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器用な魔法使いと不器用な騎士

 旅から戻ったばかりなので、アルベルト、カイン、アルバスは非番で、帰還祝いで深酒をしていたところ、夜勤の騎士が訪ねてきた。


「ごめん兄さん、エヴァ様に呼ばれたから戻るよ。」


「ああ。アルバスに酔いざましの魔法をかけてもらっていくといい。」


「そんな便利な魔法ってある!?」


 アルベルトは深夜の酔っぱらいのテンションでオーバーリアクションをした。


「ふふ、広く浅く覚えたからね…」


 アルバスもそれに乗っかる。

 彼は便利な魔法をたくさん知っていたが、魔力自体はそれほど強くないため護衛騎士をやっていた。

しかし、貴重な魔法を多数使いこなせるのは大変便利で、護衛騎士ではあるが実質はリュカ大神官の秘書に近く、他の護衛騎士より賃金も多くもらっていた。 


 アルベルトも、こんな時でも眠そうな顔や、嫌な顔一つ見せない。教皇の近衛に選ばれるのに相応しい器だったのだとカインは思った。


 エヴァ様は深夜にもかかわらずアルベルトを呼び、巫女の儀式用神具と礼服を用意させた。 

 リュカ大神官に本殿使用の許可をもらうのは明朝になるが、それまで準備することがたくさんあった。

 非番ではあるが、教皇の近衛でないと手伝うことができない儀式のため、アルベルトはエヴァに付き添った。



「エヴァ様は素晴らしい方だな…」

 

 カインは、戻ってすぐ休まず巫女の役目を行うエヴァ様に敬意を示した。


「浮気か?」


アルバスは相当酔っていてカインをからかう。


「エヴァ様もカインを気に入っていたみたいだけど、巫女はなぁ、手を出したらまずいだろう。本当に護衛騎士を辞めることになるぞ?」


 実は、カインは辞表を懐に入れていた。明朝、リュカ大神官に渡すつもりだった。


「アルバス…。俺は、セイラの返事を聞いたら修業のためテーベ王国へ行くつもりだ。」


 アルバスの酔いを魔法なしに一気に冷ます発言だった。


「アルバスも、アルもすごい。俺も二人みたいになりたい。

でも俺には剣しかない。だから、誰よりも強くなるよ。自分のためじゃなくセイラを…大切な人を守れるように。」


 カインは自分の弱さから一度は逃げてしまったか、向き合う覚悟を決めた。


「わかった…。頑張ってこいよ。」


 知っている中でカインは一番強いのに、それでも騎士としてはあまり強くない自分を尊敬してくれているというカインの気持ちを汲み、あえてアルバスは余計なことは言わないでおいた。

(カインの成長に必要なのは、強さより外へ出て色んな人と深く関わっていくことだろうな。)


 うとうととし始めたカインのコップを溢さないように取り上げながら思う。いつも冷静で感情を表に出さないが、まだ彼は20才だ。

護衛騎士にしておくのは確かにもったいないだろう。

本来なら色々な経験を経て、家庭を持って最後にこういう仕事に落ち着くものだ。


(でも、いつかはまた一緒に働けるといいな。

その頃にはカインにも妻と子がいて、幸せそうに少し丸くなったカインを僕はまたからかうんだ。)

 

アルバスに伝えて安心したのか、カインは眠ってしまった。

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