第100夜 よく人の事が言えるな 内村さんの怒りの咆哮
3月30日 木曜日 合宿四日目 0630 朝食開始
西谷さんが
「FZRは 昨日の 走行のデータロガーの解析とリフレッシュで今日一日掛かる
TZに乗って TZの仕上げをして 明日 四耐をやってみようよ
FZR 2台 と YZFの 3台の走行 やってみない」
「そのもう一台のFZRは?」68
「全日本組が暇になるから マシンもあるし」西谷さん
「もう一台あるじゃん 俺と73で組んで 4台でやってみよう
俺達は2′20″をキッチリ熟すライバル想定 な」
「2′20″なら なんとかなるので」73
「追い越され組は インベタで廻って 道は譲らないが 塞ぎもしない
これは約束で 模擬耐久レースやろう」
そんな話が終わり ピットへ移動して
TZの四台でコースインしていく
TZはスプリントレースの20周 2′20″ 2′17″ 2′15” と3レース相当を熟してお昼に
73もキッチリ2′15″に付いてきた
午後も頑張るが 73は15″が切ったり切れなかったり 今日の限界にきたみたいだ
凹んでるかと 68と38と三人で慰めに行くと 彼女さんの膝枕で
「俺って才能あるかも 去年から思うと凄い進歩 去年の1さんのNSRより速い」
とかホザイてる
68と38が 「放置プレイで 火傷は嫌です」
コイツラも自分のことは棚に上げる技を繰り出す 心の棚は広大だった
3月31日 金曜日 合宿最終目 0630 朝食開始
クリスチャンが居ない 深谷さんも居ない
昨日も二人共 見ていない
「深谷がここだと 他が速すぎる 昨日から袋井でライディングスクールがある
ライディングポジション練習用の傾けれるシュミレータ装置もある
袋井で6班から練習すれば 多少は気が楽になると連れて行った」上村さん
「ここのメンバーだと何班?」68
「みんな 1班だよ だいたい鈴鹿のGP250 のコースレコードホルダーだし
うちの全日本より速い 73だって15” 普通なら地区戦全勝だよ」上村さん
ルマン式スタートは 1030 フリープラクティスは1000まで
タワーもマーシャルも協力してくれる
68と38は三河バイクチーム
YZFはチームゴロワーズ
全日本組はヤマハワークス
73と大円は白子レーシング 人数が足りないのでゴロワーズから助っ人
若いチームとYZFは25”台でコース異常検知とバイクのチェックに全ブリ
ライダー交代をして またコース異常検知とバイクチェックに全ブリ
全日本組だけ20”での周回を二人でしている
スタートライダーの73に耳打ち
「絶対コーナーで攻めるな 攻めない走りで 20”を叩き出せている
たらっと廻って ストレートはガッツリ開けての走行を心掛けろ」
73 素直に「ハイ」と返事をして 1015 コースイン
バイクを運んでいく ピットウォール前で第二ライダーが マシンを受取る
後のピットウォール内で ひろ子ちゃんと真美ちゃんが
「これだとパラソルが出来ないね」
納得してくれる
ひろ子ちゃんがYZF 真美ちゃんが6838組 貴子さんが73と俺組のピットボード
全日本組だけ ワークスのおじさん
計測は鈴鹿の本物で ピットに表示されるので 無線でピットウオールに飛ばす
SWを持って走り廻らなくていい
1030 シグナルグリーン
ダッシュするライダー四人 若い二人ダッシュも速い サロンも速い 全日本組遅い
綺麗にサロン 68 73 全日本組の並びでスタートしていく
YZF13″台で周回を重ねていく
68は16”台で周回 73は20”でキッチリ周回 全日本組は18”で周回してくる
YZFは別次元で走っているので FZR組だけ見てる
68−全日本−73 並びでピットイン
ライダーチェンジしても 並びは変わらず 2回目のピットイン
ライダーチェンジの 時に伝言
「タイヤもエンジンも消耗を抑えれている そこを頭に入れてな」
「がんばります」73
ハウスで休憩 3月末とは言え 走れば疲れる 夏の四耐 暑さが加わる
「四耐を勝ちに行くなら ハウスが要るな 英雄さんのチームも
八耐で使えばいい 買うか リカール家からレンタルだな」
英雄さん 「え、この2つのハウス無償?」
「そう ホントは リカール家 御一行様 が来るはずだったんだけど
お貴族様の我儘に 執事の人 ブチ切れて 今回は来れず」
「68の店の前で大捕物だったって 理由を聞いて 爆笑」38
38と密談
「タイヤとエンジンの消耗は抑えれているだろうな」
「抑えてるから24周回 16”が切れない 俺が降りる時点では まだ余裕」
「68に2周余分に 26周回廻って貰って 燃料を確保して
ラスト55分 全開で行け ガス欠の対応だけは 心してな
一応28周は走れる計算らしいが 消耗と全開 テストしておかないとな
俺はラストは60分間 全開で26周を目指してみる ガス欠狙いだ」
最後のライダーチェンジ
68−全日本組−73の並び変わらず 各1周づつ 差が付いている
タイムが落ち来てきた 全日本組
俺も 押されて スタートしていく
68が2周回 多く走っているので 遅れて飛び出していく 38
エンジンもタイヤも 消耗を抑えれてる 60分間のアタック
7分後のバックストレート 全日本組を躱す大円 これで同一周回
エンジンもタイヤも温存しててまだ余裕がある 15”が叩き出せる
残り5分のヘアピン後のまっちゃんの登り
22”台に落ちている 全日本組に追い抜きを掛けている 銀色の四輪を躱す
タコメータの横のタイマーと無線のインカムが4時間を知らせるテグナー
ゼッケン6のTZを躱す バカ藤田 懐かしいメットとツナギで化けて出やがって
お前はゼッケン48だ ゼッケン6は付けて走れなかったれなかったろうが
とっととパンチの宝生さんの案内で成仏しろ と思いながらも
左手で 左太ももの横で ピースサインを出して ついてこいをして
ヘアピンへ向かう
27周回 ガソリンは持った エンジンもタイヤも流石に消耗してるが持った
38−大円−全日本組の並びで チェッカー
タワーもマーシャルも協力してくれてチェッカーフラッグを振ってくれる
ゼッケン6のTZはチェッカーを受けて1コーナーの手前で消えていく
ピットロードに戻ると エンスト ガス欠だ ウィニングランを入れて28周回
計算より燃料消費量が僅かに多い ピットロードの下りに助けられてピットに戻る
そんな ジャスト燃料消費量のことより
大円さんの3″後ろでゼッケン6のTZの幽霊がラインを通過したと
真美ちゃん達が大騒ぎ
「去年の最終戦の土曜日の早朝に 東名阪でデカイ事故があったろ
昔一緒に走ってた藤田が アレに巻き込まれて 亡くなったとTVの報道で見た
夜になったら サーキットホテルまで来て最後の挨拶をして旅立ったはずだが
また 俺がガチで走ってるのを見て 喜んで 出てきたみたいだ
タイム的に悪さは出来ない あいつ18秒台の後半だ ちぎればいい
それはいいが3″も離れたのか テグナーからこっちだけだ ヘボになってる」
「そう言う問題ですか」73
「大円さんラスト1周 2′14″1 タイヤもエンジンも終わりかけのFZRで」西谷さん
「それだと 藤田のBestLapが18″8 テグナーからこっちで3″離せるか
73 ヤバかったな 練習しておいてよかった 15″ 3″以上速い
ちぎって おいていけばいい ここはサーキット タイムと順位が正義だ
それは 男でも女でも幽霊でも同じだ 属性は関係ない」
「そう言う 話にしておこう」ヤマハワークス 流しに掛かる
TZの幽霊の素性も解り 38達は、大円さんと一緒に走った俺らの先輩と納得する
内村さんと工藤さんは 藤田くんか 懐かしいなと 皆を安心させる
ゴロワーズチームも混ざって 世界各地のサーキットの幽霊話で盛り上がる
英雄さんも スパ・フランコルシャンで見たと言って混じる
サロンは「500でコケて俺が幽霊になりかけた」と滑る それ笑えない
「それより まっちゃんに出る銀色の四輪の幽霊はマズイ奴だ
藤田もカマされて 随分と酷い目にあった」
「銀色の四輪の幽霊に抜かれると なにかマズイのですか」と全日本の野原さん
「あれ 鈴鹿も長いんでしょ あの銀色の四輪の祟りの内容を聞いていない?」大円
若い子達も 三河バイクと白子レーシング 伝統のあるチームに所属している
当然OBから聞いている 英雄さんもヤマハワークスも知っている
でも 皆黙って 気の毒な目で 野原さんを見る
急速に不安になっていく 野原さん
「あの 銀色の四輪にカマまされると 抜き返すまで『下手くそ』と言われても
反論が出来なくなるんだよ だから野原は今現在『下手くそ』だ」野牧さん
爆笑のピット
「祟りと言うより イジメ でも 速くなる芽がないと出てこない
銀色の四輪の幽霊なのか神なのかに 期待されてると言える」内村さん
銀色の四輪の幽霊にカマされた時の伝統のお約束で
皆で揃って「頑張れ 下手くそ」と応援する
野原さん
俺 全日本2位なのにと反論したいが 銀色の四輪にカマされてる
メンバーを見廻すと英雄さんとサロンのWGP組も居る
模擬四耐は地区戦組に負けてドベだし 謂れの通り言い返せない
じっと我慢で 練習をしようと 誓うしか無い
西谷さんは 必死こいてタイムデータとかと格闘してて
「来週のワンデイの初戦の前の土曜日に半日ミーティングしませんか
Lapの推移とか 燃料の使用量とか 纏めます
野牧野原組のLapの落ち具合と 他2台が違う理由とか考えます」
「そんなん簡単 俺ら コーナーを出来るだけ攻めずに素直に曲がる
出口からストレートでタイムを稼ぐ タイヤとエンジンの温存
だから38も俺も ラストでスパートが掛けれた
そう言うライディングを教えてきたし サロンも同じ教えだよ」
「そう言う目で もう一度 データを見ます」西谷さん
ハウスでシャワーを浴びて 着替えて 一息ついてると
クリスチャンは居ないが リカール家のハウスが運送業者に運び出されていく
デートはブッチするが、運用においてはヌケサクではないクリスチャン
荷物を纏めて 55のバスに乗り込んで帰途に付くと
「あれ レイバンのおじさんは」と真美ちゃん
「今日までスイートが抑えてある あんなのと同じバスで3時間 嫌だろ」
「それも そうよね」ひろ子ちゃん 「うんうん」と68と38と真美ちゃん
五人とも 自分の事は キッチリと棚に上げて 勝手なことを言ってる
「お前ら 去年のラス前の鈴鹿はグリッドのド真ん中でキスをするわ
最終戦でもピット前で スタンドから丸見えでキスしただろうが
よく人の事が言えるな
よほど藤田くんの幽霊のほうが礼儀正しいぞ」内村さんの怒りの雷が落ちる
三河バイク
オータバイ誌に『ライダーはタイムも速いがキスも速いチーム』とか書かれて
MFJの会合に行くと パラソルWGP並ですね 言われ続ける後半戦を過ごしてきた
それでも地区戦が盛り上がって 鈴鹿も間瀬も観客は増えて スタンドは埋まる
各チームも今年はライダーに頑張らせて 彼女にパラソルをやって貰えとか
パラソルが出来る彼女を作れとなっているらしい
「パラソルをやってくれる彼女 これだよ クリスチャンに必要なのは
とにかくサーキットに来てくれる彼女」大円
「そうは言ってもリカール家 お貴族様もいいとこ
普通の家の娘ではビビりますし」真美ちゃん
「そうか プロトコールとかマナー ややこしいのがあるからな
ドレスだってオートクチュールだし 着熟さないといけない」大円
「呑んで渡るダメ女ですけど 涼子さん位出来る人でないと」ひろ子ちゃん
「その辺 全部良縁を結んだあとだし 由美子さんに相談するか」
「頭抜けて出来るけど 呑んで渡るダメ女の涼子さん とも相談を」真美ちゃん
それしか無いよな と 男三人で納得してると
「その 呑んで渡るダメ女 は誰も否定しないのか」内村さん
「否定するエビデンスが欠片もないので」と五人で揃う
55のバスがマンションに到着して 散会していく
今宵も深けたようで