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思い出と希望 1

 サンタマリア・クレール神殿の修道女寮。

 神殿の規模に対してシスターの人数は少ないため、一人一部屋が与えられていた。

狭く、硬いベッド。木でできた机と椅子。枕元には教典。頭の上にはマリア様のレリーフが飾られている。

 星水晶は夜明けの前に起きて修道服を身に着け、髪を梳かしていく。


 一度、髪は焼け焦げてしまい、短く切ってしまったので今はショートヘアだが、以前は鎖骨の辺りまであった。


 髪や目が少し淡く茶色がかって、天然のウェーブがかかっていたので、校則違反のパーマや染髪をしているのではないかと噂になったこともあった。

 先生方には説明していて注意されるようなことはなかったけれど。


(一時期気にして短く切ってしまったのもかえって目立ってしまったわ。)


 今はその時期と同じくらい短いので、鏡を見るとアンナマリア学院に通っていたときのことを思い出す。

 学院では浮いていたが、お姉さまとの思い出も多く、懐かしく思えた。

 星水晶がこの世界に来てから既に8ヶ月が経っていた。


 思い出に浸る間もなく、朝の礼拝に向かった。


「おはようございますシスター・セイラ。」

「ごきげんよう、シスター・メアリー。」


 表面的には溶け込んではいたが、星水晶はシスターたちと打ち解けられてはいなかった。

 特に、親を亡くして神殿に引き取られた少女、ポピーには嫌われていた。


「…!おはようございます、ポピー。シスター・イザベラ。」


ポピーはため息をついて、目を合わせず、すれ違う。


「優等生の顔見たから、朝から気分悪いわ」


 ポピーはお人形みたいな少女で、くるくると巻いた赤毛を両サイドで結んでいる。

 常に顔色が悪く青白いため、よけいに作り物めいた印象があった。

そして、表情に悪意はないが、言葉にはかなり棘があった。


「そんなこと言っては駄目よポピー。

おはよう、シスター・セイラ」


「聖人ですって顔して、いい子ぶって。本当はそんな性格じゃないくせに…。」


星水晶は黙って立ち尽くしていた。

 ご先祖様たちにも、いい子とはよく言われるけど…あれは嫌味だったのかもしれない。


「行こう、ベラ」


 星水晶は会うたびに何かしら傷つけるようなことを言われていた。

 そして、ポピーに何を言われても、決して言い返すことはなかった。


『…朝からよう口がまわるなぁ〜』


『ねえ、ちょっと代わって?星水晶ちゃん。頭はたいてきていい?手加減するから。』


 毎日繰り返される嫌がらせに、ご先祖様たちは憤っていた。


 男性の多い環境で研究ばかりしていた一智佳様。

 明らかに箱入りでツンデレなご令嬢の文子様。

 乗馬を嗜んだり、手が早かったり、見た目に反して活発な美凪様。 

 三人とも女同士のいざこざには疎く、身を任せたが最後、砂の城のように築いた人間関係が崩壊するのは必至だった。


 ある日、星水晶が掃除をしていると、階下にいるイザベラとパトリシアの話が聞こえてきた。


「ポピー、今日もセイラに嫌悪感丸出しだったね。

 なんであの子急に話すようになったのかな…

 前はベラがいくら根気強く話しても、部屋からほとんど出てこなかったじゃない?」


「パティはセイラが来たときのこと、知らなかったわよね…」


 ポピーはセイラの異世界転移の際に重傷を負った姿を偶然目撃した。

 その時、過去の事故の記憶が呼び覚まされて、恐慌状態に陥ったのだという。


 彼女は家族で馬車の事故に巻き込まれ、ご両親は即死。本人は重傷を負ったが、九死に一生を得た。

 その後、遠縁の親戚に引き取られたものの、子守や家事にこき使われた挙句、役に立たないと放り出された。

 その後、身寄りがないため神殿に引き取られたが、ずっと心を閉ざしていた。

 ポピーのことはシスター・イザベラが献身的に面倒を見ていたが、自分から全く話さず、笑わず、礼拝や祈りも拒否していたという。

 それなのに、セイラがシスターとして修道女寮に来たときから、感情を露わにポピーは怒り始めた。


「そんなことが…」


「うなずくだけの人形みたいだったポピーが、セイラには”嫌い”っていう感情をぶつけるの。わたしには、彼女の心を動かすことはできなかったのに…。

 わたし、あの子には愛情が必要だと思ってたの。でも違ったみたい。

 リュカ様に任されたのに、あの子を正しく導けなかったわ。どうしよう、パティ…」


「そんなことない。ポピーはベラに一番なついてるじゃない。」


 イザベラはわっと泣き出してしまい、パトリシアは背中をさすって慰めていた。

イザベラはしゃくり上げながら続ける。

「それに…怒りの矛先になるのが私じゃなくてよかったって、気持ちもある…」


「当然だよ!私だったら大喧嘩してるよ?

 でも、セイラは何を言われても受け入れてるように見えるよね…。

最初は言葉がわからないから伝わってないのかと思ったけど。 

 異世界人ってみんなああなのかしら…おとなしいっていうか、感情が顔に出ないっていうか…」


 そこでイザベラとパティは話しながら出ていった。

今回から修道女寮編です。

たくさんの方に読んでいただき、ありがとうございます。


出番が増えるよ!やったね星水晶ちゃん!

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