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立ち向かう赤髪少女  作者: 雪氷華
船の旅路
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2-3 運命に抗う気持ち


緩やかな日差しが眩しく照り返す中で。

船の甲板の上では、激しくぶつかり合う剣戟音が鳴り響いていた。

2人の対峙した剣士が、お互いの力量を確かめ合うように刃を重ねてゆく。


「嬢ちゃんは、Eランク冒険者なのか?」


剣と剣を交えた稽古中に、護衛の人がそう尋ねてくる。

見たら分かるだろう、私の剣など掠りもしてないのだから。

たぶんこの人、目を瞑ってても私の剣を避けられるんじゃないのか?


「見たまんまだよ、私は最弱のEランクだから」

「それは分かるんだが…… いや、なんというか」


護衛の人が言い淀み、あからさまな隙を見せてくる。

そこに私が素早く打ち込んでみるが、当然のように届かない。

このレベル差なら隙なんてあって無いようなものか。


「そのEランクの嬢ちゃんが、どうやってその鎧を手に入れたんだ……?」


角度を変えて、奇を照らした攻撃をしてみるが、やはりそれも捌かれる。

ここまで来ると最早背中を向けられてても当たる気がしない。

まるで大人と赤子のような実力差が、この2人の間にはっきりと表れていた。


「竜の住み処から取ってきた、それだけだよ」

「…………ずいぶんと無茶な危険を犯してきたんだな」


最後にもう一度振りかぶり、防がれたところで私は諦めて降参のポーズを取った。

向けていた剣を下ろしてそれを鞘の中に納めてゆく。

全力で動いて荒くなってしまった息の乱れがとても酷い。


少し休憩だ……

当たる気のしない稽古はかなりキツい。

しかし、こうして剣の手解きを受けられるのはとても有難くはある。


達人の剣をこの身で経験しておける機会なんて滅多に無い。

対人による剣(・・・・・・)には私はほぼ未経験だったのだから。

いつかこの経験が役立つ時が来る。

それはモンスター相手にではなく、人と立ち向かうその時に……



海の上を走る船は滞りなく順調に進んでいる。

遥かな地平線の向こう、遠くの景色を眺めながら呼吸を一定に戻していく。

汗を掻いて火照った身体に、甲板の上で吹き抜ける潮風が気持ちいい。


「べつに…… 危険なんて砂粒ほども犯してないよ」

「ほう……?」


護衛の人が興味深そうに私の呟きに反応してくる。

あれはスライム君に頼んで運んできてもらった物だ。

私自身は1%のリスクも犯して無いし、もしそんな危険な行為があるなら最初から実行していない。


安全マージンを充分に取った上での行動……

それで竜の鱗がたまたま取れる範囲内にあっただけの事。

だけど、一般的には竜の素材を取ってくるという行為はとんでもなく危険な賭けなんだろう。



この世界はゲームみたいな在りもしない幻想を具現化したかのような世界。

それは誰かが望んだ世界なのかもしれないし、あるいは誰かが見ている夢の中なのかもしれない。

きっと多くの人が渇望し、そして強く願った結果なのだろう。


だけど……

私は枠の外から来た人間。

自分の意思で行動し、自分の目指す先を求めて歩みを決める。

だからこの世界の意思に縛られるつもりはない。


この世界で常識的に難しいと言われてる事も、私には関係ないし、私は私を基準として挑み続ける。

あらゆる手段を模索し、不可能に立ち向かうつもりで生きている。

そうしなければ、結局はこの世界の操り人形と何も変わらないからだ。


「ねぇ、あなた──クロスさんは…… 運命に抗う気持ちはある?」

「…………? どういう意味だ?」


Aランクの冒険者は、確かに強い。

だけど、枠を破れる程の圧倒的な力は持っていない。

この世界のルールに、この世界の意思に抗うだけの力を……


「──いいえ、なんでもないわ……」



**


やがて岸が遠くに見え始め、そこに街の姿なども表れてきた。

船乗りたちが下船の準備に動き出し、乗船客たちも荷物の支度等に取り掛かっていく。

賑やかに慌ただしくなって来た船の中で、船長は私に改めて礼を言ってくれた。


これから向かう先は商業都市──

あらゆる物流と人々が行き交う場所。

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