思い出と希望 4
礼拝には、珍しくポピーが参加していた。
目があったが、顔をしかめただけで何も言われなかった。
夕食後、シスターたちは集まって話をしていた。
「ポピー、今日礼拝に出てどうだった?」
一番歳の近いメアリーが話しかける。ポピーと話ができて、嬉しそうにしていた。
「…どうって、何も変わらなかったわ。お祈りしてもしなくても。」
「お祈りは神様との会話みたいなものよ。」
メアリーは無邪気に笑っている。
「わからない…。神様がいるなら、どうしてあたしの家族を助けてくれなかったの?」
「神様を疑うのはいけないことよ。」
「そういう時、私は神様にお祈りして、なぜと問いかけますわ。
私に答えがわからなくても、神様がそうなさったのにはきっと理由があると思うから…」
「セイラは神様に会って、助けてもらったからそうやって信じられるんだわ!でも、あたしは違うもの。」
いつもなら、いい子ぶってと怒り出すポピーだが、今日は少し違っていた。
そして、セイラもそれを感じていた。
星水晶は神様に救われたから信じられる、というのはまさに正論だった。
もし飛行機事故に遭ったのがお姉さまだったら、星水晶も神様はどうして救ってくれなかったのかと思ったはずだ。
「神様に会ったのは守護霊であるご先祖様ですから、私はお会いしたことはないんですよ。
…でしたらポピー、ご先祖様に聞いてみますか?
教えていただけるかはわかりませんが…」
星水晶にはその記憶がないということは、共有したくない、秘密にしたいことなのかもしれない。
「そのご先祖様っていうのもどうせ演技でしょ?嘘つき。」
『そんなに言うなら教えてあげようか?私、あなたの守護霊とも話せるから。』
「…?何言ってるのよ…」
『うふふ、あなたのその赤毛、お父様の血なのね。濃い青い目はひいおばあさまと同じ色なのですって。』
『お家の人は代々、町で道具屋をしてたんやねぇ。お父さんはお鍋や食器を作って、お母さんが売って。緑の屋根の小さなかわいらしいお店。』
(どうして!?セイラがこの世界に来る前に、お店は人手にわたってなくなってるのに!)
神殿に道具を卸したことはあったが、シスターも、他の誰も、もちろんセイラもお店に来たことはないはずだ。
ここの通いの庭師や荷運びの人だって、ポピーの故郷の町じゃなくて、神殿の近くの村人だった。
他のシスターたちも驚いていた。誰もポピーの家の詳しい話は知らなかったし、セイラに話したこともなかったからだ。
神官様がポピーを迎えに行ったのも故郷から遠く離れた町の教会だと聞いている。
「ねえ、ほんとに神様や守護霊と話せるの?お母さんとお父さんはその中にいるの?」
『ご両親の魂は天国で眠ってるんじゃない?私たちが話せるのはあくまで守護霊よ。』
それを聞いた途端、ポピーはぼろぼろと涙を零した。
「お父さんお母さんに会えないなら、あたし、生き残りたくなかった!あのまま死んじゃえばよかった!」
シスターたちはポピーが人前で泣くところを初めて見た。
イザベラは困惑して言った。
「シスター・セイラは、両親はずっとそばで見守ってるっていうんじゃないかと思ったの。
ごめんなさい、嘘つきって思ってたわけじゃないけど…」
(もし守護霊が両親だと嘘をついても…苦しい時に助けてくれないと彼女はきっと疑問を持つわ…。私だったらそう思う。)
『守護霊は、親の愛という絶対的な守りとは違うのですわ。』
(ごめんなさい、一智佳様、私が話してもいいですか?)
『ええ、おきばりやす。』
「私もずっと、生き残りたくなかったって思ってましたわ。
ここからは証明なんてできない話だけど、聞いてくれますか?」
「うん…。」
ポピーは素直な気持ちを取り戻し始めていた。
「家族や大切な人を失って空っぽになった心に、唯一残っていたのは大切な人との思い出だった。
この世界が異世界でも、私はその人といつか再会できるって信じています。たとえどちらかが亡くなっても、魂は永遠だから神様の元で会えるって…
ポピーも、いつかお迎えが来た時にご両親とまた会えると、心から信じられる日が来るわ。
今は、そうは思えなくても、ポピーの心が安らいで、希望が持てるように祈るわ…。」
読んでいただきありがとうございます!
修道女寮編は次回までです。
連休中頑張って書き進めたいと思いますので
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