第108夜 「あ！」と口から漏れてしまう
茶室に入り 合宿特訓の成果を発揮して 短めの裄丈の助けもあり
更に 袂を後ろに引っ張る インチキをして袂を収める
このインチキ 本家の師範が裄丈が長くなった流行りの長着対応で考案した奴で
一本の紐で両端に挟み込みの金具 見えても良いように飾りを入れて帯枕の上を通す
市販はされてないので 職人さんに調整可能な奴を 特急で作って貰った
五人とも それなりには 熟して頂いていくが やはり心が乱れいて
見抜けないほどヌケサクではない由美子さんに訊ねられる
「私への緊張とかではなく 心の乱れ 控室でなにか事件があったのか」
顔を見合わせて リサが代表で
「カクカクシカジカで
お兄さんが 家元の名を何回も連呼した挙句に不貞腐れて 明奈の膝に
クリスチャンさんは流れ弾の直撃で倒れて アリスさんの膝で寝ています」
由美子さん 「あ！」と口から漏れてしまう
五人の純金 聞き逃さず 化け物の家元でも ひろしさんは追いかけるんだ
物凄く 重い空気になる茶室
立て直して 「次の二人を」と膝枕組を外して 茶を振る舞い
7人揃っての講評
「よくお稽古をしてきた 直前での大嵐では心は揺れる これは仕方がない
これを差し引けば 良い出来と認めれる 5月末の土曜日にお点前の披露を」
褒められて お茶会が終わり 7人は帰りたいが ニ組 4人が控室に残っている
「アリスちゃん 膝枕までしたんだ ヒルトンをリザーブしておくから
今晩一晩くらいは 膝枕で介抱してあげてね」 放り投げる大円
「明奈ちゃん ヒルトン行くよ」
明奈を連れて NAをフルオープンにしてレイバンを掛けて行ってしまう
「あのパンチに あのレイバンを掛けて あの長着で NAフルオープンであの走り
各1000mだから 計5000mは滑落してるけど 明奈 許しちゃうんだ」妹
「5000mだとパラシュート背負って自由落下出来る高度だよね 明奈凄いわ」美久
「あの走りって」由美香
「ダートの走り方 ハンドルは少し切るだけのヨーを入れるキッカケを作るだけ
ブレーキでの荷重移動とアクセルワークでリアを最小限だけ滑らせて曲げていく
城南のエースドライバーの元祖ニホンカワウソ先輩のFRの究極走り
そこの交差点を曲がる時に リアステアで曲がっていった
あれを 普段から一般公道でヤル やっぱり兄貴はアタオカだ」妹
「ニホンカワウソ あちこちお兄様に連れられて 勉強してるのね」美久
「家に居ても親は仏壇を拝むばかりでね 日本に帰って来た時に城南に誘われてね
付いて行くと 女子高生だし人気爆発でね楽しいのよ お菓子とか頂けるし
兄貴は放置でいいし 後ろには社長のジョージさんが居るから襲われる心配はない
ドライブや高1から運転訓練とかバーベキューとかも楽しかったわ
そっか私も城南にご無沙汰してる 車を買う相談がてら顔を出さないとマズイ」妹
「チッ」
「優香 もう遅いよ 明奈がガッツリ行ったから アドバンテージはあったのに
縁と運 もう使い果たしてるわよ」ねね
「明奈 お姉さんの失敗を見てるからね 行く時に行く 肚決めたわね」典子
「それにしても流れ弾で 姉妹でボロクソな クリスチャンさんは気の毒」リサ
「春奈姐さんは 仕方がない 68さんと同じ空気が吸いたく SMSCに入ってまで
挑戦している ちょっと方向性を間違えたけど その基準ではお断りだよ」妹
「また きっつい事を」リサ
「兄貴なんか 2年も一緒に走った 藤田さんの葬式にも出ないでレース続行
叱りに行ったら 藤田さんの幽霊が亡くなった日の夜に訪ねて来て
葬式よりレース続行と約束させられたって
その世界観で語られたら キツくもなる」
「詳しく」ねね
「カクカクシカジカ だよ
藤田さん自身も 喪章を用意して6位入賞を掛けた最終戦に兄貴と一緒に向かった
兄貴は兄貴で 鈴鹿で藤田さんの幽霊が出てもぶち抜いてピースサイン出して
ついてこいだし 世界観が違いすぎる」
「でも その世界観を認める ニホンカワウソも居るわけで」ねね
「実の兄貴だし 認めるしか無い 否定してもそこに存在するし
その兄貴のおかげで純金になれたしね まぁお釣りが巨大だけどね」妹
「明奈も えらい男に惚れたものね 嫁が居てもお構いなしだしね
一人は撤退 もう一人がしょぼい事をしてるのがね 諦めなよ 優香」ねね
「兄貴の話は終わり
その膝枕で寝こけてる伯爵様をどうするの？ 新入生のアリス」先輩の妹
「行っていいんですか」アリス
「かなりしょぼいけど 兄貴のトコに居る 兄貴がなんとかすると思う」
「であれば 行きたいので 手は出さないで下さい」アリス
「メガネがしょぼい もっといい眼鏡にしないと」典子
「先週は眼鏡を掛けていなかった 兄貴があまりの遅さに眼科に連れてって検査して
速攻で作らせた眼鏡だと思う 真っ当なのは時間がかかる 作らせてるはず」
「流石 実の妹だね お兄さんの行動を読んでくる 他にも動いてる？」由美香
「絶対 動いてる 本気の兄貴だと そこらじゅうを動かす
矢田さん達も居る そのためのネタは普段からそこらじゅうに仕込んでる
私のアメックスもDoDも兄貴の仕込み 心配しなくていい」
「父も 涼子さんという方の 呑んで渡るダメ女 事件で大円さんに頼まれて
火消しに動いています そこら中の野球部もOB含めて動かしました」アリス
「それか ええだけのお世話おばさんが一斉に向きを変えた
あれの大元はニホンカワウソのお兄さんなんだ
大使館に清流高校OBにそこら中の野球部OBに警察関係者 商店街連合会
一斉に動いたって 代議士が引きずられて流れに乗って動いてたわよ」ねね
「清流高校OBはアリスのお父さんの組長 野球部は兄貴が金属バットを配ってる
商店街連合会は矢田さんのお父さん 警察関係と大使館は兄貴から直に行ってる」
「大使館って お兄さんから直にって」由美香
「私のナビゲーターの車列 兄貴の嫌がらせ 来週からはヘキサグラムらしい」
「化け物」と7人が揃う
「だから まかせればいい 兄貴がなんとかする
アリスは安心して膝枕で寝かしておけばいい
そもそも今日の茶会 信濃流の家元の本家で 入門もしてない学生が家元の指導
挙句 次回のお点前披露まで設定された 兄貴の世界観でないとやっていけない
引き出しを認められた典子母ですら 年に1回とかのレベルなんだよ」
「アリス うちのFCガーディアの車使って 明奈の分が空いてるしね」由美香
アリスとクリスチャンをFCガーディアの車に放り込んでヒルトンに向かわせる
典子の家に合宿追加で戻っていく7人
典子の家で 合宿とお稽古の延長をお願いする7人
部屋はあるし食費とかも徴収する気もないが 延長の理由は聞きたい典子母
「今日の家元直々のお点前を頂くの検分はなんとか熟しましたら
5月末の土曜日にお点前を披露との 課題が出されまして
今頼れるのが 典子母さんのみ お願いをします」6人
「99% うちの兄貴の無茶振りです それ以外に考えられない」妹
「巻き込まれ案件」6人
「そうは言っても 現家元 由美子さんの直々のお点前の検分
私でも経験がない 合宿はうちでいいけど、どなたか格上の先生をお願いして」
典子母が混乱の渦に叩き込まれていると
呼び出しのチャイムがなる 少しとうが立ってるが若い女性が訊ねてくる
「大円くんから頼まれて 妹達の面倒を見に来たよ 涼子といいます」
ひれ伏す 典子母 信濃流で涼子 栄子ちゃんと並び若き天才の名の茶人
ただ 呑んで渡るダメ女 の異名もある
毎日の夕方 典子家で 涼子さんの特訓が始まっていく
涼子さんが帰ったあと 7人での女子会が始まる
「涼子さんって 呑んで渡るダメ女 の異名があるけど 茶道は1mm単位で
正確にやってきて 指摘してくる」ねね
「母が言うには 隠れ代表師範 なんだって 呑んで渡らなければね」典子
「兄貴がレスキューに向かった 呑んで渡るダメ女 の涼子さんだね」妹
「ニホンカワウソの兄 無茶振りもするけど フォローもしてくる
この辺が 皆が動く理由かもね もう大学の実習のお稽古が全然怖くない」美久
「お茶が遣唐使で伝えられてとか 喫茶も千利休が最初じゃなくて 鎌倉時代とか
もう涼子さんの講義が 凄い詳しくて 呑んで渡るダメ女 とは思えない」由美香
ピカイチの教えをしても 呑んで渡るダメ女 の称号は返上できない涼子さん
4月16日 日曜日
夕方に 明奈を送って行き ペントハウスに戻る大円
クリスチャンはもうすぐ付くとの連絡があった
クリスチャンが付くと居酒屋で 晩ごはんを頂く
「膝枕はどうだった」と訊く大円
「柔らかくて 最高だった
大丈夫 反省して改善してやり直せばいいと言われて 立ち直れた」
「それしか道はない 木曜日の検査結果を聞いて
必要なら筋肉女医28さんの処で食事から全部見て貰って三ヶ月の体質改善をやる
おそらくヤル ヤらないとクリスチャンの寿命があと5年とかのレベルになる
三ヶ月で済まなければ 半年でも一年でもヤル ヤマハとは握ってきた」
昼間に明奈を連れてドライブといいながら 袋井に行って筋肉女医28さんと
昼飯を食ってきた大円 明奈は他の女もとお冠だったが
そもそもお前もな で済まし話を聞いて 明奈も納得させてきたお昼ゴハン
夕方 岡崎ICでヤルことはやって 帰ってきた
これで一歩前進なのだが 浮かれポンチが帰ってこない
VHSがほぼ無くなっている 残ってるはプレデターとエイリアンのシリーズ
真っ青さん関係は 全部ない 由美子さんのトコに持っていってる
由美子さんに電話すると
「ひろしさんは来てくれる ひげのおじさんは来てくれないのか
真っ青さんと共演してるだろ 伝はあるだろ」
「はい？？」
「今 栄子とセロリを食べながらドラマを見てる ひげのおじさんもカッコいい」
もう電話をぶち切る大円
「どうしたんだ」とクリスチャンに訊かれ
「浮かれポンチが二人になった」
今宵も深けたようで
