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アンティカ(魔力なし)と罵られた最強の護衛騎士は魔法剣士の戦闘スタイルを真面目にdisる

なろうっぽいタイトルを考えてみたんですが意外と難しいですね!

 エヴァ様の護衛に来た城で、カインは兵士を見て驚いた。

かつて剣術大会で見たような、歴戦の猛者が衛兵をしていた。

テーベの国民もルーツは同じロマリアの血だが体格がまるで違う。彼らが手に持つ長槍と同じくらい大柄で、腕は丸太のように太い。


(もしここを突破すると考えて…いや、まるで隙がない。)


「突然申し訳ない。この町で剣の鍛錬ができるような訓練所はありますか?」


 カインは仕事の方は後々考えるとして、まず目的だった修業に手をつけることにした。

 中年の衛兵はカインを頭の先から爪先までじろりと睨んだ。携えている剣もじっくり眺め、

ひと呼吸置いて、彼は言った。


「城じゃなくて?それならあそこだ。町の西外れにある修練所。剣士ばかりが集まってる。」


 丁寧にお礼を言うカインに、衛兵はおどけたように片唇を上げ、親切に場所を教えてくれたのだった。


「きっと、あの衛兵のような屈強な猛者たちが切磋琢磨しているに違いない。」



 翌日、期待とともにカインは教わった訓練所へ足を運んだ。


 カインが訓練所に入ると、細かな氷の粒が顔に叩きつけられた。

季節がら雪か雹でも降ってきたかと思ったが、それは遠くに立つ男の剣から放射状に発せられていた。

その氷剣使いと向かい合うもう1人の剣士は、詠唱とともに剣に炎を纏わせ振り上げた。


「風雪程度の魔法で俺の炎剣がやぶれるか!」


 剣からは大きな炎が轟々と発せられ、それが氷剣に当たると水蒸気となって破裂音を出した。

離れた所にいるカインも熱風が肌に当たり、周りからは焦げたような匂いがした。

程なく、炎を防げないと判断した氷剣使いが押し負け、膝をついた。


「勝負ありだな。」


「…ありがとうございました。」


「炎剣のブライアンはやはり圧倒的だな」


「魔力の桁が違うぜ!」


 ギャラリーも多く、その殆どが帯剣している。カインは近くの剣士に声をかけた。


「すまない、ここで剣の手合わせができると聞いたのだが…」


「ああ、やってるぜ。」


 その剣士はニヤニヤしながら大声を上げた。


「おおい!外国の剣士サマが手合わせしたいってよ!誰か相手するやついるか?」


ざわめきとともにヒソヒソと笑いが起きる。


「あいつアンティカだぜ!命知らずだな」 


「グレイ、もう一戦やるか?」


「いや、僕はいいよ。」


 グレイと呼ばれた先程の氷剣使いは、剣を収めて水蒸気で濡れた体を拭きに戻った。


「せっかくだ。俺が相手をしよう。」


 ブライアンと呼ばれた炎剣使いがカインの方を見下すような目で見て言った。

するとギャラリーから野次が飛ぶ。


「ハハハ、さっきの炎を見て受けるわけないだろ!?」


「是非お願いしたい。」


 カインがスッと中央に進み出ると、ざわめきには笑い声が混じっていった。


「訓練用の剣をお借りしても?」


「そうだな、フフッ…大事な剣をダメにしてしまうかもしれないし。」


少し離れて2人は向かい合った。


「始め!」


ブライアン…炎剣使いは魔法を剣にかけた。

その様子をカインは構えたまま観察している。

ぶわりと火柱が上がり、髪が熱風を受け、その下の皮膚が炙られた。


「ではこちらからいくぞ!」


 ブライアンが叫んで踏み込んだ。剣を振り下ろした際に火が燃え盛るが、手応えがなく、空振りであることがわかった。

そして背後から訓練用の剣、といっても刃を潰しただけの鉄の剣が、ブライアンの肩をトンと押した。


「な…っ!」


しぃんと周囲の者が沈黙する。

炎は勢いよく燃え続けていたが、ブライアンがショックで剣を取り落とすとたちまち消えた。

 

 氷剣使いのグレイは、カインがブライアンの剣の大きな炎に身を隠し、一瞬で後ろにまわりこんだ身のこなしを見て驚いていた。人間にあんな動きができるのが信じられなかった。


「ちょ…っ!普通、あんな炎ぎりぎりに飛び込めるか!?」


「普通じゃないんだろ…こっわ。ほら、髪の毛ちょっと焦げてるじゃん」


 そんなざわめきが起こり始めると、呆気に取られていた審判は、あわてて叫んだ。


「勝負あり!」


 グレイはカインに歩み寄って、火傷があれば冷やそうと言ったが、カインは髪の毛の先が少し焦げたくらいなのでかまわないと伝えた。

そしてカインはグレイに耳打ちした。


「…次から炎剣使いと当たったら、大量の水蒸気に紛れて攻撃するといい。」


「それには気づかれずに近づかないとですけどね…」


苦笑するグレイに、カインは断言した。


「あなたなら予想外の動きで隙をつけば勝てる。」


 ブライアンは悔しそうに立ち上がると大股で訓練所を出ていってしまった。

ブライアンが負けたのは、魔法を過信し、発動に気を取られて、剣の技術がおろそかになった結果だった。

カインは魔法が活かせていないと心の中で嘆いた。

その後、念の為とグレイに氷をもらって額を冷やしながら、カインは質問した。


「疑問なんだが…彼はせっかく火炎魔法が使えるのに、なぜ近接武器の剣に魔法をかけるんだ?確かに魔法剣士は格好いいと思うが…」


 すると、グレイは照れたように訂正した。


「違う!それもあるが…そうじゃない!人に向かって攻撃魔法を使うのは禁止だから!」


 それでも武器に魔法をかけて攻撃するというのは、魔法協会的にはかなりグレーだと思われる。


 「基本的に、魔法使いは後衛が基本で、盾を持って回復役を守りながら魔法で遠距離から攻撃するのがいいと思うんだ。」


「それは対魔物に限った話だな。だが、対人戦であれば基本的な技術をもっと磨いた方がいいか…。僕ら魔法剣士はたいてい魔力量で押し切れるから慢心してた。」


 魔法をかけて剣を振れば恐ろしい威力で、防御もでき牽制にもなる。

 聞けばテーベの王都には魔法学校はあるものの剣術学校というものはなく、学びたければ王城の兵士になるしかないらしい。しかし、魔法使いが危険で自由がなく、給料も低い兵士に志願することはほとんどなかった。


「昔、剣術大会でテーベの兵士とあたったんだが、彼らはとても強かったよ。今も王城にいるんだろうか?」


「そうだろうな。国王陛下はアンティカの兵士を積極的に採用してる。」


「…どちらを選ぶって話じゃなく、俺は魔法使いも、魔法使い以外も協力して戦うのがいいと思うんだ。

俺の仲間にアルバスという魔法使いがいるんだけど、彼は攻撃魔法は得意じゃなくて、それでも護衛としてとても有能だった。姿を見えにくくしたり、敵を痺れさせて動けなくしたり…」


「それにしても…遠距離から狙えばいいとか水蒸気に紛れてとかなぜ僕に教えたんだ。再戦すると君は不利じゃないか?」


 グレイは、今度カインに挑んでみるつもりのようだった。

ここではあまり剣術の修業にはならないかもしれないが、これだけ魔法剣士が多くいる所もロマリアにはないので、再訪してもいいとカインも思った。


「そうだな…どうしようか。

そうだ、何かこう魔法に耐性のある防具などはあるのだろうか?」


 周辺一帯を爆破でもされない限りカインは回避できる自信はあったのだが、とぼけて聞いてみた。

それに気づかず、何も考えてなかったのかと苦笑して、グレイは答えた。


「それなら、ちょっと値は張るがそういうものを作ってる奴を知っている。」


 グレイに紹介された店では値段を見てがっくりした。小金貨500枚はさすがに手が出ない。


 裏通りにある店を出たところで、カインは背後から攻撃された。

ナイフが刺さった木箱はたちまち燃え上がった。

2投目を横に跳んで躱した後、周囲を警戒すると、先日妊婦に声をかけて指を捻り上げた男が物陰に隠れていることに気づいた。

慌てて逃げようとする男を壁に追い詰め、カインは剣を向けた。


「クソ、アンティカの若造が!」


「なぜ俺を襲う?」


「お前が先に手を出してきたんだろっ

おれは!お腹の子の父親なんだよ!

魔力が強い俺を選んでくれたと思ったのに…妊娠した途端、おれは捨てられたんだっ!」


情けない顔で男は嘆いた。


「気の毒だが…」


 カインは誰かに兵士を呼んでもらおうと辺りを見回したが、ふと思いついてやめた。

 相手は単独犯で、ナイフも本気で殺すつもりで投げてきたのではなかったからだ。


「話も聞かずにいきなり指を捻ったりして悪かった。俺は魔法が使えないから指を向けられると怖くて。意外と気が小さいんだ。

お詫びに一杯奢るよ。」


「…。」


 ちょうど裏通りにあったパブで、カインと男は黙ってワインを立ち飲みした。


「…この国のワインは美味い。」


「安いけどな。酸味と渋みのバランスがいいだろ。」


「ロマリア産より俺には飲みやすい。」


 ロマリアでは熟成したワインが好まれ、酸味は弱く、渋みがありまろやかなのが特徴だった。


「まあ、若造にはこれくらい軽いほうがいいかもな。あんた名前は?」


「カインだ。元神殿の護衛騎士で…この国には修行に来た。腕の立つ剣士を探している。」


「プッ、おもしれーな。見当違いなとこ探してると思うぞ。ここは愛と魔法の国テーベだぜ?

そうそう、おれは火炎魔法使いのチェリオだ。」


 カインより10才は上だろうと見えるチェリオはグラスをぐいっと空け、カインは大きめの容器に入れられたワインをチェリオのグラスに注いで聞いた。


「では、テーベの猛者達とはどこで手合わせできるだろう?」


 カインは王国兵になりたいわけではないので、国の兵士に手合わせを頼むわけにいかない。


「うーん、最近はどこも護衛には魔法使いを雇うからな。元々王城勤めだった者は王城に、それ以外は地方で傭兵か、あと王都なら貧民街(スラム)の用心棒だろ。」


貧民街(スラム)か…」


 カインは町の外れの、粗末な掘っ立て小屋がひしめく区画を思い返していた。


「用心棒というか、治安維持部隊というか。

あそこじゃ少ない食い扶持を奪い合って生きてるからな。あいつらと知り合いたければスラムの…風見鶏亭ってパブに行ってみな。」


「無礼なことをした俺に色々教えてくれて感謝する。チェリオさん。」


「…!おう。顔がいい男は気に食わないけど、カインとはなんか気持ちよく飲めるわ。また今度飯でも行こうぜ。」


 ワインのグラスをあけたカインは、泊まっている宿屋の名前を伝えてチェリオと別れた。

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