モンスター
近くの繁みがガサガサと音を立て、人の膝くらいの高さのモンスターが現れた。
『出ましたわ!』
『あのネズミみたいなの…図鑑で見たことがあるわ。
こちらから攻撃しない限り襲ってこないはずや。』
一智佳様の言う通り、周りをうろうろしているだけで攻撃してこない。
それが無害そうにキュルッと鳴いた途端、美凪様がいきなり、そのネズミのようなモンスターを上から叩いてしまった。
バシィッ!!とけっこう痛そうな音がした。
モンスターは突然叩かれて固まってしまっている。
「美凪様!?」
『えっ、何をしてますの!?』
『だって、あたしのこと笑ってたわ!』
美凪様には、正座させられている周りをぐるぐるされるのが、嘲笑に見えたようだ。
前から思っていたけど、美凪様は…無鉄砲なところがある。
『それに、あたしネズミは大っ嫌い!』
先程、危険に晒すなと怒られた美凪様だが、素手がわりと強い。
相手がさほど強くないと見ると、立ち上がって腹いせにボッコボコにしてしまった。
『美凪さんもうやめて!』
文子様は止めに入るため、無理矢理美凪様と代わってしまった。
倒したと思ったモンスターは、見かけによらず素早い動きで木に駆け上がった。
ネズミのように見えたが、飛膜を広げて、滑空してくる。
あれは…大型犬サイズのムササビだ!
あの速さで衝突されたら怪我では済まないだろう。
「セイラ、危ない!」
カインが戻ってきて、抱えて逃げてくれたので一度は躱したが、さすがに怒って、再度、木の上から狙ってきた。
その時、文子様は星水晶の体を庇おうとした。
『……チェストォォォ!』
文子様がそう叫んで拳を突き出すと、光る槍が空中に出現した。
ムササビモンスターは光の槍に当たらなかったものの、怯えた様子で逃げていった。
『た、助かったわ…』
『今の、見ましたか?
文子…魔法が使えましたわ!』
「……!?」
カインは信じられないものを見たという顔をして、へたり込んでしまった。
『文子さんのチェストー!は最高やったわ、パンチ、全然届いてないし、あぁおかしい』
一智佳様はけたけた笑っている。
『何も笑わなくたって!
京女はいけずって言いますけど、間違いではありませんのね!』
文子様は魔法が使えて気分が高揚していたのに、掛け声を笑われて拗ねていた。
『かんにんかんにん、びっくりしすぎて逆に笑けてきた。
この世界の人にしか魔法は使えないと思ってたし。』
魔法が使えるかどうかは生まれたときから決まっている。
それがこの世界の理とされていた。
『でも、文子は確かに魔法を使えましたわ。
あぁどうしましょう、まずは空を飛んだり、火を出してみたり…カイン様、魔法を習う学校はあるのかしら?』
はしゃぐ文子様だが、少し具合が悪いように感じた。
とりあえず落ち着かせて、馬を待たせている水場へ戻ることにした。




