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修道

 その日、初めて星水晶としてリュカ大神官にお会いすることになった。


「初めまして。わたくしはカンベ セイラと申します。長い間お世話になりましたのに、ご挨拶が遅くなり申し訳ございませんでした。

命を救ってくださったこと、心から感謝しております。」


「初めまして、リュカ・クレイヴと申します。

目が覚めて本当に良かった。さあ、こちらへお掛けなさい。

こちらはシスター・エリカ。セイラさんのお世話をしてくれた人ですよ。」


「シスターにも、ご迷惑をおかけしてしまいました…」


「いいんですよ。大変な目に遭ったのですから。体に痛いところはありませんか?」


「ええ。おかげさまですっかり元気です。それに、長い間寝たきりだと、歩くことすら最初は難しいと聞きますが、その…ご先祖様たちがせっせと体を動かしておいてくださったので大丈夫ですわ。」


 よかったよかったと、リュカ大神官とシスター・エリカはニコニコしている。


(こんな私を不気味に思うこともなくて、本当に一智佳様が言った通り、良い人たちだわ…)


 治療や警護、本や服の手配。たくさん迷惑をかけてしまった。


「セイラさんはお見受けしたところ、裕福なお家のお嬢様なんじゃないかと思うんですが、そのあたりの記憶はありますか?」


「わたくしは…この世界の人間ではございません。」


 そう言って、星水晶は二人に事の経緯を説明した。


「飛行機…空を飛ぶ乗り物が落ちてしまい、大怪我をして死にかけたところ、神様が隣の世界からこの世界に飛ばしてくださったのです。

 元の世界では私はあのまま死んでいたことでしょう…。」


「まあ…そんな危ない乗り物があるなんて。落ちたら大けがをしますわ。」


 シスター・エリカは、浮遊魔法で浮かせた椅子に乗って移動している様を想像して言った。


「助けてくださったお礼をしたいと思うのですが、わたくしには唯一、このブローチしかありません…宝石の部分だけ外して、お金にできますでしょうか?」


「それはセイラさんの宝物でしょう。傷をつけるなんてとんでもない。大事に持っていなさい。」


 リュカ大神官は優しく諭して言った。


「行くところがないなら、この神殿で奉仕活動をしながらシスターとして生活してみますか?」


「はい。シスターになり、神様と、救ってくださった方々に感謝のお祈りをしたいと思います。

 ご親切にしていただいて、本当にありがとうございます。

 あの、わたくし、実は人を探しているのです。ヨウコという名前の巫女様で、わたくしがここに来ることを預言し、命を救ってくださったと聞きました。

その方が、行方不明になったお姉さまと同じ名前なのです。」


「確かに、どことなく異国の響きがして、めったにないお名前ですわ。」


「神様と交信できる方は、巫女として教皇のいるロマリア大聖堂へ行くことになっています。

険しい山脈を越えた西側にありますから、余程のことがない限り会いに行くのは難しいですね…。

 セイラさんも、神様の手でこちらへ来たということで、巫女としてならば…馬や騎士が付いて、行くことができると思います。その場合、一生を神に捧げることになりますから、覚悟が必要ですよ。

 そして、厳密な調査の上、審問を受けて認められなければならないので、時間がかかります。

 まずは巫女様宛で、大聖堂にお礼の手紙を出してみませんか?」


 この世界の文化は産業革命前の近代で止まっている。

移動手段は基本的に馬、馬車、徒歩。

 東西の大陸は北方で繋がっており、北方には険しい山脈が広がっている。

 聖ロマリア国は、北側が全面山に囲まれており、北東にリュカ大神官のいるサンタマリア・クレール神殿があった。

 ロマリア大聖堂は山の中腹に建てられ、麓におりると南は海に面している。

 聖ロマリア国は宗教国家であり、交易が盛んではなく、閉鎖的な国のため、極めて情報を得にくい土地柄だった。

 大陸の中央ではその限りではないが、多くの人は一生を国から出ずに終えるのだ。

 海を超える移動手段は魔法か、向う岸へ渡る場合は手漕ぎ舟か浮遊魔法を使用する。

 魔法での移動は貴重で、使い手は国賓待遇。国家間の取引や交易にしか使われない。

 

 魔法使いが使役する鳥を使って伝書することは可能で、今回はアルバスに頼んで手紙を送ることになった。

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