思い出と希望 2
シスター・イザベラとパトリシアの話を立ち聞きしてしまい、星水晶は罪悪感を感じながらポピーの置かれた過酷な状況にも心を痛めた。
『…憎しみとか怒りが生きるエネルギーって、それ絶対めっちゃ悪いやつやん。心にも体にも。』
『文子は怒りが原動力になるタイプよ?』
『自覚あったんや…』
『ポピーちゃんのあれは、あんまりいい方向じゃないわよ。
星水晶ちゃんがポピーに何したっていうのよ。』
「でも…きっかけは私ですわ。」
愛情を持って接してきたにもかかわらず、それがたとえ怒りや憎しみでもポピーの心を動かしたのが星水晶だったことに、イザベラは複雑な思いを抱えていた。
それからしばらく、いつもイザベラと一緒にいたポピーが一人でいることが増えた。
ポピーはそのことについてもセイラを責めた。
神殿でお祈りをしている時に、つかつかと近寄ってきて言った。
「セイラのせいでベラとぎくしゃくしてる。」
イザベラはポピーと距離を置いたのね…と思っていると、ポピーはセイラを、大きな青い目で睨んで言った。
「事故に遭って可哀相なのはあたしだったのに、どうしてあなたがみんなに良くされるの?
あたしの居場所をとったくせに。被害者づらをしないでよ」
同じように悲惨な事故に遭ったセイラは立ち直ってシスターになったのに、ポピーは…と比較をされていた。
まだ小さいから仕方ない、という大人たちの言葉の裏にある圧力を敏感に感じていた。
「あなたもあたしのこと嫌ってるくせに…。」
「そんなことないわ。嫌いって気持ちがあると、目の前の人も自分のことを嫌ってるように見えるけど…」
今まで、ポピーの言葉を受け止めるだけだった星水晶が、初めて反論した。
「わかったようなこと言わないで!みんな大嫌いよ!」
ポピーは今にも掴みかからんばかりで、涙ぐんで肩で息をしているような状態だ。
その時、騒ぎに気づいたパトリシアが、慌てて割って入った。
「ポピー落ち着いて!何があったの?」
「パティだって、憧れてたカインとセイラが二人で出かけたって、泣きながらベラに相談してたじゃない!」
「…!聞いてたの?」
「セイラがカインに色目を使っていたこと知ってるのよ!」
パトリシアはポピーを落ち着かせるためセイラを連れていき、ポピーはイザベラが部屋に連れて行った。
「ポピー、もうよしなさい。こんなことして、自分も相手も傷つくだけよ。」
「ベラ…。あたし、あの子の顔を見てると嫌な気持ちになるけど、傷つけるようなことを言うとスッとする。それが気持ちいいの。」
「でも…その後また嫌な気持ちにならない?」
「何したって、嫌な気持ちがなくなることなんてないじゃない…」
「そういうときは神様にお祈りをするのよ。」
「嫌よ。あたし、わからないもん。神様のこと、何もわからない…」




