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放課後の姉御と妹分。


書き手:霧咲ココロ

 

ここは那楼大学文芸部室。

現在、ここには先ほどまでの騒がしさはなく穏やかで静かな時間が流れている。


そんな中、私はただひとり机に突っ伏していた。


「………ハンバー●ー」


小さく独り言をつぶやきながら。

そんな切なすぎる独白を、華麗にスルーして開いた窓から緑色の風が通り過ぎてゆく。


私は霧咲ココロ。またの名を『切り裂き魔』ハーツ・ザ・リッパー。

もちろんペンネームだ。

部室では本名よりペンネームの方が常用されているので、本名省略。

趣味は好きなものをいじめることと切り裂くこと。


脳内で展開される自己紹介。末期だなと思っても止めることはしない。

食い物の恨みは深いのだ。

ふいに、耳元でことんという音がした。


「姉御、どうかしました?」

「幼さん……」


そこに立っていたのは、少し跳ねた黒髪を持つ去年入学したばかりなピッカピカの二回生だった。

彼女の名前は幼さん。

奇人変人の集まりというか魔窟?と化しているこのサークルと、多忙美麗完璧万能で有名な演劇部を掛け持つツワモノだ。

と、いっても彼女は割と良識人の域にいる。

ではなぜこんな部活にいるのか。


「いつもすまないねぇ」


そう言って私は幼さんの淹れてくれたお茶を飲む。

ほうじ茶か。うん、おいしい。


「姉御のためですから」


そう言って彼女はお日さまのようにほほえんだ。

さっきの問いの答えは簡単、彼女は私の妹分だった。


「そう言えば姉御、私さっき来たばっかりなんすけど他の皆は?」

「んー。確かさくもんと道化兄さんが勧誘で、clさんとLさんが煙草、望月さんは予約してたゲームの買出し、先輩は「後輩萌え〜♪」って出てっちゃって、ぎにゅきさんがネコミミ。妹亥ちゃんはその追跡(ストーキング)中。で、弟兎くんが盗人。」

「あぁなるほど」


幼さんはその一言だけで悟ったようだ。

まぁどうせ弟兎くんも兄さんに嵌められたんだろうけど、可愛いものいじめるの好きだからあえて黙殺。


「だから部室がこんなにガラガラなんですね」

「〆切も過ぎたしねー。ところで今回幼さんは〆切にまに」

「あぁぁぁあああぁぁあのお菓子なんすかあのお菓子!」


急に幼さんが大声を出してある方向を指さした。

そこには確かに薄い羊羹色の和菓子がある。


「さっきほしさんがネコミミついでに和菓子を置いていってくれたんです。

 あ、ちょうどいいや。幼さん、武器でも磨きながら一緒に食べませんか?」

「ナイスアイディアっす★」


幼さんは親指を突き出しながらウインク。

和む。


そうして二人で、何処からともなく取り出したそれぞれの武器――私は包丁で幼さんはモデルガン――の手入れをしながら、和菓子を食べた。

仄かな甘みがほうじ茶に最高にあう。


そんなとき、バタンと扉が開いたかと思うとそこに青白い顔をした銀雪さんがぜーぜー言いながら立っていた。


「やっとまいた……」

「お帰りなさい、ぎにゅきさん。まいたと言いながら今度はアメリカンショートヘアーの耳としっぽが付いていることに私は笑ってもいいですか?」

「は!? いつの間に!」


慌ててネコミミをはずそうとするがさっぱり外れる気配はない。

ちなみにぎにゅきさんとは銀雪さんがいつの間にか訛ってついたあだ名だ。


「ぎゃん弱っ!」


幼さんは横で笑っている。

私も笑おうかと思った矢先、また別の人物が部室へと入ってきた。


「禁煙って絶対死ぬよね」

「禁煙するくらいならニコチンとタールにまみれて死にたい。いやゼロ戦に乗って死にたい」

「あ、clさんにLさん。お帰りなさい」


煙草を右手にワンカップを左手に持ったclさんこと文芸部部長と、旧日本軍風軍服っぽい服を着たLさんことラヴさんだった。

部長は最初えへらと笑ったが私たちの手の中のものを見て苦笑が混じった。


「ココロんにおさなん。二人とも物騒なもん持ってなにしてんの?」

「オヤツです」


私は即答した。

幼さんは横でほしさんの和菓子を持ち上げる。

改めて見ると結構な量があった。


部長はそれを見るや否や、ダッシュで自分の作業机に行きコップと爪楊枝を取り出した。

そして、部室の奥の壁にぽっかりと空いた穴に隠してある冷蔵庫から芋焼酎を手に戻ってきた。

穴は死角になっていて部員以外誰にも気づかれないのだ。


「昼間っから酒盛りですか。望月さんと言い部長と言い大人ってな……」


銀雪さんはぶつぶつ言いながら自分の机に座る。

私はそれを見て表面上少しだけ笑い、内心爆笑しながら手入れの終わったピカピカの包丁を机に置いて、再度机に突っ伏した。


ちょうどそのときだ。

またまた部室の扉が開き二人の人物が見えた。


「あれこころんどうしたの?」

「げっお姉ちゃん!」

「おかえり さくもん、と。あ、弟兎くんだ。」


私は自分の目がキラリと光るのを感じた。

今さっき手入れをしたばかりの包丁を構える。

包丁は黒光りし、まるで私の心の中を映しているようだった。


「ちょ、お姉ちゃん? あれはお兄たんの陰謀で…って何か黒い筈の瞳が赤く爛々と光ってる?! お姉ちゃん設定無視しないで助けて許してお願い―!」

「たっだいまー、この新作ゲームグラフィックがパねぇ……ん?」


弟兎くんこと弟のたーくんは私のきらきら光る包丁を見て数歩後ずさったところで何かにぶつかった。

背後に立っていたのは、弟兎くんの天敵と名高い望月さんだった。


「くふふふふふふふふふ……、逃げる?」

「なんか楽しそうだな、混ぜてくんないココロん」

「はい喜んで◇」

「逃げたいっていったらどうするの?」

「もちろん♪」

「逃がさない★」

「やっぱりぃぃぃぃいいいいいいい!」


弟兎くんは可愛いふわふわのウサ耳をつけたまま、部室を飛び出していく。


「お待ちなさい、弟兎くーん」

「夕飯シチューにしたげるから、兎肉のー」

「オカズにされるぅぅうう!」



今日も文芸部は平和です。

六番手、どうもこの企画を楽しみまくっているハーツです。

ご読了いただき、本当にありがとうございました。

またのご来読を心よりお待ちしています。

ハーツだけに……。


……………スベったorz

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