4-7 最後の金貨1枚の使い方
S級ダンジョンは、未だに人類が未踏とされている地。
それは魔王を倒した勇者ですらも奥に踏み込めない場所。
その場所の正体をゲームで例えるならば──“クリア後の裏ダンジョン”。
たかだか魔王を倒した程度でどうにかなる場所ではない。
むしろ魔王までなどただの前座、クリアしてからが本番まである。
人類的に存亡の危機である魔王でも、ゲームにしてみればただの用意された表ストーリーにしか過ぎない。
それに実際、ただの人類程度でも魔王は過去に何度も倒してきている。
それがこの世界に住まう人々の認識の甘さ、意識の弱さであり、限界点だった。
本当にヤバい奴はこの他にも居る……
神話時代の悪魔や熾天使、それに神剣という存在も。
ほとんどが滅びたとはいえ、未だに“封印”という処置で施された魔神などもいる。
だからこそ古代文明は滅びた。
認識の甘さが“世界の脅威が魔王だけ”と思い込んでいたから。
もっとヤバい奴など、この世界には幾つも存在しているというのに。
神という存在に対して。世界の成り立ちという真実に対して。
真っ向から向き合うべきだった。
勇者や魔王など、単なる神様の遊び道具にしか過ぎない。
それらを越えて、本当の脅威に立ち向かわなければならない。
神様に一擊を与えられる程の強さを持たなくちゃいけない。
人類は未だにSランク危険地帯に踏み込めないでいる。
古代から存在している“龍”にも敵わないでいる。
この世界の真実にも、辿り着けないでいる。
この世界で人類は、あまりにも弱過ぎる……
神様にも、世界にも、真実にも向き合えていない。
操り人形のまま、踊り続けているだけ。
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たとえば、最強の魔法が何かと問われたとする。
その答えは闇魔法の“ブラックホール”などが挙げられるだろう。
全てを呑み込む禁断の超位魔法、それがこの魔法の脅威の位置付けである。
ではこの魔法を実際に習得するにはどうすればいいか?
その習得条件は相当に特殊であり、難解であると言わざるをえない。
まず勇者として生まれる事。
そう、まず勇者…… これが最低条件。
次に世界を救ってくる事、人類を救ってくる事。
そして最終条件、──『その人類から裏切りに合う事』。
ブラックホールとは、闇落ちした勇者だけが扱える最終の禁断魔法なのだ。
魔王に成り代われるのは、その魔王を倒した元勇者だけ。
最も輝かしい光が反転する時に、そこにはかつてない程の最大の闇が生まれる。
それがブラックホールという魔法を習得するための条件。
そして勇者という役割を最初から放棄してる場合の少女が、この魔法を習得できる可能性は……
まあなくはないかもしれない、限りなく0に近い絶望的な確率で、だが。
そもそもが魔法力が全然足りてない。
闇のエネルギーを集めて敵を攻撃、なんて事すらも現状では程遠い。
この旅は、至難を極めていく……
レベル1でゲームを攻略していくかの如く。
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街道を歩いていると、やがて城壁で囲まれた街並みが見えてきた。
遠くには立派な王城なども見えてくる。
やっと辿り着いた、人々が集まる中心の王都。
旅の道中では様々なモンスターを倒してきた。
蟻の大群を始めとした、まあ主に低級モンスターばかりだけど。
しかしその数は大量であり、魔石として持ってきている。
城壁の門では商人や旅人などがチェックを受けている……
順番待ちの人々が並んでて、通行証を持っている者はすぐに通してもらえるようだ。
他にも貴族専用の通門などもあって、こっちは貴族ならフリーで一瞬で通れるみたい。
私は姿をボロボロのマントで覆い、見た目を偽装する。
こんな所で“赤い髪の少女”だとバレるわけにはいかない。
フードを被って外からは判断できないようにする。
列に並び、静かに順番待ちをする。
高ランクの冒険者などはギルドカードが通行証の代わりにもなるようだ。
私は自分のギルドカードを見てみる。
Eランク冒険者──ステータス──
──“C級ランクエリアボス討伐”。
……なんか厄介なものが書かれていた。
しかもソロ討伐でしか書かれない色で。
まあステータス同様、この表示は自分で自由に隠せるんだけど。
前の方を見てみると、不審な人がいる。
その人は門番の者に“ソレ”を渡していた。
なるほど、あれくらいが相場なのか。
やがて自分の順番がやって来て、私は門番さんに金貨1枚を渡した。
さっきの相場を見る限り、少し出し過ぎだと思うけどまあ念のためだ。
門番さんは少し驚いた後、ニッコリ笑って何も言わずに通してくれた。
警備ザルすぎだろう……
まあこんなもんだとは思ってはいたけれども。
私は何事もなく城門を通り抜けていく。
ここから先は商業都市以上に人々が集ってくる場所。
物流などが揃い、アイテムなどが豊富に出回っている場所。
宿屋や娯楽施設なども充実している。
貴族なども多く、立派な城には王族なども居座っている。
政治や教会、魔族との激戦など、様々な思惑が交差している。
私はそこに踏み込んでいく……




