君を待っているよって
チャイムが鳴って授業が終る
休み時間
僕は必ず数人の友達と保健室へ向かうんだ
お目当ては
学校中の男子生徒の憧れ
と言っても過言ではない
保健医の先生で
僕みたいな馬鹿な男子生徒は
他にもいるけれど
僕はその中でも飛び抜けての馬鹿だから
欠かさずに
保健室へと通っているんだ
僕は今日も先生に会いに行く
そう思われていた方が都合が良い
僕が本当に会いたいのは
保健室の
あのパーテーションに区切られた
向こう側にいる君で
きっと僕みたいなのが押しかける度に
息を殺して
時間が流れていくのを待っている君で
いつだっただろう
最初は間違いなく先生に会いに行っていて
あの区切りの向こうから
転がってきたシャープペン
それを拾った時に
初めて君と目が合って
君はすぐに引っ込んでしまったし
それを見た先生に
そっちは行っちゃだめだって
怖がらせるんじゃないって
怒られたけど
あの時に見た
小さく震えていた
触れるだけで壊れてしまいそうなほど
繊細なガラス細工を思い起こさせた君
これを恋と呼ぶのか
一目惚れというのか
僕にはまだ
分からないけれど
保健室登校って言葉を後から聞いて
複雑な事情を抱えているって後から知った
だからもしも
僕が本当に君を思っているなら
もう会いに行こうとするのはやめるべきだし
知り合いたい
仲良くなりたい
そう望むのも諦めるべきで
ましてやあのパーテーションをぶっ壊して
君をそこから引っ張り出したい
なんて言語道断で
行っちゃだめなんだって
分かっているはずなのに
それでも僕は今日も保健室へと向かう
先生に熱を上げている馬鹿な男子生徒の一人として
いつか奇跡が起きて
もう一度君と会える事を祈りながら
これを恋と呼ぶのか僕には分からない
そして君の苦しみも悩みも僕は何も知らない
それでも
もしも君が
あの区切りを越えようとした時
僕は誰よりも早く
誰よりも強く
君の力になっていたいから
君を待っている人がいるって
君を待っているよって
いつか伝えたくて