聖十字
悪魔に操られたカインは、大勢の騎士相手に、一歩も引かず相手ができるほどの強さだった。
「さすがは元部隊長…!正気を失っていても技のキレが半端ないな!」
カインは悪魔の力で強くなったのではないが、以前から人間ばなれした動きで、この人はなぜ近衛にいるのかと思われていた。
「前後から斬りかかって剣一本で止められるってどういうことだ?」
「何か…正気に戻す方法はないのか!?」
アルバスはカインに呼びかける。
「カイン!目を覚ませ!シスター・セイラが危ないんだ!」
カインはセイラの名前を聞いて一度少し動きは止まったものの、逆に騎士たちを打ち倒しにかかってきた。
ローザとノエルでエヴァを護っていたが、ついにノエルの剣を払い落とされ、それが崩された。
カインの剣がエヴァに迫ったその時、背後から太陽のような強烈な光が放たれた。
その光の眩しさに、カインは一瞬目が眩んだ。その隙にローザがカインの剣を止め、カインは騎士たちに拘束された。
『はぁーっ!危ない危ない、三途の川が見えてしもたわ…』
一智佳様はむくりと起き上がる。
死んだはずの星水晶が目を開いて起きたので、アルベルトは仰け反ってしまった。
『セイラさん!?生きていたのか?』
『おきばりやす、星水晶…うちが代わりをしたるさかい。』
息も絶え絶え、一智佳様は星水晶の代わりに心臓を動かし、必死に生かそうとしていた。
彷徨う星水晶の魂を繋ぎ止めようするが、星水晶の魂は体から離れててしまう。
『あかん、長くは持たへん…』
『文子が行きますわ。』
『聖槍を使うつもり?それは絶対あかんってゆうたやろ…』
『神様をを信じて、お任せしてみようと思いますの。大丈夫、一智佳さん。魂は永遠なのですわ。
美凪さんも、星水晶さんを頼みますわね。』
一智佳様は文子様に抵抗したが、どんどん弱ってしまい、ついに文子様に代わってしまった。
『ちぇ…いえ、聖槍!』
『文子さま!照れながら言うと余計に恥ずかしいわよ!』
文子様が星水晶の体で魔法を使うと、光の槍が空中に出現した。
そして、驚くことに、悪魔の心臓からも、もう一本、同じ光の槍が出現したのだ。
悪魔は予想外だったようで、槍を押し戻そうとしたが、光の槍に触れることはできなかった。
『悪魔も同じ聖槍を出した!どういうこと?』
二本の槍は交差して十字を描いた。
(あれは文子様…それともう一人、誰かしら?)
彷徨っていた星水晶の魂は、十字を描く光に吸い寄せられるようにふわふわと浮いていった。
『文ちゃん!』
『えっ、お船ちゃんなの?』
二人は手を取り合った。
『文子様!お知り合いですか?』
『お船ちゃんは、昔、道端で倒れていたところをうちで保護した女の子ですわ!文子とは姉妹のように育ったのよ。』
『えっ!?』
『私はフィーネ。この世界の巫女だったけれど、悪魔に力を奪われて、神様があなたたちがいた世界に逃してくださったの。』
フィーネ様は白く透き通る肌に、光り輝く金髪の巻き毛で、睫毛まで金色で、まるで天使のような少女だった。
白いふわふわした聖衣を身につけて、手足には白いリボンを巻き付けてヒラヒラとさせている。
『そう、本当はフィーネという名前でしたのね。フネ、フネと言っていたから、お父様がお船と名付けたのですわ。
異人さんだろうと思っていたけど、まさかこの世界の人だったとは…』
『ごめんね、文ちゃん。あなたが亡くなって天に召される時、私の力をあなたに託したの。悪魔から逃れるにはこうするしかなかった。』
『文ちゃん、お願い。私と一緒に聖槍の力を使ってほしい。』
『いいわ。でもどうやって?』
『聖槍は、全ての罪を贖う力。悪魔も退けられるわ。星水晶といったかしら。あなたの体を借りるわね。』
『構いませんけど、あの、文子様は大丈夫なんですか?』
フィーネ様は微笑んだ。星水晶はそれを肯定と受け取った。
『あなた、変な子ね。死んで魂になってるのに、守護霊の心配?』
『あ…。』
星水晶は自分が死んで魂になっていることに気がついた。
『大丈夫よ、あなたも連れていってあげる。一緒に戻りましょう。』
フィーネ様と文子様が手を繋ぎ、星水晶の魂と共に体へ戻っていった。




