表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/72

王子様のキス

 突然、心の中の世界に、淡いミルキーブルーの扉のようなものがぼうっと現れた。


『何かしら… 近づいても大丈夫?』


「どうして私に聞くんですか?」


『だって、ここは星水晶さんの心の中だから。

 ここで起こる現象の全てはあなたが原因だと思うの』 


(文子様たちがここにいるのも、私が原因なのかしら…?全ては神様がなさったことだと思うのですが)


 二人でボソボソ話していると、好奇心旺盛な一智佳様が既に扉へ向かってしまった。


『ちょっとこっち来てみて、向こうが透けて見えるわ…』


 白みがかっているので少しぼやけているけど、向こう側が少し見えた。そこには…


「お姉さま…!?」


ベッドに横たわっていたのは、お姉さまによく似た美しい女性だった。

黒髪が扇のように広がっていて、胸元で手を組んでいるが、ぴくりとも動かない。 


『燿子さんによう似てるけど…髪の毛が顔にかかってて、うちにははっきりと見えへんかった』


『ドアノブもないし、押しても引いても開かないわ…』


 星水晶は、そのドアに顔をぴったりつけてはらはらと涙を溢していた。


「お姉さま、こんなところに一人きりでいたの…?

会いたかった…」


 ドアが開かないので、ドア越しに頬ずりし、口づけると星水晶の体は眩しく光った。





『セイラちゃんを目覚めさせる方法…ですか?』


「そうです。このままセイラが目覚めないと困るので、わかるようなら教えていただきたい。」


 その頃、カインと美凪様は部屋のソファに向かい合ってお茶を飲んでいた。


 実際、神殿にそこまで兵力はいらないので、護衛騎士も多いわけではない。夜間の警護も負担にはなっていた。

 若い女性と語り明かす夜について、負担と思わない騎士がほとんどだったわけだが…


 美凪様は美形の青年騎士を前にドキドキしていた。

 こんなに近くで話すのは初めてだったので、目を合わせるなんてとてもできないが、横目ではしっかりばっちり見つめていた。


(うわぁ、近くで見ても、本当に素敵なお顔立ち…

こんな方とお付き合いできたらなぁ…一生ときめく自身があるわ!)



『…お姫さまを目覚めさせる方法はどの世界でも決まっていますわ。』


「その方法とは…?」


 美凪様は、顔を赤らめて答えた。


『王子様のキス…』


 カインはそれを聞いて、この世にこんな魅惑的な女性がいるのは、存在自体が秩序を乱すのではないか、と思った。

 キスを誘っている。誘われている。

 何なんだこれは。神による試練なのか…?


 いつの間にか二人はソファに並んで座っていた。どちらから、というわけではないが自然と顔が近づく。


 美凪様は心の中できゃぁぁっと叫んでいたけれど、それが筒抜けになっていることは完全に頭から抜け落ちていた。


 カインが肩に手を回そうとしたその瞬間、全力でソファの端まで距離を取られた。

 その時のセイラの顔は、ものすごい嫌悪に満ちていた…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ