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[prelude]冒険

 耀子様は、ロマリア大聖堂の巫女として異世界へ来ることとなった。

そして、巫女は一生をそこで終える運命だと知った。

 巫女は数十人いて、洪水を予言して町を救った女性や、神様の言葉を三度聞いたという少女などが集められていた。

その中で耀子様は戸惑っていた。


「どうして、巫女は一生を大聖堂で過ごすのですか?」


「昔…神様と言葉を交わす力を持った幼い少女が忽然と姿を消してしまって、言い伝えによると悪魔に拐われたそうです。それから巫女は大聖堂で守護されることになったのですよ。」


「家族にも会えないのですか?」


「面会は可能ですが、大聖堂以外でというのはあまり聞いたことがありませんね…」


 ロマリア大聖堂は険しい山の中腹にあり、家族が度々面会に来ることもなかなかできないようだった。


 巫女の生活は、朝と夕方のお祈り。お祈り前には体を清めて、真っ白な巫女服に着替える。

 その後一刻ほど祈り続ける。教皇と一人ずつ話す。

その繰り返しだった。


「ここの生活は退屈じゃありませんか?」


「まさか!神様にお仕えすることが生きる喜びです。」


 耀子様は、祈りの中で神様の言葉を聞いた。

 また、精神を集中しているせいか、未来視が意識すれば行えるようになっていた。

 

 星水晶がひどい怪我を負うのは避けられない。

 しかも、異世界に肉体を持ったまま転移すると、肉体への負担が大きいため、長くは生きられないことを知った。


(それは、私が星水晶の死を拒んだ罰ですか?神様、そんなのはあんまりです。

 家族も知り合いもなくし、孤独に短い人生を終えるあの子は幸せになれますか?

 人生を幸せで満たすことが、本当に救われることではないのですか?)


 耀子様は生まれて初めて、神様を疑った。

 それに、せっかく別の世界で生き直せるというのに、このままじゃ何もできない。

 耀子様は本当はもっと自由に生きたいと思っていた。

 元いた世界でも、スポーツや武道など挑戦したいものはたくさんあった。

 趣味や食べ物なども好きなように選びたかったが、周りのイメージにそぐわないことはやんわりと止められてきたし、自分でもそれを壊さないようにしてきたと思う。

 でも異世界なら、誰に気を遣うこともなく好きなようにできる。


(私と星水晶のために、大聖堂から逃げる…!)


 耀子様は、この世界でなら、きっと星水晶と二人で生きられる未来があると思った。

 

 まず、他の巫女を護衛して大聖堂に来た兵に話しかけた。

 初めは巫女様と話すなんて恐れ多いなどと言っていたが、嘘の身の上話で同情を引き、馬と護衛を確保した。

 不治の病で妹が死にそうになっていて最期に一目だけでも会いたいということにした。 

 人生で初めて、悪意を持って人を騙した。

 そうでもしないと翌日には険しい山の中で死んでいたから。

 長い黒髪は切って顔を隠し、少年のように見えるように変装した。

 そして、運び出される荷物に隠れて大聖堂から抜け出し、外で兵と合流した。


(内から外に出るのは警戒が薄いとはいえ、よく見つからずに出られたわ…)


 本来の耀子様は思い切りがよく度胸のある女だったのだ。


「ローザさん、ノエルさん、ありがとう。私のせいでごめんなさい…大丈夫だったかしら」


 ローザとノエルの姉弟は、最近来た巫女が住んでいた町の護衛兵だった。

 普段は商人に雇われているが、大聖堂の護衛が怪我をしてしまったため、急遽雇われた。

 耀子様はそういう事情のある人が来ると予め分かっていて声をかけたのだ。


「大丈夫よ。でも、黙って出てきて良かったの?私たちはどうせ町に戻らないといけないからいいんだけど。」


「巫女は大聖堂から出られない決まりなので、こうでもしなければ妹には会えません…。一応、書き置きは残してきました。」


「一生出られないっていうのは流石にどうかしてるよ。これを良しとしてるのは教会の人くらいじゃないの?

 今回僕らが送っていったミーシャなんてまだ15歳だよ!恋愛も結婚もしないでこの先ずっとあそこで暮らすんだ。僕なら絶望して神様を恨んじゃうよ。」


「一応、ミーシャも最後には自分で行くと決めたんだけど、両親も友達も泣いていたわ。」


 神殿や大聖堂近辺では巫女になることはとても喜ばしいこととされていたが、遠く離れた大陸の南などではそうでもないらしかった。


 北の山脈の旅は困難を極めた。

 ローザと二人で馬に乗り進んでいくが、お尻はズキズキ痛むし、強風で馬から落ちそうになるし、野宿はつらかった。

 ローザとノエルは往路に神殿の兵士と通ったので道は知っているが、それでも人数が少ないのでずっと危険な旅だった。 

 旅の途中、耀子様はローザから剣を習った。護身用として、あくまで基礎だけだったが、そこで耀子は驚くべき才能を見せた。


「そっち行ったよ!そこのモンスターやって!」


「たぁっ!!」


 中級くらいのモンスターが襲ってきても、既に耀子様は自分の身を守れるくらいになっていた。


「最初は剣なんて持てるのって思ったけど…巫女って皆こんなに強いものなの?」


「はぁ、はぁ……いえ、わかりません…。」


「下手したら僕が剣始めた時より強いよ!」


「下手しなくてもそうよ。ノエル、最初は弱いモンスターにも跳ね飛ばされて怪我してたじゃない。」


 耀子様はある程度、未来視で危険予測ができる。右から来るか、左で来るか。いつ攻撃が来るか。


(なぜこんな力があるのかわからないけど…星水晶を救うためなら使えるものは何だって使うわ。)


 もうすぐ、星水晶がこの世界に来ることは間違いない。

 いくら魔法の使える世界でもあの大怪我で助かるかどうか…


(私なんかがいなくても星水晶は助かるのかもしれない。

でも、少なくともその場に治癒師がいなければ助からない。)


 耀子様は神様を裏切ると決めてから、お祈りすることをやめていた。もっと確実なものしか信じられなかった。

主人公より異世界に適応している耀子様。

ニュータイプか?

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