第四話:オタク三人衆④黒幕?
〜前回のあらすじ〜
ゼノスによる修行編突入。
時は少し遡りオタク三人衆が異世界の野原に転がっているころ。
とある王都学園の校長室。
部屋の隅に一つの扉がある。
別の部屋に繋がっているというわけではない。どこにも設置されていない厚さ二十センチ程の何の変哲もない扉だ。
その扉が突然開いたと思うと、三人組が出てきた。
一人は丸々太った四十後半の男。手に怪しく光る指輪をはめている。
その男に付き従うようについてくる男女。男の方は身長180程のスキンヘッドで、ムキムキの筋肉の持ち主。女も長身でとてもスタイルが良い。
「まさか一日に四人も始末するとはな」
筋肉の男が言う。
「可愛い子たちだったのに残念ね」
そう女が返す。
学園の外が騒がしい。今日は国王祭一日目。毎年この時期に三日間祭りが行われる。
魔王を倒した勇者がこの世界にやってきたといわれる日なのだ。と言っても昔のことなので、勇者を祝うよりも、今では祭りで盛り上がることがメインとなっている。
出店がたくさん出ており、真夜中というのにまだまだ大通りには人が溢れかえっている。
「私もはしゃぎたいわ。どこかで男を捕まえてこようかしら」
「俺は筋肉のメンテナンスをしてくれぜ」
そういうと男女は校長室から出て行った。一人残った太った男も、しばらく椅子に座ってなにか考え事をしていたが、やがて立ち上がると校長室を後にした。
校長室下に静寂が訪れる。
...........ガチャ。扉が開いた。
◇
翌朝太った男は国王のいる城へと向かった。現在の王というのが、昔魔王を異世界からきて倒した勇者なのだ。男の祖父でもある。
形式的なものではあるがお祝いの言葉を述べにいくのだ。
「陛下お久しぶりです。お元気そうでなによりです」
公の場なので敬語である。国王の姿は、百歳を超えてなおその筋肉は衰えがみえない。
「元気にしておったか。こちらと地球、どちらも校長として活躍しているようで嬉しく思うぞ」
そこからしばらく世間話が続いた。
──ピカッ、バリバリバリバリ
突如空が光ったかと思うと、空気を震わすような音が鳴り響いた。城の中が騒がしくなる。
「何事だろうか、あれは魔法であったぞ」
国王がそう呟く。
国王が確認するように、部下のものに命令を下していると……
パリーン
ガラスが割れた音が響いた。メイドたちの叫び声。
顔を上げると陛下が腕を上げている。その手元からは煙が出ており、石のようなものが握られていた。
窓の外から石が飛んできたようだ。
兵士の怒鳴り声が聞こえる。
「何者かが狙っておるのかの。<<遠視>>」
陛下がそう言うと、陛下の目元に魔力が集まる。
「青年が三人。地球の服装のようじゃの……一人は裸じゃが。お主心当たりはないか?」
(もしや……まさか生きていたとは………)
「…… いえ、異世界の扉は他のものには教えていませんし…… 。地球のものでしたら私が対応しましょう」
「そうか、すまんの。ワシはスピーチがあるでな。もし手が欲しかったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとございます。現在国王祭の為王国騎士団が国内におりません。暗殺者の可能性もあるので、身の回りには十分お気をつけてくださいませ」
◆
私は王室を後にすると、すぐに昨夜の男女二人を呼んだ。
「昨日の三人組がこちらの世界に来てしまったようだブゥ、すぐに見つけ出して始末しろブゥ」
二人は直ぐに行動を開始する。
私の祖父である勇者は、魔王を倒した後地球に帰れる扉をみつけた。現在は学園の校長室に置いてある。
地球にある魔法陣に関しては、絶対に使うなと言われている。何でも通って生きていたものは勇者以外にはいないそうだ。
勇者はユニークスキルを持ってるが、私は持っていない。父も持っていなかった。おそらくこの世界に魔法陣でやってきたか、扉でやってきたかが関係しているのだろう。
悔しいが仕方ない。代わりにユニークスキルが使えるようになる指輪を嵌めてある。
この世界はとても素晴らしい。法律が緩く自由が効く。祖父や父は、自分が育った世界を見せたくて息子である私を連れてきたようだ。
他の者には秘密にする様に固く言われている。部下の男女二人以外には教えていない。二人が口外することはない。そういう命令を下している。
だが一方で、異世界で秘密裏に人体実験を行い、その結果を地球のものに伝えることで利益を得ている。
こちらの世界ではよほどへまをしない限りバレることはない。
優秀な協力者もいる。この指輪をくれたのもその協力者だ。
昨夜偶然三人組が地球の校長室に忍び込もうとしていることが分かった。その三人のうちの一人が自分の息子だったのだ。
これはチャンスだと思った。息子を亡き者にしてやろうと思った。
息子との仲は最悪だった。最後に口を聞いたのはいつかわからない。アニメやゲームにうつつを抜かして、親の言うことは全く聞かなかった。
なにより、息子がいなくなれば、父も現在行方がわからないので、祖父の遺産を独り占めできる。そう考えた。
昨夜校長室に来たところを気絶させて魔法陣に放り込んだがまさか生きていたとは。
「全く世話のかかる息子だブゥ」
私はそう呟くのだった。