表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/72

交渉

 シスター・エリカに部屋へ案内された後も、耀子様は星水晶のことで頭がいっぱいだった。


(星水晶の泣き顔を見るのも、涙を拭うのも私だけでいい。

星水晶を笑顔にするのも幸せにするのも…他の誰かになんて、絶対に渡したくない。)


「…エヴァ様、私が耀子だと伝えてはいけませんか?私は星水晶にもう一度私として会いたいのです。」


『星水晶を救うという願いはもう叶ったわ。

それに、エヴァの体で星水晶と結ばれる?私は嫌よ。その後どうするのよ』


 耀子様は唇を噛みしめようとして、やめた。

 エヴァ様の体を借りて、今まで散々無茶をした。下手をすれば死んでいたかもしれないのに、エヴァはそれでも神様を信じて体を取り戻すようなことはしなかったのだ。


『耀子が神様に心を向けなくなったからわからないけど、もうすぐ迎えが来ると思う。

そろそろ私も自由になりたいし、大聖堂には戻らないで巫女をやめて生きるわ。

それまで星水晶にできるだけのことを…』


「それならやはり耀子として話をさせてください!星水晶にはエヴァ様と私の関係を説明すると約束します!」


 エヴァ様の体から出たら、元の世界へ戻るのか、神様の元へ旅立つのかわからない。星水晶に打ち明ける機会は今しかないと耀子は思った。


『…あの子は二度も大切な人を失うことになるのよ。』


「エヴァ様は星水晶のこと何もわかってない、それで立ち直れないような子じゃないわ。」


 どんなに辛い時も他人の心を思いやれるように、常に神様に心を向け、信じられるように星水晶を導いたのは耀子様だった。

 

(自分の心はままならなくて、素直でいることが、どれほど難しいことか…。私にはできなかったことだわ。)


『守護霊が離れたことで、あの子はもうそんなに長くは生きられないと思う。神殿ならきっと最期まで面倒をみてもらえるわ…。他のシスターとも親しいようだったし

「やめて!」


 耀子様は怒りに打ち震えた。たとえ命が助かっても、僅かな人生を異世界で終える星水晶の孤独を思うと、発狂しそうだった。


「星水晶を助けて…」


 それは、誰に願えばいいんだろう。

一度は神様を信じられなくなった。

辛い思いをしてまたすぐ死んでしまうのに、助ける意味がないと思った。


(でも、私だって残された時間が少ないと知って星水晶と話すことを一番に望んだ…。)


 100才の老人も、20才で死んだ若者も、神様からしたらきっとそう変わらない。数ある人生の一つで、その人生は一瞬のことだろう。

わずかでも、例え一言でもこの想いを伝えられたら…

 それは、きっと意味があることだと思ったその瞬間、神様の存在がそばに感じられ、耀子は身を震わせた。

エヴァ様はため息をついた。


『ここまで言わないとわからないなんて…

あの悪魔の呪いのせいじゃないわよね?』


「そうよ…未来視を使うことができれば、私と星水晶の未来についてわかるかもしれない。

でも、一度は自分から離れたのに、許してもらえるかしら…」


 耀子様は両手で自分を抱きしめながら、エヴァ様に問いかけた。


『大丈夫よ。あなた、神様から未来視の加護を受けるなんてそうあることじゃないのよ。

生まれながらに高い能力がある私の体だからこそ使えるんだけど。

神様はずっと耀子のことを愛してくださっているわ。』


「…ロマリア大聖堂には戻りたくないと思うけど、神様にお祈りするなら、あそこが一番?」


 明日にも近衛と一緒にここを発つことはできる。

だが、耀子に残された時間がどのくらいかわからず、戻ったら最後、エヴァが大聖堂から出ることは叶わない。


『待って、東の聖殿なら…星水晶が飛ばされてきた場所なら、神域が作れるかもしれないわ。』


 耀子様は、正体を打ち明けるより、まずは星水晶を助けるために出来るだけの手を尽くそうと決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ