでスプレッドイーグルで飛ぶと視界が広がって爽快だし
ホントはコサックがいいらしいけど俺 股関節が固くて無理
今シーズンは、長野親父の友達ってのと五竜のゲレンデで偶然揃って
アイアンクロスとツイスターの指導をして貰って
五人で並んで 同じコブで飛ぶってのをやってさ 俺 覚えたてのツイスター
五人でバンバン飛ぶとさ、拍手が貰えたんだよな 長野親父凄えわ」
「しばらく 栄子ちゃんを教えてて」
と言って矢田を引きずって離れるお姉様達
「まぁいいか 復習がてら 栄子ちゃん リフトで登ろう」
両足に板を履き 栄子ちゃんとリフトに乗って登る
今度はバックで滑り 栄子ちゃんに指示を出すのを3本位続けると
上手くなっていく栄子ちゃん なんか嬉しい
前で滑って「真似してみて」とカルガモで教えてみる
降りてストックをついてクルん廻ってみせる
「抜重が出来るとこれが出来る」
しばらくやらせると クルんと廻る 楽しそうにクルんと廻る
「よし その調子で滑ってみよう」 とリフトで登る
そこそこキレイな抜重で、体重もちゃんとブーツに掛かって綺麗に廻りだした
戻って来ないお姉様達と矢田
もう一本行ってコーヒーにしよう 一本滑ると うん滑れてる
ゲレンデにある茶店に入り 二人でコーヒーにする
「大円さんのストックって短くないですか」栄子ちゃんに訊かれ
「この高さのコブの中でストックを突くんだ 短くないと突けないよ」
と高さを手で示す
コブに行きたかったけど 栄子ちゃん可愛いし、まぁいいか
その頃
「矢田 ”昨シーズン始めた”友達が来る コケてるトコを助けようって言ったわよね
中級ゲレンデを片足よ片足
その後には後向いて栄子ちゃんを見ながら教えながら余裕
あんなの準指とかが演ること」美沙さん
責められる矢田
コーヒーも終わり 栄子ちゃんもゆっくりで飛ばなければコブに行けると判断して
栄子ちゃんのビンディングを少し〆て 無線で 「コブ行くぞ」と波を飛ばして
リフトに乗る
栄子ちゃんとリフトに乗りながら 「リフトっていいよね」と言うと
「スキー場って普通リフトが有りますよね」
「うん、スキー場はね シースンの合間に滑りたいじゃん 乗鞍とかでさ
春スキーに行くとさ 担いで登るの 三時間登って15分で滑る
もうガリガリのアイスバーンでさ なかなか いいよ」
「アイスバーンのなにが いいよ なんですか」
「緊張感 コケたら1000mの滑落一直線」笑いを取ろうと狙う
このネタは 長野親父の友達も爆笑した鉄板ネタ 受ける自信がある
あれ 栄子ちゃんまで朱鷺を見る目になった まだ朱鷺だ 絶滅していない
気まずくなる前に、リフトの終点が来て コブのコースへ行く
「ゆっくり行くから 付いてきて」
渡辺さんばりの美しくずり落ちる スタイルで滑っていく
付いてくる栄子ちゃん 振り向き
「コースを外さないようにね」
なんども声を掛け 栄子ちゃんは下まで転ばずに降りることが出来た
栄子ちゃん バーンを見上げて
「私このコブのバーンをを転ばずに」と感動してる
もう一本 カルガモで 降りてみる 転ばずに付いてきた
「大円さん スキーで滑るの上手い 教えるのも上手い」栄子ちゃん
「うん ネタで滑ると痛いが スキーで滑ると褒めてもらえる いいな」
「大円さんのネタ 封印がいいです 普通にスキー教えてればモテます」
クソ痛い 忠告をありがとう
「この斜度とコブなら三回飛べる 次は飛ぶから 付いてきたらダメだよ」
「ゆっくり行きます」
「じゃ 行くよ」とパンパンとコブを蹴って半分飛んで 狙いのコブに向かう
さっきの二本で飛べるコブは目をつけてある
一発目にツイスター
二発目 スプレッドイーグル
三発目 ヘリ うんまぁまぁ
栄子ちゃんを待って リフトへ
「大円さん 受けは狙わない方が良いです スキーで滑ってるとカッコいい」
再度の忠告
リフトを降りて コースの上 ラインが空くのを待っている
あれ 後に人が溜まっていく
それも 朱鷺を見る目の人が多い
でも スキーで滑ってるとカッコいいと栄子ちゃんも言ってくれた
「栄子ちゃん 行くよ」と声を掛けて スタート
一発目アイアンクロス
二発目ツイスター
三発目高い もう一回転720に行く
着地もOk 下に降りて栄子ちゃんを待つ 降りてきた栄子ちゃん
「上で 拍手がありましたよ」と伝えてくれる
褒められると すぐ木に登る 椰子の実をもいでる大円
「今日のご飯は 俺が奢るよ」
二人で飯に向かい 無線で
「矢田 飯 コブの下のレストラン」波を飛ばす
「今そこに居る 飛んだの大円なのか」矢田からの応答が返ってくる
「そだぞ どうだった?」 応答はなかった
窓際に居る五人 テーブルがデカイのでそこに混ざる
「栄子ちゃんもこのコブで転ばずに滑ってたわよね」涼子さんが訊いてくる
「はい 大円さんのコースで落ち着いていけば 転びませんでした」栄子ちゃん
今朝ボーゲンの栄子ちゃん コブをサラッと降りてる
「スキーで滑るの上手くて良いんですが ネタで滑るのが 笑えなくて大変です」
おいおい ここでそれを言うのか 痛すぎて下を向く
「だって乗鞍の春スキーとかで コケたら滑落1000mとか 普通笑えませんよね」
いや 長野親父たちは爆笑した 俺的には鉄板のネタ
「大円くんは、そのネタが笑える世界にいたと」涼子さん
「そうです 長野親父達は爆笑ですし乗鞍では鉄板ネタです」自信を持って言う
あれ
「ほら 滑ってる 滑るのはスキーだけにすればモテますって」栄子ちゃん
「でも、この鉄板ネタで滑るとなると ほかはしょぼいし」
「どんなのがありますか」栄子ちゃんの追撃
「ダブるのは技だけにしとけ とか 大学留年したやつが言われて爆笑だった」
あれ
「ストレートで卒業したやつには コブで直下降はやめとめ とか」
あれ
「どれも 其の場では大ウケだったんですけど」
栄子ちゃんは、雨に打たれた可愛そうな子猫を見る目 優しい
他は完全にニホンカワウソを見る目で見てる
ニホンカワウソを見る目 そこに居てはいけないものを見る目だ
これはダートの先輩が教えてくれた
トンネル抜けたら雪道で 目の前の三台が右に左に舞っていく多重事故
フェイント入れてケツを廻してすり抜けて何事もなく
「事故ってたね」
と言った時に ナビに居た娘の目がニホンカワウソを見る目になったと
だって絶滅してるんだよ 居るはずのないものを見る目だ
「矢田さんもいい加減 世間の常識のテーブルの端っこなんだけど
完全に転落してる友達ならね 最初に言ってほしいのよ」恵美さん
「え 俺って世間の常識の真ん中に居たはずなんですが」
あれ
「だってほら スキーに行くから ちゃんとスタッドレスタイヤ履いて
それもミシュランの最新 グリップばり ノンスリも機械式で締め上げてある
足もバネ合わせて ビルもエナペタルでスノー用にチューンしてある
去年のダート仕様の四駆でラリータイヤで滑らせまくりより常識の真ん中
車が狭いから、狭苦しく無いように屋根開けて
温まるようにアライグマの帽子 佐賀県産の襟巻きに膝掛けも用意した
温まるのと 危なくないようにフルバケにサベルトも用意して
栄子ちゃんはよだれ垂らして爆睡してスキー場に付いても起きなかった
朝イチのボーゲンから教えて 昼前にコブをコケずにまで育てた
ほら まっとうな男で 何処にも破綻がない」頑張ってみる
「言ってることに間違いは無いような 栄子ちゃん爆睡してたの」恵子ちゃん
「はい だって矢田さんがチェーンを巻くのですら喫茶店で聞いたのだし
起こされたら 駐車場でしたし」
「まっとうだろ 起こされたらラブホとかではなくちゃんとここに来た」
「でもね ここまでのクネクネ道 普通は起きるのよ」恵美さんの追撃
「そんなの簡単 前も後も滑らせてGを減らせばいい ダート屋の基本」
「矢田 そうなの」お局様に責められる矢田
「こいつの前の車の四駆 ガチのダート車 二名乗車だし 腕は確かだ」
「まだ持ってるけど あれはバネが硬すぎてスノーには向かない 去年痛感した
なのでNAはキチンとバネもショックもスノーチューンだ」
「なぁ 大円 せめて86にするとか 考えなかったのか」
「86だってゲージで狭くなって跨いだりで2名乗車
なら車内は広い方がいい 青空天井」
「たしかに広いわ 青空天井 でもそれは屋外って言うのよ」美沙さん
「そもそもスタート地点が屋根は開ける なのね」呆れ返る恵美さん
「だって オープンカーだよ 雨降りと夏の暑さ以外は 開けないと」
「ゲージって?」涼子さんに訊かれる
「車がひっくり返った時に乗員を保護するのと、ボディの強度UPする鉄パイプ」
「それが普通についてる世界なわけね」
「競技車両は普通にそうだよ」
「大円 大人しく頭抱えて丸くなって 止まるのを待て」矢田に言わる
ご飯が来たので他のメンバーに聞かれないように 栄子ちゃんと食べながらの密談
「栄子ちゃん 俺 おかしな事言ってる?」
「其の世界線では普通かもですが あのデカイスーパーの女子社員には異次元です」
「そっかぁ でもさ事実として オープンでも
栄子ちゃんは、よだれ垂らして爆睡してたよね」
「そのよだれ垂らして は やめて下さい 事実ですけど」
「俺は昨シーズンからスキーを始めた 昨シーズンだから 一昨年の11月
これは間違ってないよね」
「昨シーズンに間違いはないです ただ夏スキーとかは日数に入っていますか」
「シーズン間 入っていない 5月の連休の7日も入れてない それで70日」
食べ終わると 涼子さんから
「普通の社会人で スキーに行ってます これで1シーズン5日程度
滑りまくってますで 10日位 これが愛知県の一般市民のテーブルなの」
「聞いた話と違う 最低40日 60日は滑らないとスキーヤーと言えないと言われた
頑張って3月末まで滑って70日 4月5月6月7月まで滑ってこれが普通と言われた」
「大円くん 其のテーブルはインハイや国体 それも長野代表のテーブル
愛知代表なら30日なのよ 私は30日でスラロームで国体に行けたわ」
元国体のスラローム愛知代表の涼子さん
「騙されたのか」
「騙したわけではないけど 長野代表でインハイも国体も出た人なんでしょ」
「そう聞いているけど」
「なら テーブルが違うだけで 間違っては居ないわ」
今宵も深けたようで




