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立ち向かう赤髪少女  作者: 雪氷華
商業都市と毒霧の森
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3-32 善悪という基準を越えて……


教会のシスターさん──ミネアさんは告げる。


人には善悪があり、それを見極めることが教会の務めだと。

善である人々を導き、救い、また悪である者を改心させ、或いは討ち滅ぼす事。

それこそが世界を正しい方向に向かわせるための至上命題なのだとか。


確かに、この世界は悪の意思が集まって魔王という存在が生まれてくる。

光の意思が集まれば純正な勇者を生み出す事だって可能になってくる。

それでなくとも、善悪で人を判断するのは間違いではないだろう。


「だけど、あなたはその枠の外にいる。その存在が悪であるか、善であるか、そんな些細な事などどうでも良くなるぐらいに、あなたという存在はそれ自体がとても面白い」


人間の価値を善悪でしか測れなかった彼女にとって、私という存在はイレギュラーみたいだ。

悪だから、善だから…… そんな些細な事などどうでも良くなるぐらいに、面白い存在だと言う。

それはプレイヤーにとって最高の誉め言葉。



良いプレイヤーだから何々、悪いプレイヤーだからどうのこうの等……

そんなものは結局、そのプレイヤーがその程度の価値でしか語れない対象であるからに他ならない。

本当に凄いプレイヤーならば、善悪を越えて実力で周囲を黙らせてくる。

良いか悪いかなんて飛び越えて、そのプレイ内容で持ってして観戦者たちを魅せてしまうものだ。


良いプレイヤーか悪いプレイヤーか、そんな下らない判断基準よりもずっと価値がある「凄いプレイヤー」という高み。

それこそがプレイヤーにとって1番大事な事であり、逆に言えばそれ以外なんて割とどうでもいいのだ。

結局は、魅せれる実力があるかどうかがプレイヤーとしての価値の全て。


私という存在が善か悪かで判断されている内は、私もまだまだだという事。

いつかそんな下らない判断基準を越えて、私という存在自体を認めさせることができたなら……

その時こそ、私は背負った罪と共に報われるだろう。


前世で、そうやって生きてきたように。



ヒールを唱えて、癒しの光を集める。

光はゆっくりと漂い、やがて収束していく。


ミネアさんから伝授された回復の光、そしてルナさんから教わった魔法の扱い方。

魔法は、詠唱してから発動させるまでを一瞬の最速でこなそうとすれば努力と時間と才能が要る。

だけど、その逆ならどうだ(・・・・・・・・)


あえてゆっくりと発動させるのに、突き詰めた練習や才能なんて必要ない。

ただ遅く、その発動のタイミングを合わせるだけ。

魔法というものを覚え、ルナさんから魔法の扱い方を教わり、そしてリジェネの仕様を聞いた時に、それは出来る確信があった。


MPアクセサリーの装備を外し、現状MPを16/24→16/20に戻す。

そしてHPが5/23になった所で、ゆっくり発動したヒールの回復が始まる。

詠唱から発動までの即効回復とは真逆の、あえて遅く(・・・・・)発動させた(・・・・・)ヒール。


私は正攻法も使うし、その逆のシステムの隙を突いたような裏技に近いものだって十全に扱う。

解析してROMを弄ったような改造プレイ以外は、生まれる以前からずっと培ってきた知識の範疇だ。


ヒールの光は5/23になったHPを回復させ、無事に満タンとなることに成功した。

時間差を交えた遅延の回復手段、アクティブバトル戦の時間管理のような魔法の扱い方。

「後出しヒール」というオリジナル技の確立。

前々から想定していた方法を実現出来た事に、私はようやくこの世界における攻略のための切り札を1つ増やせた気がした。


これでエリアボスに対抗するための必要なカードは全て出揃った。

あとは金貨9枚で麻痺無効アクセサリーを買うまでの、この街で最後の時間を過ごすだけ……

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