第六話:オタク三人衆⑥正体
〜前回のあらすじ〜
大食い大会でブゥが優勝。
「聖マドレーヌ教会へようこそ」
「生シスターぁぁあ! 生シスターでござるよ!」
「困ってるじゃねーか、すいません。どうかこの迷える変態を成仏してやってください」
「ウフフフ、とても面白い方ですね」
教会に着くと美しいシスターが出迎えてくれた。俺たちがふざけ合っても一切微笑みを崩さない。プロだ。
「シスターさんのようなお姉さんタイプも中々良いですなぁ〜、シスターさん! 正直に拙者のことどう思うか教えて下さい!」
「ど、どうと言われましても……と、とても優しそうな感じがしますわ」
「やったでござる!」
「急になに聞いてんだよ、戸惑ってるじゃねーか。困ったときは優しいって答えるんだよ、社交辞令だバカ」
「ほぉ〜! いーでござるよ、そこまで言うなら! シスターさん。もう一度正直に、正直にお願いします! 拙者鋼のメンタルなので、どんなこと言われても受け止めるでござるよ。拙者のことどう思うでござるか?」
「気持ち悪いに決まってんだろ」
「ガハッ、いや辛辣に言って欲しいとは言ってないでござる! このシスターさんドSに違いないでござる!」
「ドSなお姉さんはたまらんぶぅ。お金払うから靴舐めさせてほしいぶぅ」
ブゥの発言に若干シスターの笑顔が、険しくなった気がする。
「失礼しました。ところで今日はどういったご用件でしょうか」
「こちらでステータスを確認できると伺ったのですが」
「かしこまりしました。では、こちらにお願いします」
そう言ってシスターに連れられていった場所には、腰程の高さの円柱があった。円柱の表面には手型が描かれている。
「ここに手を置いてください。ご自分のステータスが確認出来ます。他の人が見ることはできません」
俺たちは指示に従ってそれぞれステータスを確認していったのだった。
ステータス
新田 聖貴 (従属)
小鬼 LV 3
ユニークスキル 【大賢者】魔法、言語理解。
ステータス
崎野 勇気 (従属)
人間 LV 1
ユニークスキル 【不死者】死なない。
ステータス
黒豚 まひろ (従属)
半人間 LV4
ユニークスキル 【暴食】大罪シリーズの一つ。
いや俺人間辞めてるんだが! スキルの説明短ッ!
それぞれのステータスについて確認し合う。レベルの違いは、おそらく異世界に来て初日に倒した狼の数だろう。
名前の横に書いてある(従属)ってのはなんのことだろうか? シスターに聞くと、名前の隣に書いてあるのは、その人の状態が通常でないときに書かれるそうだ。
例えば、毒をくらうと名前の隣に(毒)となるそうだ。
(従属)というのは、おそらくゼノスの加護のことだろう。どうやって会いに来るのかと思ったが、おそらくこれが目印となるに違いない。俺たちはそう結論付けた。
◇
教会を出ると辺りは暗くなり星が出てきていた。まだまだ大通りは賑わっている。酔っ払いたいたちがウロウロしていた。
もういいかと思い、″姿を変える魔法″を解いた。
「先輩〜! 飲み過ぎですって」
「うるへぇ〜、こう毎日退屈だと飲まなきゃやってらんねぇ〜」
長身の寝癖が目立つ男を、犬顔の青年が支えている。
「あ〜拙者もあのぐらいベロンベロンになりたいでござる! どうせ異世界は成人が15歳とかに違いないでござる! お酒飲んでみたいでござるよ!」
「そういう問題かよ、まぁ晩飯がてら宿屋を探しつつ出店を回ろうぜ」
様々な出店がある。肉を焼いて串にさしているシンプルなものから、見た目からは予想できないものまで。
地球と似たようなものも多い。違うのは使われているのが名前から察するにモンスターを使っていることだろう。この世界に動物は少ないんか?
ブゥは早速何やら買ってガツガツ食べている。俺とゴザルも安くするよと声をかけられた串焼きの出店に寄った。
「まひろ氏〜折角異世界の食べ物なんだから味わうでござるよ。大食いは終わったでござるからね。食材への感謝の気持ちが大事でござるよ。そうして命を頂くことを許されるでござる」
「お前が良さげなこと言うのは気持ち悪いな。感謝の気持ちは確かに大事かもだけど。まぁかと言って俺が巨人に食われたとして感謝しとけば許すとはならないけどな」
「メガネの兄さん! いいこと言うな! 人気のこれサービスであげるよ!」
そう言って串焼の店員が渡してくれた串には、五匹の芋虫みたいなのが串刺しにされてウネウネと動いていた。
「感謝の気持ちが大事なんだろ残さず食えよ」
「あ、あ、当たり前でござる! あぁ〜感謝感謝」
◇
ゴザルが体調を崩したのですぐに宿屋を探すことにした。すぐ近くにあり、中に入るとスキンヘッドのゴツいおじさんがカウンターで新聞を読んでいた。
「大人三人。一泊させていただきたいです」
「拙者トイレを借りたいでござる〜」
「一人四千ゴールドだ。部屋は二階。トイレは廊下の隅にある」
俺はお金を払うと部屋の鍵を受け取った。ゴザルはやばいでござる〜と言いながらトイレへかけていった。
ブゥは食べ足りないと言ってまだ出店を回っている。宿屋の場所だけ伝えておいた。
異世界の宿屋は汚いイメージがあったが、清掃が行き届いた。これは部屋も期待できるな。そう思いながら部屋を開けると──
ヒュン!
「ツッ!?」
ドアを開けた途端剣の先がこちらに伸びてきた。すんでのところで顔を晒してかわす。
顔のすぐ横を剣が通り過ぎていくのを感じながら、部屋の中にいた人物の腹に蹴りをくらわせた。
「ガハッ」
蹴りでよろめいたところにさらに踏み込んで顎を殴り、意識を刈り取った。
「フゥー、俺は男女平等主義なんでね、躊躇なんかしないよ」
そこには長身の女が横たわっていた。