お風呂
更新めちゃくちゃ開いてしまって申し訳ございません…!
シスターの興味がエヴァ様に変わった。人が移動したとたん、ポピーはセイラに抱きついた。
しかしすぐにバッと顔を上げて呟いた。
「…臭い。」
ポピーに言われてセイラは顔を赤くした。馬に乗って数日旅をして、砂や埃にまみれていたのだ。
「またそうやってポピーはいじめて…言葉に気をつけなさい。いい加減セイラに嫌われるわよ!」
シスター・パトリシアが呆れながらポピーを嗜める。
そして、それを聞いたエヴァ様の眉がピクリと上がった。
シスター・エリカが戻ってきて手を叩いた。
「はい、皆さん歓談は後にして、エヴァ様とシスター・セイラは湯浴みの準備をしてありますから。」
それはすなわち、エヴァ様と星水晶が一緒にお風呂に行くようにという指示だった。
「いえ、私は着替えて体を拭けば…」
「綺麗にしてきなさいよ。臭いのは優等生じゃないわよ」
「ええ、ありがとう、ポピー。」
シスター・イザベラはポピーがこれ以上エヴァ様の前で失言しないように部屋に連れて帰ることにした。
それをきっかけに、エヴァ様を囲んでいたシスターたちもそれぞれの部屋に戻っていった。
「…私は場所を知らないから、星水晶さんが連れて行ってくださる?」
「はい…」
星水晶はドキドキしながらお風呂へ向かった。
「私、エヴァ様のお世話をいたしますわ」
流石に二人で入ると、肌が密着しそうで躊躇われ、星水晶は石鹸を使って丁寧にエヴァの髪や肌を洗い、湯冷めしないうちに水を拭き取った。
そして香油を使って髪や肌を手入れした。
エヴァ様の髪は元はもっと長くて、それはもう美しかっただろうと星水晶は思ったが、口には出さなかった。
洗い終わった後はお湯は冷めてきていた。
「ありがとう、手際が良いわね。」
エヴァ様は服を着ながら星水晶に話しかけた。
監禁中、服があまりにもボロボロになってしまったので、途中の町で新しく買ったものだ。
生成り色のシャツと、黒いパンツというラフなものだった。
「元の世界で、母がエステティシャ…いえ、専属の女性にやってもらっていたので、見よう見まねで。
エヴァ様は湯冷めしないうちにお部屋へ。ご案内しますわ。」
「それではお湯がさらに冷めてしまうわね。」
「そうですね…では少しお待ちいただけますか?」
星水晶は服を脱いで、お湯を使った。エヴァは、星水晶の豊かな胸が腕の陰からはみ出て揺れ動く様や、しゃがんだときの張りのあるお尻を後ろから眺めていた。
『腹立つくらいいい体してるわね』
耀子様が星水晶の体に見惚れていると、耀子様の中のエヴァ様が感想を言った。
耀子様が見ていると視界を共有しているエヴァ様も見ざるを得ない。
「あの…そんなに見られると…」
「あら、ごめんなさい。でも女同士だし、さっき私のも見ているでしょ?」
「それはそうですが…」
星水晶はエヴァ様の体は洗い布で覆ってなるべくじっと見ないようにしたし、胸やお尻の方はご自分で洗って頂いたのだ。
「髪は、あの時焼けて切ってしまったの?」
エヴァは、事故に遭ってすぐの星水晶を見ていたのだった。
「ええ、これでも伸びましたわ。お風呂のとき乾くのが早くて便利ですけどね…」
星水晶の髪は、今は耳の下あたりまで伸びていて、天然のパーマによって毛先でふわふわとしていた。
前髪は眉にかかるくらい短くしている。
何となく髪のことは触れられたくなかったが、星水晶はなるべく明るく言った。
「あ、そういえば治癒魔法でも髪の毛は戻らないのですね。」
「そうね、皮膚から近いところは治るようだけど」
星水晶は一智佳様が調べた文献から。
エヴァ様は治癒師を探す中で得た知識だった。
「それで、ハゲ…いえ脱毛症も治癒魔法で治るそうですわ。だからこの世界の人は皆さんフサフサですわ。」
星水晶はクスクス笑いながら話していた。
エヴァ…耀子様はそんな星水晶を見て愛おしく思った。
エヴァ様がセイラに普段どんな生活をしているのか聞きたがったので、お茶に誘った。
「この世界に来て…不便はない?
耀子によると、元の世界はとても進歩していたとか」
「そういえばそうですね…今初めてそのことに違和感を感じましたわ」
星水晶はしばらく思案して言った。
「おそらく、守護霊様の影響です。」
「守護霊!?」
「お姉さま…耀子様に託されたこのブローチにはご先祖さまの守護霊が宿っていて、長い間目覚めなかった私をお守りくださったのです。」
「守ったとは、どういうこと?」
星水晶は、エヴァにはご先祖様の守護霊に体を預けると、その守護霊が行動できるようになることを説明した。
「こちらの生活には目覚めた時、既に馴染みかけていたようなものです。
ご先祖さまの生きていた時代はそこまで文化面、衛生面でも現代ほど進歩していなかったのでしょうね…
私もそこまで不快さは感じませんでした。」
「なるほど、不思議な話ね…」
おそらく元の世界ではブローチにそういう力はなかったはずだ。
空港であのブローチを送ったのは、何かずっと身につけていたものを星水晶に持っていてもらいたかったから。
離れても星水晶を想っているという証のようなものだった。
世界を渡った時に、星水晶は神様から加護をもらったのかもしれない。
守護霊の加護について、聖槍かと問われると星水晶は悲しそうな顔をして話し始めた。
「あの力は…守護霊の一人がお使いになりました。
加護の力を得たというなら、きっとそれと引き換えに失うものがあるのですね。
今は…私の守護霊のうち、お二人は離れてしまいました。」
「そうだったの…」
会話を続けようとしたが、星水晶が泣いていることにエヴァ様は気がついた。
「私がもっとしっかりしていれば…」
星水晶の釣り気味のアーモンド型の目は、睫毛に涙の雫をたたえて、はらはらと頬へ伝っていく。
エヴァ様は星水晶の涙を指で拭い、目蓋に口付けを落とした。
「え、エヴァ様…?」
そのまま星水晶はベッドに押し倒された。二人分の体重がかかって、堅い木のベッドがギシリと音を立てた。
まだ髪の毛も肌も湯上がりでしっとりと濡れていて、触れあうのが心地よかった。
修道服では隠しきれないほどの膨らんだ星水晶の胸は、仰向けになっても柔らかそうに盛り上がっていて思わずそのまま顔を埋めたくなる。
見つめ合うのが恥ずかしくなり、星水晶は顔を赤くしながらも目を閉じる。
「エヴァ様…。」
淡いピンク色の唇がかすかに開いて、吐息とともに溢れ出た言葉を聞いて、エヴァ様はビクッと仰け反った。
『『こらー!何をしてるのよーっ!!』』
そこでエヴァ様と美凪様からストップが入った。
エヴァ…耀子様は後ずさって部屋を出ようとした。
「エヴァ様…お部屋までお送りしましょうか。」
「いえ、シスター・エリカに案内してもらうから大丈夫よ…。セイラさんはそのままゆっくり休んで。…元気出してね。」
「はい…おやすみなさい、エヴァ様…」
星水晶はぎこちなく挨拶をして、ベッドに横になったまま、顔を覆っていた。
「エヴァ様の前で泣いてしまったわ…」
『びっくりしたあ。私もちょっとドキドキしちゃった』
美凪様もこのシチュエーションはトキメキだったようだ。
エヴァ…耀子様は、後ろ手で星水晶の部屋のドアを閉めた後、ずるずると座り込んでいた。
(星水晶は、エヴァ様の名前を呼んでた…。私じゃない…。)
『だから私とカイン様が結ばれるのに協力してって言ってるのに。何でセイラにキスするのよ。勘違いされるわよ?もう…』
大聖堂の巫女は男子禁制の花園。凛々しく美しいエヴァ様はきっと女性にモテただろうと耀子は言った。
『モテたわよ。毎日のように手紙をもらってたし。』
「でしょうね…私も女子高にいたからわかります。美人でカッコいいとかズルい…。」
耀子様はエヴァ様を恨めしく思った。エヴァ様の見た目は気に入っているが、星水晶に会うため、やはり自分の体を取り戻したかった。
『巫女は結婚できないっていっても私の恋愛対象は男だから、モテても嬉しくないわ。』
エヴァ様はすまして言った。




